『流石ミッションクラッシャーの名は伊達ではない、我々の想定の斜め上をいく見事な攻略法に未だ会場が興奮で冷め止まない中、いよいよジムバトルの始まりです!!』
毎度思うけど、ミッションクラッシャーとか不名誉にも程がある二つ名だよな。そのせいで通常のミッションから逸れた内容になったりするし。
『それでは登場していただきましょう! 期待の新生! ミッションクラッシャー、仮面のハチ!!』
やっぱり抗議しないと永遠とこの紹介になっていくよな………。
委員長に言えばいいのだろうか。というか徹底されるのかね。
『そして、彼の前に立ちはだかるのかは、氷の女王、ジ・アイス! 我らがジムリーダー、メロン!!』
抗議文を考えながらバトルフィールドのセンターサークルに向かうと、向かい側からも白いユニフォームに身を包んだメロンさんがやってきた。赤黒い俺とは正反対のユニフォームだな。
「ようやくだね、ハチ」
開口一番にそんなことを言われた。
あー、開会式の日に楽しみにしてるとか言われたっけ?
「アンタとバトル出来るこの日が待ち遠しかったよ」
マクワは一ヶ月くらいで母親の元へ挑戦しに来たってのに、当の俺は今になってやっとだからな。
「そんな期待されても困るんですけどね………」
「何言ってんだい。ダンデやカブがアンタのことを絶賛していたら、誰だって興味は湧くものだよ」
変に期待されてる感があって、なんか嫌だ。
人間、勝手に期待して勝手に落胆する生き物だ。だから期待なんてして欲しくはないのだが、仮面のハチという一種のパフォーマンスをしている以上、こうなることは必至だったってことだろうか。ただ、それがジムリーダーからってのは予想外すぎるが。
「あの二人は大袈裟過ぎるんですよ。特にダンデは」
ダンデの頭の中なんてポケモンに関しては子供のままだろうからな。アレはある意味、別格と言ってもいい。
だから実質大袈裟なのはカブさんだけってことになるのか。
「俺はただ、俺に出来ることをやってるだけであって、すごいのはポケモンたちの方なんですよ。飲み込みが早くて一教えたら十出来るようになるし、ポケモン同士でいつの間にか技を教え合ってたりするし」
それにトレーナー自身が良かったところで、それにポケモンたちが着いてこれずに応えられなからば意味がない。そういう点でいうと、俺のポケモンたちはどいつもこいつもそういうところはしっかりしていて、優秀過ぎるくらいなのだ。
だから俺がすごいわけじゃない。俺の何となくの思いつきを形にしてしまえるポケモンたちがすごすぎるのだ。
「そもそもポケモンバトルはあくまでも主体はポケモンたちでしょ。なら、トレーナーがすごいんじゃなくてポケモンたちがすごいってことになると思うですけどね。いくらトレーナーが奇抜な発想をしようとそれを再現出来るだけの実力がポケモンたちになければ、意味ありませんし」
「そんなことを言うチャレンジャーは初めてだね。ポケモンバトルとは言っていてもトレーナーの代理バトルみたいに考えてるトレーナーたちもいるからね。その人たちにとってはあくまでも主体はその人たち自身だし、ポケモンたちは自分の手足の代わりなんだよ。そして、少なからずそういう意識はアタシたちにもある」
言わんとしていることは理解出来る。そういう点では流石ジムリーダーと言えよう。
「だから、アンタのバトルでそうじゃないってことを見せてみな。アタシが全力で受け止めてあげるよ」
なのに、まーたなんか無理難題を言い残して行ったぞ。
突拍子もない策をいきなり成功させろってか?
突拍子もないかどうかは見る人次第だし、そもそもそういう展開にならないと突拍子もないと感じることもないのではなかろうか。もっと言えば、突拍子もないと感じる基準って何なんだろうか。
うん、無理ゲーじゃね?
こういう風に変に期待されると本当に面倒である。
俺は聞かなかったことにして、フィールドのトレーナーの立ち位置へと移動した。
『まずはルールを確認します。使用ポケモンは四体のシングルバトル。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になればバトル終了。なお、他のルールは公式に則ったものとなります』
四体か。
六つ目のジムで四体となると次が五体で最後が六体ってことか?
まあ、使用ポケモンの数がどうであれ、勝つしかないんだから、六体揃えている俺にはその辺どうでもいいことではあるか。
『それでは! バトル、始め!』
俺たち二人の様子を確認し終えた審判が合図を送り、実況がバトル開始を宣言する。
「さあ、行っといで、モスノウ!」
メロンさんの最初のポケモンはモスノウか。
実物を見るのは初めてだな。
確かこおり・むしタイプだったか。
系統的にはドクケイルに近いものがあり、ウルガモスもまあ、近い方ではあるか。
ただ、どちらかというとモスノウよりは進化前のユキハミの方が人気があったりする。こっちも図鑑で見ただけだから何とも言えないのだが、とにかく見た目が可愛い。ミツバさん曰く、指を差し出すとはむはむしてくるらしい。
それが進化するとこうなってしまうんだとか。
俺的にはモスノウも嫌いじゃないぞ?
何というか少年心を燻ってくる見た目をしているから、ユキハミから進化を目指す者も一定数いることだろう。
「ウルガモス」
俺の六体目のポケモンの満を辞しての登場に、一瞬会場が静寂に包まれた。
『ッ!? な、何とハチ選手、これまで謎に包まれていた六体目のポケモンをついに披露してきました!! ウルガモスです!!』
そして、実況が仕事をし出すと会場も一気に湧き上がっていく。
「………やってくれたね、ハチ。ポケモンを出すというたった一つの行為だけで観客を味方に付けるなんて」
全くそんなつもりはなかったと言えば嘘にはなるが、こんな一気にうるささが増すとは思ってもみなかったわ。
耳がキーンとしてるぞ。
「モスノウ、あられ!」
「ウルガモス、ちょうのまい」
初手は様子見も兼ねて能力を上昇させておこうと選んだのだが、どうやらあっちも自分が有利なフィールドにしてから攻めてくるつもりなようだ。
まあ、ほのおタイプを、というか太陽の化身とも言われるウルガモスを相手にするには、それくらいの用意は必要になってくるだろう。
モスノウが大きく羽ばたくと霰が降り始めた。
それはいいのだが、ウルガモス自身の熱のせいなのか、舞うウルガモスに当たる直前で解けてしまい、ダメージになっていないように見えるのは俺だけだろうか。
いや、特性にそんな効果のなかったよね?
いくらほのおのからだって名称であっても、そんな効果はなかったはず。
やっぱりかつてはどこぞの地域で神として祀られていたくらいの存在だからだろうか。
「エアスラッシュ!」
とかどうでもいいところに考えがいっていたら、霰に乗せて、空気の刃が次々と降り注いできた。
「ほのおのまいで焼き尽くせ」
それを六枚羽の周りに炎を踊らせ、一気に放出して空気の刃を焼き尽くしていく。
「距離を詰めてもう一度、ほのおのまい」
「ッ!? ふぶきだよ!」
すかさずモスノウとの距離を詰めさせ、六枚羽の周りに炎を踊らせ、次々と発射していく。
モスノウも咄嗟に強く羽ばたき吹雪を起こすことで勢いを殺そうと試みるも、結果は思うようにいかず、威力の上がった激しく燃え盛る炎を前にむべもなく呑み込まれていった。
「せ、戦闘……不能………!」
丸焦げになってフィールドに伏しているモスノウを見て審判が判定を下した。
だが、その声はあり得ないものを見たかのように震えている。
『な、ななななんとたった数度の攻防でウルガモスがモスノウを沈めました! 強い! タイプ相性がよかったからの一言で片付けられるような次元ではありません!!』
いや、普通にタイプ相性だと思うんだけど。
あとタイプの違いはあれど、似たようなポケモンであるが故に、ウルガモスの方が全てにおいて上回れたか、だ。
「まさか手も足も出ないなんてね………。戻るんだよ、モスノウ」
メロンさんは色んな感情が混ざった顔でモスノウをボールに戻した。
「仮面のハチの六体目のポケモンは何だ! ってネットでは考察が張り巡らされていたってのに、まさかこんな大物が潜んでいたなんてね」
…………そういえば、最近ネットの掲示板の内容を目にしてないな。
けど、自分から見るってのもなー………。
エゴサなんてしたいとも思わないが、一応仮面のハチとしてジムチャレンジに臨んでいる以上、偶には目にしておいた方がいいんだろうけど………気が乗らない。
ただただ恥ずかしいだけだし。
ああ、でも、六体目のポケモンの候補に何が挙げられていたのかは知りたいところではあるな。
よし、ジム戦が終わったらルリナに頼んだその辺の内容のだけピックアップしてもらおう。
「いくよ、ヒヒダルマ! いわなだれ!」
なんて考えてたら二体目が出てきて、出てくると同時にウルガモスの頭上に次々と岩が降り注いできた。
「ちょうのまいで躱せ」
ウルガモスは舞を踊るようにくるくると回り、降り注ぐ岩々の中を移動していく。
あ、やっと見る余裕が出来たけど、二体目はガラルのヒヒダルマか。
今より未来でイロハがユキノとのフルバトルで使ってたり、ミツバさんが連れていたから、まあまあ目にしてはいる。
リージョンフォームしてもダルマモードという特性は健在で、数は少ないが炎の雪だるまに姿を変える個体もいるが、はてさてメロンさんのヒヒダルマはダルマモードなのか否か。
「ほのおのまい」
一頻り降り注ぐ岩々を躱すと、一気にヒヒダルマの背後に回り込んで六枚羽から炎を撃ち出し、焼き尽くしていく。
「ヒヒダルマ!?」
決して動きが遅いポケモンでもなく、何なら見た目に反して結構身軽に動ける方なのだが、ちょうのまいを使ったウルガモスのスピードには対応出来なかったらしい。
「どうやらまだなようだね。いわなだれ!」
ついでに言っておくと、ほのおのまいには遠隔攻撃力を百パーセントというわけではないが上げる効果もあり、ちょうのまいと併せて結構エグいことになったりする。
それを考慮しても今の一撃で体力をグッと削った様子がないのをみるに、結構頑丈に鍛えられているのが分かる。ほのおタイプへの対策はかなり積んでいるのだろう。
「ほのおのまい」
ウルガモスは再度六枚羽の周りに炎を作り出し、降り注ぐ岩々の中で自身に当たりそうな物にだけ炎をぶつけていく。
炎が当たった岩が次々と溶けていっているのはこの際見なかったことにしよう。
威力上がりすぎだろ。
「やっと来たね」
流れで一発二発、ヒヒダルマに当たったのだろう。
ヒヒダルマが光に包まれると炎の雪だるまへと姿を変えてしまった。
なるほど、ダルマモードの持ち主だったか。
だから「まだなようだね」とか「やっと来たね」って言ってたんだな。今のところ、いわなだれしか使ってきてないから、判別のしようがなかったが、こおり・ほのおタイプへと変化した今なら、フォルムチェンジにより能力の向上しており、ほのおタイプの技が効果抜群ではなくなってしまっている。
いわタイプの技も覚えていることだし、ほのおタイプ対策の一貫なのだろう。
「ヒヒダルマ、ほのおのうず!」
すかさずウルガモスを逃すまいと、炎の渦の中に閉じ込めてきた。
「フレアドライブ!」
そして炎の雪だるまが炎を纏って、今にも解けそうな姿で突っ込んでくる。
まあ、物理攻撃を得意とするヒヒダルマであればそうくるよな。
「炎の渦を使ってほのおのまい」
だが、このウルガモス。
俺が捕まえる前から巨大化して周辺を荒らしていた強者である。何なら捕まえた時点で、当時のサーナイトに匹敵する強さではあった強者である。
しかも何度もいうがこいつはウルガモスである。太陽の化身とか言われて崇められていたとか言われているウルガモスである。
こんな炎の渦くらい制御権を奪って操るくらいは、わけないんだよなー……………。
「えっ………?」
突如、メロンさんの横を何かが通り過ぎていき、観客席とを隔てる壁に激突した。というか壁にクレーターが出来たどころか壊れる威力ってお前…………。
ほのおのうずの炎を全て使ってヒヒダルマを押し返せばそうなるだろうに。
もう少し加減してもよかったんだぞ………?
「え、あ、ヒヒダルマ!?」
「………ひ、ヒヒダルマ、戦闘不能!」
『ヒヒダルマ、戦闘不能ぉぉぉ!! ウルガモス、ヒヒダルマが作り出す岩の数々をものともせず、仕舞いには溶かしてしまい、特性ダルマモードにも焦らず対処してみせました!! 何という胆力! 何という技術でしょうか!!』
恐る恐るヒヒダルマの様子を確認した審判が判定を下した。
まあ、こうなるのは目に見えていたよな。
天真爛漫なくせにジムチャレンジのメンバーに選んだ六体の中で一番強いサーナイトや、そのサーナイトの実力を隠す意味でも仮面のハチのエースとして印象付けしているガオガエンに隠れてしまっているが、仲間にして以来、他のメンバーも含めて底上げに一役買っているのは間違いなくウルガモスなんだし。
「戻ってゆっくり休みな、ヒヒダルマ」
やっと我に返ったメロンさんがヒヒダルマをボールに戻す。
「………まさかほのおのうずの炎を利用されるなんてね。というか人の技の制御権を奪うポケモンなんて初めて見たよ」
それは本当だろうか。
俺の見立てではダンデVSカブさんの時でなら有り得そうなことではあるんだけどな。カブさんはほのおタイプの専門であの実力だからやれそうだし、ダンデのリザードンもそれくらい普通に出来そうなポテンシャルがあるように思う。
まあ、その発想がどちらにもなかったと言われたらそれまでなんだけど。
少なくともダンデが今のを見ていたら、絶対習得してきそうだけどな。
「そりゃどうも。でもそこはウルガモスですからね」
「このっ………言ってくれるじゃないかい。コオリッポ、ハイドロポンプ!」
またもやボールから出すと同時に攻撃の指示だ出してきた。
「躱せ」
それを余裕で躱すウルガモス。
うん、なんだあのポッタイシ擬きは。ポッタイシが氷の塊を頭から被りましたって顔しているぞ。間違ってもエンペルトではないな。そんな風格を一切感じられないし。
まあでも、こおりタイプのジムリーダーが出してきたんだし、こおりタイプなんだろうけど…………。
「ほのおのまい」
まあ、やることは変わらないんだがな。
再三に渡り六枚羽の周りに炎を作り出し、次々とポッタイシ擬きへと撃ち込んでいく。
「アクアブレイクで叩き斬りな!」
ほう。
アクアブレイクを使えるのか。
ポッタイシ擬きは水の刃で次々と炎を斬り裂いていく。
「コオリッポ、もろはのずつき!」
全てを斬り裂き終えると地面を強く蹴り、頭から一気に突っ込んできた。
なるほど、あの氷の塊での頭突きはちょっと痛そうだな。
「ちょうのまいで躱せ」
ひらりひらりとウルガモスが躱すと、ポッタイシ擬きは明後日の方向へと飛んでいく。
「ハイドロポンプ!」
だが、すぐに逆さまになりながら水砲撃を放ってきた。
油断していたわけではないが、丁度ひらりと躱した先に水砲撃が押し寄せ、結果としてウルガモスに初めて被弾を許してしまった。
うーん、流石に今のは偶然だよな?
流石に狙ってやったとは思えない。
「焼き尽くせ、ほのおのまい」
やられたからにはやり返すのがモットーなため、ウルガモスもすぐに振り向き、六枚羽の周りに作り出した炎を次々と撃ち込んでいく。しかもさっきよりも射撃スピードが上がり、これにはポッタイシ擬きも躱しきれずに一度被弾すると、次々と撃ち込まれて吹き飛んでいった。
「ああ、あいつか」
どうやら撃ち込んだ炎で氷の顔が解けてしまったようで、素顔が晒されているのがモニターに映り、ようやく見覚えのあるポケモンだったことに気づいた。
あれ、コオリッポか。
そういえば、特性で氷を顔に纏うんだっけか?
素顔の方ばかり目がいきすぎていて、すっかり忘れていたわ。
「コオリッポ、戦闘不能!」
審判の判定が下された。
「コオリッポ、戻りな」
『コオリッポ、戦闘不能ぉぉぉ!! コオリッポのハイドロポンプがウルガモスの背中に直撃した時にはもしや?! と思ってしまいましたが、何というかことはありません!! そこからさらにギアを上げたウルガモスが炎を次々と撃ち込み、コオリッポの反撃に出る隙すら与えず倒してしまいました!! これで三体!! ウルガモス一体で我らがジムリーダーの手持ちを三体も倒してしまいました!! 強い、強すぎるぅぅぅ!!』
お、おう…………。
ここの実況、結構熱烈だな。
あれ、息継ぎちゃんとしてる?
「はあ………まさかアタシのポケモンが三体もやられるとはね。しかもウルガモス一体にここまで引っ掻き回されるなんて思いもしなかったよ」
「だから言ったでしょ。そこはウルガモスですからねって」
ガオガエンでも何とかなっただろうが、ちょうのまいを何度も使っている今のウルガモスは最早無双状態と言ってもいい。目にも止まらない速さで移動し、岩をも溶かす灼熱の炎で攻撃してくるのだからな。それでも同じく制空権を奪い取れるリザードンには勝てるビジョンが見えないし、ゲッコウガからは逃げられそうもない。タイプ相性的にジュカインには勝てるかと思いたいところだが、今のあいつは最早くさタイプの域を超えてるからな。あの手この手捉えられておしまいだろう。
うーん、やはりうちの三巨頭は伝説のポケモン扱いでいいのではないだろうか?
「………全く、こりゃダンデが気にいるわけだね。ラプラス、ハイドロポンプ!」
突如として再開するバトル。
最後のポケモンとして出してきたのはラプラスだった。
「ウルガモス、躱してにほんばれ」
出てきたと同時に吐かれた水砲撃を難なく躱し、夜だというのに明るい太陽の光がスタジアムに差し込んでくる。
「もう一度、ハイドロポンプ!」
「ソーラービーム」
しかし、日差しが強くなったこともあり、水砲撃の威力が衰え、あっさりと押し返してしまった。
「なっ………ラプラス!?」
そして、その直線上にいたラプラスを貫き、再び観客席とを隔てる壁に激突し破壊した。
なんか、メロンさんの後ろの壁ボロボロだな…………。
「流石の耐久力だよ。最早躊躇っている暇はなさそうだね。ラプラス! ウルガモスを押し流しなさい キョダイマックス!」
だが、尚も普通に起き上がったラプラスに感嘆したメロンさんはラプラスを一度ボールに戻し、右手のダイマックスバンドからエネルギーを注入させると、巨大化したボールをフィールドへと投げ込んだ。
いよいよラプラスのキョダイマックスの登場か。
「ソーラービーム」
「ダイストリーム!」
とはいえ、タイプが変わるわけではないので、様子見に一発撃ち込んでみる。
だが、ラプラスに直撃する直前に数トンにも及ぶであろう豪水砲撃によりに、太陽光を基にした光線は呑みこれてしまい、逆にウルガモスに直撃してしまった。
それに伴って雨も降り出し、ウルガモスには不利な状況が生み出されていく。
「流石に無理があるか」
やはり巨大化してしまうと技のタイプ相性は意味を成さないようだ。
「もう一度、ダイストリーム!」
「ウルガモス、ラプラスの背中に回り込め」
早々に攻撃を諦めた俺はウルガモスに攻撃が当たらない位置へと移動させることにした。
豪水砲撃が始まる前にラプラスの背中側に周り込み、これを回避。
「にほんばれ」
豪水砲撃が終わった直後に日差しを強くし、天気を変更させた。
ちょっと迷ったものの、やはり仮面のハチとしてはガオガエンを出さないわけにはいかないという結論に至り、ここでようやくウルガモスを交代させることにする。
「交代だ、ウルガモス」
『どうやらハチ選手、ここまで猛威を奮ってきたウルガモスを交代させるようです。しかし、相手は最後のポケモン。となるとやはり出てくるのはあのポケモンでしょうかっ!』
ウルガモスをボールに引っ込めると実況の方では次のポケモンが予想立てされていた。
だが、既にスタジアム内が最早その空気に包まれており、俺に選択の余地は皆無と言っていい程なくなってしまっている。ここで違うポケモンを出したら、批判まではいかないまでも変な考察が行われてしまうことだろう。
「ガオガエン、初っ端で悪いが最後の一発を吸い込むぞ」
まあ、結果的に期待にそう選出になっているため、ガオガエンをボールから出すとスタジアムのボルテージは一気に跳ね上がり、そのままさっさとアクZのポーズを取り、Zリングからのパワーをガオガエンに送り込んでいく。
「相手が変わろうとやることは同じだよ! ラプラス、ダイストリーム!」
メロンさんも俺が出すポケモンの予想へついていたためか、新たに戦略を変えてくることもなく、豪水砲撃を再三に渡り発射させた。
「ブラックホール・イクリプス」
それと同時にガオガエンの頭上にブラックホールが完成し、ガオガエン目掛けて発射された豪水砲撃は軌道を変えて吸い込まれていく。
さらに徐々にブラックホールをラプラスへと近付けていき、豪水砲撃を全て呑み込み切った後に、パンパンに膨れ上がった黒い塊をラプラスへと投げつけた。
吸い込む力を失った黒い塊はただただ重いだけの物体となり、巨大なラプラスを押し潰していく。
そのまま黒い塊が放散していくのと同時にラプラスも元の姿へと戻っていった。
「ニトロチャージ」
その間にガオガエンを加速させて次の攻撃の準備をしていく。
「連続でウェザーボール!」
すると背中に回り込もうとした辺りで、ラプラスが天候でタイプが変わるウェザーボールを次々と放ってきた。巨大化している時には見られなかった、背中側にも長い首を回してくる辺り、素早く動こうとするポケモンの相手も結構経験しているのだろう。
だが、狙いはそういうのじゃないんだよな。
「けたぐり」
ある程度ラプラスを撹乱したところで首の付け根辺りにスライディングで滑り込み、右脚でラプラスの身体を薙ぎ払い、盛大に転ばせた。
「なっ………!?」
「DDラリアット」
立ち上がってくる前にさらに追い討ちとして、起き上がろうとして伸ばした長い首に回転ラリアットをお見舞い。
「ラプラス!?」
勢い余って頭が地面に突き刺さるような形になってしまったが、これで起き上がってくることはないだろう。
「これでトドメだ。ガオガエン、ブレイズキック」
少し後ろに下がって足下に炎を走らせると、その全てを右脚に凝縮して走り出した。
そして左脚で地面を蹴り上げ空中で一度両脚を折り畳むと、右脚だけを伸ばしてラプラスへと落下していった。
「くっ………、ぜったいれいど!」
最後の足掻きと言わんばかりにフィールド一帯をガオガエンを含めて凍りつかせようとしてきたが、凍りつき始めたところでガオガエンの右脚が直撃し、直後に爆発が起きた。
「……………ら、ラプラス、戦闘不能! よって勝者、ハチ選手!」
煙が晴れると黒焦げになったラプラスが頭を地面に埋めたまま、ビクともしなくなっていた。
あ、えと………死んでない………よな?
『ついにラプラス、戦闘不能ぉぉぉおおおおおおおおおっっ!! やはり、やはり強かった! ハチ選手、最後の手札を最初に切り出し、そのウルガモスで無双するとは誰が想像出来たでしょうかっ!! そして、その絶好調なウルガモスをキョダイマックスしたラプラス相手には分が悪いと判断すると即交代させ、ガオガエンというエースで一気に勝負を決めてしまいましたっ!!』
「お疲れ様、ラプラス。ゆっくり休むんだよ」
「ガゥ」
「おう、お疲れさん。今回はウルガモスに話題を持っていかれた感じだが、けたぐりからのDDラリアットでラプラスを動けなくしたのは上手かったぞ」
今回はウルガモスの初登場ということもあり、話題を掻っ攫った形だが、ガオガエンも新たな攻撃パターンが見えたので、いい収穫だったと言えよう。
ガオガエンをボールに戻して、フィールドのセンターサークルまで行くと丁度メロンさんもやってきたところだった。
「まさかここまでとは思わなかったよ」
「そりゃどうも」
「ウルガモスを今まで出さなかったのはアタシへの隠し玉かい?」
特段、そんなつもりはなかったんだよなぁ。
「単に出すタイミングを逃してただけですよ。最初はガオガエンで充分だったし、ルリナ相手じゃタイプ相性が悪いし、カブさん相手には他がいるし、その後もまあ、色々あってようやくタイプ相性がいいところで出せたってだけです」
「そんなポケモンに三タテもされたんじゃ、ジムリーダーの立つ瀬がないじゃないか」
と言われても、ウルガモスだしな。
「なら、ジムリーダー辞めます?」
「バカ言うんじゃないよ。アタシはまだまだ現役さ。ほら、受け取りな。こおりバッジだよ」
半分冗談で聞いてみたら、即否定されてしまった。
まあ、そりゃそうか。
気を取り直してスタッフから差し出されたトレイからバッジを受け取る。
「でもまあ、マクワにはこおりタイプのジムリーダーとしてアタシの後を継いで欲しいんだけどね。アンタからもマクワに言ってやってくれない?」
………はっ?
いや、それは俺から言うようなことじゃないだろ。
というかマクワがどうしたいかが重要なんじゃねぇの?
「あまりガラルリーグのことは知りませんけど、メジャーリーグの他にマイナーリーグもあるっていうじゃないですか。なら、メジャーリーグのジムに空きが出来たらマイナーリーグのトップが昇格してくるんじゃないですか? そうなると別にこのジムの後継がこおりタイプじゃないといけないなんてこともないんだし、そもそもマクワをジムリーダーに据えるなら、マイナーリーグからになるでしょ。それをすっ飛ばしてマクワを後継にってのは、中々難しいんじゃないですか?」
「それは分かってるさ。だからこそ、マクワにはアタシのところで修行して、次期こおりタイプのジムリーダーとして研鑽を詰んで欲しいんだよ。アタシのところにいれば、他のジムリーダーたちとバトルする機会だって作れるからね」
…………うん、反抗期にこんな接し方をされてはそりゃ嫌気が刺すだろうな。
マクワの反発心の根本的原因が見えた気がするわ。
うちは昔から放任主義だったから楽だったけど、俺も親がこんなだったらどうなっていたことやら…………。
「そうやって何でもかんでも決めつけて、自分が正しいって思い込んでいると、いつか身を滅ぼしますよ」
こんな調子でずっと接していたなら、その内マクワが爆発しそうで怖い。
せめて俺には流れ弾が来ませんように。