ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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書き手としては割と地獄な期間にいよいよ突入。


100話

『昨日でチャレンジャーたちによるジムへのチャレンジ期間も終了し、出揃ったセミファイナルの進出者たち! 今年は四人というやや少なめではありますが、その分当人たちの知名度は言わずと知れた者だち! まずはこの人!! 今回のファイナルトーナメント進出の本丸とされてきたキルクスジムのジムリーダー代理、マクワ選手!! そして、二人目は既にジムリーダーを彷彿させるバトルと専門タイプとも言うべきタイプ統一されたパーティーで勝ち上がってきた仮面の少年、オニオン選手!! さらに、三人目にはその見た目から名付けられたゲテモノマスコットキャラクター、ボールガイ選手!! 最後に! ジムチャレンジ開始から一ヶ月後にようやく動き出し、たったの二週間で全ジムリーダーを倒してしまった今回のダークホース、仮面のハチ選手!!』

 

 セミファイナルトーナメントの初日。

 いよいよシュートスタジアムでのトーナメント戦が連日続くことになるのだが、朝方対戦表が発表されてそのまま俺は午前の部ということで現在待機中である。

 お偉いさんたちの挨拶とかあるのかなと思っていたのだが、そんな無駄な時間を使うこともなく、さらっと実況者か解説者にセミファイナルトーナメントに進出した四人の選手が紹介されていく。

 大画面にこうして並べてみると素顔晒してるのがマクワしかいないっていうね。それでもサングラスしてる写真だし。その横には白いお面を付けた少年、モンスターボール、ガオガエンが並んでいる。

 いや、右の二人よ。一人は俺だけれども。あのモンスターボールの被り物した奴、何なの?

 せめて下も揃えてくれよ。何で選手用の白いユニフォームのままなんだよ。違和感しかねぇんだけど。気持ちわる………。

 

『見た目が異様な者たちによるセミファイナルトーナメントとなってしまいましたが、実力はご存知の通り折り紙付き!』

 

 ほら、第三者からの目線からでも見た目が異様って感想になってるじゃん。

 大丈夫か? 今年の大会。

 

『それではルールを確認しておきましょう。今日から続くセミファイナルトーナメント、ファイナルトーナメントともにフルバトル。技の使用は四つまで。ダイマックス技やZワザはその数に含まれないものとします。そして交代は自由。その中でどのようなバトルが繰り広げられるのか!! 皆さん、しっかりと目を見開いて刮目していて下さい!!』

 

 ルールはこれまで通り。

 違いは全バトル通してフルバトルってところか。

 あ、あとお互いに交代も自由なところも違う。

 とはいえ、大会ともなればそんなものだろう。

 

『さて、準備が整ったようですので、早速登場してもらいましょう!! 午前の部はこの二人!! 仮面のハチVSマクワァァァァァァァァァッ!!!』

 

 色々と心配になってはくるが、俺が気にしたところでどうにかなるわけでもないし、そもそもその異様な光景を作り上げている一人でもあるので、考えないようにしてフィールドに出ていく。

 対面からサングラスを付けたマクワも出てきており、多少顔が強張っているのが伺える。

 それでも観客はワーワーキャーキャー言っているのだから、マクワの人気も高いのだろう。

 

「いよいよこの日が来ましたね」

「そうだな」

 

 センターサークルに辿り着くと、マクワの方から話かけてきた。

 

「初戦からハチさんが相手だなんて、神も意地が悪いですよね」

「俺を倒せたら母親との喧嘩も話が進むんじゃないか?」

「ええ、ですから今回ばかりは勝たせてもらいますよ!」

 

 それだけ言ってマクワはさっさとトレーナーポジションへと行ってしまった。

 その背中には緊張してますよ感が漂っていて、気高く振る舞っているのが伝わってくる。

 まあ、俺もダンデとの約束を果たすべく勝ちに行くとするか。果たす必要性があるのかどうかは甚だ疑問ではあるが。

 

『さあ、バトル! 始め!!』

 

 俺もトレーナーポジションに着くと早速バトルの火蓋が開けられた。

 

「ツボツボ、行きますよ!」

「ドラミドロ」

 

 マクワの最初のポケモンはツボツボか。

 攻撃力は低いがとにかく防御力が高い。

 技や持ち物の組み合わせ次第では、無類の強さを発揮することもある。

 下手に時間をかけるのは危険だろう。

 運良くどくタイプを持つドラミドロを選出していたため、どくどくを食らうこともない。

 

「まずはどくびしだ」

「ステルスロックです!」

 

 とはいえ、後のためにも仕掛けは施しておく。

 それはマクワも同じ思考だったようで、こちらが毒菱を散らばらせると、同じように岩の破片をばら撒いてきた。

 いわタイプが好きとか言ってたくらいだから、パーティーもいわタイプで固めてきているだろう。そうなるとステルスロックをどこかのタイミングで消したとしても再度撒かれる可能性がある。それなれば、ほのおタイプを持つガオガエンがウルガモスが出した瞬間に大ダメージを受けてしまう。

 多分、マクワもそこまでは考えていることだろう。

 さて、どうしたものか。

 

「ねっとう」

 

 まずはタイプ相性はこちらが有利なため、一つ仕掛けてみることにする。

 

「パワートリック!」

 

 ドラミドロが熱湯を吐きつけると躱すことなく、特殊な力で攻撃力と防御力を入れ替えてきた。

 なるほど、ドラミドロを毒状態に出来ない以上、攻撃に打って出てくるつもりか。

 

「もう一度ねっとう」

「ジャイロボールで突っ込んで下さい!」

 

 再度熱湯を吐きつけると、ツボツボは身体を甲羅の中に入れて高速で回転し始め、熱湯を弾きながら迫ってきた。

 ドラミドロも押し返そうと噴射の勢いを強めるも、思った以上にツボツボのパワーが上回っており、そのままドラミドロが弾き飛ばされてしまった。

 

「どうやらこれは効くようですね。ツボツボ、もう一度ジャイロボールです!」

 

 パワートリックの影響がここまで出るとは………。

 流石の防御力だな。攻撃力と入れ替わるとここまで厄介なものになるとは。

 ただし、その分今のツボツボは防御力が低くなっている。狙うならここだろう。

 

「とける」

 

 再度、高速で回転して迫ってきたツボツボを身体を液体状にして躱していく。

 

「ねっとう」

 

 下手にこちらから今近づくのは危険だ。

 ツボツボの四つ目の技がまだ出されていない以上、牽制目的で仕掛けて四つ目の技を解禁させるのがベストだろう。

 

「ツボツボ、後ろです! きしかいせい!」

 

 地面にぶつかるとバネのように飛び上がりターンしてこちらに向かってくるツボツボ。

 熱湯にはお構いなしかよ。

 こちらとしてはダメージが入ってないわけじゃないだろうから嬉しい限りではあるが。

 でも、これで四つ目が解禁された。

 ステルスロック、パワートリック、ジャイロボール、きしかいせい。

 パワートリックを使った以上、長居出来るわけじゃないと見てのきしかいせいってところか。

 相討ち覚悟っていうのが見え見えである。

 そして、こちらもそれに乗っかるしか早急に倒すことは出来そうにないのも事実。

 面倒なポケモンだわ、ツボツボって。

 

「クイックターン」

 

 ドラミドロが覚えているみずタイプの技の中で、直接攻撃する技となるとクイックターンしかなかったのが悲しいところだ。

 大会が終わったら、アクアテールとかでも覚えさせてみるのもいいかもしれないな。

 

「なっ!?」

 

 マクワの反応からしてドラミドロに弾かれるとは思いもしなかったのだろう。

 そうは言ってもドラミドロもツボツボの勢いに弾き返されてお互いに地面に叩き落とす形のなっている。戻ってくる余裕もなかったくらい、ツボツボの一撃は効いているようだ。

 

「ドラミドロ、ツボツボ、ともに戦闘不能!」

 

 審判が二体の様子を確認して判定を下した。

 うん、なんか強いって感じでもないのに、結果は相討ち。どうにもスカッとしなくて気持ち悪い感触である。

 

『初戦からまさかの相討ちぃぃぃッ!! ツボツボの耐久力を活かしてじわじわと攻撃していくのかと思いきや、パワートリックを使って勝負に出たマクワ選手! その采配がどうだったかは、バトルの後半にならないとその影響が出てこないでしょうから、今は何とも判断しにくいところではありますが、少なくとも耐久力を超えた攻撃を受け続けることで一方的にやられる展開はさけ、見事相討ちという結果をもたらしました!! さあさあ、ここからどうバトルが展開されていくのか楽しみです!』

「お疲れさまです、ツボツボ。ゆっくり休んで下さい」

「お疲れさん。戻って休め」

 

 切り替えよう。

 まだ始まったばかりである。

 俺はマクワ程、この大会に命運をかけているわけでもないんだから、気楽にやればいい。

 

「次はあなたです! イシヘンジン!」

「キングドラ、よろしく」

 

 お互いにポケモンたちを戻し、すぐに次のボールに手にかけ投げ込むと、同時にポケモンたちが出てきた。

 

「くっ……どくびしが痛いですね………」

 

 こっちはステルスロックのダメージを受けてるんだから、おあいこ様だ。

 キングドラは無数の岩の破片を、イシヘンジンは毒菱を踏み毒状態になっていく。

 

「まずはあまごいだ」

「イシヘンジン、いわなだれです!」

 

 イシヘンジンはブロック岩の集合体というか、そんな感じのいわタイプのポケモンだ。

 身体が岩だからか動きは遅く、キングドラが雨雲を呼び、雨が降り出すと同時に頭上から岩が次々と降り注いでくる。

 うん、間に合ったな。

 

「躱せ」

 

 キングドラに岩が当たる瞬間、キングドラは一気に加速して一瞬にしてイシヘンジンの背後へと回り込んでいく。

 

「速い!?」

「ハイドロポンプ」

 

 間近で水砲撃を撃ち付け、センターサークルまで押し飛ばした。

 

「イシヘンジン!?」

 

 バランスを崩したイシヘンジンはドデンッ! と地面に倒れ、よろよろと起き上がろうとしている。

 

「反撃させるな。徹底的にハイドロポンプを浴びせ続けろ」

 

 キングドラに徹底的に水砲撃を撃ち込むように命令すると、急加速して次々と色々な角度から水砲撃を浴びせていった。

 うん、指示しておいて何だけど………鬼畜だな。

 

「イシヘンジン、戦闘不能!」

 

 あっという間にイシヘンジンを倒してしまった。

 まあ、遠隔攻撃には弱いみたいだしな。

 

『速い速い! キングドラ、特性すいすいを活かした速攻でイシヘンジンに反撃させる暇も与えず、戦闘不能にしてしまいましたっ!!』

「戻って下さい、イシヘンジン。まさかこんなあっさりやられるとは…………。流石ハチさんと言うべきか。僕も負けられませんね」

「キングドラ、ご苦労さん。交代な」

 

 取り敢えず、一仕事してくれたのでキングドラには交代してもらおう。

 もしかするとまた出番があるかもしれないしな。休める内に休んでいてもらわないと。

 

「ヤドラン」

「いきますよ、ガメノデス!」

 

 マクワの三体目はガメノデスか。

 いわ・みずタイプ。みずタイプを持つキングドラに対抗してってことだったのかもしれないが、悪いなマクワ。その思惑には乗れそうにないわ。

 着地と同時にそれぞれ無数の岩の破片と毒菱を踏み、ダメージと毒をもらっていく。

 

「ヤドラン、じならし」

「ガメノデス、シェルブレード!」

 

 先に動けたのはヤドランの方で、恐らくクイックドロウが発動したのだろう。

 ヤドランが地面を踏み鳴らし、駆け出そうとしていたガメノデスの足元を覚束せてバランスを失わせた。

 

「くっ……!」

「ヤドラン、シェルブレード」

 

 苦い表情をしているマクワは放っておいて、こちらから仕掛けていく。

 

「シェルブレードで迎え撃って下さい!」

 

 左腕のシェルから伸びた水の剣はガメノデスが作り出した水の剣により受け止められてしまった。

 

「バーチカル・スクエア」

 

 すかさず右手のかいがらのすずから伸ばした水の刃で右上から左下へと一振り。

 返すように左下から右上に斬りつけると、一回転して左上から右下へと斬り下ろす。

 そして最後に振りかぶって右上から左下に斬り下ろすと、これは流石に受け止められてしまった。

 

「ホリゾンタル・スクエア」

 

 ならば、と今度は左腕のシェルから伸ばした水の刃で左から右へと水平に斬りつけた。

 戻すように右から左へと水平に入れると、一回転してから再度同じルートで斬りつけて、最後に振りかぶって左上から右下へと斬り下ろした。

 

「なっ………なんという剣技!?」

 

 マクワからしたら今までやられたことのない攻撃だったのだろう。

 受け止めようとしても弾かれ、ようやく受け止められたかと思えば、もう片方の水剣から斬りつけられ、為す術もなくよろよろと後退する羽目に。

 

「ガメノデス、ストーンエッジ!」

 

 それでもまだ諦めてはいないようで、距離が取れたのをいいことに、地面を叩いて次々と岩を突き上げてきた。

 そう来るのなら、こちらにも相応の技があるというものよ。

 

「ヴォーパル・ストライク」

 

 水剣を突き出して一気に駆け抜けていき、突き出てくる岩を真っ二つにしながらガメノデスのと距離を縮めていく。

 

「シェルアームズ」

 

 左腕のシェルでアッパーカットを入れると当たりが良かったのか、ガメノデスが大きく弧を描きながら吹き飛んだ。

 やけにスローモーションに見えたのは目の錯覚だろう。

 

「シェルブレード」

「ガメノデス、こちらもシェルブレードです!」

 

 ガメノデスは進化前のカメテテが複数体集合することで進化した姿らしい。だからなのか両肩にはカメテテっぽいのがそれぞれ付いており、要はメタグロスのようなポケモンということである。メタグロスも進化前のダンバルやメタングが複数体集合して進化した姿だと言われているからな。

 んで、その両肩のカメテテのようなもので受け身を取り、そのままバク転をして着地していくガメノデス。

 そこへ掬い上げるようにヤドランが斬り込んでいくと、ギリギリのところで水の刃によって軌道を逸らされた。

 

「シェルアームズ」

 

 すかさず左腕のシェルから毒の砲弾を放つ。

 

「からをやぶる!」

 

 すると同じような手には引っかからないぞ、という意思表示なのか、ガメノデスの身体の中心部にある岩が弾け、毒の砲弾を弾き飛ばした。

 

「ガメノデス、シャドークロー!」

 

 ガメノデスが爪を地面に突き刺すと、ヤドランの影から爪の形をした影が伸びてきて突き上げられる。

 地味に効果抜群なのは痛いところである。

 

「そのままシェルブレード!」

 

 今度こっちが仕掛ける番だと言わんばかりの勢いでヤドランの着地地点に走り込んでくるガメノデス。

 

「ヤドラン、こっちもシェルブレードだ」

 

 突き上げられたことで上から攻撃出来るのを利用して、上から二本の水の剣を叩きつけ、ガメノデスの水の剣を粉砕していく。

 

「シャドークロー!」

 

 剣が使えなくなったと見るやすぐに捨て去り、再度爪を地面に突き刺してきた。

 

「シェルアームズ」

 

 着地地点を狙われているのは明白なため、着地する前に左腕のシェルから毒の砲弾を撃たせると、何故かさっきとは色が違ったように見えた。

 今のは………きあいだまか?

 

「くっ、ガメノデス! シャドークロー!」

 

 どうやら特性クイックドロウも発動していたようで、半端に伸びた影の爪だけが残り、ガメノデスが吹き飛ばされていく。

 それでも強引に爪を地面に突き刺して影の爪を伸ばしてきたのだから執念と言わざるを得ないだろう。

 そのせいでヤドランも突き飛ばされて、お互いに地面に横たえることになってしまった。

 

「ヤドラン、ガメノデス、ともに戦闘不能!」

 

 審判が様子を伺いに行けば判定を下され、相討ちであることが宣言された。

 マジか………。

 やっぱりからをやぶるを使われたのが痛かったのだろうな。

 

『またしても相討ちぃぃぃッ!! マクワ選手の勝利への強い執念が感じられます!!』

「ヤドラン、お疲れさん」

「戻って休んで下さい、ガメノデス」

 

 三体中、二体を相討ちにしてくるとはちょっと想定してなかったわ。

 鎧島でバトル………というか生身でバトルしているように見せかけたあの時よりも、随分と面構えが良くなっている、気がする。

 あの時は母親のメロンさんにただ反抗していただけのように感じられたのが、今ではしっかりと未来を見据えて自分に必要な立場をもぎ取ろうと必死になっている感じだ。

 なるほど。

 だからなんかスカッとしないバトルなのか。

 必死過ぎるあまりに、バトルを楽しめていない。ロケット団の残党狩りをしていた頃の俺みたいで、見ていて面白くないんだな。

 ガメノデスじゃないが、そこからもう一歩、殻を破らなければマクワの夢や希望は手に入れられないだろう。

 

「それなら徹底的に打ち砕くまでだな。ウルガモス」

「いきますよ、アマルルガ!」

 

 おっと、アマルルガを連れていたのか。

 化石から復元したのかどうかは知らないが、いわ・こおりタイプを持つポケモンであるため、少しは母親に歩み寄ろうとしたのだろう。

 何だかんだ言ってマクワは母親を大事にしているみたいだからな。それでもやはりいわタイプの方が良かったってことなのだろう。

 

「それにしてもステルスロックは厄介だな。ウルガモス、きりばらい」

「アマルルガ、げんしのちから!」

 

 ウルガモスが大きく羽ばたくと、フィールドに散らばっていた無数の岩の破片と毒菱が吹き飛ばされていく。毒菱も飛ばされてしまうのは勿体無い気がするが、それ以上にステルスロックが厄介なため仕方あるまい。

 むし・ほのおタイプのウルガモスにステルスロックは異様に刺さるからな。なのに、俺の今のパーティーでは取り除けるのがウルガモスしかいないというね。

 アマルルガが毒状態になった後であるからいいってことにしておこう。

 

「くっ、飛んでいかないだって……?!」

 

 ウルガモスが起こした風に押されてアマルルガが作り出した岩が中々思うようで飛んでいかないことにヤキモキしているマクワ。

 きりばらいって意外と強風だよな。そうじゃないといろんなもん飛ばせないか………。

 

「躱してにほんばれ」

 

 ウルガモスが風を起こすのをやめたことでようやく岩を飛ばせるようになったためか、ウルガモスに向けて次々と岩が飛んできた。

 それをひょいひょいと躱しながら、ウルガモスは日差しを強くしていく。

 

「ソーラービーム」

「ッ!? アマルルガ、ミラーコートです!」

 

 そして、太陽光を凝縮して撃ち出すと、慌てたようにギリギリで撃ち返してきた。

 それでもやはり効果抜群なためか返す力は弱い。あとウルガモスのパワーが高いというのもあるのだろう。

 

「ウルガモス、ほのおのまい」

 

 続けてアマルルガに向けて炎を踊らせる。

 

「ハイパーボイスで炎を掻き消して下さい!」

 

 すると爆音を発声し、その衝撃波で炎を消し去ってしまった。

 ただ、一瞬炎が凍りついたように見えたのは気のせいだろうか。

 あれか? 特性か?

 確か、フリーズスキンとかそんなのじゃなかったっけ?

 ノーマルタイプの技をタイプに変えて威力を上げる奴のこおりタイプ版の。

 

「エネルギーチャージ!」

「ウルガモス、ソーラービーム」

 

 アマルルガが何かしらのエネルギーを溜め始めたようだが、こっちはお構いなしに太陽光を凝縮してアマルルガを穿つ。

 

「もう一度だ」

「よく耐えました! アマルルガ、メテオビーム発射!」

 

 再度ソーラービームを放つと、アマルルガのチャージが終わったのか、一気に解放してきた。

 それはソーラービームすらも呑み込み、ウルガモスの身体を易々と穿ち、落下させていく。

 だが、撃ち終わるとアマルルガも毒が効いたのか、ばたりと倒れ動かなくなった。

 

「ウルガモス、アマルルガ、ともに戦闘不能!」

 

 審判が様子を確認すると二体とも戦闘不能と判定されてしまった。

 メテオビーム、恐ろしい技だな。

 あのウルガモスを一撃で撃ち落とすとは…………。

 道場にいる時に誰かかそんな技があると聞いたような気もするが、これは調べるのを後回しにしていたツケだな。

 大会が終わったら、今後の動きを考えながらも、今一度調べ終えられてない技とかを確認しておくとするか。

 

『再三に渡っての両者戦闘不能ぉぉぉッ!! セミファイナルでこのような展開は始まって以来の出来事ではないでしょうかっ!!』

「ウルガモス、お疲れさん」

「アマルルガ、戻って休んで下さい」

 

 ウルガモスたちをボールに戻すと、すぐに俺たちは次のボールへと手をかけた。

 

「サーナイト、よろしく」

「バンギラス、お願いします!」

「ギラァァァッッ!!」

 

 五体目はバンギラスか。

 雄叫びを上げたら砂嵐が発生し出したな。

 ちゃんと特性がすなおこしだったみたいだ。

 今までのポケモンたちよりは歯応えありそうではある。

 ただ、サーナイトの相手だからなー…………。今の所、サーナイトだけが一度も戦闘不能になってないから、あくタイプを持つバンギラスでもサーナイトを倒すのはキツいかもしれない。というかサーナイトにはフェアリータイプもあるから、反撃出来ちゃうんだよなー。

 

「サーナイト、にほんばれ」

「バンギラス、まずはりゅうのまいです!」

 

 サーナイトが日差しを強くして砂嵐を収めると同時にバンギラスが竜の気を纏い始めた。

 

「シャドークロー!」

「テレポートで躱せ」

 

 活性化させた竜気により、殊の外素早くなっているようだ。それでもテレポートには追いつけないが。

 

「きあいだま」

「後ろです! アイアンテール!」

 

 背後を取ってエネルギー弾を撃ち込むと、ギリギリで振り返ったバンギラスの鋼にした尻尾に弾かれてしまった。

 本当に反応が早いな。

 

「バークアウト!」

 

 逃すまいとバンギラスが低い唸り声で叫んだ。

 流石のサーナイトでも背筋がゾッとしたのか、一瞬固まってしまったのだが、一拍置いて距離を取っていく。

 うん、バトル中でしかも攻撃を受けての反応なのだが、普通に可愛かった。

 

「バンギラス、りゅうのまい!」

 

 サーナイトが距離を取ったためか、再度竜の気を纏い始めた。重ね掛けによる攻撃力と素早さのアップを狙っているのだろう。

 それでどこまでテレポートに追いついてくるかだな。

 

「サーナイト、きあいだま」

 

 仕切り直しに牽制としてエネルギー弾を撃ち込んだ。

 

「アイアンテールです!」

「テレポートで近づけ」

 

 当然の如く鋼にした尻尾で弾かれてしまうが、その直後にバンギラスの懐へとテレポートした。

 

「マジカルシャイン」

「ギラァッ!?」

 

 そして、身体から光を迸らせると無防備なままバンギラスは光を浴びてしまい、よろよろとした足取りで後退りしていく。

 

「シャドークロー!」

 

 目がチカチカしていることだろうが、それでもマクワの指示に従い、見えないながらも地面に爪を突き刺し、光を迸らせているサーナイトの影から爪の形をした影を伸ばして突き上げてきた。

 

「連続できあいだま」

 

 宙返りをして着地すると連続でエネルギー弾を撃たせる。

 

「アイアンテールで弾いて下さい!」

 

 するともう視界が戻ったのか、あっさりと鋼にした尻尾で弾き返してきた。

 まあ、それも織り込み済みなので焦ることはない。

 

「テレポートで近づいて、顔面にきあいだまだ」

 

 エネルギー弾の処理に意識が向いているところで、一瞬にしてバンギラスの懐へと潜り込み、顔面に直接エネルギー弾を撃ち込んだ。

 いい感じに吹っ飛ぶのかと思えば、そのまま力技でバンギラスを地面に沈めるというね…………。

 可愛い顔して破壊力も抜群だな。

 地面にめり込んでるぞ。

 

「バンギラス、戦闘不能!」

 

 審判が確認し、判定を下した。

 いやー、今日のマクワとのバトルで初めてスカッとしたわ。

 

『バンギラス、戦闘不能ぉぉぉッ!! やはり強かった、サーナイト!」 終始バンギラスを圧倒し、攻撃を受けても平然としており、最後は力技でバンギラス捩じ伏せました!!』

 

 あ、いつの間にか日差しが弱まってたわ。

 

「サナー!」

「はい、ご苦労さん。あとはガオガエンに任せなさい」

「サナ!」

 

 テレポートで俺に飛びついてきたかと思えば、敬礼をしてボールに戻っていくサーナイト。

 うん、可愛い。

 

「ありがとうございます、バンギラス。ゆっくり休んで下さい」

 

 マクワもバンギラスをボールに戻している。

 多分、マクワのナンバー2はあのバンギラスなんだろうな。時点でガメノデス辺りか?

 何にせよ、もう少し機動力のあるポケモンがいると、また幅のあるパーティーになりそうではあるな。

 

「いよいよ最後のポケモンですか………。ですが、まだ崩れて砂にはなっていない! いきますよ、セキタンザン!」

「ガオガエン」

「ガゥ」

 

 六体目はやはりセキタンザンか。

 マクワのポケモンの中で唯一バトル擬きをしたポケモンだ。

 まあ、それなりにでかいポケモンではあるが、その分機動力に難ありではある。

 ただ、特性次第では素早くなるため、そこは要注意であるな。

 マクワのセキタンザンはどうだったか覚えてないが………というか特性が発動したところを見たっけか。

 まあ、当時はその程度の相手だったってことだろう。

 

「ニトロチャージです!」

 

 おっと、あっちから近づいて来てくれるのか。

 

「ガオガエン、引き付けてけたぐり」

 

 いつもであればガオガエンの方がニトロチャージで接近して行っているのだが、相手にそれをされるのは初めてかもしれないな。ちょっと変な感触である。

 セキタンザンが炎を纏って撹乱するように迫ってくるが、タイミングを見計らって、セキタンザンの足元を払い転ばせた。

 

「じしん」

 

 そして、よろよろと起き上がったところを、地面を激しく揺らして再度転ばせた。

 身体が重たいセキタンザンには結構響いていることだろう。

 

「セキタンザン、いわなだれです!」

 

 ただ立ち上がるだけでは攻撃され続けると判断したのか、起き上がる前にガオガエンの頭上に岩々を発生させて落下させてきた。

 

「DDラリアットで弾け」

 

 それをガオガエンは両腕を広げて高速回転しながら弾いていく。

 その間に起き上がったセキタンザンはマクワの方へと戻っていき、ボールへと吸い込まれていった。

 そして、マクワの右腕のリストバンドからピンク色のオーラがボールに流れていき、巨大化していく。

 ………もう使ってくるのか。

 

「山のような岩となれ! セキタンザン、キョダイマックス!」

 

 フィールドに投げ込まれた巨大なボールから山のよう姿のセキタンザンが現れた。

 最早岩山だな。材質は石炭と言ったところか。

 

「でかい身体そのものが強さ! 全身で痛みを味わえ! キョダイフンセキ!」

 

 その巨大化した背中から巨大な溶岩が撃ち上げられた。

 そして、空で弾けるとりゅうせいぐんのように降り注いでくる。だが、りゅうせいぐんと違うのは一つ一つの大きく、数も数倍はあることだ。

 

「ガオガエン、インファイトで割れ」

 

 ただ防壁を張ったところで壊されるのオチだろう。

 それなら少しでも弾き飛ばして足場を確保する方が懸命と言えよう。

 それでもやはり無理なものは無理なようで、弾き飛ばせてはいても、全てではないので、徐々にガオガエンの周りが溶岩で埋め尽くされていく。一つ一つが大きいため、身動き出来る範囲も狭まり、遂には溶岩に溶岩が重なり、蓋までされてしまった。

 こうなったら一気に吸収してしまうしか、他に手はなさそうだな。

 

「ガオガエン!」

 

 ガオガエンに呼びかければ、俺の意図も伝わったことだろう。

 元よりガオガエン自身も抜け出す手は一つしかなさそうだと考えているだろうしな。

 

「もう一度、キョダイフンセキ!」

 

 アクZのポーズを取っていくと、Zリングから徐々にガオガエンにエネルギーが送られていく。

 そして、集まったエネルギーはガオガエンの頭上で黒い塊となり、強い力で周りにあるもの全て吸い込もうと活性化していった。

 それはもう撃ち上げられた溶岩もフィールドに散らばった溶岩も何もかもをーーー。

 

「ブラックホール・イクリプス」

 

 溶岩を吸収しまくった黒い塊は巨大化したセキタンザンへと放り投げられた。

 ズドーン! と低く鈍い音とともにセキタンザンが倒れ込んでいく。

 

「なっ!? まさか強制解除?!」

 

 それと同時にダイマックスエネルギーがセキタンザンから放出されていき、セキタンザンの姿が徐々に元の大きさへと戻っていった。

 マクワはキョダイマックスが強制解除されたことに驚いているようだ。

 無くはない話だろうに。

 今まで誰も、それこそダンデ辺りですら、そういうことはなかったのかね………?

 

「ガオガエン、起き上がらせるな。じしん」

 

 よろよろとしているところへ再度地面を揺らしてバランスを奪いにいく。

 

「セキタンザン、躱して10まんばりき!」

 

 すると身を投げ出すようにセキタンザンが突っ込んできた。

 

「インファイト!」

 

 これ幸いと迎え撃ち、拳で殴りつけてセキタンザンの勢いを殺すと、最後は蹴りでマクワの方へと蹴飛ばしてしまった。

 うん、特性を警戒してブレイズキックを使わないようしても、結局は最後蹴りになるんだな…………。

 

「セキタンザン、戦闘不能! よって勝者、ハチ選手!」

『決まったァァァッ!! セキタンザンのキョダイマックスを強制解除して、決定的な流れを引き寄せたハチ選手の勝利が決まりましたっ!!』

「お疲れ様でした、セキタンザン」

「ガオガエン、お疲れさん」

 

 うん、でもブレイズキックが使えない相手に対する決め技を考えておいてもいいかもしれないな。

 フルバトルをやると色々と課題が見えてくるから面白い。

 だが、無駄に疲れるのもまた事実なため、あまり頻繁にはやりたくない思いもある。その辺の匙加減は難しいところだ。

 

「負けてしまいましたか………。気持ちでは負けるまいと奮い立たせていましたが、心のどこかでこうなることを拭いきれなかったのでしょうね。悔いはありませんよ」

 

 センターサークルへ向かうと始める前とは打って変わってスッキリした顔つきになっていた。

 

「俺としてはもう少し機動力のあるポケモンを用意してもいいかもしれないと思ったな。特にイシヘンジンはもう少し何か工夫をした方がいいと思うぞ」

「そうですね。イシヘンジンはキングドラに何も出来ませんでしたからね」

「それにガメノデスのからをやぶる、もっと早くに、何なら初手で使ってもいいくらいだな。それでヤドランの剣を弾き飛ばせたはずだ。そうすればヤドランの剣技にも対応出来た可能性が高い」

 

 使えるならもっと先に使っておけよ、という話だ。

 そうすればバーチカルもホリゾンタルも対処出来ていた可能性があるだけに勿体無い。

 

「確かに。あの時は受け止めなければってことで頭が一杯でした。それだけあなたのヤドランには鬼気迫るものがありましたからね」

「あと、思い切ってバンギラスを最初に持ってくるのも有りだと思う。折角いわタイプで統一されているんだから、砂嵐を効果的に使え。母親に勝ちたいなら天候操作は必須だぞ。あっちはこおりタイプなんだから、勝ちに拘れば霰を降らせてるのは確実だ。その上で機動力を上げろ。ポケモンごとに役割を明確にしておくことだな」

 

 いわタイプなのに全然砂嵐が吹き荒れることがなかったからな。

 いわタイプでもじめんタイプでもはがねタイプの専門でもないキバナやソニアの方がちゃんと使いこなせている印象だ。

 それだけに勿体無いと言わざるを得ない。

 

「ジムリーダーになるためにも参考にさせていただきます。ありがとうございました!」

「おう、腐らず頑張れよ」

 

 ポケモンを出す順番や技を使う順番、他にも持ち物とか書き出せばいくらでも見直すところがある。それを改善していけば、もっとスカッとしたバトルになるはずだ。

 何となく筋はいいように感じるからな。そこはジムリーダーの息子だからか、目は肥えているのだと思われる。

 後は本人たちの努力次第だろう。

 

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