ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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94話

 無事、六つ目のバッジを手に入れて翌日には次のジムがあるらしいスパイクタウンに向けて歩いていた。

 ウルガモスに飛んでいってもらうって手もあったのだが、ルリナに連絡………する前に何故かあっちからネット掲示板の中身をコピペして送ってきたもんだから、それを歩きながら目を通すことにしたわけだ。

 しかも何故か二つあり、アラベスクタウンを出た頃のものを先に目を通すことにした。

 

『いよいよ六つ目のバッジ獲得のためにキルクスタウンへ向かったわけだが。仮面のハチの六体目が未だに出てこないという事実。これいかに』

『もしかして六体目がいないとか?』

『それだったらエンニュートを出してきてもよくね?』

『てか、そのエンニュートに既に六体いるからとか言ってなかったっけ?』

『言ってた』

『言ってたね』

『じゃあやっぱりまだ出てきてないわけだ』

『六体目何だと思う?』

『それ度々スレに立ってるよな。《仮面のハチの六体目は何だ!?》 って』

『それな』

『俺も見たことあるわ』

『で、何て書いてあった?』

『なんだっけ』

『アーマーガアとか候補に上がってたと思う』

『なぜにアーマーガア………』

『エンニュートが加わる前はエスパー、どく、ドラゴンが二体ずつだったから、ほのお、あく、フェアリー、みずのどれかが含まれてるポケモンじゃないかって書いてあったぞ』

『ほーん、それならリザードンとか?』

『流石にダンデと同じポケモンは連れてないんじゃね?』

『分からんぞ。同じリザードン使いだからジムチャレンジに誘った可能性もある』

 

 このコメントの主、惜しいところまでいってるな。俺がリザードン使いなのは正解だが、それが理由でダンデに誘われたわけじゃない。何ならダンデに俺がリザードン使いだって言った記憶がない。知ってるとしたら、俺の正体を知っているマスタード師匠だけだろう。

 それにしてもアーマーガアにリザードンか。どっちもキョダイマックスの姿を持っているため、俺がダイマックスを使えることを前提に話しているのかもしれないな。今はまだそのことを隠して、ダイマックスと同時に解禁、みたいな予想なのだろう。

 続き読むか。

 

『それならガマゲロゲとか? みずタイプだぞ』

『…………出し惜しみするようなポケモンじゃねぇな』

『確かに』

『ガマゲロゲェ………』

『ほのお、あく、フェアリー、みずタイプのどれかで出し惜しみするくらいには威厳のあるポケモンってことか? いるか、そんなの?』

『やっぱリザードンなんじゃね? 空飛べるし、ハチの手持ちで飛べるポケモンいねぇし』

『あ、ギャラドスとかもいいんじゃね? 飛べるし』

『ギャラドスかー………まあ、なくはないか。みずタイプだし』

『そういえばルリナの赤いギャラドスにアドバイスしてたもんな。使い手なら的を射たアドバイスが出来るのも頷けるわ』

『意外とフェアリータイプの可愛い系だったりして』

『それはない。ハチがというよりサーナイトが許さんて』

『なら、オスのトゲキッスとかどうよ。飛べるぞ』

『最早飛べるかどうかが基準になってきてるし。ほのお、あく、フェアリー、みずのどれかを含んで、出し惜しみするくらい威厳があって、かつ飛べるポケモンって…………そんなのいるか?』

『サザンドラ!』

『………ガオガエンとサーナイトを思うと弱いな。いや、サザンドラとかもいい線いってるとは思うんだ。かなり強いし。インパクトも強いし。けどなぁ』

『わかる』

『ガオガエンとサーナイトと比べるとだろ?』

『うむ、何ならあのヤドランと比べてもインパクトがない』

『………だめだ、さっぱり予想できねぇわ』

 

 アーマーガア、リザードン、ガマゲロゲ、ギャラドス、トゲキッス、サザンドラ。

 こうして並べてみるとそうそうたるメンバーだな。

 けど、このどれでもなかったんだから、ウルガモスのインパクトは相当だったと伺える。

 しかも三タテのおまけ付きだからな。

 これで実は真のエースはサーナイトでしたってなったら、スレッドの民たちはどうなるのやら…………。

 想像しただけでちょっとニヤけてしまう。周りに人がいないのがせめてもの救いか。気持ち悪いところを見られて通報されかねない。

 さて、一つ目はもういいとして、二つ目の方を見てみるか。

 ………こっちは昨日のジム戦直後のやつらしい。

 

『仮面のハチ、ついに六体目を解禁!!』

『まさかのウルガモスだったな』

『ウルガモス』

『ウルガモス』

『そのウルガモスもかなりの強さだし。出てきて三タテって………』

『最後ラプラスがキョダイマックス中に交代させてたけど、上手くいけばウルガモスがラプラス倒せてたんじゃね?』

『それな』

『ほんとそれ』

『まあ、交代で出てきたガオガエンはいつものことながら余裕そうだったけど』

『強さ的にガオガエン≧サーナイト>ウルガモス>ヤドラン>キングドラ≧ドラミドロって感じかな』

『恐らく』

『こうしてみるとほのお、エスパー、どく、ドラゴンが二体ずつなんだな』

『誰かどこかで六体目はほのおタイプじゃね? とか言ってなかったか?』

『そんな予想もあったような気がする』

『それ、エスパー、どく、ドラゴンが二体ずついるから、六体目はほのお、あく、フェアリー、みずタイプのどれかじゃね? って話だったと思う』

『確か候補に上がってたのはリザードン、ギャラドス、トゲキッス、サザンドラだったか?』

『見事にみんなひこうタイプ持ちだな』

『段々と飛べることが基準になっていったからな』

『確かにハチの手持ちに飛べそうなのいないもんな』

『でもアーマーガアとかガマゲロゲとかも出てたぞ』

『結局、飛べるやつじゃん。だからガマゲロゲだけが異色すぎるわ』

『ほのお、あく、フェアリー、みずタイプのどれかを含み、威厳があって、飛べることが条件だったか?』

『それ、あながち間違いじゃなかったな。ウルガモスも飛べるし、何より威厳がある!』

『難しすぎるだろ、こんなの…………』

 

 おい、こいつら一つ目のスレにいたやつらじゃね?

 同じやつらの会話を見つけてきたってのか?

 ルリナって実は暇なの?

 

『てか、これ晴れパと雨パが作れるんじゃね?』

『確かに』

『てかちょいちょい使ってるじゃん』

『これもキバナ戦の布石だったり?』

『いや、流石にそんなことはないだろ…………ないよな?』

『ないとは言い切れないのが仮面のハチだからな………』

 

 何故そこでキバナが出てくるんだ………?

 ん? そういえば、ソニアかルリナがキバナは天候操作がどうたらこうたら言ってたような気がするな。

 あー………なるほど?

 確かにガオガエン、ウルガモスのほのおタイプ組にサーナイト辺りを組み込んで晴れパ、キングドラと元みずタイプ組のヤドランとドラミドロを組み合わせれば雨パの完成ってわけか。にほんばれもあまごいもジム戦で使ってるしな。考察大好きスレ民がそう考えるのも自然の流れというものだろう。

 

『けど、これでエンニュートも含めて七体いるわけだが、結局ほのおとどくタイプが三体ずつなんだな』

『ガオガエンがエースなわけだし、ほのおタイプを得意としているのは確かだと思うぞ』

『とは言え、エンニュートの件はハチも予想外だったみたいだし、どうなんだろうな』

『ほのおタイプが得意ならカブさんとのガチンコバトル見てみたいよな』

『暑そう』

『焼ける』

『そこにダンデも入ってきたら、スタジアムが火の海になりそうだな』

 

 ……………想像すらしたくない光景だな。

 比喩とかじゃなくマジでスタジアムが火の海に包まれそうだわ。

 絶対にそんなことにならないように立ち回ろう。何がなんでも三つ巴バトルとかにならないようにしないと。

 ダンデのことだから、興味を持ったら即行動しそうだからな。無駄に行動力のあるバトルバカ程、恐ろしいものはない。

 

『…………既にそのメンツと並べて違和感ないことに誰か突っ込めよ』

『それな』

『最早誰も仮面のハチをチャレンジャーとは見てない説』

『なんで今までジムチャレンジに参加しなかったんだって話だよな』

『それ、毎回誰か言ってるわ』

『そりゃお前。アローラ出身のトレーナーだからだろ?』

『アローラってところから鎧島に来たって話だもんな』

『そしてレジェンドのところで鍛え抜かれたと』

『…………ダンデもレジェンドのところにいたんじゃなかったっけ?』

『あの道場ヤバくね?』

『だってマスター(クラス)道場だろ?』

『なる』

『ほ』

『どう』

『りゅういち?』

『異議あり!』

『脱線しすぎだろ………』

 

 マスター(クラス)道場、ね。

 これには俺もちょっと納得してしまった。

 本当は爺の名前を捩って付けた道場名だろうけど、クラスを入れたらマスタークラスの道場ってことになって、一気にヤバい奴らが排出されてくる危険な道場に様変わりしてしまうもんな。

 まあ、爺本人が本気を出せば今でも充分ヤバい人に入るのだろうから、強ち間違ってはいないのだろうけども。

 

「と………マジかよ」

 

 読みながら歩いていてちゃんと見てなかったが、目の前に流氷の浮いてる川? 池? 湖? があるんだが。

 橋もなければ船が出ている形跡もない。

 振り返っても道を間違えたようなこともなく、しっかりとした道が続いている。

 果たしてここを通る人たちはどうやってこの先を進んでいるのだろうか。

 

「まあ、考えるまでもないか。ウルガモス、すまんがこの先に連れてってくれ」

「モース?」

 

 ウルガモスをボールから出すと、ちょっとだけ周りの気温が上がったような気がする。

 それだけこの辺の空気は冷たいのだろう。

 いや、まあ、そうか。なんたって周りは雪山だもんな。キルクスタウン自体が標高の高いところにあったわけだし、大気の流れ次第では氷雪地帯になる可能性もないわけじゃないからな。

 そして見事にこの辺はそういう部分だったってわけだ。

 

「モス」

 

 状況を理解したウルガモスが俺の背中を掴み、徐々に高度を上げていく。

 ……………落ちたら凍え死にそうだな。

 なんて考えている間に、あっという間に対岸へと到着。

 礼を言ってウルガモスを戻すとやっぱり寒い。

 

「うぅー、さむ。チョコでも食って糖分補給だけでもしとこ」

 

 非常食ってわけでもないが、キルクスタウンを出る前に買っておいたファミリーパックの一口チョコを大袋ごとリュックから取り出す。

 

「モペェェェェ!!」

 

 バッと開いて、いざチョコを取り出そうと手を突っ込んだら、急に目の前から大袋ごとなくなってしまった。

 

「あ、ちょ、おまっ!?」

 

 犯人であろうそいつは俺の静止を無視して、個包装のチョコを次々と貪っていく。

 その速さはピンクの悪魔並みであり、最早吸い込んでいるのでは? と疑う速さである。

 

「モッペ」

 

 たった数分で全てを平らげたそいつは満足したのか、腹を摩っている。

 

「えぇー…………」

 

 すると黒っぽい色だったのが、半分黄色くなっていた。

 

「おい、マジか………。俺の一口チョコ全部食いやがった」

 

 本物を見るのは初めてだわ。

 暴食する姿ってこんな感じなんだな。

 それでいて普段は可愛い見た目をしているとか、マジで二面性が過ぎるだろ。

 

「おい、満足したからって何寝ようとしてんだ」

 

 しかも今度はうとうととし始めて、そのままごろりんちょ。

 

「ダメだ………起きる気配がねぇ」

 

 グースカ寝始めたそいつーーーモルペコは幸せそうな顔をしている。

 腹立つわぁ…………!

 こいつ、どうしてやろうか。

 人が折角買ったチョコを一つも口に入れることなく奪って平らげ、あろうことか目の前でグースカ寝始まるとか、これはもう俺が何かしたってバチは当たらないだろう。

 

「流氷にでも括り付けとくか?」

 

 仕方なく拾い上げて両腕で抱き上げる。

 

「意外ともふもふだな」

 

 まあ、あれだ。

 何もないよりは温かい。

 ……………寒いし流氷に括り付けるのは無しにしてやろう。

 とはいえ、起きたら文句の一つでも言ってやりたいし、このまま連れていくしかないか。

 多分だが、ここはモルペコの生息地ではなさそうだし。

 腹が減って気の向くまま走ってて、丁度見つけた俺のチョコを奪い食ったってところだろうしな。

 

「仕方ない、このまま連れていくか」

 

 もふもふを堪能しながら、ぼちぼちと歩き始める。

 …………うん、何でこっちにもちゃんと道があるんだろうな。

 それならちゃんと橋を掛けておけよ、と言いたい。

 もしかして水位が上がって橋が流されたとか?

 それならそれでどこかに報告して橋を掛けてもらわないといけないんじゃないか?

 つってもどこに? って話だが。

 ローズ委員長か秘書のオリーブさんだっけ?

 機会があればどっちかにでも報告してみるか。

 まあ、最悪カブさんという手がある。

 

「モルペコ〜ッ! どこに行ったん〜?」

 

 するとどこからか少女の声が聞こえてきた。

 今モルペコって言ってたか?

 

「モッペ?」

 

 そして、その声に反応したモルペコが眠りから覚めて身体を起こし、俺の腕の中から飛び出していってしまった。

 うーん、これはどう考えてもそういうことだよな。

 取り敢えず、少女がいるところに向かっているであろうモルペコを追いかけることにする。

 

「モルペコ!?」

 

 すぐにたどり着いたようで、モルペコは一目散に少女の腕の中へと飛び込んでいく。

 

「あー………そのモルペコは君のか?」

「うん」

 

 やはりそういうことだったな。

 

「そうか。見つかってよかったよ」

 

 何にせよ、トレーナーが見つかったのなら安心だ。

 ただなぁ………流石にこの少女にチョコ代を返せって言うのも憚られる。

 あれはもう諦めるしかないか。

 

「うん、ありがと。あたし、マリィ」

「俺はハチだ」

 

 淡々としてはいるが、お礼から自己紹介まで流れるようにしてくる少々に普通に驚いてしまった。

 何故世の中の人々はこうもあっさりと自己紹介が出来てしまうのだろうか。

 俺なんかユキノやハルノに鍛えられた結果、やっとって感じなのに。しかもこの歳でだなんて………。

 

「一人なのか?」

「うん、街の外に出たらモルペコが走っていっちゃって、一人でずっと探してたけん」

 

 何とまあご迷惑な話だな。

 自分のトレーナーにまで迷惑かけてしまうとか、モルペコの食への欲求は思った以上に凄まじいようだ。

 というか、だ。

 街ってどこのことを指しているのだろうか。場合によっては………。

 

「一人で帰れるか?」

 

 一応のつもりで聞いてみる。

 

「……………、………………、……………ここどこ?」

 

 その問いにマリィという少女は右に左と見渡して、段々と顔が青ざめていくのが分かる。

 オーケーオーケー。皆まで言うな。

 

「………街の名前は?」

「スパイクタウン」

 

 おっと?

 これは幸か不幸か。

 

「丁度俺が向かってるとこじゃねぇか。一緒に行くか?」

「いいの?」

「逆にここで一人にしてしまう方が心配だし、一緒に行くだけなら問題ない」

「じゃあ、お願いするったい」

 

 これでこの子を一人にしておく方が後味悪いからな。

 多分、気になって寝られそうにない。

 これがソニアとかルリナなら、一人でも行けそうだし、ダンデだったらさっさと捨て置いている。

 というか、だ。

 この子、何歳くらいなんだろうか。

 見た感じではルミルミよりも小さいように感じるのだが…………。

 どうか不審者に思われませんように。

 まあ、こっちには警察手帳もあるしどうにかなるだろ。

 

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