ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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103話

『さあ、三日目の今日は準決勝! そして、夜には決勝戦となります! まずは準決勝に進出したのはこの四人! 仮面のハチ! ドラゴンストーム、キバナ! 熱く燃える男、カブ! ジ・アイス、メロン!!』

 

 三日目にもなるとシュートスタジアムの周りには朝から人集りが出来ていた。

 開場時間までまだまだだという時間から列を作っていたりしたから、どれだけ暇なんだよと思いながらここまで来たわけだが…………。

 まあ、準決勝ともなればそうなるのもおかしくはないのかも、と思い始めてもいる。

 それにキバナとかカブさんのファンは多いみたいだからな。決してメロンさんのファンが少ないというわけではないのだが、熱狂的というか、命掛けてそうなのがあの二人のファンってだけだ。

 

『この中から決勝戦に進出するのは誰になるのか!? 早速、魅せてもらいましょう!! 午前はこの二人!! 仮面のハチVSドラゴンストーム、キバナ!!』

 

 ………あ、これが出ていく合図なのね。

 いつもとちょっと紹介のされ方が違ったから気を抜いていたわ。

 スタッフにどうぞと示されたので、ワーキャー言われる中、フィールドのセンターサークルまで歩いていく。

 

「よォ、ネズとのフルバトル、ちゃんと見てたぜ。ネズがダイマックス使わないからって、律儀に制限かけてんじゃねぇよ。フェアかどうかなんてネズは求めちゃいないんだからな」

 

 身長高ぇなーと見ているとキバナが話しかけてきた。

 どうやらネズとのバトルを見ていたらしい。

 悪いな、俺は誰のバトルも見てないわ。

 

「心配するな。お前に対しては制限かけるつもりはねぇよ。ネズとのバトルは、あいつの独特な言い回しを笑いを堪えながら無視するのに精一杯だったってだけだ。まあ、次の相手がお前なのもなんか嫌だけど」

 

 本音を言えば、カブさんやヤローさん辺りがよかったなーと思わなくもない。タイプ相性からすれば、ドラゴンタイプが専門のキバナは比較的やり易い相手ではあるのだが、トレーナーがコレだからな。ネズにも言えることだが、なんか面倒なのよ。色々と。

 

「そうかよ。トーナメント表が発表された時、オレは嬉しかったぜ? お前の隣に名前があったから。上手くいけば、ジム戦の時のリベンジが出来る。しかもシングルバトルで、だ」

 

 ああ、でも。

 サイトウとかの方がジム戦があんなだったために俺も気を遣っちまいそうだし、そう考えるとキバナなら容赦なくやっても問題ないし気が楽か。

 

「つーわけでよ。ここは一つ、オレさまのためにも負けてくれや。ダンデとバトルするのはこのオレさまだ!」

 

 よし、コテンパンしよう。

 今のセリフが死亡フラグとネットに書かれるくらいにはコテンパンにしよう。

 うん、なんかやる気出てきたわ。

 先にトレーナーポジションへと向かってしまったキバナの背中を見ながら、口角が上がってしまったのは誰も見てませんように。というかガオガエンの覆面してるから見えないか。

 

『まずはルールのおさらいから! 使用ポケモンは六体のフルバトル。技の使用は四つまでとなり、交代は自由。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になればバトルは終了となります。さあ、決勝に勝ち進むのはどちらか!?』

「バトル、始め!」

 

 そんじゃまあ、一丁やりますか。

 

「キングドラ」

「コータス!」

 

 今日のトップバッターはキングドラにした。

 ドラミドロ、ヤドラン、サーナイトときて、まだ先発で出していないのはキングドラとウルガモスとガオガエンだからな。

 ガオガエンは演出上、最後の方に出すことにしているから、そうなると残りは二体で、ここまでバラバラで出してきたのだから、残りのバトルも全て違うポケモンをトップバッターに持っていくかということになったのである。

 

「コォォォォ!」

 

 キバナのコータスが雄叫びを上げると、日差しが強くなった。

 特性ひでりが早速発動したのだろう。

 となると撃ってくるのはーーー。

 

「ひでりだぜ! まさに燃える太陽! いっけぇ、ソーラービーム!」

「キングドラ、あまごい」

 

 だよな。

 そうだろうと思い、先にあまごいで雨雲を呼び寄せたことで、充分に太陽光を取り入れられず発射までに時間がかかっている。

 

「躱せ」

 

 雨が降り出すのと同時にソーラービームが発射されたが、雨が降ればこっちのもんだ。

 特性すいすいを活かしてあっさり躱すと、コータスの背後へと回り込んでいく。

 

「ハイドロポンプ」

 

 そして水砲撃で撃ち抜いた。

 無抵抗なまま水砲撃を浴びたコータスは転がっていき、ひっくり返って背中を地面にあうあうしている。

 ああなっては動きようがないわな。

 とはいえ、ここで容赦するつもりはない。

 

「ハイドロポンプ」

「チッ、読まれてたか。戻れ、コータス!」

 

 追撃に出ようとしたら、キバナがあっさりとコータスを引っ込めた。

 判断がお早いことで。

 まあ、初っ端からあまごいを使われて天気を変えられてしまったら、算段が狂うし、下手にダメージを受けるよりは引っ込めるわな。俺だってそうしてるわ。

 

「ヌメルゴン、かみなり!」

 

 交代で出てきたのはヌメルゴン。

 出てくるのと同時に落雷を発生させてきた。

 雨にされた場合の対策、というわけでもないだろうが、これがあるからキバナともやりなくはないんだよな。

 ジム戦の時に天候操作をジムトレーナーと併せて四連チャンだったんだから、晴れ、雨、砂嵐に強いポケモンは揃えてくるだろうってのは予想出来ていた。

 

「りゅうのはどう」

「こっちもりゅうのはどうだ!」

 

 躱しようがないし甘んじて落雷を受けると、竜を模した波導で反撃に出るも、ヌメルゴンに相殺されてしまう。

 うーん、これは一旦引いた方が良さそうだな。

 

「ヌメルゴン、もう一度かみなり!」

「戻れ、キングドラ」

 

 キングドラをボールに戻し、ドラミドロのボールに手をかける。

 ドラゴンタイプを持つとはいえ、みずタイプであるキングドラにかみなりは痛い。

 それよりは同じドラゴンタイプでも毛色の違うドラミドロの方がヌメルゴンには力を発揮できるだろう。

 

「ドラミドロ、とける」

 

 早速、身体を液体状にしてヌメルゴンへと近づいていく。

 

「ポイズンテール」

 

 そして足下から飛び出して、毒を纏った尻尾でヌメルゴンの背中を叩きつけた。

 

「どくびし」

 

 ついでにヌメルゴンが起き上がる前に毒菱を撒いておく。

 これで次から出てくるポケモン全員に毒を浴びせることが出来るから、ジワジワとダメージを与えられる。

 

「ヌメルゴン、りゅうのはどう!」

「ドラミドロ、こっちもりゅうのはどうだ」

 

 雨が止むと、今度はヌメルゴンの方からりゅうのはどうを使ってきたため、さっき意趣返しのようにこちらもりゅうのはどうで相殺した。

 うん、それにしてもドラミドロもかなり成長したよな。クズモーだった頃はキングドラにベッタリだったのに、今ではキングドラのカバーが出来るまでに成長したんだから。なんだかんだでキングドラの教えがよかったのだろうな。

 

「とける」

 

 再度液体状になって、ヌメルゴンへと近づいていく。

 

「だくりゅうで押し流せ!」

 

 するとヌメルゴンが濁った水を作り出し、波を起こしてフィールド一帯へと侵食させてきた。

 

「ッ、ドラミドロ、今すぐ戻れ」

 

 嫌な予感がして咄嗟にドラミドロには元の姿に戻るように指示を出す。

 

「れいとうビーム!」

 

 ドラミドロは疑問に思う素振りを見せながらも素早く元の姿に戻った瞬間、フィールド一帯が氷付けになった。

 間一髪だったか………。

 まさかそういうやり方で対処してくるとはな。

 液体には液体をってか。それも範囲技でカバーすれば近づく前に押し流せると。そして、その水を一瞬に凍らせてしまえばドラミドロを完全に捉えられると考えたわけだ。

 流石はトップジムリーダー。判断の早さといい、バトルの組み立て方といい、見事という他ない。

 それにしても元が濁流だからか汚い氷だな。

 

「りゅうのはどう」

「ヌメルゴン、れいとうビーム」

 

 ヌメルゴンの右横から竜を模した波導を撃ち込むと、それすらも凍りつけにされてしまった。

 

「ポイズンテールでそれをヌメルゴンにぶつけろ」

 

 地面に落ち前に横倒しの氷の柱となったりゅうのはどうを毒を纏った尻尾で弾き、ヌメルゴンへと飛ばしていく。

 

「ヌメルゴン、りゅうはどうでぶっ壊せ!」

「とける」

 

 ヌメルゴンが氷の柱を対処している間にドラミドロを液体状にして一気に近づかさせていった。

 

「何度やっても同じだ! ヌメルゴン、押し流せ!」

 

 ヌメルゴンが濁った水を作り出して波を起こそうとしてくる。

 

「りゅうのはどう」

 

 だが、動き出しが早かったためか、波が起きる前にヌメルゴンの背後を取り、元の姿に戻ると、再度竜を模した波導でヌメルゴンの背中をゼロ距離で撃ち抜いた。

 

「ヌメルゴン、戦闘不能!」

 

 顔面から倒れていたヌメルゴンはそのまま動くことなく、審判の判定が下された。

 ヌメルゴンは耐久力が高いからもう少し時間がかかると思ったんだけどな。毒が回っていたとしてもちょっと早いような気がする。

 …………まさかな。

 

『ヌメルゴン、戦闘不能ォォォッ!! まず最初に白星を上げたのはハチ選手! お互いにポケモンを交代させ、ヌメルゴンがドラミドロのとけるを攻略したかのように見えましたが、やはりハチ選手の策が一枚上手でした!!』

「ヌメルゴン、お疲れさん。お前の敵は絶対取ってやるからな」

「ドラミドロ、一旦交代だ」

 

 未だにドラミドロの特性を特定出来ていないのだが、何となーくそうなんじゃないかってのが出てきてはいる。だがまあ、一先ずそれを確認するのはお預けだ。

 

「キングドラ」

「いくぜ、コータス!」

「コォッー……ッ!?」

 

 ドラミドロをボールに戻して再度キングドラを出すと同時にコータスも再登板されてきた。

 そして雄叫びを上げて日差しが強くなっていく。

 が、毒菱によりコータスは毒状態になってしまった。

 

「コータス、こうそくスピン!」

「あまごい」

 

 おお、ソーラービームかと思ったら、こうそくスピンを覚えていたのか。毒菱が巻き上げられてフィールド外へ飛ばされて消えていく。

 あーあ、折角の毒菱が。

 

「ハイドロポンプ」

「そのまま突っ込め! オーバーヒート!」

 

 するとコータスが甲羅の中に籠ってスピンしたまま、水砲撃を弾きながらキングドラの方へとやってきて、身体中から爆炎を弾けさせた。

 

「ドラッ!?」

 

 咄嗟に躱す動きを見せたものの、殊の外爆発域が広くてキングドラは巻き込まれてしまった。

 そして、コータスはスピンしたまま方向を変えて、キングドラに向かって落下してくる。

 

「じばく!」

 

 どうやら火傷状態になってしまったキングドラが態勢を立て直す間もなく、コータスが身体の内側からエネルギーを膨張させて爆発を起こした。

 

「キングドラ、コータス、ともに戦闘不能!」

 

 流石にこれは…………。

 何でこう、どいつもこいつもじばくやらだいばくはつを覚えてるんだよ。

 

『両者ともに戦闘不能ォォォ!! コータスの捨て身の攻撃にキングドラ、間に合わずに相討ちになってしまったァァァ!! しかし、これで五対四! 依然としてハチ選手が有利なのには変わりありません!!』

「よくやった、コータス。キングドラに調子に乗られたら、この後が難しかっただろうからな。止めてくれたことに感謝するぜ」

「お疲れさん、キングドラ。マジでコテンパンにするわ」

 

 キバナ、許すまじ。

 ついでにだいばくはつを使ったネズも許すまじ。

 

「ウルガモス、ちょうのまい」

「サダイジャ、いわなだれ!」

 

 同時にボールから出すとそれぞれ技を繰り出した。

 ウルガモスはちょうのまいを使ってヒラヒラと舞い、サダイジャがウルガモスの頭上から岩々を落下させてくる。

 だがまあ、ウルガモスがヒラヒラと舞うものだから、俺が躱せと言うまでもなく綺麗に躱されている。

 うーん、それにしてもサダイジャか。

 確かキバナのサダイジャの特性はすなはきだったよな。攻撃を受けると身体から大量の砂を吐き出して砂嵐を起こすやつ。毛穴ゆるゆるなんじゃなかろうか。

 そうなると毎度攻撃しながらダメージを蓄積させていくのでは、その度に砂を吐かれて常時砂嵐状態にまっしぐらだ。

 

「ちょうのまい」

「チッ、へびにらみ!」

 

 ならば、やることは一つ。

 一撃で倒せるまでに能力を上げ続けることだ。

 

「おい、どうした! 攻撃して来いよ!」

「ちょうのまい」

 

 サダイジャの睨みも何のそので相手にせず、ただただヒラヒラと舞い続けるウルガモス。

 俺もキバナに反応してやらないでいると、キバナが痺れを切らして動き出した。

 

「ッ、サダイジャ! ドラゴンダイブ!」

 

 存外キバナは忍耐力がないのかもしれない。

 これくらいの駆け引き、相手が何を理解して何を狙っているのか、そろそろ気づけそうなものなのに。

 短気なのが災いしたな。

 

「躱せ」

 

 勢いを付けて赤と青の竜を纏ったサダイジャが飛び上がってくるも、ちょうのまいを使い続けたおかげで優雅に躱していくウルガモス。多分、そういう動きもキバナからしたら煽りに見えるのかもしれない。知らんけど。

 

「にほんばれ」

 

 さて、そろそろやりますか。

 

「モォォォォスッ!!」

 

 ウルガモスが雲を流し、日差しを強くしていく。

 

「お望み通り攻撃してやるよ。ウルガモス、ソーラービーム」

「ッ!? サダイジャ、ステルスロック!」

 

 ちゅどん。

 マジでそんな感じの音でソーラービームがサダイジャに直撃した。エネルギーの充填から発射、そして発射から着弾までがあまりにも早すぎたのだろう。早すぎたが故に軽い音になってしまったのだと思いたい。

 ただ、音の反比例して威力はかなりあり、サダイジャを地面にめり込ませてクレーターを作っていた。

 ソーラービームでクレーターって……………。

 

「サダイジャ、戦闘不能!」

 

 ややあって審判が判定を下した。

 恐らく審判も呆気に取られていたのだろう。

 

『さ、サダイジャ、戦闘不能ォォォッ!! 何という威力!! ちょうのまいで能力を上げ続けたソーラービームはサダイジャを地面にめり込ませ、いや或いは貫通して地面にクレーターを作り上げていました!! 仮面のハチ、ついにギアを上げてきたかっ!?』

 

 サダイジャの身体から大量の砂が吐き出され、やがて砂嵐へと変化していく。

 とんだ置き土産だこと。

 

「よくやった、サダイジャ。お前のすなはき、使わせてもらうぜ」

 

 …………次はフライゴン辺りか?

 

「いくぜ、フライゴン!」

 

 やっぱりフライゴンか。

 てか、見えねぇ。

 砂漠の精霊とはよく言ったもので、こうして本気で砂嵐の中に身を隠されてしまうと見えなくなるもんなんだな。

 それを利用して出てきては攻撃してくるつもりか、はたまた見えないのをいいことに能力を上げてくるのか………。

 

「りゅうのまい!」

「ウルガモス、きりばらい」

 

 後者だったか。

 まあ、こちらもやりたいことはある。

 倒れ際にサダイジャにステルスロックを指示していたし、もしかしたら撒かれているかもしれないという疑念が残っているのだ。折角ウルガモスがこの場に出ているのだから、一応確認しておかないとな。何もないならそれでいいのだし。

 

「もう一回だ!」

「にほんばれ」

 

 さて、うざったい砂嵐も流してしまうとしようか。

 ウルガモスが羽ばたくことで砂嵐が掻き消されていき、日差しが強くなっていく。

 すると竜の気をかなり纏ったフライゴンが姿を現した。

 ………きりばらいの羽ばたきとにほんばれの羽ばたきの何が違うんだろうな。同じように羽ばたいてるのに効果が違うとか、何気ないことだけども不思議だわ。

 

「ソーラービーム」

 

 それにしてもちょうのまい、にほんばれ、きりばらいを使ってしまったがために、今回の攻撃技がソーラービームしかないというのは何とも戦いにくくなってしまったものだ。

 

「ダブルウイング!」

 

 くるくるとフライゴンがその場で回ると、丁度発射されたソーラービームが翼に辺り、打ち返されてしまった。

 多分、あれは本来の使い方じゃないとは思うが、そんな手で弾いてくるとは………面白い。

 

「フライゴン、いわなだれ!」

 

 少し高く飛び立ったフライゴンがウルガモスの頭上に岩々を作り出していく。

 伊達に竜の気を纏っていないな。岩の数も多いし、一つ一つがデカい。

 

「ソーラービームで破壊しろ」

 

 それならばソーラービームで岩々を一掃していくと、フライゴンがこちらに飛んでくるのが見えた。

 

「ダブルウイング!」

 

 岩に集中している間にってことなのだろう。

 

「ウルガモス、交代だ」

 

 俺はすぐにウルガモスをボールに戻した。

 

「ッ!? おいおい、ちょうのまいをアレだけ使っておいて、あっさり交代させるのかよ!」

 

 俺としてはウルガモスの仕事は終わっているからな。

 何と言われようと引き際を見ていたに過ぎないのだし、フライゴンの相手をするのならば、こっちの出番だ。

 

「サーナイト、テレポート」

 

 サーナイトをボールから出して早々、テレポートでフライゴンへと向かわせる。

 

「マジカルシャイン」

 

 背中に跨ると振り落とされないように抱きつきながら、身体から光を迸らせた。

 多分、今のフライゴンは背中が焼き尽くされるようなダメージを受けていることだろう。

 あんな光量を直で受けたら、すごい熱も感じられるだろうからな。

 

「フライゴン、むしのさざめき!」

 

 それでもフライゴンは墜落することなく耐え、翼を擦り始めた。

 

「テレポート」

 

 テレポートで距離を取らせると、途端に衝撃波がフィールド一帯へと広がっていく。

 危ない危ない。

 アレを直接受けていたら、サーナイトにもダメージが相当入っていただろうからな。何事も引き際は大事だ。

 

「りゅうのまい!」

「みらいよち」

 

 やがてフライゴンは何事もなかったかのように竜の気を纏い始めたので、こちらも未来に攻撃を仕掛けておくことにした。

 

「フライゴン、いわなだれ!」

 

 竜の気を纏い、活性化したエネルギーでサーナイトの頭上に岩々を作り出していく。

 

「テレポートで躱せ」

 

 まあ、こちらとしては落下してくる岩々をテレポートで躱すだけなのだが、要注意なのは不自然じゃないように誘導されることだ。

 ネズのズルズキンだったか?

 あいつのあの技術は上手かったからな。ウルガモスだったから躱せたものの、アレがヤドランとかだったら対処している間に死角から攻撃を受けていたことだろう。

 

「詰め寄れ、ダブルウイング!」

 

 ほら、来た。

 心の中ででも身構えているかいないかで、随分とゆっくりに見えるものだ。

 

「サーナイト、こごえるかぜ」

「フリャ!?」

 

 フライゴンが間近に迫ったタイミングで、サーナイトが片手間程度に冷たい風を起こし、フライゴンが押し返されていく。

 ついでにフライゴンの身体の熱も冷やされていき、サーナイトに迫ってくる力が弱まっていっている。

 

「フリャ?!」

 

 するとフライゴンの背後で空間が歪み、フライゴンの翼を撃ち抜いた。

 そうか、あそこにみらいよちを仕掛けていたのか。

 

「マジカルシャイン」

 

 さらに追い討ちをかけるようにサーナイトの身体から光を迸らせると、フライゴンは遂に墜落していった。

 

「むしのさざめき!」

 

 不時着したフライゴンは悪足掻きするように翼を擦らせるも、冷えて上手く音が鳴っていない。

 

「こごえるかぜ」

 

 もう一度冷たい風を起こしフライゴンの体温を奪っていくと、今度こそフライゴンの意識が飛んでいった。

 

「フライゴン、戦闘不能!」

『フライゴンも戦闘不能ォォォ!! ちょうのまいで能力をかなり上げていたウルガモスをあっさりと交代させ、サーナイトを出してきたハチ選手に軍配が上がったァァァッ!! これでキバナ選手のポケモンは残り二体! それに対してハチ選手のポケモンはまだ五体残っています!! キバナ選手、ここから巻き返しなるかっ?!』

 

 うん、無理だと思う。

 というかコテンパンにすると決めたのだから、巻き返すチャンスすら与えねぇよ。

 

「戻れ、フライゴン。悪い、勝たせてやれなかった」

「お疲れさん、サーナイト。交代な」

「サナ!」

 

 サーナイトは敬礼してボールへと戻っていく。

 キングドラ以外は全員ピンピンしているからな。

 ネズ程、厄介な相手というわけでもないし、コータスやサダイジャという天気を操作してくる特性持ちも倒したのだから、サーナイトに頼りきりになる必要はもうないはずだ。

 可能性としてはまだ残っているギガイアスが出てきたとしても、サーナイトじゃなくても対処は可能だろう。

 それよりも勝ったら今日は夜にもバトルがあるのだ。休めるうちに休ませようではないか。

 

「だが、お前の無念はこいつが晴らしてくれるさ! 唸れ、バクガメス!」

「ヤドラン、シェルアームズ」

 

 同時にボールから出すと、そのままヤドランが毒の砲弾を放った。

 

「クイックドロウか………」

 

 これだけ連続バトルしていて気づいたのだが、ヤドランの一撃目って何故か毎回クイックドロウが発動してるんだよな。発動してない時を思い出すのが大変なくらいには発動しているイメージがある。

 

「あまごい」

 

 バクガメスに暴れられると面倒なので、雨を降らせて炎技の威力を抑えさせてもらうことにする。

 これで少しは牽制になるだろう。

 

「バクガメス、じしん!」

 

 するとバクガメスが地面を踏み鳴らし、激しく揺らしてきた。

 どくタイプを持つヤドランには、これでバランスを崩して倒れてしまったら、大ダメージになってしまう。

 

「サイコキネシスで浮け」

 

 だが、同時にエスパータイプでもあるため、超念力で自身の身体を浮かせて揺れを回避させた。

 

「そのままシェルブレード」

 

 ついでにそのまま突っ込ませて、右手のかいがらのすずから伸ばした水の刃で斬りかかっていく。

 

「待ってたぜ! バクガメス、トラップシェル!」

「シェルアームズに切り替えろ」

 

 近づけば背中を向けてくると思っていた。

 狙い通りである。

 ヤドランに斬りつける前に左腕のシェルから毒の砲弾を撃たせた。

 間近なこともあり命中し、トラップシェルは不発に終わる。

 

「もう一発だ」

 

 続けてもう一発撃ち込ませる。

 

「こうそくスピンで弾け!」

 

 すると今度は身体を甲羅の中に入れて高速で回転し始めた。

 

「サイコキネシス」

「からをやぶる!」

 

 それを超念力で捕らえてその場に固定すると、バクガメスはからをやぶるの外に弾ける衝撃で脱出してきた。

 そんなんで脱出可能とか…………。

 しかも雨も上がっちまったし。

 

「シェルアームズ」

 

 腹が立ったのかバクガメスに詰め寄っていたヤドランが左腕で強力なボディブローを入れていた。毒の砲弾を撃たせるつもりだったんだがな…………。まあ、いい音したし、よしとするか。

 

「殴りも有りかよ………しかも毒って………」

 

 あらま、ついでに毒を盛ってくるとか大したものだ。

 

「シェルアームズ」

 

 少し距離を取って、さらに毒の砲弾を撃ち込んでいく。

 

「バクガメス、こうそくスピンで弾け!」

 

 するとバクガメスは再び甲羅の中に身体を入れて高速で回転し始めると、毒の砲弾を弾いてしまった。

 

「そのまま突っ込め!」

「シェルブレードで上に弾け!」

 

 そして、そのままヤドランに向けて突っ込んできたため、右の水の刃で下から掬い上げるようにしてバクガメスを弾き上げる。

 

「もう一度シェルブレード」

 

 回転しながら落ちてくるバクガメスを刺すべく、左の水の刃を突き上げる。

 

「トラップシェル!」

 

 すると寸前でバクガメスが回転を止めて水の刃を甲羅で受け止めると、そのまま大爆発を起こした。

 あの態勢から自ら受けにいくとは…………。

 ヤドランも爆風で飛ばされて地面を転がってきた。

 煤だらけになってはいるが、あの一撃で戦闘不能になることはなく、水の刃を支えに立ち上がろうとしている。

 当のバクガメスは四つん這いで着地したのか、こちらを睨んでいた。

 

「バクガメス、じしん!」

「ヤドラン、シェルアームズ」

 

 同時に指示を出すことになったが、先に動いたのはヤドランだった。

 ここでもクイックドロウが発動したらしい。

 毒の砲弾を撃ち出すと地面を踏み鳴らそうとしていたバクガメスの腹を撃ち抜き、そのままキバナの横を通り過ぎて後ろの壁に激突していった。

 

「………バクガメス、戦闘不能!」

 

 審判もこれにはドン引きって顔をしている。

 それでもちゃんと仕事はしているが。

 やっぱりクイックドロウの発動のタイミングが異常なのではなかろうか。俺としては勝てているのだから問題ないんだけど、見る側からすれば毎度同じようなタイミングで発動しているとかって話になる可能性もある。

 まあ、そういうのは専門家や自称専門家たちに言わせておけばいいし、俺よく分かってないし、何ならヤドラン自身もよく分かってないだろうから、真実は神のみぞ知るってな。

 アルセウスさん、教えてください。

 

『バクガメスも戦闘不能ォォォ!! これでキバナ選手はラスト一体! ジムリーダーたちとの本気のフルバトルでもこの強さッ!! 強い、強いぞ、仮面のハチッ!!』

 

 うん、もうこういうのも言わせておけばいい。

 恥ずかしさとかそんなもんは気にしたら負けだ。

 

「戻れ、バクガメス。いいトラップシェルだったぞ」

「お疲れさん。ガオガエンと交代な」

 

 はいはーいって感じに戻ってくるヤドランをボールに戻してガオガエンのボール手にかける。

 

「キバナよ、ダンデに勝つんだろ!? だったらここも勝つしかねえよな!」

 

 するとなんかキバナが大声で自問自答をし始めた。

 うっわ、恥ず…………。

 どこからか「キバナさまーッ!!」なんて声も聞こえてくるけど、それもそれで恥ずかしい。

 これはアレか? 本人もファンも恥ずかしい奴らばっかりなのか?

 頼むから俺のファンはそもそもがいなくていいけれど、いるんだったらまともな奴らがいいな。

 

「唸れ、ジュラルドン! てっぺき!」

「ガオガエン、ニトロチャージ」

 

 最後に出てきたのはやはりジュラルドン。

 ジム戦の時はダブルバトルの最後に二対一で倒したからな。

 ガオガエンとサシでバトルするとなると、ジム戦の時とは少し違ってくることだろう。

 そのジュラルドンとは出てきて鉄の壁を張って防御力を上げてきた。

 

「いわなだれ!」

 

 ガオガエンが炎を纏いながら迫っていくと、頭上から次々と岩々が降り注いできて、ガオガエンが通り過ぎていったすぐ後に、地面にゴロゴロとデカい岩が転がっていっている。

 まあ、その辺は今は無視でいいだろう。利用することもあるだろうし、フィールドに岩々が転がっているってことだけを念頭に入れておけばいい。

 

「ガオガエン、ブレイズキック」

 

 炎を纏った右脚でジュラルドンを蹴飛ばすと、ずざざーっとジュラルドンが後退していく。

 あれ、態と受け止めて、その勢いで下がったな。

 

「ジュラルドン、メタルバースト!」

 

 しかも敢えて受けたことでダメージを上乗せした威力で返してくる辺り、主戦略の一つなのだということが伺える。

 

「躱せ」

 

 ニトロチャージのおかげで素早さの上がっているガオガエンは、難なくこれを躱した。

 やっぱりニトロチャージがあるとガオガエンも動きやすそうだな。

 

「荒れくるえよ! オレのパートナー! スタジアムごとやつを吹きとばす! ジュラルドン、キョダイマックス!」

 

 するとキバナはジュラルドンをボールに戻して、右手のリストバンドからエネルギーを送り込むとボールが巨大化していき、それをフィールドへと投げ込んだ。

 グングン巨大化していくジュラルドンが、同時に高層ビルのような姿に変わっていく。

 キョダイマックス。

 ガラルに来てから一年経ったというのに、あのリストバンドを手にする機会は未だにない。それが普通だと言われればそれまでなのだが、爺辺りが使ってみないかと進めて来そうなものなのに、それがないということは俺には縁がないのだと半ば諦めている。

 使ってみたい気持ちはあるが、使いこなせるかどうかは別問題だからな。俺との相性が悪い可能性だってあるし、だから縁がないのだと思っていた方が気が楽だ。

 

「ダイナックル!」

 

 さて、このデカ物をどうしたものかな。

 要は三回技を使わせればいい。

 

「まもる」

 

 まずはダメージ覚悟で防壁を張る。

 落下してくる巨大な拳が一旦は防壁に阻まれるものの、あっさりと割れてしまい、ガオガエンが吹っ飛ばされた。

 

「ダイロック!」

 

 続けて巨大な岩壁が立ち上がり、それをジュラルドンが後ろから押すことでこちらに向けて倒れてきた。

 

「インファイトでぶっ壊せ」

 

 それをインファイトで壁の根本にヒビを入れ、倒れる前に穴を開けて脱出。

 倒れると無数の砂が舞い、砂嵐になっていく。

 

「最後だ! ダイナックル!」

 

 壁から脱出するとすぐさまZワザのポーズを取っていく。

 今回はアクZではなく、カクトウZ。

 ボディビルダーみたいなポーズを取らなきゃならないから、中々使いたくない技なのだが、今回は降ってくる巨大な拳をどうにかしないといけないし、ジュラルドンがはがねタイプを持っているということでカクトウZにした。

 うん、やっぱりZワザの嫌なところはポーズの一つ一つがクソ恥ずかしいということだな。これさえなければ、ピンチを脱する一撃として申し分ないのだが、現実はいつも優しくない。

 

「全力無双撃烈拳」

 

 高速で巨大な拳を殴りつけてどんどん押し返していく。

 とはいえ、ダイナックルもダイロックもほのお・あくタイプのガオガエンには効果抜群の技であり、しかもダイマックス技には追加効果がそれぞれあり、ダイナックルには攻撃力上昇の効果がある。

 ダメージと合わせて、それがどこまで影響してくるのか。それ次第でガオガエンが突破出来るかどうかということになってくるだろう。

 

「ガゥガァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 ガオガエンが雄叫びとともにありったけの力を入れて巨大な拳を殴りつけてジュラルドンへと弾き飛ばした。

 巨大な拳を返されて直撃した巨大なジュラルドンは、ダイマックスエネルギーが霧散していき、徐々に元の姿へと戻り始めている。

 

「ニトロチャージ」

 

 その間に距離を詰めるべく、ガオガエンが炎を纏って突っ込んでいった。

 

「ジュラルドン、いわなだれ!」

 

 そこへジュラルドンが頭上から岩々を落としてガオガエンの足を止めようとしてくるが、さらに加速して岩々を置き去りにしていく。

 

「ボディプレス!」

 

 それならば、とジュラルドンが飛び上がり、岩々諸共その鋼の身体を落下させてきた。

 そういえば、初っ端にてっぺきを使って防御力を上げてきていたな。ボディプレスは防御力が高いと威力が上がる技らしいが、こうも伏線を張られていたのかと思うと、一応最初からこの戦法はキバナの頭の中で描いていたというのがよく分かる。

 

「ガオガエン、インファイト」

 

 躱したところで着地の衝撃波に呑み込まれるのが目に見えていたので、こちらも飛び上がり高速で殴りつけることにする。

 

「ガオガエン、ブレイズキック」

「ジュラルドン、メタルバースト!」

 

 最後に炎を纏った右脚で回し蹴りをお見舞いし、地面へと叩き落とすと、落下しながらダメージを上乗せした光線を放ってきて、それがガオガエンの左肩を掠めていった。

 空中で肩を撃たれてバランスを崩して着地したものの、大ダメージとまではいっていなかった。

 ただ、ガオガエンの身体が赤いオーラに包まれていて、特性もうかが発動しているのが伺える。最後の一撃はそれだけのダメージがあったということだろう。つまりは直撃していれば相討ちもあったということだ。

 やはりジムリーダーともなれば、最後まで気が抜けないな。

 

「ジュラルドン、戦闘不能! よって勝者、ハチ選手!」

 

 審判がジュラルドンを確認しにいき、判定を下した。

 

『ジュラルドン、戦闘不能ォォォ!! 遂に決着っ!! 決勝戦進出は仮面のハチィィィッ!! やはり強かった! 終始キバナ選手を圧倒し、ジュラルドンのキョダイマックスも攻略したその実力!! 一体誰が止められるのでしょうかっ!!』

 

 ……………ふぅ、疲れた。

 何でネズといいキバナといい、こんなにも疲れるんだよ。これで勝っちまったから、次はカブさんかメロンさんのどちらかとだろ?

 二人の方がまだ良さげに感じてしまうのは俺が悪いのだろうか。

 あー、でも決勝戦で勝ったら一番疲れる奴の相手をしないといけないんだよな。想像しただけでもう疲れてくるわ。バックレようかな。

 

「お疲れさん、ガオガエン。夜もあることだし、ゆっくり休んでくれ」

 

 言ってて思い出したが、カブさんかメロンさんのどちらかとバトルするのって今日の夜じゃん。

 うっわ、面倒くさい。

 何でこんな過密日程なんだか…………。

 もう少し休ませろよ。

 猫背なままセンターサークルへ向かうと、キバナがなんか悦に入っていた。

 

「決勝で負けて悔しすぎるが、記念に自撮りはしておくか……」

 

 負けた記念に自撮りってどういう感覚なのだろうか。

 こいつ、ナルシストかな。ナルシストってことにしておこう。

 

「俺を写すなよ」

「…………それいいな。ロトム、ハチが入るような画角で頼む」

「おい」

 

 絶対ネットに揚げるから俺を写さないように忠告すると、俺を真顔で見つめた後、俺を画角に入れようとスマホロトムに指示を出すというトチ狂った暴挙に出やがった。

 なので、グーで軽く殴ってやったら、いい感じに入ったように思う。

 

「イッテテ……、そのコスプレ姿で殴るんじゃねぇよ。あーあ、ホントに負けちまったぜ。最初に出会った時は何だこいつって思ったってのに、実はここまで強かったとか………情けねぇ」

「ガラルの外には俺より強い奴なんてごまんといるぞ」

「…………オマエやダンデより強い奴がいるのか。世界は半端ねぇな」

「世界だからな」

 

 何だかんだ言ってもこいつらはガラルの外を知らないんだから、語っている世界も限られている。ダンデは確かに強いだろうが、世界中を探せば、ダンデ並のトレーナーなんて普通に見つかるだろう。

 総じてそういう奴らは有名人だからな。

 

「ハチ、オレはこれまでもこれからもダンデのライバルでいるつもりだ。オレはいつかあいつを倒す! だが、その前に! オマエにもいつかリベンジを申し込む! 逃げるんじゃねぇぞ!」

「あー………その時に俺がガラルにいれば、少しは前向きに検討する方向で調整してみるのも吝かではないな」

「それ絶対するつもりないだろ」

 

 そりゃ、やりたくないからな。キバナだけで終わるとは到底思えない。

 

「だってお前とバトルしたら絶対ダンデがオレともバトルしろってうるさそうだし」

「だぁーもう、分かった、分かったよ! ダンデはオレさまが説得するから、その時は絶対リベンジさせてくれ」

「それならまあ………」

 

 はぁ………仕方ない。

 その時が来たら、その時の俺に対処は任せよう。

 今考えたところで意味はないのだし、それよりも夜のバトルのことを考えてさっさとホテルに帰って昼寝をしようじゃないか。

 

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