「次は……リージョンフォームについてですねー。ガラルのもあるなら、先にソニア博士がいっちゃいます?」
「あ、じゃあ」
ダイマックスの次はリージョンフォームになるらしい。
しかもイロハの機転でソニアからになったっぽいから、当初はナリヤ博士からだったのかもしれない。
まあ、どうせ今説明してたんだし、このまま続けた方が本人としても楽ではあろう。
「前回、ナリヤ博士がガラル地方のリージョンフォームの姿についていくつか紹介したようですが、今一度そこも含めて紹介していきます」
あったな、取り敢えず見つけたのを紹介って感じではあったが。
「えー、まずこのポケモンたちから。ニャースとニャイキング。カントーの姿はノーマルでしたが、ガラルの姿ははがねタイプであり、ニャースの進化先もペルシアンではなくニャイキングとなっております」
グレーのボサボサな毛が特徴のガラルのニャース。
そして、見た目がニャースを一回りほど大きくした感じで、爪が太く、人相が悪くなったように見えるニャイキング。
ニャースはシャクヤ、ニャイキングはピオニーのおっさんが連れてたんだよな。
あとローズ委員長もか。
……………あの一家はニャース好きなんだろうか。
「ニャースはその昔、海洋民族と暮らしていたようで、その環境に鍛えられて爪や額の小判が黒鉄に変化したとされています。毛がボサボサなの満足に溶け込むためらしく、海洋民族よろしく非常に好戦的です。また船の上で生活するに辺り、四足歩行のペルシアンでは不便なのもあって、ペルシアンとは別の進化先を手に入れたのではないかとされています。ニャイキングは爪を伸ばせば短剣にもなり、非常に戦いに特化した姿となっておりニャースの頃と大差ない感覚でより鋭い攻撃を仕掛けて来ます」
っていう説明を前回受けてはいたが、特にシャクヤのニャースはにっこにこだったんだよなー………。
現実なんてそんなもんだ。
ユキノもペルシアンがいるけど、ユキノに抱きつかれてるところしか思い出せないくらいだし。
「因みにガラルではニャースには別の姿があるという認識は割と有名で、リージョンフォームという言葉は知らなくとも、なんか違うのがいるというのはトレーナーの基礎と言ってもいいでしょう。それとニャースのキョダイマックスの姿はカントーの姿にしかありません」
確かにそう言われるとそうか。
ガラルの姿のニャースがいるのに、キョダイマックスはカントーの姿ってのは違和感しかないだろう。
とは言っても、ダイマックスが発生するのなんて基本的にはワイルドエリアだし、そのワイルドエリアで見つけるのも一苦労だからな。いっそ知らない人の方が多いかもしれない。
「前回の資料を前以て頂きましたけど、ニャースにはアローラの姿もあるのですよね」
アララギ博士がペラペラと紙を捲りながら呟いた。
あ、新規組は前回の資料ももらってるのね。
だから前回のも含めてってことか。
まあ、そうじゃないと話についてこれない可能性があるからな。
ある意味、内輪で、理解してる前提での話になっていくし。
「そうみたいですね。前回の資料と今回に合わせて用意した資料を見ていくと、リージョンフォームの中でもニャースは特に特殊な事例と言えるでしょう。カントーの姿、アローラの姿、ガラルの姿、そしてカントーの姿のキョダイマックスの姿。メガシンカなどもある中で、これだけの様々な姿が確認出来るのは中々ないことだと思います」
それでいくとリザードンも特殊な事例だよな。
メガシンカがXとYの二種類あった上でキョダイマックスの姿があるし。もしかするとそういうポケモンに作用するエネルギーの影響を受けやすい種族なのかもしれない。
「次にポニータとギャロップですね。ポニータがエスパータイプ、ギャロップがエスパー・フェアリータイプになります。元々炎で出来ていた鬣はもこもこしたパステルパープルとパステルグリーンの毛が入り混じったものになり、クリーム色に近かった体色も純白に近いものとなっています。ただ、ガラルの姿はカントーの姿よりも勇猛果敢に攻めてくる気質があり、見た目に惑わされてはいけないポケモン、というのがガラルでの認識です」
ポニータもギャロップも白い身体に炎だった鬣がもこもこな毛に変わっている。しかもギャロップはロン毛というね。
魔女の婆さんのところへ行く途中にある森、ルミナスメイズの森って言ったっけ?
確かあそこで見かけたはず。
でもバトルで誰かが使ってきたって記憶はないんだよなー、意外と。
「足先の毛にサイコパワーを溜めておけるようで、それにより時たま空を駆け抜けていく姿も見られるので、森の中では上からの攻撃にも注意が必要です。あとカントーの姿に比べて一本角が発達しており、角の振り回しによりサイコカッターが飛んでくることもあるので要注意です」
フェアリータイプだから婆さんなら連れてそうなのだが、意外にも連れていなかったんだよなー。
「次はカモネギとネギガナイトですね。カントーの姿のカモネギには進化先がありませんでしたが、ガラルの姿にはネギガナイトという進化した姿があります。元々はガラルでもカントー姿だったのだと思われますが、ガラルのネギは太い品種が一般的で、それを振り回している内に飛ぶ力を失い、筋力が発達しリージョンフォームに至ったと考えられています。タイプノーマル・ひこうタイプからかくとうタイプへと変化しており、さらに同じ相手の急所に何度も攻撃が当たればネギガナイトへ進化するとされています。恐らく、弱点を見極める集中力とその一点に全力を叩き込む集中力、というのが大事なプロセスなのだと思われますが、どういう原理なのかはまだ解明に至っていません。ただ、やはり進化したネギガナイトもガラルの太いネギを盾と刃の代わりにして戦い、進化の過程で得た集中力を武器に歴戦の騎士のような強さになります」
出たよ、カモネギとネギガナイト。
カモネギはグレー寄りの身体が茶色に変わっており、ネギも太く長くなっている。そんなネギをスパンと斬られて剣と盾にしちゃってるのがネギガナイトである。
………ネギガナイトも結局、見てないような気がする。
太いネギを引き摺っていたカモネギはワイルドエリアでよく見かけたんだけどな。
「次はバリヤードとバリコオルです。最初の姿であるマネネに変化はありませんが、ガラル地方で進化するとこおり・エスパータイプのバリヤードへと変わり、さらに成長するとバリコオルへと至ります。見た目やタイプ以外に特徴的な変化としては、カントーの姿はパントマイムを得意としていましたが、ガラルの姿はタップダンスを得意としており、リズミカルな動きで相手を翻弄してきます。あとカントーの姿より脚が長くなっており、リージョンフォームの過程で脚が重点的に変化したことが伺えます。そして、進化したバリコオルは氷で出来たステッキを加えたタップダンスを得意としており、バリヤード以上にリズミカルな動きで相手を翻弄し、時に笑いを取りに行き、その隙に凍りつかせるという恐ろしさがあります」
青いバリヤードは見てないな。雪山に行ってないし、ワイルドエリアだとどこを生息地にしていたか覚えてないし。
ただ、バリコオルはダンデが連れてたからバトルまでしたな。
何やかんやでドラミドロとキングドラを倒された記憶があるし、二体ともドラゴンタイプだったのもあるが、フリーズドライがかなり痛かった。
ピンポイントでドラミドロとキングドラ相手にぶつけてきたダンデの采配が上手かったとも言える。
それにしても………。
「なんかバリコオルの話だけ実感こもってね?」
「………昔、ダンデ君にやられたのよ」
「ああ………」
こいつも経験者だったか。
俺の時は笑いを取りにいったりとかはしてなかったと思うが、ソニア相手には余裕だったってことか?
「姉さん、バリコオルって……」
「シズカちゃんが連れてるねー」
おっと?
いつの間にかシズカさんが捕まえてたのかよ。
まあ、あれから数年経ってるようだし、復活してるならいいことだ。
「いるんだ」
「シズカちゃんの実家に預けていたポケモンを呼び戻す際に、一緒にマネネが着いてきちゃったのよ。で、そのまま鎧島にも連れていったもんだから、ガラルの姿に進化したってわけ」
ああ、そういう流れね。
というか実家に預けていたポケモンがいたのか。
そりゃ、通りで昔のシズカさんの手持ちポケモンが少ないわけだ。
「因みに呼び戻したポケモンは?」
「ピクシーとブーバーンとトゲキッス」
「かくとうタイプじゃないんだ」
てっきりかくとうタイプばっかりなんだと思ってたわ。
恐らくカントーやジョウトで捕まえたってことなんだろうけど。
「そういうイメージになっちゃってたから、戻しにくかったんだって」
「可愛いかよ」
意外と乙女だな。………今もか。
というか、そういう話をハルノにはしてるんだな。
「続いてサニーゴとサニゴーンです。太古のガラルでは恐らくカントーの姿のサニーゴが生息していたと考えられており、隕石による急激な環境変化で淘汰され絶滅したのが、自らをゴーストタイプに変化させることで復活したと考えられています。この話を聞いたダンデ君がシニーゴと言い出したので、頭を叩いた記憶があります。そして、近くにいたサニーゴもダンデ君の反応を見ていたのか、怒りで霊力が爆発し、サニゴーンへと進化しました。皆さんもサニーゴの前でシニーゴとは絶対に言ってはいけません。進化してでも暴れ出します」
「急に思い出話入れてきたかと思えば、注意喚起かよ」
何やってんだ、ダンデ………。
なんか、本当にソニアが苦労してたんだなって改めて感じるわ。
「いや、だって、本当にヤバかったんだって。呪い殺されそうだったんだから」
相当怒られたんだな。
どこかでキバナかネズに話してみよう。知ってるかもしれないが。
「因みにソニアはなんて思ったんだ?」
「…………シニーゴ」
顔を逸らしてそう呟くソニア。
だよなー。
俺も第一印象はシニーゴだもん。
ただ、恥ずかしかったのか、ソニアの顔が赤くなっている。
「サニゴーンならいるよ?」
白いサニーゴと言えば、で思い出してユイを見たら、丁度ポロリと呟いた。
「あ、進化したんだ」
「白いからラムネって名前にしたんだけど、なんか進化したら皆から白い盆栽って言われてるの」
「白い盆栽……………」
また食いもんをニックネームにしてたり、変な比喩を使ったり。
相変わらずだな…………。
「盆栽………」
ほら、みんな盆栽発言に言葉を失ってるぞ。
「盆栽にしてはちとデカ過ぎるじゃろ」
「そういう問題ではないと思うよ、お祖父ちゃん」
頓珍漢なことを言うオーキドのじーさんを横でグリーンが諌めた。
耄碌してるのか、このじーさん。
「気を取り直して。次はジグザグマ、マッスグマ、タチフサグマです。この種族はちょっと特殊で、ガラルの姿が原種とされています。つまりホウエンの姿がリージョンフォームということになりますね。その過程で進化が失われ、退化したとも考えられています。タイプは三体ともあく・ノーマルタイプ。ホウエンの姿がノーマルタイプであることから、ガラル地方に比べて他の地方はジグザグマたちにとって生存競争が緩く、あくタイプも消えてタチフサグマである必要もなくなったという説が濃厚です。逆を言えば、ガラル地方は他の地方より生存競争が激しいということであり、気勢が荒く、あくタイプがあるのも納得かと思われます」
ネズか。
タチフサグマはネズのイメージしかないわ。白黒の縞々模様がどうしてもあいつの頭を彷彿させてくる。
「サイカくんのタチフサグマは面倒見のいいお兄ちゃんって感じだよ?」
あ、なんかトツカもジグザグマを捕まえたとか話してたもんな。
そうか、タチフサグマまで進化したのか。ネズのは性格が柔らかいのだろう。
まあ、アレはアレでしっかりしてたとは思うけども。それでもやはりネズのポケモンってなるとどうしても、ねぇ?
「それは多分、トレーナーがトツカ君だからよ」
ユキノの言う通り、それは大いに有り得るだろう。
「あくをも浄化する大天使トツカエル」
「まーた何か変なこと言ってますよ、この人は」
いや、そういうことだと思うんだよ。
だってトツカだし。
イロハも一度、トツカに浄化されて来い。
「次はダルマッカとヒヒダルマです」
「うっわぁ………」
画像が出された瞬間、イロハが声を漏らした。
白いダルマッカとヒヒダルマを見ただけで、そんなげんなりした顔になる?
「ヒヒィ」
「いや、出てくんなし」
あ、いるのかよ。
勝手に出てきてるし。
「あ、ヒヒダルマいるんだ。見ての通り雪だるまです。タイプはともにこおりタイプ。イッシュの姿はほのおタイプですが、ガラルの寒冷化に伴い今の姿に変化したと考えられています。ただ、ヒヒダルマには特性ダルマモードというものがあり、体力が減ってくるとフォルムチェンジします………って、めっちゃ舐めるじゃん」
ソニアが説明している間、イロハはヒヒダルマに押し倒されて舐め回されている。
「はーなーれーろー」
なんか見覚えあるな、この光景。
冠雪原で…………え、アレ?
「冠雪原で初対面にも関わらず言うこと聞いてたり、舐めたりしてましたし」
「あ、やっぱりあの時のヒヒダルマなのか」
「そう。結局もう一回冠雪原行った時に連れ帰ってるんだよ、あの人」
コマチがやれやれって感じで呆れている。
何だかんだで結局連れて帰っちゃったのか。
多分、間違いなくオスだろうな。
イロハのポケモンのオスは、こんなのばっかだし。あ、でもフライゴンとガブリアスは進化してもう落ち着いてる、か?
「あーもう、舐めんなって。ほら、どうせ出てきたんだからフォルムチェンジでもしてみなさい」
体力が減ってるとは思えないのに無茶な要求をしてみせるイロハ。
「ヒヒィ」
「いや、出来るんかい!」
それに何事もなく応えるヒヒダルマ。
うん、こいつもヤバいのの一体なのは確定だな。
「…………彼女のヒヒダルマは色々と謎が多いですが、このように炎の雪だるまへと変化します。リージョンフォームによって体内の炎袋が退化し、代わりに冷却器官が発達したと考えられていますが、ダルマモードを持つヒヒダルマはフォルムチェンジにより、一時的に炎袋が活性化し、イッシュの姿並の炎を作り出せるようになります。タイプはもうお分かりかと思いますが、こおり・ほのおタイプに変化します」
ソニア、よく状況で淡々と説明を続けられるな。
そんじょそこらの肝の据わり方ではないとは思っていたが、やっぱりダンデに鍛えられたのが大きいのだろうか。
「次はヤドン、ヤドラン、ヤドキングです」
ソニアがヤドンたちの説明に入ったことで、イロハはヒヒダルマを強制的にボールへと戻した。戻る時は素直なんだな。
「タイプはヤドンがエスパータイプ、ヤドラン、ヤドキングがどく・エスパータイプとなります」
頭が部分的に黄色いヤドン、頭が部分的に紫色のヤドラン、シェルダーに頭を呑み込まれたヤドキング。
リージョンフォームしても、ぼーっとしてる種族なんだよな。
「ガラルの姿と言っても、主に生息しているのはガラル本土ではなく鎧島で、鎧島にはスパイスの一種であるガラナツが生育されており、その種を好んで食べていたヤドンが世代を超えて体内にガラナツの成分を蓄積させてしまったことで変化を遂げたとされています。ガラナツの成分の影響で尻尾の味も変化しており、カントーの姿よりもスパイシーで、結構辛かったですね」
辛かったですねって………。
「尻尾食ったことあるんのか」
「ハチくんはないの?」
「ないなー。ガラナツの実は食ったことあるけど。アレは辛かった」
「実をそのまま食べたら激辛だからね?」
いやもう、ほんと。
アレは口にしてはいけないと思う。
「ヤドランはガラナツの実や蔦でリースにしたものを左腕に巻くと、シェルダーが真っ先に反応し、噛みついた結果、ヤドランに進化したと考えられています」
何故左腕なのかは謎だけどな。
俺も野生のヤドンに知らずにやっちゃってヤドランに進化させちまったから、しばらく進化した身体で動けるように面倒見ていたのが、結局俺のポケモンになったというね。
「ヤドキングはカントーの姿と同じく頭をシェルダーに噛まれていますが、顔面の上半分くらいまで噛まれており、ヤドンとシェルダーの脳がリンクしたことでシェルダーの知能が大幅に発達し、ヤドンを操っている状態です。なので、本体はどちらかというと頭のシェルダーということになりますね」
…………そう言えば、ヤドキングの方って実物見てない気がする。
「ヤドランもヤドキングもガラルの姿はシェルダーに噛まれることで体内のガラナツ成分が化学反応を起こし、どくタイプが追加されるにまで至っています」
そう聞くとガラナツが凄い猛毒に聞こえるんだけど。
こっわ………。
もう二度と口にしない。
「中々のポケモンたちじゃのう。元々が変わった関係性のポケモンであったが、ガラルの姿になると一段とおかしな関係に見えてくるわい」
「そうですね。タイプもみずタイプが無くなり、どくタイプに変わってますからね。液体を操作するっていう点においては変わってないのかもしれませんが、ヤドン系統はその…………考えが読めませんから………」
ぼーっとしてるからな。
けど、進化すると幾分か読めるようになると思う。
「ハチくんもヤドラン連れてたよね」
『いるぞ』
「ひゃあ!?」
ソニアが俺に確認したのに、どこからともなく現れたゲッコウガがソニアを驚かせている。
『ほれ』
「ヤン?」
そしてボールからヤドランを出してきた。
「おお、久しぶりだな、ヤドラン」
「ヤーン」
手を振るとフリフリと返してくる。
「私もヤドランならいるわよ」
それを見たユキノが対抗するようにカントーの姿のヤドランを出してきた。
「あ、ヤドキングなら私もいますよ」
ついでイロハもヤドキングを出してくる。
やっだー、こんなにヤドン系がいるなんて………。いないのはガラルのヤドキングだけか。
いたらいたで不気味だろうけど。
「いないのはガラルの姿のヤドキングだけか」
「こうやって並ぶと圧巻だな」
グリーンたちがじっくりと観察するように彼らを見ている。
「ヤン」
「ヤン」
『お前らヤンヤンうるさいぞ』
当人たちは気にすることなくヤドラン同士でお互いにやり取りし、ヤドキングがそれを叱っている。
というかマジでヤンヤンってしか言ってないのか。
普通、ポケモンって鳴き声でやり取りしてるってのに、こいつらは………。
「あ、こっちも喋るんだ……………」
あ、ソニアのライフが大きく削られたような気がする。
ゲッコウガに続いてヤドキングまで喋るもんだから、ソニアが頭を抱えていた。
「ハチマンのヤドランが付けているのはかいがらのすずか?」
「そうだけど?」
グリーンに聞かれたので答えるとソニアが復活してきた。
「………まあ、この人の発想は変わってますから。左腕に巻貝があるから、右腕にかいがらのすずを身に付けて、二刀流のシェルブレードで暴れ回るというヤドランの本来の戦い方をしてないんですよね。しかも何が嫌って、かいがらのすずで地味に回復もしてくるから、一度流れに乗せてしまうと中々手の付けようがなくなるんですよ」
「お前………」
ソニアの愚痴とも言える説明を受けて、残念なものを見る目でこちらを見てくるグリーン。
「や、だって、ねぇ? 片方だけ貝があるのは違和感半端ねぇじゃん? それならかいがらのすずを右手に付けさせて、折角貝が両方にあるんだから、シェルブレードを二刀流でいけるんじゃね? ってなって出来ちゃったんだからしょうがない」
つまり、何気にヤドランが優秀だったのが悪い。
「うーわ、出たよお兄ちゃんのとんでも理論」
「しかも地味にポケモンたちがそれに応えられちゃう個体ばかりが仲間になっていくから、思考に歯止めが掛からないのよね………」
「あと打ち合いの最中に左腕から毒も飛ばしてくるんですよ? 性格悪いと思いません?」
「性格が悪いのは今に始まったことではないぞ。昔からじゃよ」
上からコマチ、ユキノ、ソニア、オーキドのじーさん。
お前ら、好き勝手言い過ぎだろ………。
「僕はそういうハチマン君を見てると楽しいよ?」
「私もそういう話、聞く分には好きよ?」
「慰めにもなってねぇ…………」
くそぅ、このドS御曹司にドS女帝め。
他人事だからっていい笑顔楽しんでじゃねぇよ。
もういいよ。
気にしたら負けだ。
それよりも一つ聞いておかないとな。
「なあ、お前ら今日の手持ちって今回紹介されそうなポケモンにしてるのか?」
「まあ、そうね。実物を見せることになるかもってことで連れてきてはいるわ」
「あたしも」
「私もですねー」
「どうせならって、ねぇ」
『オレも今回はお前のポケモンばっかりだぞ』
「あれま」
全員、博士たちに協力的だこと。
隣の変態は研究が捗ってさぞかし潤っていることだろう。
今度何か奢らせよう。
「次はマタドガスですね。ガラルのドガースはカントーの姿のままなのですが、進化するとリージョンフォームになり、姿が変わります。ガラルのマタドガスは何と言っても頭の煙突ですね。産業が発展していく上で問題となった大気汚染が深刻な時代に大量発生したマタドガスが汚染された空気を吸収していく内に、排泄器官が発達して頭に煙突が出来上がっていったと考えられています」
紫色だった体色が黒寄りのグレーになり、頭には煙突が。
ただ、何と言っても、タイプがどく・フェアリーになるんだよな。
しかもフェアリーだからか、ピンクの婆さんが連れてるんだが、どうしても違和感しか感じないのだ。
あの婆さん、可愛い系のフェアリータイプで固めてるくせに、マタドガスも連れてるから、趣向がさっぱり理解出来ない。元々、そんなつもりはなかったとか言われたらそれまでなのだが、あの人の感性だけは一生理解出来ないと思う。
「こんな見た目ですが、タイプはどく・フェアリータイプです」
「うぅ、フェアリー………」
「どした、コマチ」
「ジムチャレンジの時にジムリーダーに魔女がいて………」
「「ああ………」」
お前も経験したのか、あの婆さんを。
そして、ソニアも何を指してるのか察したらしく、うんうんと頷いている。
そうね、君もあの婆さんがトラウマだもんね。
ジムチャレンジで敗北した相手だし。
俺としてはピンクピンクうるさいくせに、好きな色はパープルっていうのが、今でも解せん。
「あっ」
パープルで思ったが、ドガースは紫色だから捕まえたとかっていうオチじゃないよな?
「なに? どしたの?」
「いや、あの婆さんってピンクピンクうるさいくせに、好きな色は紫じゃん?」
「うん、あの引っ掛け問題ね」
「ドガースも紫色じゃん?」
「ドガースはリージョンフォームしてないから…………えっ、そういうこと?」
どうやらソニアも俺と同じ考えに至ったようだ。
「えーっと、つまりポプラさんがマタドガスを連れてるのは、進化前のドガースが紫色だからじゃね? ってこと?」
「そう」
コマチもようやく考えに行き着いたらしい。
「まあ、確かに? 可愛い系のポケモンが多い中でマタドガスがいるもんね。違和感しかなかったから、その可能性はあるかも」
「だろ?」
というか二人もマタドガスを連れてることには違和感を覚えてたんだな。
「ガラルの謎が一つ解明されそうってことで。えー、続いてはデスマスとデスバーンです。イッシュの姿が身に付けているデスマスクの代わりに赤い模様が描かれた粘土板を身に付けています。この粘土板は呪われた太古の遺物であり、デスマスの怨念に引き寄せられる形で融合し、怨念のパワーを吸収しているという、ちょっとさっきのヤドキングに近いものがあります」
デスマスはあの白いお面の子が連れてたっけ?
あとは日の暮れたワイルドエリアで見かけたくらいか。
だからこうして並べてみて、初めて目の部分が紫色に変わってるって知ったわ。
デスマスの特徴って、金色の仮面を持ってたのが、模様の入ったグレーの板の破片になってるなーってくらいだったし。
「進化するとデスカーンではなくデスバーンというポケモンになります。デスマスが持っていた粘土板が完全化し、それがデスマスの魂と一体化した姿で、粘土板に描かれた蛇のような絵の目の部分が魂部分の単眼になっており、一部のパーツが腕と一体化して動くので、完全に本体が粘土板に置き換わっています」
デスバーンも実物は見たことがないな。
デスマスの持っていた模様付きの板の完全版ってことなんだろうけど、あの模様が何を意味しているのかは謎である。
「また粘土板の影響からか、じめん・ゴーストタイプへと変化しています」
あ、じめんタイプってそこか。
ということはやっぱりあの粘土板にも力があるというわけで、あの模様にも意味があるのだろう。
「次はマッギョですね。タイプはじめん・はがねタイプ。主に洞窟などに生息しており、鉄分を多く含んだ泥の中で生活していた結果、身体が頑丈な鋼に変化していったと考えられています。逆を言えば、マッギョが生息している場所は地下に鉄が眠っている可能性が高いということでもあり、鉱山関係者は挙ってマッギョの生息域を調べていた時期があります」
俺も第二鉱山で噛まれそうになったもんな。
マジで見分けつかないのよ。
しかもガラルのは黒っぽくなってるから、洞窟内だと見えないったらない。
「また見てお分かりかと思いますが、モンスターボールに見える部分があるかと思いますが、あれは突出した唇です。モンスターボールと間違えて拾おうとしようものなら、身体を半分に折って、トラバサミのように挟んでくるのでとても危険視されています」
変に強いポケモンに遭遇するよりも危険かもしれない。
それくらい洞窟内でのガラルのマッギョは危険である。
「最後はフリーザー、サンダー、ファイヤーです」
はい?
フリーザー、サンダー、ファイヤー?
「あ………」
「どした、コマチ」
するとコマチが出された画像を見て固まっていた。
「あの黒いの、コマチ襲われたことある」
マジで!?
「いつ」
「シャドーに襲われた後、冠雪原で」
シャドーに襲われた後………つまり、俺が通話越しに聞いていた後の話ってことか。
その後、ピオニーのおっさんに保護されたが、おっさんはそんなポケモンがいたとは何も言ってなかった。
「それはつまり………ピオニーのおっさんに………」
「うん、助けられる前」
何てこった…………。
泣きっ面にスピアーもいいところである。
あんな恐怖を味わった直後にまた未知の恐怖に襲われるとか、よく生きていてくれたと思うわ。
「厳密に言えば、リージョンフォームであろうって段階ですね。長年ガラルにもフリーザー、サンダー、ファイヤーがいるとされており、目撃情報も度々あったのですが、今回ようやく三体をそれぞれ仲間にした子たちがいたので、データを集めているところです」
お、おぉ………。
捕まえた奴らがいるのか。
というか伝説のポケモンがリージョンフォームってどゆこと?
三体とも複数いる可能性が高いってことか?
その上でガラルに飛来する三体はリージョンフォームに至ったと?
「タイプはそれぞれフリーザーがエスパー・ひこうタイプ。サンダーがかくとう・ひこうタイプ。ファイヤーがあく・ひこうタイプでした。私がホウエン地方で学んだカントーの姿に比べるとフリーザーは冷淡で冷徹、サンダーは好戦的、ファイヤーは獰猛で傲岸不遜な性格です。あとサンダーは翼が退化しており、その代わりに強靭な脚力を得て、走り回っています」
黒いのがファイヤーね。
獰猛で傲岸不遜………本当、よく生きてたな。
薄い紫っぽくなったフリーザーも夜の女王様とかが付けてそうなマスクのような目元になってるし、オレンジ色のサンダーは………ん?
「走り回るとは………?」
サンダーは走り回ってるとか言ってなかったか?
「要するにガラルのカモネギと同じ感じと思えばいいよ」
「マジでそういう感じなのか?」
「うん、そういう感じだった」
マジかー………。
しかもこいつもかくとうタイプになってるみたいだし、ひこうタイプを持つポケモンがかくとうタイプが加わると飛べなくなるのだろうか。
……………いや。かくとう・ひこうタイプのルチャブルは飛べるか。あ、でも飛ぶというよりは滑空…………それでも風を読む力はあるっぽいし、海を越えるような長距離は無理でも普通に移動する分には飛べるもんな。
分からん。
「以上が一応こちらで調べられたガラルの姿のポケモンたちの情報です。何か質問はありますか?」
うん、分かったこともあったけど、謎が増えたのも事実。
そして、それをソニアにぶつけたところで、いい返答はないだろう。
「無さそうなので、次いきまーす」