ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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114話

 ワンリキーたちと一緒に本部からの使者に連行されていったスパイから得た情報が、三日経って送られてきた。

 どうやらガラルの街にアジトらしきものが散りばめられており、その一つ一つを潰せとの命令も一緒なのを見るに、本部でもどこまで信憑性があるのかも分かっていないらしい。

 やはり首脳陣を引っ捕らえない限りは正確な情報は掴めそうにないのかもな。

 というかだ。

 アジトらしき位置情報を共有してきたのはどういうことなのだろうか。俺に潜入調査でもやれというのだろうか。

 生憎、俺にはそんな技術は持ち合わせていないのだが…………。と言っていられるのも数日前までの俺であって、今の俺にはハッカーとして打ってつけの奴がいる。

 ロトム。

 電子機器に潜入出来る謎が多いポケモン。

 だが、このガラル地方では一番知られているポケモンと言っても過言ではない。スマホを持っている奴なら大抵その中におり、生活のサポートをしてくれている。一昔前に家電に取り憑くポケモンとか言われていたのに、いつの間にか生活に欠かせない存在にまで成り上がるとは誰が想像出来たであろうか。

 人間社会の急激な変化によってポケモンたちの謎も明かされてきた感じだな。

 まあ、というわけで、だ。

 あまり気乗りはしないが出来ることがあるのだからやるべきだろう。

 コマチたちもガラルに来ていることだし、現にコマチのすぐ側で事件は起きたのだ。シャクヤも狙われた。俺が偶々あの場にいたから助けられたものの、タイミングが違えばシャクヤは人質にされ、最悪命がなかった可能性があるのだ。仕事とか関係なく他人事ではいられない。

 というわけで今夜は初の夜中の潜入調査である。

 潜入調査自体は初めてではないが、俺がデータを盗みに行くというのは初めてだと思う。そういうのはポリゴンを連れていたザイモクザの仕事だったというか押し付けていたためであるが、それを俺一人で熟そうって言うのだから、中々骨の折れる仕事になりそうだ。

 潜入自体はダークライの影移動を使うため簡単である。

 ただ暗いのが難点。電気を付けるわけにもいかないし、非常口のライトやテレビやパソコンのランプが頼りである。

 取り敢えず、今日はエンジンシティにあるというアジトに潜入だ。路地裏を曲がり曲がって辿り着いたのは、この前の………ではなく別の建物だった。

 外から見る分には明かりは付いていない。二十四時間営業というわけではないみたいだな。

 それだけで重要な施設ではないように思えてくる。あるいは片棒を担がされている普通の企業か、だ。

 まあ、それも調べてみれば分かることだろう。

 まずはダークライの作り出した黒い穴に入る。そして、真っ暗な影のなかをダークライに導かれるままに突き進み、ようやく穴から出ていい許可が出ると、そこはオフィス然とした部屋だった。

 ますます普通の企業っぽく感じるな。

 

「まあいい。ロトム、こっちにこの施設内の全てのデータをコピーして入れてくれ」

 

 予め用意しておいた大容量のハードディスクを出して起動していないパソコンへと繋げ、ロトムをパソコンの中へと侵入させる。

 鍵や暗号をかけられていようとロトムには関係ないらしいからな。下手に人間がハックするより、余程有能なんじゃなかろうか。

 目が暗闇に慣れてきたこともあり、俺はロトムを待つ間、紙の資料がないか探すことにした。ここまでロトムを使った電子機器の発達がすごいガラルで紙の資料を残すメリットがあるのかって話だが、データがクラッシュした時用に残している可能性も考えられるからな。

 あったら儲けくらい感覚で気軽に棚を調べていくと、今年はこんな仕事をやりましたーっていうのが毎年分あるくらいだった。

 やっぱり早々目当てのもんは出てこないか。というかダークポケモンとかに関する資料を紙に残しておくとは思えないもんな。

 仕方ない、大人しく待つとするか。

 

「ロトロト」

「お、終わったか」

 

 しばらくするとロトムが戻ってきたので、ハードディスクをパソコンから抜き、スマホへと繋げ直す。

 スマホって便利だよな。繋げ方次第で小さなパソコンにもなり得るなんて、開発した人マジ半端ねぇわ。

 

「さて、何が出てくるのやら………。経理関係のとか会社運営のことは今はいいとして……………マル秘…………怪しすぎるだろ」

 

 膨大な資料から探すのは骨が折れそうだと思った瞬間、バリバリ怪しいフォルダを見つけてしまった。

 今時マル秘って…………。

 

「どれどれ………『GOロケット団戦略』、『イッシュ建国』、『カラマネロ』、『最終兵器起動』、『シャドウ化』、『シャドー』、『シンオウ神話』、『ダークポケモン計画』、『ブラックナイト』、『プロジェクトAZOTH』、『プロジェクトμ's』…………ッ!?」

 

 そこには『レッドプラン』の文字が。

 さらにスクロールしていくと『レジェンドポケモンシフト計画』もあった。

 おいおい………何でこんなものまでここにあるんだよ。

 他の計画や歴史系の資料もあることを考えるに、取り敢えずは手当たり次第に集めたって感じだろうが、ロケット団のみが持ち合わせているはずの資料があるのが不可解ではある。考えられるのはロケット団からの裏切りか、将又ハッキングされて資料を盗まれたかだ。

 ロケット団もサカキがトップであることには変わりないが、その側近に当たる部分で派閥争いというかゴタゴタが起きるもんだから、恨みつらみがないわけではないのが何とも言えない。

 図鑑所有者たちによって幾度となく計画を阻まれて派閥ごと力を失った連中が資料を持ち出してシャドーの奴らと合流したと考えることも出来る。

 組織ってのはいつだって派閥争いが起こるんだから、面倒臭いよな、人間って。

 

「それにしてもカラマネロって………」

 

 何故こいつだけ単品でいるのだろうか。

 カラマネロが何か関係しているとか?

 ………カラマネロと言えば、やけに強いカラマネロ三体が育て屋を襲撃してきたこともあったな。それにクチバジムでの有識者会議の時にも、カロスでの第二回リーグ大会の時のカーツの後ろにもいたし…………。

 もしかしてここも繋がっている、とか………?

 そうなると結構厄介だぞ。やっぱり、という気持ちもあるが、あまり考えたくはない可能性ではあった。

 それがシャドーの連中の動向を探る中で、意味深なカラマネロの資料を見つかったとなれば、いよいよ以って関連性が怪しくなってくる。

 ああ、嫌だ。

 フレア団だけではなく、こっちにまで繋がってくるなんて、いつからシャドーの奴らはガラルで暗躍していたのだろうか。

 それが回り回って俺に被害が回ってくるんだから、ぶん殴りたい気分である。

 とは言っても今はまだ何も掴めていないようなもの。

 時が来たら絶対奴らを潰す。それだけは最早決定事項だな。

 さて、色々とデータだけでも収穫はありそうなのだが、何分一企業の全てのデータをコピーするように指示したのだ。確認するだけでも膨大な量だし、経理関係のとかは放っておいて計画系の奴をピックアップしてロトムに探させるしかないかな。

 

「ロトム、取って来たデータの中から「レッドプラン』とか『レジェンドポケモンシフト計画』とかの何かの計画っぽいものを全部まとめて一つのフォルダに集約してくれ」

 

 俺はその間に目に付いた中で知らない計画に目を通しておこう。

 まずは『GOロケット団戦略』から見ていくか。概要だけでも掴めれば、あいつらの意図が多少なりとも掴めることだろう。

 というか全てを今から読むのは普通に嫌だ。それに『レッドプラン』とか『レジェンドポケモンシフト計画』を国際警察に渡すのもなんか嫌だ。

 情報の取捨選択はしておかないとか。

 面倒くせぇなぁ………。

 

「『GOロケット団戦略』………」

 

『GOロケット団戦略』

《概要》

 全ての罪をロケット団、引いてはサカキになすりつけ、全ての用意が整い次第我々とは切り離し、シャドーとして復帰するのと同時に、ロケット団の時代を終わらせ、我々シャドーが世界征服することを目的とする。

 

「まんまだな」

 

 計画の実行内容は後で確認するとして、思惑としてはロケット団をスケープゴートにしてシャドーがその立場を食おうってわけだ。

 サカキは知ってるのかね、この計画。

 教えてやる義理はないし、今の俺ではあいつに干渉するのも憚られる。というかサカキだし大丈夫だろ。俺と同じで何だかんだ死なない奴だ。一時期病気がどうのこうのって話もあったらしいが、それでもピンピンしてるしな。年齢的なものもあったのだろうが、実際の年齢は俺も知らないし、そんな奴だから何が起きても死にはしないと思う。

 

「次に気になるのは………『シャドウ化』と『シャドー』かな。『ダークポケモン計画』もあるから、そっち関連なのは分かるが」

 

 ただ、どういうことが書かれているか、だ。

 シャドウ化は恐らくダーク化の昇華したバージョンだと思われるが、シャドーの方には構成員の名前でも書かれているとありがたい。あるいは組織の成り立ちとかがあれば、国際警察にぽいっと丸投げ出来るし。

 とにかく丸投げ出来る内容であってくれよ。

 

『シャドウ化』

《概要》

 正式名称は『ダークポケモンシャドウ化シフト計画』。ダークポケモンのさらなる可能性を見出し、新たな力を与え、ダークオーラを纏ったままリライブすることなくそれまで習得していた技を使えるように強化するのを目的とする。携帯獣生物学研究の進歩によりポケモンの能力の限界突破、風土の違いによる変化に伴い、我々を圧倒する力に対抗するためにも必要な措置である。

 

「メガシンカの研究やリージョンフォームの認知が増長させたってところか?」

 

 ダークポケモン自体、いつから作り始められたのか定かではないのだが、それをさらに強力に、かつ汎用性を持たせるように至るにはあの人たちの研究が端を発したらしい。

 なんてこった。

 覇権主義なのかよく分からないが、自分たちだけが旨味を享受しようとする輩は、相応にして理解不能だ。共感出来ないというかなんというか。その他大勢がいてこその社会であり、世界だろうに。

 ポケモンたちのこともそうだ。ポケモンたちも歴とした生き物であり、人間たちの道具ではない。というか人間よりもおよそ高度な生き物である。

 それを人間のご都合主義で従えると、いつか痛い目に遭うことになるだろう。何しろ創造神がポケモンだとされていて、実際に姿を見せているだからな。存在しているのは確かだ。それに俺もアルセウスの化身とされる内の一体であるギラティナに遭遇している。あの冥界の王の怒りを買ったら世界がどうなるか分からない。

 最悪、無に還るんじゃなかろうか。想像もしたくないな。

 

『シャドー』

 我々の本当の組織であり、偉大なる組織である。

 

「こっちはそれだけかよ」

 

 いや、恐らく詳しい情報を秘匿してのものだろう。ここにあるデータは下請け用みたいなものと思った方がいいのかもしれない。

 ところで、だ。

 この『ブラックナイト』ってのは何なんだ?

 ダークオーラの発生源、的な?

 直訳すれば『黒い夜』。

 

「さて、何て書いてあるのやら………」

 

『ブラックナイト』

 約三千年前に黒い渦が発生し、巨大化したポケモンが暴れたことでガラル地方を滅ぼしかけたとされる大災害。英雄によって鎮められたとされているが、詳しいことは資料が乏しく不明。

 

「大昔のガラルでの大災害、か。これはソニア辺りに聞いた方が確実かもな」

 

 取り敢えず、レッドプランとか俺に関係するもの以外は国際警察に渡っても大丈夫なのではないだろうか。あるいは既に国際警察に保管されているかもしれない。

 それはそれで嫌だな………。

 とは言え、ロケット団残党狩りしていた頃に一緒にハンダさんもいたし、あの人から国際警察にデータが渡っていてもおかしくはない。

 それにしては壱号さんは俺に気付かないのだから、実際のところはどうなんだろうな。

 

「ロトロト」

「お? 終わったのか? サンキューな」

 

 ロトムの作業が終わったみたいなので、そろそろ帰るとしますかね。

 帰ってからが大変なのだが、膨大なデータを一から漁るよりはずっといい。

 ロトムには明日、何か上手いもんでも食わせるとするか。報酬がないんじゃやりがいもないし、俺も上手いもんがなければやる気が出ない。

 

「ダークライ、帰ろうぜ」

「ライ………」

 

 ハードディスクを片付けてスマホにロトムを戻し、暗闇にずっと立っていたダークライに頼んで、また黒い穴に潜ることにした。

 …………今更だけど、監視カメラとか気にするべきだったか?

 一応ガオガエンではない覆面に黒い服で統一しているとはいえ、監視カメラに映った姿から身元を特定されないとも限らないからな。

 まあ、どうやって侵入したんだって話になるだろうし、グレーゾーンの会社だし、警察を入れる方が危険となれば、独自に調べられるくらいなんじゃないか。

 その時はその時だ。なるようにしかならないだろうさ。

 

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