ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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124話

 カラマネロが去ったことで統率の乱れた空中戦を制するのは、そう時間はかからなかった。黒いリザードンとともにピジョットやボーマンダを地面に叩き落とすと、強敵を気にしなくてよくなったウルガモスとキングドラとドラミドロが他の野生のポケモンたちを次々と落としていき、二体のギャラドスがトドメを刺していった。そして最後に残ったハッサムを触手で引き寄せ、地面に叩きつけるとトドメを刺すためそのまま急降下し、ついでイロハの状況を確認。

 デンリュウをメガシンカさせ、ボルケニオンがスチームバーストでポケモンたちを吹き飛ばし、ザルードと自らメガシンカしたジュカインが木々を足場にして次々とポケモンたちを倒していくも、数が一向に減っていないようだ。

 なるほど、カラマネロめ………。本当に抜け目ががない。

 上だろうが下だろうが、どこも敵だらけの状況にしたうえで襲いかかってくるとは………。

 着地と同時にハッサムを気絶させ、メガシンカが解けたのを確認するとイロハが対峙していたメガカイロスとメガヘラクロスに触手を伸ばして拘束。それに気づいたデンリュウが10まんボルトで後ろの木へと叩きつけ、他のメガシンカしたポケモンを確認するとリザードンがメガバンギラスを下敷きにして着地し気絶させ、ギャラドス二体でメガハガネールを絡め取り、ジュカインとザルードで他のポケモンたちを蔦で拘束していた。

 …………イロハのポケモンたちは、呆気に取られていたが、チャンスだと見て反撃に出て、見事に倒しきっていたぞ。これ、ジュカインとザルードだけでどうにかなったんじゃなかろうか。

 

「…………えぐいですね」

「それな」

 

『出番がなかったぜ………』

「しょうがないでしょ。森を燃やすわけにもいかないし、スチームバーストもみんなを巻き込んじゃいそうだったし」

 

 ボルケニオンは特にしょげていた。

 森での戦闘はボルケニオンには相性悪いからな。仕方ないっちゃ仕方ない。その分、イロハの身の安全を最大限に確保していたんだから、他のポケモンたちも動けていたってことだろ。

 

「…………やっぱりカラマネロが関係してるんですかね。クチバでも襲われましたし」

「だろうな。どこまで奴らの思惑なのかは分からんが、俺を排除したのは確かだろうな」

 

 未だにカラマネロたちの計画の全貌は見えてこないし、どこまで暗躍しているのかも把握出来ていない。

 それでも一つだけ明確なのは、俺を消したい、殺したいという意志だろうか。今から約半年後の第二回のリーグ大会ではカーツと一緒にカラマネロがいたため、そこの繋がりは確実だろう。だが、GOロケット団との繋がりは未だ不明なままだ。解明することも今のところ不可能だろう。タイミング的にはあれもカラマネロが関わってそうであるが、証拠がないのが口惜しいところである。

 

「………よし! あいつらに何かされる前にさっさと先生を見つけましょう!」

「ああ」

 

 と意気込んだものの、そのまま夜通し探し回っても見つからず翌朝になってしまいーーー。

 イロハにユキノからの連絡が入った。

 

「はい、もしもーし」

『………ヒラツカ先生が見つかったわ。姉さんがミアレの病院に運び込んで入院中よ』

「そう、ですか…………」

 

 静かに、淡々と告げるユキノの声が俺の耳からしばらく音を奪い去った。

 

「なら、一旦戻りますね」

『えぇ、悪いけどそうしてもらえると助かるわ。詳しい話はまた後で』

「了解です」

 

 …………ああ、間に合わなかったのか。

 こればかりは歴史を改変したかったのだが、強制力には抗えないようだ。

 

「先輩、ヒラツカ先生が見つかったそうです」

「そうみたいだな…………」

 

 朝から一気に重苦しい雰囲気になってしまった。

 寝てないため余計に思考回路が自責の念に浸っていきそうだ。

 

「………間に合いませんでしたね」

「ああ…………」

 

 悔しさで何かを殴りつけたい衝動を拳を握って必死に押さえ込むしかなかった。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

 ミアレシティに戻り、ポケモン協会へと向かった。

 この数年愛用してきた帽子のおかげか、街中で顔バレすることもなく、何なら数日前に暗殺事件があった街とは思えない程、日常が営まれている。

 

「ただいま戻りましたー」

 

 イロハを先頭に部屋に入ると非常に空気が重かった。

 部屋の中にはユキノとユイ、それにコルニやプラターヌ博士もいたのだが、全員がお通夜ムードになっている。

 まあ、無理もない。俺は未来でヒラツカ先生の現状を聞いていたから腹は括れたが、俺以外は初耳だからな。ショックが大きいのも頷ける。

 

「………お帰りなさい、イロハ」

 

 辛うじて声を出せたのはユキノだけだった。

 それでも悲痛な声には変わりない。

 

「…………やっぱり間に合わなかったんですね」

「ち、違っ!? せ、先生は生きてるわ!」

「でもポケモンたちは間に合わなかった」

「ど、どうしてそれを………!? あなたにはまだ伝えてーーー」

「この人に聞きましたから」

 

 あ、そこで俺を出す?

 全員の視線が俺に集まってくる。

 はぁ………仕方ない。帽子を取るか。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 ユキノ、ユイ、コルニ、変態博士が目を見開いて驚いた顔をしている。

 

「あ、いたのかよ」

 

 扉で見えなかったが、サカキが壁際に腕を組んで立っていた。

 

「オレの部下がここに残っていたのだ。迎えついでに状況の確認に来ただけだ」

「そっすか………」

 

 それにしてはずっと待っていたような感じがするのだが?

 まあいいか。

 

「ヒッキィィィッ!」

「っと………」

 

 サカキに気を取られていたら、急に胸にタックルされて、どうにか後ろに倒れるのを踏みとどまったものの、不意打ちすぎて頭を床にぶつけるところだった。

 いやまあ、心配かけたからね。

 しょうがないんだけどさ。

 

「ユイ先輩………、先輩は死なないって豪語してませんでした?」

「それはそうだけどぉ………! それでもやっぱり生きてたって思ったらぁ…………うぅ……!」

 

 ぐりぐりと俺の胸におでこを押し付けてくるユイ。

 ポンポンと頭を撫でてやると余計にぐりぐりしてくる。可愛いかよ。

 

「本当………不死身なんだから…………」

 

 ユキノは胸の前で手をぎゅっと握ったまま、目尻から一雫の欠片を落としている。

 

「…………ゴーストタイプになってたりしないよね?」

「お望みなら夜な夜な夢に出てやろうか?」

「ひぃっ!?」

 

 コルニが恐る恐る本物なのか確かめてくるので、少し茶化してみると見事に顔を青ざめさせた。

 うんうん、この感じ。帰ってきた感あるわ。

 変態博士?

 むさ苦しいおっさんは放っておくに決まってるだろ。

 

「それで、先輩? 粗方揃ってますし、説明してくれるんですよね?」

 

 いろはす、めっちゃいい笑顔なのに、目が笑ってないんだけど。

 後ろからの圧が半端ない。

 

「お、おう………取り敢えず、俺の状況を説明するとだな。多分、ハルノと同じ歳くらいになってるわ」

「あ、だからなんか大人びて見えるのか…………」

 

 ぶっちゃけ俺もどう説明したものか悩むため、頭の中で整理出来ていないんだよなぁ。

 

「もう少し詳しく説明しなさい」

「あー………俺も上手く纏められる気がしないから本当にそのまま流れを言うことになるぞ?」

「ええ、それでいいわ」

 

 おっと、ユキノさん自信満々ですね。

 代わりに整理してくれるということかしら?

 それならありがたく甘えるとしよう。

 

「ブッ刺されてダークライに回収されて破れた世界で治療終えたらギラティナに追い出されて、追い出された先がアローラで、しかも半年経ってて、そこで一ヶ月くらい現世に身体を慣らしてカロスに戻ってきてみれば事故で三年前くらいにタイムスリップして、イッシュでなんやかんやあってガラルに行ったらチャンピオンに目を付けられて二年くらい過ごして、カロスに戻ろうとしたらコマチがヤバい状況だったから助けに行ったら今ここにいる、みたいな?」

 

 流石に国際警察と仮面のハチの流れは濁したものの、大体こんな感じのはず。

 

「ん? えっ………ん? なんか時間移動多くない?」

「それな。マジでそれ。おかけで自分の歳もよく分からんくなってきた」

 

 見上げてくるユイがちんぷんかんぷんって顔をしている。

 うん、そうだよな。それが普通の反応だと思う。

 コルニは指を使って計算しようとしているが、こんがらがってそう。

 

「つまり……今から半年後に帰ってきて、そこから三年前だから今からだと二年半前ってことでいいのかしら?」

 

 ………………………分からん。

 あっち行ったりこっち行ったりなもんで正確に計算するのも億劫だったから、二年半から三年くらいってことにしてたからな。

 多分、ユキノがそう言うのだからそうなのだろう。

 

「あー………多分、そうなんじゃね? だからその内セレビィが迎えに来るじゃないかなーと待ち続けてるわけよ。一向に来ないけど」

「………見捨てられたんじゃないの?」

 

 …………………こいつ、怖いこと言うな。

 ユキノの言う通り、俺もその可能性も考えてはいるんだよ。一番最悪なパターンだけども。

 いいのだろうか、こんなタイムパラドックス的な存在を放置したままで。

 世界の綻びとか、矛盾の特異点とかにならない?

 

「えぇ………やっぱり? マジかよ…………。世界の辻褄とか大丈夫なのか?」

「知らないわよ。生きてるだけで丸儲けと思いなさいってことなんじゃないかしら?」

 

 なんかそれ、どこかで聞いたことがある気がするぞ。

 でも今の俺に取ってはまさにそうなんだよなぁ…………。

 生きてるからこそ、こうして大事な存在に再会出来たのだし、何よりーーー。

 

「ーーーお前らが俺みたいに二年半から三年くらい待ちぼうけを食うくらいならいいけどさ」

 

 この三年近く、ユキノたちに会えないのは結構堪えたからな。

 どうにか耐えられたのも一人ぼっちじゃなくサーナイトたちがいてくれたからだ。

 本当の一人だったら、発狂してどこかで自死していた可能性だってある。

 ポケモンたちがいてくれたから、あまり考えないようにして帰ることだけに意識を持っていけてたのだと思う。

 

「…………そう。そういうことにもなるわけね。三年近くハチマンがいないなんて………苦行だわ」

「ヒッキーとそんなに会えなくなっちゃうの………?」

 

 ユキノもユイもようやく気がついたのか、タイムスリップの弊害に顔が青ざめている。

 イロハとコルニは言葉を失ってるから、実際にそうなれば、この二人の方がダメージが大きいかもしれないな。

 

「恐らくな。でも何やかんやで途中下車してその日だけいるってことはありそうなんだよなー………」

「辻褄合わせってことね」

「そう」

 

 とは言え、一気に二年半先に飛ぶとかはないと思いたい。

 以前、セレビィとタイムスリップした時も、何やかんやで辻褄合わせに奔走していたからな。

 今回もただ元の時間軸に戻るんじゃなくて、空白期間となる二年半の辻褄合わせをやりそうな気がする。

 そうなれば、ちょくちょく帰って来ることになりそうなんだよなー。というかそうなって欲しい。

 じゃないとこれから話すことに、強い不安を覚えさせてしまうことになるたろうし。

 

「それで、なんだがな。俺はこのまま死のうと思う」

 

 …………流石に自分で言うのも勇気がいるな。

 口にしてしまえば、引き返すことは出来なくなる。

 それでも俺はもう覚悟は決めたのだ。

 

「はい?」

「な、何言ってるの………!?」

「先輩、死ぬ気ですかっ!?」

「折角助かったのに?!」

 

 あ、言葉足らずだったな。

 

「表向きな、表向き。このままヒキガヤハチマンを推定死亡って扱いにして表社会からフェードアウトすることにした」

「表向き………」

「ヒッキー自身は生きてる………?」

「ああ、生きてる生きてる。俺だって普通に死にたくねぇよ。けど、このまま俺が戻っても生きてた説明をしなきゃだし、そうなると説明が面倒くさいことこの上ないし、目立ちすぎたから狙われるし、それなら死んだことにした方が良くね?」

 

 俺が生きてるって知れ渡ったら、また変なのが現れないとも限らないし、今回の先生みたいに、犠牲者を出すことになりかねない。

 

「…………仮にそうした場合、あなたはどうするつもり? 当然、仕事も出来なくなって生活も出来なくなるわよ?」

 

 ユキノの懸念は最もだ。

 俺も暗殺される前にエニシダさんに連絡を取っていたからこそ、実現出来ると考えて出した結論だからな。

 生活基盤の目処が立っていなかったら、社会的に死のうなどとは考えなかっただろうさ。

 

「あ、もしかして私たちに養ってもらおうって魂胆ですか? 確かにこれから四天王として稼ぐことになる私がいますから生活に困ることはないでしょうけど老後まで保つかというと怪しいので出直してきてくださいごめんなさい」

「お、おう………なんか久しぶりに聞いたわ。帰ってきたんだなー………」

 

 後ろから懐かしのお断りが聞こえてきて、ちょっと口角が上がってしまう。

 本当に帰ってきたんだな。

 

「うっ………そんなしみじみされるとこっちが恥ずいんですけど………」

 

 背中をぐりぐりとされ、前も後ろも埋め尽くされてしまった。

 しれっとコルニは俺の左側のポジションを確保しているし、頭を撫でろと催促してくる。

 

「まあ、そこは大丈夫だ。まだ二つ、顔は残ってるから」

「ハチマン、焼きたての新しい顔よ」

「俺は顔が濡れても力はそのままだから取り替える必要はないからな」

 

 冗談を交えながらもユキノを手招きすると俺の右側のポジションに収まり、腕を掴まれ頬を撫でさせられた。

 うーん、四人もいるとこうなるのか…………。

 身動きが取れないが、これも贅沢な悲鳴だろうな。

 

「というわけで、明日にでもヒキガヤハチマン推定死亡会見を開いてくれない?」

「………はぁ、それが一番手っ取り早そうね」

 

 心情的にはやはり嫌だろうな。

 嘘でも未来の旦那が死にましたとか口にしたくないだろう。俺だって嫌だ。

 それでもやるしかないし、この中でそれをやれそうなのがユキノしかいないのだから仕方ない。

 とんだ貧乏くじを引かせてしまうことになるが、その分何かで埋め合わせはきっちりしないとな。

 

「ねぇ、はぐらかしてるとこ悪いんだけど、表向き死んだ後、仕事や生活はどうするの?」

「それも考えてある。だからお前らにはそれが完成するまでに専門タイプを増やしておいてくれると助かるんだわ」

 

 特にはぐらかしていたわけではないのだが、言葉を濁しているのは事実だし、俺が戻ってくるまでにやっておいて欲しいこともあるからな。

 ちゃんと次も考えていることは説明しますとも。

 

「あ、それ私の計画が先輩の計画に合致するってやつですか?」

「そう、それ」

「イロハの計画?」

 

 イロハには少し話していたからな。

 詳しいことは帰ってからってことになっていたため、今ここで出てくるのかと嬉しそうだ。

 

「はるさん先輩の暗躍と四天王三人の悪ノリによって私の四天王化計画が進んでたおかけでみず、はがね、ドラゴンタイプについて勉強する羽目になったんで、しかもタイプ被りがないようにその三タイプ以外で専門タイプを選ばなきゃいけないわけだから、自分の専門タイプ含めて四つのタイプでそれぞれパーティーが組めるようにしたら面白いんじゃないかなーっていう計画です」

「ちなみにイロハちゃんの専門タイプは結局何にするか決まったの?」

「ほのおタイプですよ?」

「ヒッキーと同じ………」

 

 ん?

 決まってなかったのか?

 俺はてっきりとそのまま俺の後を継いで、ほのおタイプの専門になるもんだと思ってたんだけど。

 あ、でもプレッシャーがどうたらとか言ってたか。それでほのおタイプ以外にするか悩んでいたってことかな?

 

「………つまり、イロハみたいに私たちも専門タイプを増やして欲しいということね?」

「ああ、そういうことだ。取り敢えず、一タイプに四体はそのタイプで統一させたパーティーを組めるようにして欲しいかな。六体全部を同タイプってのは中々難しいだろうし、ガラルには専門タイプ以外ポケモンを使うジムリーダーもいたしな」

「なるほど。そうなると私たちの中でもあまりタイプ被りはしない方が良さそうね」

「出来ればな」

「……………ッ!? あなた、まさかっ……!」

 

 どうやらこれでユキノは俺が何を構想しているのかが伝わったらしい。

 だが、まだその詳細は秘密な。

 何も決まってないからエニシダさんの了承を得られてないし、変更することもあるだろう。

 

「まだ内緒な。何も始められてないから、上手くいくかも分からん」

「そう…………なら、今はまだ黙っておいてあげるわ」

「そうしてくれ」

 

 本当に出来た嫁である。

 

「えっ? なに? どゆこと?」

「今はまだどうなるから分からないから、取り敢えずあなたはかくとうタイプ以外でもパーティーが組めるようにしておけばいいってことよ」

「そ、そう?」

「ええ。私もこおりタイプ以外でパーティーを組めるようにしないとね」

 

 話に着いてこれていないユイに取り敢えずやることだけを伝えるユキノ。

 うん、ユイにはそういう説明の方がわかりやすくていいのだろうな。

 というかそうか。この中でまだバトルフロンティアに馴染みがあるのはユキノだけだもんな。

 そりゃ、一人だけピンとくるわけだ。

 

「えっと………現役のジムリーダーは………?」

 

 するとくいくいと左の袖を引っ張られたのそちらを見るとコルニがコテンと首を傾げていた。

 

「商売相手だから、計画が完成するまでのお楽しみにってことで」

「えぇー………なんか疎外感………」

「そう言うなって。お前らのためでもあるんだからな」

 

 最初はバトルバカのチャンピオン様からのインスピレーションが大きかったが、構想を練るに連れてコルニたちを鍛えられたらいいなと思うようになったのも事実。

 結局のところ、俺の周りにそういう役職が結構いたのが大きいのだろう。

 だから、そういう役職の人たちのためにもしっかりとエニシダさんにプレゼンしてこないとな。

 

「大丈夫よ、既にこの男は次の悪巧みを始めているみたいだもの。それよりもハチマンが帰ってくるまでにちゃんと用意しておかないと彼の悪巧みに参加出来なくなるわ」

「言い方よ………」

 

 悪巧みって………。

 強ち間違ってないのが余計にタチが悪いわ。

 

「ヒッキー、頑張ってパーティーを考えてみるね!」

「私は私の計画を進めますねー。そのまま先輩の計画に移行出来ますし」

「うぅ………疎外感が………」

 

 コルニ、強く生きろよ。

 おい、それと壁際の変態博士。

 いつまで涙流してんだよ。男泣きしてんじゃねぇよ。サカキがずっとニヤニヤしてるじゃねぇか。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 

 夜。

 数年振りの自分の部屋に入るとベッドの上には既に人影があった。

 うん、知ってた。

 イロハにでも唆されたのだろう。二人を煽るイロハを容易に想像出来てしまう。

 しかし、ユキノは大丈夫なのかね。あの後、明日の会見準備とかしていて疲れてるだろうに。

 

「ハチマン………」

「ヒッキー………」

 

 どちらも透け透けなネグリジェ姿でやる気満々らしい。

 ヤバいな。寝不足にこれとか、しかも今夜はユキノとユイの二人を相手にしろとか………。

 だが、ここまでお膳立てというか据え膳というか煽りというか、とにかくここまでされてしまっては食わない選択はない。元よりイロハだけで終わらせる気はなかったため、好都合と言えば好都合である。

 それに一昨日は理性が崩壊したままイロハを抱き潰してしまったため、ある意味俺の暴走した性欲の被害者でもある。だから今日こそは理性を残したままでありたい。それでいて本能的に………うん、既に俺も深夜のハイテンションになってるみたいだわ。

 吸い寄せられるようにベッドの上の二人の元へ向かうと、それぞれに腕を掴まれてベッドへと引っ張り倒された。

 

「ハチマン……」

 

 そして、ユキノが覆い被さってきたかと思えば、両頬を手で挟まれて顔を固定され唇を奪われた。

 甘い。

 口内を舌が這いずり回り、絡ませるように舐めたと思えば吸い上げる。

 そのまま角度を変えて何度も何度も口づけられて、その度に思考が真っ白に塗り潰されていくのを感じていると、今度は右手の指を舐められる感触を覚えた。

 そちらを見やると、ユイが指に舌を這わせていた。そのまま指の関節を舐められたり甘噛みされたりするのが妙にこそばゆくてくすぐったい。

 さらに、ユイはそのまま指先を咥え込むようにして口に含み始めると、今度は舌で指先を弄られ始めた。

 舌先で突かれるのと同時に、口腔内できゅっと力を込められて刺激されるのが何とも言えない心地良さだ。

 

「んむ……!」

 

 ユイから視線を戻して、左手でユキノの頭を掴んで口の中を貪る勢いでキスし返す。

 そして右手をユイの口に入れ込み舌を撫でていく。

 ユキノとのキスは更に激しさを増して互いの舌を擦りつけあったり吸ったりと、貪りあうような激しいキスを繰り返す。

 そしてユキノが唇を離すと、今度はユイが俺の上に乗り上げてきた。

 

「ふあ………、んむ………!」

 

 今度はユイが俺にキスをしてくる。

 さっきよりも更に深く舌を絡ませて吸い上げて口内を弄られる。

 反対にユキノは俺の左手の指を舐め始めている。

 

「ヒッキー……もっとぉ……」

 

 キスを終えたユイが甘い声を出しておねだりをしてきた。

 この声はヤバい。

 理性が飛んでしまう。

 だが、ここで理性が飛ぶ訳にはいかない。

 そう決意するのだがーーー。

 

「ねぇ、ヒッキー、好きぃ………」

 

 ユイは更に俺の理性へのトドメを刺す言葉を口にする。

 駄目だ、理性を保っていられん。

 

「ハチマン、こっちも触って………」

 

 今度はユキノが俺の手を胸元に導くと、ネグリジェの上から胸の部分を揉ませた。

 柔らかな感触が手に伝わってきて、俺は更に欲望が高まるのを感じ、そしてぷつりと何かが切れるような音がした。

 もういいや、このまま本能に任せてヤッちゃおう。

 何だかんだで俺の性欲もイロハとやったことでタガが外れてしまったのだろう。軽く煽られてしまえば、理性の壁があっさりとぶち壊されてしまう。何と脆くなった壁だろうか。

 ただまあ、壊したのはこの二人だし、俺は悪くない。

 

「お前ら、俺を煽ったこと、後悔するなよ………」

 

 寝不足にも関わらず、明け方まで二人を美味しくいただいていましたとも。

 ユキノさん、大丈夫かな…………。

 

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