ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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144話

「次は………メガシンカについてですねー。プラターヌ博士、お願いしまーす」

 

 お、メガシンカも何かやるのか。

 

「前回参加された方は理解されてらっしゃるとは思いますが、一応メガシンカについて軽く説明しておくと、バトル中限定で起きる最終進化形であろうとさらに姿を変える現象をメガシンカと言います」

「進化を超えたメガシンカ、というやつですね」

「マーベラス! そのキャッチフレーズを頭に入れてくれておいでなら話は早い!」

 

 どうやらイッシュ地方でもそのキャッチフレーズは浸透しているようだ。

 何気にすごいことだよな。

 こんな変態の研究が他地方でもキャッチフレーズとして浸透してるとか。

 

「そしてこれが、これまでに発見されているメガシンカポケモンになります」

 

 そう言ってモニターの画面を切り替えると、メガシンカポケモンがずらりと並んだ一枚を見せてきた。

 

「左上から、メガフシギバナ、メガリザードンX、メガリザードンY、メガカメックス、メガスピアー、メガピジョット、メガフーディン、メガヤドラン、メガゲンガー、メガガルーラ、メガカイロス、メガギャラドス、メガプテラ、メガデンリュウ、メガハガネール、メガハッサム、メガヘラクロス、メガヘルガー、メガバンギラス、メガジュカイン、メガバシャーモ、メガラグラージ、メガサーナイト、メガヤミラミ、メガクチート、メガボスゴドラ、メガチャーレム、メガライボルト、メガサメハダー、メガバクーダ、メガチルタリス、メガジュペッタ、メガアブソル、メガオニゴーリ、メガボーマンダ、メガメタグロス、メガミミロップ、メガガブリアス、メガルカリオ、メガユキノオー、メガエルレイド、メガタブンネとなります。全部で四十一体、四十二種」

 

 こうして並べてみると結構いるな。

 それでもポケモン全体のほんの一部でしかないってんだから、ポケモンという生き物がどれだけ多いかが伝わってくる。

 

「さらに伝説のポケモンにもメガシンカするポケモンがおり、メガラティオス、メガラティアス、メガレックウザ、メガミュウツーX、メガミュウツーY、メガディアンシーの五体、六種。特にメガレックウザはメガシンカの始まりのポケモンでもあり、メガシンカのメカニズムを解読する上で重要なポケモンとなっています。そして、そのレックウザに関連する話だと、グラードンとカイオーガにはメガシンカに似た現象、ゲンシカイキした姿も確認されています。人との絆で姿を変えるメガシンカに対し、ゲンシカイキは古代の超自然の力を取り込むことで本来の姿に戻るというメカニズムになっており、それが原因でホウエン地方大災害などが起き、それを鎮めるためにホウエンの地に降り注ぐ隕石を食べたレックウザが、人々の祈りに呼応してメガシンカしたと伝承には残っています」

 

 さらに伝説のポケモンや暴君様、ゲンシカイキするグラードンとカイオーガも映し出された。

 うん、やっぱり二種類あるのがリザードンと暴君様だけってのはおかしな話だわ。

 あいつは人工的に作り出されたポケモンだから、後からメガシンカ出来るように人工的にメガストーンを作ったと言われても納得出来るし、恐らくカツラさんもそうやって作り出したのだと思う。

 だが、そうなるとリザードンが二種類あるのがよく分からない。何故リザードンだけなのか。他のポケモンは二種類ないのは何故なのか。

 ……………まだ無理だろうな、そんなとこまで突き止めることなんて。

 

「それについては事実ですね。僕も実際に関わりましたから」

「ホウエンの大災害。世界的にニュースになったからのう」

 

 ダイゴさんがホウエン地方の伝承については、事実だと肯定し、オーキドのじーさんが事件当時を思い出しているようだ。

 俺、あの頃何してたっけな。

 ロケット団殲滅作戦?

 

「また、ここにいるハチマン君のゲッコウガが特性を利用して擬似的にメガシンカするという類似例もあり、ポケモンとはメガシンカ一つをとっても複雑怪奇な存在と言えるでしょう」

 

 まあ、この中で一番謎なのはお前なんだけどな、ゲッコウガ。

 結局、お前のそれはメガシンカでいいのかフォルムチェンジなのか、よく分からん。当の本人もやってみたら出来ちゃったってノリだから、分かるわけがないし。

 とは言え、過去にそういうゲッコウガがいたって伝承が残っているわけだし、初めてというわけでもない。

 すなわち、ゲッコウガというポケモンは、初心者向けのポケモンであるのと同時に、ウルガモスのように伝説のポケモンではないが、伝説に近いポケモンである可能性が高い。

 …………………テレパシー使えて、トレーナーとして他のポケモンを使ってバトルするポケモンが普通であってたまるか。

 

「あの………ミュウツーというポケモンは………?」

 

 なんて考えていたら、アララギ博士がおずおずと手を挙げて質問してきた。

 そりゃそうか。ミュウツーを知ってる奴なんてほんの一握りもいないんだし、知らなくて当然だわな。

 ある意味、ここにいるのって、何やかんやミュウツーやロケット団に縁があるから、見たり聞いたりしてる人しかいないし。

 

「あー……かつて………今もか? カントーの裏社会に根を張っていたロケット団って組織が、幻のポケモンであるミュウの細胞から新たに生み出したポケモンがミュウツーです。戦闘特化に作られたために、その力は絶大。知能も高く、それ故に勝手に作り出されたことに怒り、ロケット団に反旗を翻したってくらいには凶暴ですよ。今は半身を分かち合ったとも言えるトレーナーとどこかで暮らしてるんじゃないですかね。意外とまだカロスにいたりして」

 

 フレア団事件以降、あの暴君様はカツラさんとどこへ行ったんだろうな。

 今もまだエイセツシティの南西にある森にいるのだろうか。

 

「詳しいですね」

「あー、この人一時期連れてましたんで」

「はっ?」

 

 俺が答えるより先にイロハが答えてしまい、アララギ博士たちの目が点になっている。

 

「黒マントと白アーマー、なんて通り名でカントー中の犯罪組織を潰し回ってますし。忠犬ハチ公の相方とも呼べる存在、かしらね」

 

 続けてユキノが懐かしい通り名を口にした。

 あったね、そんなのも。

 ロケット団残党の殲滅作戦が面倒になって、片っ端から犯罪組織を潰し回ってた時に、何かそんな風に呼ばれてるってのを聞いたわ。

 ただ、お前たち。

 

「アレが相方とかないわー………。文句ばっか言ってくるし、人のこと扱き使うし、暴君が過ぎるっつの」

 

 アレはあくまで暴君様であって、それ以上もそれ以下でもない。

 相方やら相棒なんて呼び方は、多分あいつも嫌がると思う。

 

「利害が一致してただけで、俺が奴のトレーナーになったんじゃなくて、あいつが行動するために俺が利用されてただけだからな?」

「アレに使えると思われるだけで相当なことよ」

 

 それはそうかもしれないが。

 その代償が面倒事がやってくるってことなんだから、アレに認められてもそんないいもんじゃないぞ。

 

「羨ましいと思うか?」

「いや、全く」

「デスヨネー」

 

 俺たちのやり取り見てたら、そう思うよな。

 逆に羨ましいなんて言われたら、どうぞどうぞとこの席は譲ってやるってのに。

 

「というのが、ミュウツーというポケモンに認められたハチマン君の感想ですが、話を戻すと伝説のポケモンたちを合わせると総勢四十六体、四十八種。リザードンとミュウツーにX・Yの二種類があるため、数のズレが生じています。ここまではいいですね?」

 

 何か言い方に含みを感じるのは俺だけだろうか。

 そんな念を押すように確認して、何を取り上げるつもりなんだ?

 もしかして新種か?

 

「そして、次に紹介するのは新たに発見されたメガシンカです」

 

 新種だったわ。

 俺がいない間に新たなメガシンカした姿を発見したってことだ。

 

「左上からメガライチュウX、メガライチュウY、メガピクシー、メガウツボット、メガスターミー、メガカイリュー、メガメガニウム、メガオーダイル、メガエアームド、メガチリーン、メガムクホーク、メガユキメノコ、メガエンブオー、メガドリュウズ、メガペンドラー、メガズルズキン、メガシビルドン、メガシャンデラ、メガゴルーグ、メガブリガロン、メガマフォクシー、メガゲッコウガ、メガカエンジシ、メガニャオニクス、メガカラマネロ、メガガメノデス、メガドラミドロ、メガルチャブル、メガケケンカニ、メガグソクムシャ、メガジジーロン、メガタイレーツ、メガスコヴィラン、メガキラフロル、メガシャリタツ、メガセグレイブの三十五体、三十六種です」

 

 多くない?

 まだ三年経ってないよね?

 そんな短期間で三十五体も見つけるとかヤバくね?

 

「さらにこちらをご覧下さい。この三体はそれぞれメガアブソルZ、メガガブリアスZ、メガルカリオZ。既にメガシンカの姿がある三体の二種類目の姿です」

 

 まだいたよ。

 つか、Zって何よ。

 ライチュウみたいにX・Yで良くね?

 

「X・Yに振り分けるんじゃないんだな」

「それなんだけどね。一応、X・Yに振り分ける時の定義を決めていて、Xは物理面、Yは遠距離攻撃面が強化されるっていうものにしてるんだ」

 

 ……………言われてみれば、そうか。

 とは言ってもリザードンが基準になるんだろうけど、あの暴君様も物理と遠距離型に分かれるんだった気がする。

 それでいくとライチュウは綺麗に分かれてたから、分類しやすかったってことか。

 

「ライチュウは一気に二種類発見出来て、且つそれに該当したんだけど、アブソル、ガブリアス、ルカリオは従来のメガシンカと比べて、もう片方の攻撃面が強化されるってわけでもなくて、共通するのが素早くなるってことだったんだ。だから新しく素早さが強化されるZという項目を作ったんだよ」

「ほーん」

 

 つまり、アブソル、ガブリアス、ルカリオの新たなメガシンカはそれだけ明確な差があったってわけだ。

 一体、どれだけ素早くなったって言うんだよ。

 けど、そうなると一つ懸念事項は出てくるよな。

 

「従来のメガシンカの中にも素早さが強化されるポケモンもいるはずだけど、それはどうするんだ?」

「今のところ一種類だけだからね。態々Zを付け足す必要はないと思ってはいるけど、新たにもう一種類見つかったってなったら、その新しい姿がどの面で強化されるかに寄るんじゃないかな」

 

 そこは今後発見した新たな姿の能力次第ってことか。

 ………未来の自分に押し付けたな。

 俺も同じ立場ならそうするだろうけど。

 

「まあ、そうなるか。んで? ゲッコウガにもメガシンカが見つかったみたいだけど、俺のゲッコウガのあの姿ではないんだな?」

「それなんだけどね。君のゲッコウガは一応、メガシンカに近いものではあるんだけど、特性で擬似的にメガシンカしているっていうのが強いから、フォルムチェンジって扱いの方が正しいと思うんだ。それこそさっきのヒヒダルマの方に近いんじゃないかと。ヒヒダルマもフォルムチェンジすることで姿が変わり能力が上昇するから、上昇の上げ幅は異なれど、君のゲッコウガもこっちに分類するべきかなって。だから今回見つかったゲッコウガのメガシンカと二種類のメガシンカとするんじゃなく、一種類のメガシンカ。X・YやZに振り分けることもしなかったってことだね」

 

 フォルムチェンジね。

 メガシンカもある意味バトル中に起きるフォルムチェンジではあるからな。

 フォルムチェンジの定義をもっと細かく分類していけば、バトル中のみのメガシンカ、特性によるフォルムチェンジ、使う技によるフォルムチェンジ、道具によるフォルムチェンジ、みたいになるってことだ。そして、ゲッコウガはメガシンカではなく、あくまでも特性によるフォルムチェンジ。

 だから、ゲッコウガのメガシンカした姿には何も付けなかったってことか。

 

「ところで、お前らそういうのでいいのかってメガシンカのタイレーツより後のポケモンたちを知らないんだけど?」

「おや? 君が知らないなんて………」

「いや、知らんもんは知らんよ。何でさも俺が全てのポケモンを知ってる前提でいるんだよ」

「そりゃ、君の知識量は時に僕たちを凌駕することもあるからね」

「いやいやいや、本職の研究者には劣るっての。ただ、博士たちは分野特化型だからちょっと弱い分野があって、俺が知ってることもあるように見えてるだけだろ」

 

 後は実体験があるかないか、の違いでしかない。

 だから俺を何でも知ってるような博士よりも上の位置に置こうとするのはやめてほしいんだけど。

 

「………いつだったか、シズカ君も言ってたじゃないか。僕とハチマン君の会話は理解するのがやっとな時があるって。理解はしていてもハチマン君程、理解は出来てないだろうって」

「なんかそんなことを言ってたような気もしなくもないが、俺一応ただのトレーナーだからな? 経歴やら役職やらは抜きにして」

 

 多分、カロスに来た頃にメガシンカについて話した時のことじゃなかろうか。

 そんなやり取りもあったような気がするが、アレも経験則の違いによるものだろう。

 

「またまたー。君は絶対こっち側なんだって。いい加減諦めなよ」

「嫌だ。アンタと同類になるとか、どんな罰ゲームだよ」

 

 博士たちと同類ってことは、変態一号二号とも同類ってことになるんだぞ。

 絶対に嫌だわ。

 あとじーさんらと同類ってのも何か嫌だ。

 

「あら、類は友を呼ぶとも言うじゃない。そういうことよ」

「さらっと酷ぇこと言うな。やだよ、こんな類友」

「なら、あなたの類友はザイツ君だけね」

「それも嫌過ぎるわ。つーか、いい加減名前覚えてやれよ」

「彼はもう私の中でザイツ君って認識になっているのよ。今更変えられないわ」

「無駄に頑固過ぎる………」

 

 哀れ、ザイモクザ。

 実力は認められてるっていうのに、名前を未だにちゃんと呼ばれないとか。

 

「太っちょ先輩…………ポリゴンZがメガシンカして素早さが強化されたら、メガポリゴンZZになるっていうことですかね……………」

 

 ………………………色々と突っ込みたいところではあるが。

 ザイモクザでポリゴンZを思い浮かべて気になっちゃったんだろうな。

 気持ちは分かる。

 メガニウムがメガシンカ出来るみたいだし。

 

「めでたくメガメガニウムになったんだし、そういう可能性もあるだろうな。ザイモクザが咽び泣きそうだけど」

「あぁ………」

 

 俺がそう返すとイロハ遠い目になった。

 想像出来ちまったのかな。

 俺としてはウザさ加減が、普段の数倍になってそうで恐ろしいが。

 

「彼ならメガメガニウムの存在を知って咽び泣いてたわよ」

「マジかよ………」

「そしてメガアブソルZにメガシンカさせて感極まってたわね」

「しれっとやってんな…………」

 

 何さらっと新メガシンカも既に習得してるんだよ。

 アレか? 背中から飛び出している腕っぽいのに魅入られたか?

 それとも白から黒に変わるっぽいからか?

 絶対その辺の理由で本気でメガストーンを探し出しただろ…………。

 そして、それを何やかんやでユキノが見てるってのが、また何とも言える光景である。

 まあ、ザイモクザはいいとして。

 新メガシンカポケモンの中にダークライがいないのは、やはりまだ知られてないってことでいいんだよな?

 

「ザイモクザのことはいいとして、ダークライもメガシンカするぞ」

「…………………………ハチマン君だもんなぁ……………」

 

 俺がネタを提供してやるとプラターヌ博士が天を仰いで深い溜め息を吐いた。

 

「何でそう遠い目するんだよ」

「いや、だってさ………ねぇ?」

「ねぇ? じゃねぇのよ。俺だって、メガシンカ出来るポケモンが増えてるのを今知ったんだ。それにずっと会えてなかっただろうに」

「そりゃ、そうだけどさー」

 

 納得いかないって顔をされても困るのよ。

 情報提供してやってんだから、有り難く思え。

 

「んで、この中でメガシンカしたらタイプが変わる奴はどれだけいるんだ?」

「メガピクシーがフェアリー・ひこう、メガメガニウムがくさ・フェアリー、メガオーダイルがみず・ドラゴン、メガチリーンがエスパー・はがね、メガアブソルZがあく・ゴースト、メガムクホークがかくとう・ひこう、メガガブリアスZがドラゴン、メガガメノデスがいわ・かくとう、メガグソクムシャがむし・はがねタイプですねー。あとヒードランもメガシンカしますよー」

「…………………………………」

 

 ……………………………………。

 こいつもやってんな。

 ちゃんと新情報も隈なく学習しているところは素直に褒められるが、さらっと新情報まで出してきやがったよ。

 一体誰に似たんだか………。

 

「…………はぁ、何でそういうところを似ちゃうかな、イロハちゃんは」

「諦めて下さい、プラターヌ博士。彼女は元からこうよ」

「ある意味、イロハちゃんも類友…………」

「クズさ加減で言ったら、お兄ちゃんと並び立てますからねー」

「おいこらお米。しばくぞ」

「私は好きだよー、二人のクズっぷり」

 

 頭を抱える変態博士に、ユキノ、ユイ、コマチが畳みかけ、コマチだけイロハに睨まれている。

 あとハルノ、コマチの言葉に同意すんなよ。

 

「ヒキガヤさんたち、容赦なさすぎ………」

「ハチくんが二人いるように見えてきたよ……………」

 

 おっと、ムーンとソニアがドン引きしてるわ。

 そして、未だ空気感に馴染めきれていないイッシュ組。

 流石に可哀想だから、さっさと話を進めようか。

 

「はいはい、クレームは後で聞いてやるから。んで、結局全部で何体いるんだ?」

「えーと、四十六体四十八種にヒードランとダークライも入れて三十七体四十一種だから…………」

「八十三体八十九種ね」

 

 流石ユキノ。計算早いわ。

 

「百種いきそうだな」

「分かってるだけで、だからね。研究を進めていけば、もっと見つかるんじゃないかな」

「気の遠くなる話だな」

「研究なんてそんなもんだよ。逆に分からないから楽しいんじゃないか」

「うんうん、じゃねぇよ。俺にはさっぱりだわ。やっぱりそちら側の人間じゃねぇよ、俺は」

 

 博士一同が首を縦に振っているが、全く以って共感出来ない。

 こっち側だ何だと言われるけども、ここが共感出来ないんだから、俺に研究者は無理だと思う。

 精々、裏で暗躍してるくらいが丁度いいんじゃないか? 俺の性格的にも。

 

「えーっと、取り敢えずこんなもんですかねー。数も数ですし、リージョンフォームみたいに各種族ずつ説明していくと長丁場になっちゃいますし、詳しくは個別にプラターヌ博士から聞いて下さい。と言っても、まだまだ研究段階な面もあるので答えられるかは分かりませんけど。………ここまでで質問ある人はいますかー?」

 

 イロハもさっさと済ませようと淡々と進行し始めた。

 というか勝手にまとめちゃってるけど、大丈夫か?

 

「………一つ、いいか」

「はーい、ククイ博士。お願いしまーす」

 

 そんな中、変態博士二号がすぐに手を挙げた。

 

「前回、ネクロズマについて説明したのをプラターヌ博士は覚えてますか?」

 

 ネクロズマについてか。

 前回の会議でもククイ博士が話題に出したから知ってるくらいで、結局のところ、どういうポケモンなのかは測りかねている。

 

「確か、黒いポケモンでしたよね。アローラの伝説のポケモンともなり得る存在で、ウルトラビーストの最上位種。通称かがやきさま、でしたっけ?」

「ええ、それです。そのネクロズマがソルガレオやルナアーラを一時的に吸収してフォルムチェンジした、という話は覚えてます?」

「ええ、覚えてますよ」

「光のドラゴンに変化したのは?」

「光のドラゴン………? あ、もしかして新たな姿というやつですか?」

「ん? ウルトラネクロズマについては言及してませんでしたっけ?」

「聞いてないですね。ネクロズマがソルガレオやルナアーラを吸収して一時的にフォルムチェンジしていたってのと、新たな姿を得て、捕獲されたとかなんかそんな感じの話だったと思いますよ」

「そうじゃな、ククイ博士も前回さらっと流しておったぞ」

 

 ナリヤ博士も思い出すようにこめかみを人差し指でトントンと叩いている。

 確かにウルトラネクロズマって単語は出てきてないと思うな。

 ネクロズマがチラッと話に出てきたくらいか?

 

「そ、そうですか。なら、まずはウルトラネクロズマについてだな。バーネット、ウルトラネクロズマの推測データを出せるか?」

「オッケー」

 

 するとスクリーンに全身黒いポケモンと銀色のカエンジシ擬きのポケモン、夜空のようなポケモンが並べられた。

 

「まずはこれがネクロズマです。そしてソルガレオとルナアーラ。ネクロズマがこの二体を吸収すると、このような姿にフォルムチェンジします。その名も黄昏の鬣と暁の翼です」

 

 スライドが変わり、黒くなったソルガレオとルナアーラに切り替わった。

 下手するとダーク化したか? と思えなくもないぞ、これ。

 

「そして、これが新たな姿、光のドラゴンであるウルトラネクロズマです。生憎突然のことでしたので、データを正確に取れているわけではないのですが、目にしたままに3Dモデルを駆使して作ってみました」

 

 今度は黄金に輝くドラゴン? に切り替わった。

 これがネクロズマ?

 

「面影ないな………」

 

 まず身体の作りが違い過ぎる。

 身体のパーツが一度分解でもしない限り、こうはならんやろって感じだ。翼とかどこにあったんだよってレベル。

 まあ、それを言ったらソルガレオとルナアーラを吸収した姿も、ネクロズマ要素が黒い部分だけって感じで、お前の身体どうなってるんだって話なのだが。

 

「オレたちはそれをウルトラバーストって呼んでるんですけど、戦闘中に起きたことなので、これもある意味においてはメガシンカに近いものなのではないかなと思ってましてね」

「ワシもこの目で実際見た時、まず思ったのはメガシンカじゃった」

 

 ナリヤ博士も目にしているということは、本当にこうなっていたってことなのだろう。

 それにしてもウルトラバーストね。

 ウルトラビーストが限界突破ーーつまりバーストした姿ってことか?

 

「敢えてそう取り上げるということは、特性や道具が作用しているわけではないと?」

「ただの一回起きた現象ですので、確約は出来ませんがね」

 

 まあ、一度だけの話では検証のしようがないからな。

 そこは仕方のないことだろう。

 

「ただ、オレはもう一つ気になってることがありまして、前回ハチマンのリザードンが見せたホウオウ化は覚えてます?」

「ええ、覚えてますよ」

「アレもウルトラバーストに近いものなのではないかと。話を聞く限りでは人工的にあそこに至ったってのはありますが、限界を突破して姿を変えたという意味では同じではないかと考えています」

 

 なるほど…………。

 レシラム化やホウオウ化はメガシンカした状態からの更なる変化だったが、一時的な限界突破って感覚ではあるからな。だから過剰な負荷が俺たちにものしかかり、レシラム化の際には暴走し、結果的にメガストーンがぶっ壊れ、ホウオウ化の際にはゲッコウガと負荷を分担することで暴走は抑えられ、メガストーンがぶっ壊れることもなかった。

 

「で、実際のところどうなんだ? ハチマン」

「あ、俺に聞いちゃう?」

 

 こんな話をし出したんだから俺にも話を振られるのかとは思ってたけど、本当に振るのね。

 割と答えなきゃいけない雰囲気で、これはどうしたものだろうか。

 俺自身、全貌を把握し切ってるかと言われるとそうでもないし。

 

「そりゃ、お前が当事者なわけだし、知らないわけではないのだろう?」

「そりゃそうですけど。うーん…………俺も全容を把握してるわけじゃないし…………本人に聞くか」

「「「えっ?」」」

 

 あれこれ考えるのも面倒に感じ、電話を掛けることにした。

 ちゃんとあの男の番号は登録されてるからな。

 

「あ、もしもーし」

『………お前の方から掛けてくるとは。何の用だ』

 

 相変わらず、一癖も二癖も感じられる声である。

 あと妙にドスを効かせてくるのはやめてくれませんかね………。

 

「結局、俺とリザードンはどうなるんだろうかとふと思って、アンタに聞いてみようかなと」

『オレが素直に話すとでも?』

 

 いや全くこれぽっちも。

 だってサカキだし。

 だからアンタの礼儀に沿ったやり方で聞き出そうじゃないか。

 

「今、ギラティナがアンタを食べに行こうと準備運動始めててな。死なれる前に俺とリザードンの実験の全容を把握しておきたいなと」

『脅しか?』

「何とでも。ダークライがメガシンカして悪夢も見せようぜってノリノリになってるし、ゲッコウガがシルバーも犠牲にしたら言うこと聞くんじゃね?って暗殺計画立ててるけど、話さないなら話さないで別にいいぞ」

『……………はぁ……………誰に似たんだか』

 

 アンタだよ。

 というかこの手のやり方はアンタにやられたから学習したんであって、普通に生きてたら身につくもんじゃないだろうに。

 因果応報ってわけでもないが、今まで俺に散々絡んできたツケだと思え。

 

『かつて、ロケット団にはイッシキ博士という男がいた。そいつは一般ポケモンを直接伝説のポケモンに昇華させようという『レジェンドポケモンシフト計画』なるものを進めていたが、結論から言うとこの実験は失敗だった。同じ頃、フジという男の思いつきから思案されたカツラの『ミュウツー計画』が本格化し、後に幻のポケモンであるミュウの細胞から人工的にポケモンを作り出すことに成功。だが、ミュウツーは高い知能を持つが故に自分が作り出されたことに怒り狂い研究所を破壊しながら脱走。よって『ミュウツー計画』もまた破談となり、次に計画したのが『プロジェクトM's』という、一般ポケモンをミュウツー並みの強さに引き上げる実験を行ったが、実験体527までは失敗が続き、唯一実験に耐えた実験体528は脱走。528ーーヒトカゲが脱走したことでこの計画も破談。失敗の原因は強化したポケモンを制御出来るトレーナーがいなかったことがそもそもの原因であり、それならばと次に計画したのが『レッドプラン』という、どんなポケモンでも制御出来るトレーナーを作り出す実験を進めたのだ』

 

 チラホラと見つけた資料からそんな感じのことは読み取れてはいたけど、俺が関わるまでにそんな流れがあったのね。

 

『ここまで話せばお前も分かるだろう?』

「『レッドプラン』の対象になったトレーナーが俺ってことだろ?」

『ああ、そして我々の計算外だったのは、後からお前の相棒が実験体528だったことと背後にはダークライがいることが分かったことだ』

 

 あ、そうなの?

 分かってて絡んでたんじゃないんだ。

 ざまぁ。

 

『実験を進めていく中で、ようやく暴走をした時にダークライの力でお前を奪われ、お前がカントーリーグ大会で優勝してくれたおかけで見つけることが出来た。かと思えば、お前はシャドーに拉致されるわ、ロケット団も内部分裂するわ、お前も知っての通りだ』

 

 これが第一回カロスポケモンリーグ大会の話ってわけだな。

 恐らく、フレア団とのドンパチまではデータを取られていたということだろう。

 ということは、だ。

 ロケット団残党の殲滅作戦すらも俺のデータを取るための一手だったとか、そういう見方も出来るわけだ。

 一石二鳥や三鳥を狙うサカキのことだ。有り得なくもない話だろう。

 

「それで、結局こんな失敗作品をアンタが何年も気にしてるのは何故だ?」

『『レッドプラン』と『プロジェクトM's』。この二つの実験が一つになった結果、『レジェンドポケモンシフト計画』が擬似的に起きかねなかったからだ。だからお前たちを監視し、頃合いを見て暴走させると見事にリザードンはレシラムへと変貌した。それならばと暴走の度合いを図り、お前たちがその力を制御出来るようにする薬まで作った。まさかメガストーンの違いでホウオウへと変貌するとは思っていなかったがな。これはこれで新たな発見ではあったさ』

 

 わーお。

 それでレシラム化が起こっちゃったのね。

 しかも媒体がメガストーンだったから、ほのお・ドラゴンタイプにメガシンカするリザードナイトXがレシラムだったのに対し、ほのお・ひこうタイプのままメガシンカするリザードナイトYはホウオウだったのにもなんか納得いったわ。

 なーにこれ、こうやって羅列されると俺たち結構ヤバい存在じゃないですか。

 やだわー………。

 あ、でも冠雪原で薬飲まされたから、もう気にしなくていいんだよな?

 

「つまり、あの薬を飲んだことで本当に暴走することはなさそうなんだな」

『計測論ではあるがな』

「なら、いいや。別にアンタらを許すとかそんな気概は全くないが、俺は大人しく引きこもることになるからな。アンタらも大人しくしててくれよ」

『それは世界情勢次第とだけ言っておこう』

「あっそ。んじゃ」

 

 サカキが大人しくしてるとは思えないけど、これで変に絡んでくることも少なくなるんじゃないだろうか。というか、それを期待したいところである。

 本当にあの男が絡むと面倒でしかないんだよ。

 

「………なんつー重たい話だよ」

「まさかハチマン君たちがそんな実験を施されていたとは………」

「サカキに取っても計算外な面があったのには驚きだが………」

 

 俺に話を振ったククイ博士も質問されていたプラターヌ博士も頭を抱えており、何故かグリーンが目を見開いていた。

 そんなに意外なことだったのだろうか。

 サカキと言えど、人間だぞ?

 計算外のことなんて結構あるだろうに。

 そんなに完璧に見えているのだろうか。

 

「………ソニア、どした?」

「え、や、その………ハチくんがガチでヤバい存在だったんだなーと」

「そうは言うけど、一応俺は被害者だからな? 悪いのは全部サカキだ」

「命の保証がないってのも…………」

「そういうことだな」

「………うん、私は何も聞かなかったし何も知らない」

 

 ぶるりと身体を震わせたソニアが現実逃避を始めた。

 で、さっきからキラッキラな目でこっちを見てくるムーンちゃんは何を期待してるんでしょうかね。

 

「あんまり聞きたくない顔をしてるけど、一応聞いてやるよ。ムーン」

「ヒキガヤさん、滅茶苦茶な人だとは思ってましたけど、人生からして滅茶苦茶で浪漫がありますね! わたしはそんな人生嫌ですけど!」

「これを浪漫で片付けられるのはお前だけだわ………」

 

 なんつーか、すげぇな。

 そりゃ非道な実験だとかそういうのは分かってるんだろうけど、ある意味小説よりも奇なりってのを読んだ字の如く行った人生だからな。気持ちは分からんでもない。

 

「まあ、そういうわけらしいんで。アララギ博士たちもなんかすんませんね、こんな重たい話をしてしまって」

「い、いえ………私たちが知らないだけで、そういう人たちが世界中にいるんだろうなというのが身に沁みて分かりましたので」

「そうっすね。そういう被害者が世界中にはいるだろうし、こんなものは氷山の一角でしかないでしょうからね」

 

 可哀想に。

 初めて参加した会議で、こんな重たい話を聞かされるとか、しかも犯罪組織のトップの声まで聞いちゃうなんて、心臓バクバクしてるだろうな。

 

「で、どうするんです。この重たい空気」

 

 責任取ってどうにかしろって目でイロハがこっちを見てくる。

 

「んー、ついでに俺の方からも問題提起をしようかな。ムーン」

「あいあいさー!」

 

 さて、ムーンがどこまで月刊オーカルチャーを調べられたのか、聞こうじゃないか。

 

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