約三ヶ月間、充電しながらぼちぼちとシリーズを構成していました。
あらすじにも書きましたが、これが最終章となります。またぼちぼちと書いていきますので、よろしくお願いいたします。
ここはどこだ………?
俺は一体………。
………そもそも俺は誰なんだ?
『サナ、サナ!』
ん、この声はサーナイト………?
あれ?
俺サーナイトなんて捕まえてたっけ………?
俺のポケモンは………ああ、そうだ。俺はポケモントレーナーなんだ。相棒は紅い炎竜………リザードンで、黒いポケモンもいたな。確か名前は…………そう、ダークライ。それからヘルガーもいたっけ。キモリは元気に…………進化してジュカインになって会いに来てくれたんだったな。ケロマツ………あいつは憎たらしかった。でもゲッコウガになって一番主人公してるな。ああ、ボスゴドラもいたっけ。あいつは最年長ですげぇしっかりしてた……………。群のボスはやっぱり威厳がちがうもんなー………。
『サナ、サナ!』
サーナイト………、あーそうだ。ラルトスを助けたことがあったな。俺に懐いてくれて俺のポケモンになってくれて…………。
でも親が見つかって………………それでも俺を選んでくれたんだった。なんで、俺はそんなことも忘れそうになってるんだ………?
『「サー、ナイト………」』
「サナ! サナ!」
あれ………?
なんか今度ははっきりと聴こえてきてないか…………?
これ、夢なんだろ………?
目の前は真っ暗だし、何も見えない…………あれ?
『「サーナイト………? ナンデ、ナイテ……ルンダ…………?」』
「サーナ! サーナッ!」
なんでサーナイトが泣いてるって分かるんだ?
見えてない………はず………あれ? これは見えてる、のか………?
「ギィナァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!!」
っ?!
この鳴き声……!
これは知ってるぞ!
この声が聞こえるってことは、俺はーーー。
『「シンダ、ンダナ…………」』
俺は死んだんだ。
………あれ?
でもなんで死んだんだっけ?
というか俺が死んだというのなら、どうしてサーナイトがいるんだ…………?
ギラティナがいるということはここは破れた世界であり、死の世界。冥界とでもいうべきか。特殊なケースを除き、ここはそういう場所となっている。
ん?
特殊なケース?
そういや俺も特殊なケースで出入りは出来てたんだったな。
でもそれもダークライが消えた今では無理な話。
なら、俺はどうしてここにいるんだ………?
やっぱり、死んだからとしか考えられないんだが。
「ギィナァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
お迎え来てるじゃねぇか。
「サナ! サーナ!」
サーナイト、まさかお前も一緒に死んだとでもいうのか?
くそ、こいつにはまだまだ世界を知ってもらいたかったのに。エルレイドたちにも合わせる顔がないじゃねぇか。
「ギィナァァァァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!」
嗚呼ーー。
これから俺たちはギラティナに食われるんだな。そして願わくば新しい命として…………くそっ、まだまだやりたいことはあったのに!
なんで俺はいつもいつもこんな目に遭ってるんだよ! なんで俺ばっかりなんだよ! 俺が何したって言うんだよ!
「ライ」
一瞬で。
視界からサーナイトが消えた。
「サナァァァァァァッ!?」
遅れて、聞こえてきた絶叫の方を向くとサーナイトが遠のいていくのが見えた。
『「サーナイト!?」』
追いかけようとするも身体が動かない。
そもそも死人なのに身体なんてあるのだろうか。見えているこの身体は俺がそう見えているだけの、魂をそういう風に見ている映像に過ぎないのではないか?
けど、それがなんだ。そんなことでサーナイトと離れ離れになってたまるか!
動け! 動けよ、俺の身体!
『しゅるるるるるぷ』
『「グゥゥッ………」』
なん、だよ………今度は!
何で急に、意識が………遠のき始めるんだよ………。俺は、死んだんだろ! それなら………、意識……が………遠のく、とか…………関係ないだろうがーーー。
くそっ………たれ…………ーーー。
✳︎ ✳︎ ✳︎
『「ン………」』
目が覚めたら見知らぬところだった。
俺は刺されて咄嗟にウツロイドを出して、その後は奴に委ねたところまでは覚えている。
それからサーナイトに泣き叫ばれていた気もするが、あれは夢か? 夢だよな? サーナイトの姿はないし。
でもギラティナが襲ってきたような気もする……………。
『「ナッ…………!?」』
身体を起こして辺りを見渡すと、どこかしら知っているところだった。風景を、というよりはこの世界そのものを。この仄暗く、それでいて何があるのかは見えてしまうこのおどろおどろしさは、懐かしいとも言えなくもない。思い出したくもない懐かしさだが。
『「ヤブレタセカイ………」』
となるとあのギラティナの鳴き声は本物だったということであり、すなわちそれはサーナイトもいたということにもなる。
『「チョットマテヨ…………? オレハ………ササレテ、ウツロイドニヒョウイサレルコトデ、ドクヲモッテカンカクヲマヒサセタ。………ノハ、オボロゲナガラオボエテイル。ソレガナンデ、ヤブレタセカイニキテルンダヨ…………」』
分からない。
さっぱり分からない。
…………そういえば、意識が途切れる間際に何かに引っ張られるような感覚があったような………。
まさか、そいつの仕業ということなのか?
それとも俺が認識していなかっただけでウツロイドがウルトラホールを開いて、その穴に吸い込まれる時の感覚があの引っ張られるような感覚だったとか?
どちらにせよ、現状把握をしなければ何のやりようもない。
『「テカ、マジデシヌコトハナカッタンダナ、オレ。タダ、コンナトコロニイルッテノガ、ホントウニイキテルノカアヤシクナッテシマウンダガ。ササレタトコロトカドウナッテ………ッ?! オイオイ、マジカヨ………」』
刺された腹を見下ろし、次に背中を見える範囲で見ようと首を動かしたらポケモンがいた。
いやいや。
いやいやいや。
何でいるんですかね………ーーー。
『「ーーークレセリア」』
中々にビビるシチュエーションである。
振り向いたらクレセリアがじっとこちらを見てるんだぞ。
「おい、見ろよアオギリ。あんな異常事態で理性保ってやがるぜ」
「彼は相当の自我を確立しているのでしょうね、マツブサさん」
ッ!?
え、人?!
しかもアオギリにマツブサって…………!
『「ホンモノ、ナノカ………?」』
赤い装束を纏う男の胸辺りには見覚えのある紋章が入っている。一方の青い装束を纏う男も同様に見覚えのある紋章が入っていた。
マグマ団のボス、マツブサ。そしてアクア団のボス、アオギリ。ホウエン地方に大災害をもたらす切欠を作り出した二大組織の長である。
そんな二人が何故ここに?
「マツブサさん、あなた結婚されてましたっけ?」
「いきなりだな。オレはしてねぇ。そういうオマエはどうなんだ?」
「同じくですよ」
「ってことは団員の奴かもな」
「その可能性は否定できませんね」
問い、というわけでもないが、俺の言葉に返事が来ることはなかった。それよりもいきなり結婚話とかどういう脈絡なんだ?
「オマエ、自分が誰だか判断できるのか?」
ええー……、逆に質問されたんだけど。
これは答えた方がいい、んだよな。
『「イチオウハ」』
「「ほう」」
『「ソレヨリモアンタラコソホンモノナノカ?」』
「ああ、オレがマグマ団を率いていたマツブサだ。そしてこっちがアクア団を率いていたアオギリだ」
『「ソウカ」』
やはり、本物なんだな。
けど、何でここにいるんだ? 偶然か?
「オマエの名は?」
うぐ………折角話が逸れ始めていたってのに。
やはり答えないといけないのか。
どうする? 本名でいくか? それとも忠犬ハチ公とか、通り名的なのにするか?
いや………もっと無難なのがあったな。
『「………カロスポケモンキョウカイリジ、ヒキガヤダ』
現在進行形の役職ならば、裏社会を想像させることもないはすだ。しかもこれなら名前まで言わなくてもどうにかなる。
「ほう」
「………それにしては穏やかな姿ではありませんが?」
『「シュウゲキヲウケタンダ。ハラトセナカヲササレテ、コイツノドクデイタミヲトッテイル」』
ウツロイドに寄生されていれば、そりゃ穏やかな姿ではないだろうな。一種の化物ですらある。その自覚はあるし、だからと言って今離れてもらうわけにもいかない。最悪死ぬ。ウツロイドの毒の方で。
「穏やかではないのはあなたの周りのようですね」
『「ソウダナ」』
「オマエはここがどこだか理解しているのか?」
『「ギラティナノセカイデアルヤブレタセカイ」』
「………よくご存知で。もしやとは思いましたが、この世界を理解しているということであれば、その冷静さにも頷けますね」
まあ、そうか。
こんな辺鄙なところに来て取り乱さない方が異常だもんな。それに比べて俺は肌感覚で分かってしまったのだから、取り乱すも何もないか。色々と驚きはしたが。
『「ソレヨリモサーナイトハシラナイカ?」』
こいつらはホウエン地方出身だ。サーナイトを知らないなんてことはない。他の地方の出身であれば知らない可能性もあるが、割とサーナイト自体が世界的にも有名なポケモンでもあるため、中々そういう人を見つける方が難しいかもしれない。
「サーナイト? それならあっちでドンパチやってるぜ」
『「ハッ?」』
サーナイトがドンパチ?
一体どういうことだってばよ。あなたいつから好戦的になったの? パパンはそんな子に育てた覚えはありませんわよ?
「アレですね」
アオギリが示した方向には、確かに二体のポケモンが戦っていた。片方は紛れもないサーナイトだ。
ただ、やはりというか、クレセリアがいる時点で薄々いるのではないかと思っていたのだが、まさか本当にいるとはな………。
『「ダークライ………」』
ああ、そうか。
全部理解できたわ。そういうことだったんだな。
何故俺が破れた世界にいるのか、ここに来るまでのあの引っ張られる感覚は何だったのか、そして何故俺は生きているのか。
ダークライはずっとこの世界から俺たちのことを見ていたのだろう。一度は俺たちのことを認め、最後は己の力を託して消えていった存在だ。何なら俺に黒いオーラを付与したり、夢にした記憶を食らってたくらいには俺の懐に入り込んだ存在でもある。感知することは事ヒキガヤハチマンに関しては他とは違った感覚を持っていてくれても不思議ではない。
「どうやら、ダークライもクレセリアもオマエの仲間のようだな」
「なるほど、だからダークライが引っ張って来たのですね。あのダークライが一個人にここまでするとは余程のことがない限り考えられませんし」
その通りだ。
そもそもダークライは自身の能力の影響により勝手に悪夢を見せてしまう負の面を持っている。だから人と関わろうとはしないし、俺の知る限りでは邪険にされ、迫害されていたのが事実だ。だから人間に手を差し伸べること自体異例のことである。
「フハハハハッ! 面白いじゃねぇか」
『「ソレデ、アンタタチハドウイウソンザイテイギニナッテルンダ?」』
俺と同じ生身の人間というのなら、どうにかしてここから脱出する方法を取っているはずだ。だが、この二人からはそういう焦りというか勢いというものが全く感じられない。逆にここが今の我が家とでも言いたげな寛ぎ方をしている。アオギリの方は胡座をかいているくらいで普通と言えば普通なのだが、マツブサの方が横になって左腕を枕に頭を高くして、寝そべっているのだ。テレビでもあればマジでそれっぽい。
そして、それに何も疑問を抱かないアオギリもやはり異常と言えよう。
「オレたちは二度死んだ身だ。一度目はこのアオギリに殺されて。二度目はあやふやな存在なまま現世に戻り、紅色の珠と藍色の珠でグラードンとカイオーガをゲンシカイキさせたとなりゃ、現世に残る余力もなくなるってもんだ」
「あれは死ぬというよりも消えるという表現の方が合ってますね。身体が見事になくなりましたから」
死ぬより消える。
口振りから死体も残らなかったってことなのか。
というか一度死んだ身の人間が現世に戻れるのかってところにも疑問があるが、現世に戻っても身体があったってことの方が気になる。まあ、この二人にその原理を説明できるかと言えばノーだろうから聞くだけ無駄だろうな。
『「ナルホド、キニナルコトハイロイロアルガ、キイタトコロデアンタタチガコタエラレルトハオモワナイ。フカボリハシナイデオク」』
「そうしてくれると助かるぜ」
「なんせ、わたしたちもよく分からないまま使命感だけを胸に戻りましたからね」
使命感、あるいはそういう思いの丈が現世へと誘ったと考えるといいのかもしれない。
なら、俺はどうなんだろうか。
現世に戻りたいかと言えばイエスである。ただ、このまま戻ったところで問題は山積したままなのも確か。あのカラマネロを打倒できなければ、また同じようなことが繰り返されるだけだろうし、最悪マジで死ぬ。今回ですら命からがらなのに、これ以上何かが起きれば俺が生きているかすら保証はできない。現状ですらウツロイドに呑み込まれているとかいうふざけた姿をしているのに、これを一般人が見れば、十中八九無事ではないと判断するだろう。あるいは異端者として排除されるかだな。
つまり、今のまま戻ったところで俺に居場所は無い。死に戻りするのがオチだ。
となると、強くなった上で帰るしかあるまい。俺の居場所が侵されるのなら、それに打ち勝つ力を付けないことには話も進まないと言えよう。
幸い、ここは破れた世界。現実世界からは切り離された亜空間。ただし、特定の条件を揃えればあちら側に繋ぐこともできるし、その技術を持つポケモンがここにいる。しかもそいつはサーナイトを鍛えてくれているようだし、アイツなりにも何か考えがあるのだろう。
なら、早る気持ちは今は抑えておくべきだな。それよりもサーナイトを鍛えてやるのが一番だろう。ここにリザードンやゲッコウガたちも来ていれば同時に強化できたのだが、あんな突発的な襲撃に際して対処してくれているところを俺が狙われてしまったのだから、口にするつもりもない。逆に、あっちのことはあいつらに任せられると考えることにしよう。
『「………ダークライ」』
「………」
「サナ!?」
ダークライたちに間が空いたところで声をかけると、ダークライが静かにこちらを見やり、サーナイトが俺に気づいてそのまま飛び込んできた。
ウツロイドに憑依されているのに、この抵抗感の無さ。余程心配をかけてしまったのだろう。
『「ワルカッタナ、シンパイカケタ」』
「サナ!」
腕を動かすとウツロイドの触手も同じように動き、サーナイトの頭へと手をやった。
マジで俺と同化してるんだな。逆に怖くなってきたわ。
「ライ」
『「アア、ワカッテイル。コノママモドッタトコロデ、キットニノマイニナルダケダ。ダカラ、サーナイトダケデモチカラヲツケテオキタイ。キョウリョクシテクレルカ?」』
ダークライがこれからどうするのかとこちらをじっと見てくるので、俺なりの回答を出すと静かに頷いてくれた。
「サナ!」
「おうおう、サーナイトもやる気じゃねぇか」
「良いではないですか。こんなところに来るということは余程のことがないとあり得ないことです。強くなって打倒するというのも一つの手でしょう」
おっさん二人は呑気に見ているだけだが、それはそれは何もすることのない世界だ。少しは余興にもなることだろう。
手始めとしては今使える技を完璧にし、次に新しく技を習得していくってところか。その過程で実践経験が積み重なっていくだろうし、戦術も叩き込まれていくはずだ。俺自身も任せっきりにする気はない。実際に指示をするのは俺なんだ。サーナイトの成長をこの目で確認していくとしよう。
『「サーナイト、カエルタメニツヨクナルゾ」』
「サナ!」