ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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24話

「んで、今日のここはどこよ」

 

 島巡り四日目。

 今日連れて来られたのは最後の島であるアーカラ島。

 の、宝石店……?

 アクセサリーにあつらえた宝石がギラギラと店内の光を反射させている。

 ニャビーは店内が眩しいのか俺の胸を顔を埋めてしまった。

 

「ここはライチさんが営むジュエリーショップさ。裏庭にバトルフィールドもあるんだぜ」

 

 宝石店の裏庭にバトルフィールドって………。

 似つかわしくないなー。

 

「やっほー、やっと来たわね」

 

 っ!?

 一瞬、やっはろーと返しそうになってしまった。

 あのおバカな挨拶はバカ丸出しだけども、あれだけ頻繁に使われていると中毒性があるな。

 

「どうも」

 

 ちなみに今日はムーンは来ていないらしい。

 代わりと言ってはなんだけれども、エーテル財団の坊っちゃまが来ている。

 

「グラジオも来たのね」

「ああ、一度も来たことがなかったんでな。今更な話だが」

「いやいや、いいのよ。気にしないで。アンタはエーテルパラダイスの方で忙しいんだし。来てくれただけでも嬉しいわ」

「あ、ああ。そう言ってもらえると助かる」

 

 こいつ、来たことなかったのかよ。それで今日ついて来たのか?

 

「………宝石好きなのか?」

「いや、そういうわけではないのだが………しばらく会えていない母と妹に何か贈れないかと思っていてな。今日はライチさんとだと聞いてククイ博士にお願いしてついて来たってわけだ」

「ふーん、贈り物ねぇ」

 

 そういえば、あいつらに何か贈り物をした記憶がないな。それどころじゃなかったってのもあったが、あまりアクセサリーとかを身につけているところを見たことがないし、その発想にも辿りつかなかったのかもしれない。

 俺も何かあいつらに買っていこうかな。

 と言っても、あいつらの好みとか知らないし、どうしようか。

 

「あ、つか、まずサーナイトのを探さないと」

 

 メガストーン用のブローチか何か、ここで見繕ってもいいんじゃね?

 サーナイトも女の子だし、こういう系のものを身につけていても違和感ないしな。

 

「出てこい、サーナイト」

「サナ!」

 

 ボールからサーナイトを出すと案の定抱きついて来た。

 最早毎度のことなので流石に慣れたわ。

 

「よしよし。………あのな、サーナイト。お前のメガストーン用に何かアクセサリーを用意しようと思うんだが、どうだ?」

「サナ!」

 

 うわ、キラキラした眩しい目………。

 やっぱりサーナイトも光物が好きな女の子だったか。

 

「ついでにキーストーンの方も用意しようかな」

 

 ずっと裸のままで待ち続けていたが、今後何が起こるか分からないしな。アクセサリーにしておいた方が失くさないだろう。

 

「サナ!」

「いや、早いな、見つけるの。んで、何を………まさかのペアルックか。俺もこれにキーストーンを付けろとな」

「サナ!」

 

 早速サーナイトが選んだものはペアのロケットペンダントだった。

 ただ、そこまでお高いものでもなく宝石が散りばめられているようなものでもない。至って普通のロケットである。この中にキーストーンなりメガストーンを入れたら完成ってところか。この二つの石ってそんなに小さくもないんだがな………。

 

「けど、いいのか? そんなキラキラしたもんでもないぞ!」

「サーナ」

 

 そんなものでいいのかと聞いたら首を縦に振る始末。

 まあ、サーナイトがいいと言うのならこれにするか。

 

「ふふっ、サーナイトも女の子ね。光物が好きっていうより、あなたにプレゼントされるのが嬉しくて、あなたとお揃いのものが欲しいんじゃないかしら?」

「あ、そういう系……?」

「サナ!」

「お、おう、そかそか。それならペアルックのこれにするか?」

「サーナ!」

 

 どうやらサーナイトのお目当ては光物ではなく俺とのペアルックの方にあったらしい。

 

「毎度ありー。けど、これ本当は恋人用なのよねぇ。でも何故か誰も買わないのよ。あたしも付ける相手がいれば今頃………」

 

 うっ………なんだろうか、この既視感。知ってるぞ、この感覚。アラサー独身女性の結婚願望が溢れ出るこの残念臭………。

 そうか、この人はヒラツカ先生と同類の人だったか………。

 

「サーナイト、メガストーンをここに入れてくれ」

「サナ」

 

 ちょっと大き過ぎるロケットにメガストーンを嵌める。サイズがぴったり過ぎてびっくりだ。こういうのって後で調整したりするもんじゃねぇの?

 

「ほい、完成。………いいな。可愛いぞ、サーナイト」

「サナ!」

 

 完成したロケットをサーナイトの首にかけてやった。

 うん、可愛い。

 石が嵌ればロケットの印象も随分と変わるもんだな。こりゃ確かに他の宝石は邪魔なだけかもしれない。

 俺も自分のにキーストーンを嵌め込み首から下げてみたが………なんか俺には不釣り合いじゃね?

 

「なあ、なんか違和感ないか?」

「サナ!」

「あ、そう? なら、いいか」

 

 サーナイトにはお気に召したようなので気にしないでおくことにした。

 

「………っ?!」

 

 ふと、目に入った石に驚いた。

 

「あの、ライチ、さん………?」

「んー?」

「つかぬことをお聞きしますが、あれは?」

「あ、ああ、あれ? 綺麗な石だったから買い取ってみたんだけど、結局何なのか分からないのよねー。だから買い取った時の金額のままにしてあるんだけど、あれがどうしたの?」

 

 いやいやいや!

 あれ、超貴重品だぞ!

 しかもその値段で売るには安過ぎるし!

 

「………おいおい、これメガストーンじゃないか?」

「メガストーン? メガシンカってやつの?」

「そうそう、それです。サーナイト」

「サナ!」

 

 いまいちピンと来ていないライチさんに、サーナイトのロケットを見せた。

 

「あらー、綺麗ね。でも色が違うのね」

「これはサーナイト専用のメガストーンですからね。対応するポケモンによって色が違うんですよ」

「へぇ」

 

 やっぱり地方によって価値観も違って来るんだな。

 ただただ感心してる感じだ。

 これがZクリスタルだったなら、もっと興味を惹かれて興奮気味だったのかもしれない。

 

「あれ、俺が買い取っても?」

「いいわよ。おまけにしておくわ」

「え、ちゃんと払いますよ?」

「いいのいいの。良い値がするのはそっちのロケットの方だったんだから」

 

 おいおい、ロケットペンダントより価値が低いってどういうことだよ。まあ、おまけでって言うのならそうしてもらおう。ここに眠らせておくのは勿体ない。

 

「でも、ハチマン。あれがどのポケモン用なのか分かるのか?」

「見ただけじゃ何とも。ただカロスに帰ればプラターヌ研究所で測定出来ますんで」

 

 どうせ、カロスに帰る予定なのだ。

 プラターヌ研究所で測定してもらえばすぐに分かるはずだ。

 

「………死んだことになってるのに顔出して大丈夫か?」

「そこはほら、帽子とかサングラスとかして誤魔化せば何とか………」

「騙されてくれるといいがな」

「というかあの変態にバレても特に問題はないと思いますけどね。逆に巻き込んだ方が使い勝手がいいかもだし」

 

 戦力としては数に入れられないが各所へのパイプラインなら務まるはずだ。

 んで、博士ネットワークを活用してもらえれば動かしようはある。

 

「なんか散々な扱いだな」

「昔からそういう感じなんで今更かと」

「そんなに付き合い長いのか?」

「まあ、俺がカントーを旅してた時にちょいちょい現れてましたからね。六年くらいか?」

「それってフェアリータイプのカテゴリー追加とかメガシンカが提唱されたくらいじゃねぇか」

「あー、あれってそれくらいだったのか。………つまり、あの変態はカントーで俺のストーカーをした後に有名になったと」

 

 なるほどなるほど。

 あのフィールドサーチは一応意味があったというわけか。その割に野生のポケモンに襲われてたりしてたけどな。

 

「世界的に有名なポケモン博士を変態扱い出来るのは世界でもお前だけだろうな………」

「ははは、何を言う。変態二号が」

「………おいちょっと待て。誰が二号だって?」

「上半身半裸に白衣を来た変態なんて一人しかいないじゃないですか」

「よーし、ハチマン。表に出やがれ。一発ぶん殴ってやる!」

「やめておいた方がいいっすよ。悪夢見ることになるんで」

「くっ………人間辞めるとこうも強気に出れるのかよ。チクショー!」

 

 俺が言うと冗談で済まないのを分かってるからか、それ以上のことには発展しなかった。多分、生身の取っ組み合いなら普通に負けるからな。

 

「ねぇ、グラジオ。あの二人、どう思う?」

「どうもこうも似た者同士だろ。片やポケモンの技が使えて、片やそのポケモンから技をダイレクトに受けて研究している男たちだぞ?」

「そうよね。どっちもどっちよね」

 

 おい、そこ!

 この変態二号と同じカテゴリーにするんじゃない!

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

「さ、気を取り直してバトルしましょ」

「うす」

 

 店の裏にマジであったバトルフィールド。

 何気に儲かっているのだろうと勝手な想像をしてしまった。

 バトルということでニャビーはグラジオに預けてある。

 

「サナ!」

「ん? ………いや待て。お前最初からメガシンカするつもりか?」

「サナ!」

「マジか………」

 

 サーナイトが何かを強く主張してきたかと思えば、さっさとメガシンカしたいとのことだった。いや、もうあの目を見れば分かるから。

 

「はあ、分かったよ。そんなにそのロケットが気に入ったんだな。行ってこい」

 

 ロケットペンダントを大層気に入ったらしく、早く使いたいという、まあ何とも可愛らしい理由である。

 

「ルールは先の三戦と同じだ。ライチさんも聞いてますよね?」

「ええ、大丈夫よ」

 

 あの男、四戦目にしてルール説明を省きやがった……。

 

「さあ、まずはこの子よ! ギガイアス!」

 

 ライチさんの一体目はギガイアスか。

 いわの単タイプとなると超効果抜群ってことにはならないからな。一気に削るのは難しいかもしれない。

 

「うっ………!」

 

 しかも砂嵐が吹き始めた。

 あれ? ギガイアスって特性にすなおこしあったんだっけ?

 硬いイメージしかないから、てっきりがんじょうばっかだと思ってたわ。

 これならメガシンカ前に砂嵐をどうにかしないとな。いわタイプは砂嵐下ではさらに硬くなることだし。ただ、恐らく小さい島クイーンの時の粉塵爆発は通用しないだろう。というか発動出来ないと思う。纏う方のストーンエッジを撃ってくれないと火花が散らせないが、ギガイアスのストーンエッジは地面から突き出るタイプの可能性が高い。

 それならいっそ違う方法を取った方が賭けに失敗することもないか。

 

「サーナイト、サイコキネシスで無風状態にするんだ」

 

 砂嵐の止め方は前回と同じ。

 だが、滞留する砂の使い道が今回は決まっていない。

 

「砂嵐を止めるだなんて。ギガイアス、ストーンエッジ!」

 

 やはりギガイアスのストーンエッジは前脚を地面に叩きつけて、地面から岩を次々と突き出していく型の方だった。

 というかストーンエッジを使ってくることまで読めている俺自身に恐怖を覚えた。そこまで当たらなくてもいいんだぞ。

 

「躱して、くさむすび」

 

 重たい岩の身体には持ってこいの技だ。

 

「………いや、重過ぎだろ」

 

 だが、草を巻きつけたはいいが持ち上がらず、転ばすことにまでいけなかった。

 サーナイトの力で無理とか何気にヤバい。

 これなら普通にメガシンカしても問題なさそうだな。

 

「ヘビィボンバーで脱出するのよ!」

 

 おう、まさかのヘビィボンバー。

 ハリテヤマもそうだったが、重量級のポケモンには皆覚えさせているのかね。確かに自身の体重を利用する技だから使い勝手は最高であるが。しかも身体が重たいポケモンは動きが鈍いことが多い。それをヘビィボンバーの大ジャンプで補えるのだからな。重量級のポケモンには相性のいい技だと思う。

 

「よし、サーナイト」

「サナ!」

「メガシンカ」

 

 ただ、軌道は一直線になるため、攻撃のパターンは読みやすくなる。

 落下してくるギガイアスに向けてメガシンカエネルギーを放った。それと同時に、フィールドに淡いピンク色のオーラが広がっていく。

 メガシンカもアローラに来てから数度目になるが、使う度にメガシンカエネルギーの使い方も上手くなっていっているような気がする。まだまだ心は幼いところがあるというのに、バトル面ではあいつらに匹敵する程のポテンシャルを見せつけてくれるわ。可愛い悪魔にならないことを祈ろう。

 

「きあいだま」

 

 ギガイアスを弾き飛ばして、そのままエネルギー弾を撃ち込む。

 

「アイアンヘッドで受け止めなさい!」

 

 すると鋼の頭で弾丸を受け止め、そのままさらに距離を取った。

 空中では躱せないと思ったのだが、それを逆手に距離を取るのに利用されるとは………。

 こういうのを見せられると島クイーンとしての貫禄を感じるな。

 あの小さな島クイーンにもいずれその貫禄が出てくることを期待しよう。

 

「くさむすび」

 

 すかさずギガイアスの足下から草を伸ばし巻きつけていく。

 サーナイトも今度は入念に巻きつけており、メガシンカしたことで締め付ける力も増している。

 あ、ついに持ち上げた。

 なら………!

 

「そのまま叩きつけろ」

 

 ギガイアスを地面に叩きつけると地面が揺れた。それくらいの衝撃が生み出されたようだ。

 何それ、怖いんだけど。

 サーナイトちゃん、マジパネェ。

 

「きあいだま」

 

 そこへトドメの一弾を撃ち込んだ。

 

「ギガイアス、戦闘不能!」

 

 当然、ギガイアスは戦闘不能。

 くさむすびが効いたな。

 

「戻りなさい、ギガイアス。………くさむすびがかなり効いたわ」

「そりゃ狙いましたからね。そっちがギガイアスの体重を利用したようにこっちも利用させてもらいましたよ」

「ほんと凄いわね。そういうのを一瞬で判断出来るのだから」

「昔、知識がなくて負けたことがありましてね。それが悔しくて知識をさらにつけるようにしたんですよ。まあ、そのバトルは技の使い方がトリッキーでゾクゾクしましたけど」

「へぇ、ただの天才というわけではないのね」

「俺が天才なら、世の中天才だらけですよ。それに俺の場合は生き抜くためにも必要だったところもありますからね」

 

 校長との一戦やヤマブキジムでの敗北からロケット団関連と色々あったからなー。

 あれがなかったら今の俺がないまである。

 

「そう? あたしはゴリ押しタイプのバカだからその知識量は羨ましいと思うわよ」

 

 あー、ヒラツカ先生みたいですもんね。

 

「では、この知識量であなたのポケモンを倒してみせますよ」

「言ってくれるじゃない! ダイノーズ、いきなさい!」

 

 二体目はダイノーズか。

 ザイモクザが連れているから情報としてはある。厄介なのはあの三体のチビノーズたちだ。実質一対四だからな。全員で攻撃されたら対処が間に合うかどうか………。

 

「ラスターカノン!」

 

 一発目は鋼の光線。

 王道と言っていいだろう。

 これでサーナイトには効果抜群なのだからな。

 対して、サーナイトはサイコキネシス、くさむすび、きあいだまの内で対面からやり合える技はない。かと言って最後の一枠を使うのは時期尚早と言えよう。

 ここは……。

 

「躱してサイコキネシス」

 

 攻撃を躱した上で、厄介なチビたちも纏めて動きを止めることにした。

 

「躱すことはお見通しよ。チビノーズたち、スパーク!」

 

 ただ、やはりと言うべきか、ライチさんも躱されることは想定済みだったようで対処が早かった。

 厄介だと思っていたチビノーズたちを早速使ってきて、躱したところに次々とチビノーズたちが電気を纏って飛び込んできた。

 

「サナ………ッ?!」

 

 ヤバいな。

 麻痺を食らったか。

 いくらメガシンカしているとはいえ、状態異常はどうしようもない。

 マジでリフレッシュを覚えさせたい気分だ。

 

「全員でラスターカノン!」

 

 痺れて足を止めたサーナイトに四体からの鋼の光線が飛んでくる。

 

「くさむすびでガードだ」

 

 動きようがないため、自分の前に草を立たせて身代わりにさせた。

 まだ痺れは続いているようでビリビリと身体に電気が走っている。

 

「パワージェムで草を斬っちゃいなさい!」

 

 そうこうしている内にライチさんは次の一手を出してきた。

 完全にサーナイトのガードを崩した上で猛攻を仕掛けるつもりなのだろう。そうなると痺れをもらったサーナイトには厳しい状況になる。今の内にここから脱しないとな。

 最後の一枠使うか。

 

「テレポート」

 

 痺れによりクチナシさんの時のようにはいかないだろうが、通常の使い方は何とかいけたようだ。

 

「きあいだま」

 

 サーナイトがダイノーズの背後に移動したことを確認して次の指示を出した。

 流石に背後からの攻撃には追いつけず、諸にエネルギー弾が着弾。そのままダイノーズの身体はバウンドしながら俺の方に飛んで来ている。

 

「隙をやるなよ、くさむすび」

「チビノーズたち、でんじふゆうでダイノーズを守るのよ!」

 

 そこへバウンドするタイミングで地面から草を伸ばさせようとするも、攻撃を受けなかったチビノーズたちがダイノーズを磁力で浮かして呼び戻していく。

 代わりと言ってはなんだが、またサーナイトには痺れが走った。

 

「今よ、全員でラスターカノン!」

 

 それを見逃す島クイーンでもなく、全員からの鋼の光線が飛んできた。

 最早あれこれ考えている余裕はない。

 着実にダメージは入っているのだ。次の一撃で仕留めることにしよう。

 

「テレポートで躱せ」

 

 何とか鋼の光線を躱し、再度ダイノーズの背後へ。

 

「トドメのきあいだまだ」

 

 そしてトドメのエネルギー弾を撃ち込んだ。

 効果は超抜群。

 なのに、メガシンカしてのきあいだま一発で沈まなかったのだから、恐らくこのダイノーズの特性はがんじょうなのだろう。

 

「ダイノーズ、戦闘不能!」

 

 ふぅ、痺れが痛いな。

 クチナシさんの時といい、状態異常をもらうとどうしても早く終わらせたくなる。これがリザードンとかなら逆に燃え上がるのだが、サーナイトは女の子だからな。バトルする上で避けられないこととはいえ、やはり気にしてしまう。

 人によっては甘いと思う奴もいるだろうが、今後もこの感覚が抜けることはないだろう。

 

「戻りなさい、ダイノーズ。よくやったわ。………重さもダメ、数で押してもダメ。メガシンカって本当に厄介なのね。まるでウルトラビーストみたいだわ」

 

 ダイノーズをボールに戻したライチさんは俺の方を見て溜息を吐いてきた。

 

「いや、ウルトラビーストはもっと個性的でしょうに。ほら、ウツロイドとか寄生するくらいには超ユニークですよ?」

 

 流石にメガシンカでは寄生なんて出来ないからな。というかウツロイドにしか出来ないのでは?

 そう思うとウツロイドってウルトラビーストの中でも特殊な部類に入るのかもしれないな。

 

「確かにそうなのだけれど………。メガシンカを知らないあたしたちからすれば、あまり変わりないのよねー。それともあなたがトレーナーだからかしら」

「それは一理あるかもしれないですよ。ハチマンが相手だと知識と経験からある程度こっちの動きを予測されますから」

「………なるほどね。これが知識で優るということなのね」

 

 いや、何勝手に説明しちゃってんの、そこの審判。

 言っておくが、俺だって予測が当たり過ぎるとビビるからな!

 使う技まで予想通りだともっと他にやりようがあるだろうに、と思ってしまう。それくらい王道を行き過ぎる奴が多い世の中なのだ。まあ、恐らくトレーナーズスクールの影響とかなんだろうけども。授業で一例としてこの技が来たらこうっていうのがあったりするし。

 あとはあれだな。威力の高い技ばかりを使い過ぎてワンパターン化していることだ。

 もっと小技を挟めよ。

 

「攻撃がワンパターン化している方が悪いんですよ」

「そうね、確かにその通りだわ。あたしたちもこの展開が一番攻撃出来るって流れがあるもの。それが原因かもしれないわ」

 

 あー、言われてみればそうかもしれない。

 ジムリーダーとかだとそういうのが顕著になっていそうだ。そうなると挑戦者もそれを見ているため、真似て同じようなバトル展開を組み立ていくことになると。

 ある意味、優秀が故の負のスパイラルだな。

 

「さあ、最後のポケモンよ! ルガルガン!」

 

 最後に出てきたポケモンはルガルガン。それもユイが進化させたという紅い瞳で二足歩行が特徴の真夜中の姿である。

 

「「おっ?」」

「ガウ」

「ルガ」

 

 そして何故かククイ博士とグラジオのボールから出てきたルガルガンたち。

 そのせいで三種のルガルガンがこの場に勢揃いである。

 これはこれで貴重なシーンかもしれない。

 というかグラジオもルガルガン連れてたんだな。あっちは真昼の姿だったか。

 

「ルガルガン、ストーンエッジ!」

 

 俺の小さな感動を他所に、ライチさんが仕掛けてきた。

 いや、ほんとあいつら何で出てきたんだよ。謎すぎるわ。

 

「躱せ、サーナイト」

 

 ルガルガンが地面を叩くと次々と岩が突き出てくる。

 

「かげぶんしんよ!」

 

 それを横に逸れて躱すと既に十体近くのルガルガンの姿があった。

 ………毎度思うけどもかげぶんしんって普通はこれくらいだよな。あんな数えるのもしんどくなるような数を作り出すあいつらが頭おかしいわ。

 

「サイコキネシスで抑え込め」

 

 超念力で分身を次々と消していくと最後に高く飛び上がったルガルガンが残った。

 あれが本体か。

 

「今よ、アイアンヘッド!」

「くさむすびでガード」

 

 頭から一直線に落下してくるルガルガンを草を伸ばして受け止める。

 

「サナ……ッ?!」

「ルガルガン、ほのおのパンチで焼き尽くしなさい!」

 

 またか。

 またサーナイトに電気が走った。

 その隙にルガルガンは炎を纏った拳を草の壁に殴りつけて燃やしていく。

 突っ込んでくるまであと数秒ほどってところか。

 

「サーナイト、テレポートで躱せ」

 

 サーナイトは痺れで上手く動けそうにないため、テレポートでその場から離脱することにした。

 これで少しは時間稼ぎになってくれればいいのだが。

 

「後ろよ、ルガルガン! ストーンエッジ!」

 

 まあ、それを許してくれる島クイーンじゃないか。

 振り向いたルガルガンが地面を叩き、次々と岩を突き出してきた。

 サーナイトはまだ痺れてるか。こうなったらちょっとの動きで対処していくしかない。

 

「サイコキネシスで自分を打ち上げろ」

 

 岩が届かない程度に打ち上げられればそれでいい。

 落下してくる間に回復してくれれば御の字だ。

 

「突っ込みなさい! アイアンヘッド!」

 

 ルガルガンは突き上げた岩を利用して、サーナイトが落下してくるであろう軌道上に飛び込んできた。

 このまま何もしなければ落下する力もあってダメージは大きいだろう。

 かと言って、くさむすびはここまで来ると効果範囲外。きあいだまはエネルギーを貯められるかどうか………。

 

「サナ!」

 

 いや、どうやらサーナイトはもう大丈夫なようだ。

 それならもう一段上のやり方をしてもらおう。

 

「サイコキネシスでルガルガンの向きを変えろ。地面に突き刺せ」

 

 超念力でルガルガンの進行方向を変更し、勢いをそのままに地面に突き刺した。

 小さいクレーターが出来たが、あれがサーナイトに当たっていたら大ダメージだったろう。

 

「くさむすび」

 

 サーナイトも着地し、ルガルガンに草を巻きつけていく。

 

「ほのおのパンチで抜け出しなさい!」

 

 それをルガルガンは炎を纏った拳で草を燃やし脱出。

 が、そこはサーナイト。

 草が分厚かったのか、さっきよりも脱出に手こずっていた。

 

「きあいだま」

 

 その間に背後からエネルギー弾を放つと物の見事にヒットした。

 

「ルガルガン! こうなったらZ技よ!」

 

 耐えたもののライチさんもルガルガンがあと一撃二撃で倒れることを悟ったのか腕をクロスさせてきた。

 

「轟け、命の鼓動! 天地を貫く、岩の響きよ!」

 

 ああ、そうだ。

 これだよ、これ。Z技の中でも特にダサいと思ったポーズ。最後のマッスルポーズ的なのはマジでやりたくない。

 そんな無駄なことを考えている間にも頭上に巨大な岩が生成されていく。

 これは流石のサーナイトでも防ぎようがない。テレポートで躱すことは出来るが、そうなると軌道上に立つ俺が危ないんだよな。下手したら死ぬぞ。

 くっ、こうなったら一か八か。

 メガシンカした状態でなんてどうなるかも想像出来ないが、やるしかない。

 

「サーナイト」

「サナ!」

 

 サーナイトにZリングを見せて腕をクロスさせた。

 リングに嵌め込んであるのはカクトウZ。あの巨大な岩を砕くには持ってこいの技だろう。

 無心でポーズを取り、サーナイトにエネルギーを充填させていく。

 

「ワールズエンドフォール!」

「全力無双激烈拳」

 

 そのエネルギーを突っ張り動作で放ち、降り下ろされた巨大な岩にぶつけて砕いていった。

 かなりの手数を打たなければならなかったが、それがZ技というもの。

 

「………ヤベェな」

 

 お互い高エネルギーの使用により疲弊度合いが凄いことになっている。

 だが、ここで決めるしない。

 

「サイコキネシス」

「サ、ナ!」

 

 肩で大きく息をしているルガルガンを超念力で吹っ飛ばした。

 それだけでルガルガンは起き上がらなくなった。

 

「ルガルガン、戦闘不能! よって勝者、ハチマン!」

 

 判定も下され、サーナイトも元の姿戻っていく。

 

「サ、ナ………」

 

 と、急にサーナイトが倒れた。

 

「サーナイト!?」

 

 駆け寄ると見るからに顔色が悪い。

 まずい。

 さっきのZ技が悪い方に働きやがったか。

 

「お、おい、しっかりしろ、サーナイト!」

 

 呼びかけても反応がない。

 熱は……ッ!?

 高熱じゃねぇか………!

 

「え、ちょ、大丈夫?!」

 

 異変を感じ取ったライチさんたちも駆け寄ってきた。

 どうする、ポケモンセンターに運ぶか?

 だが、他にも客がいれば手は足りなくなる。

 多分、これは普通じゃない。

 

「ポケモンセンター……はまずいか」

「ハチマン、エーテルパラダイスに行こう!」

 

 エーテルパラダイスか。

 確かに設備はポケモンセンター並みだった。

 

「ああ、頼む」

「あ、待って! これだけは持ってって! サーナイトが起きたらあたしたちに勝った証として見せてあげて!」

「うす」

 

 そう言ってライチさんは茶色のZクリスタルーー恐らくイワZーーを差し出してきた。

 俺はクリスタルを受け取って、倒れたサーナイトを一旦ボールに戻し、急いでエーテルパラダイスに戻ることにした。

 

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