ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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ちょっと遅いですが、あけましておめでとうございます。
今回でようやく一区切り出来ました。


28話

『フライゴン、キングドラ! 制空権を奪い返すのだ! ガチゴラス、ボスゴドラ! てっぺきで敵を受け止めろ! その間にデンリュウはでんじほう! エンペルトはアクアジェット!』

 

 ………急速に近づくと、見たことのあるポケモンたちが戦闘を繰り広げていた。

 ゴルバットやゴルーグたちと空中戦を争うフライゴンにキングドラ。

 ドラピオンやゴローニャたちの攻撃を弾くガチゴラスとボスゴドラ。

 そしてその脇から反撃を仕掛けるデンリュウとエンペルト。

 最後にその全員を指揮する喋るヤドキング。横にはドータクンも控えているのか。

 一部知らない顔たちだが、最後の情報だけで誰のポケモンたちなのかは分かってしまうな。やっぱ、あいつキャラ濃すぎだわ。

 

「ヤドキング!」

『ぬん? ………チッ、リザードンが急に飛んでいったかと思えば』

「分かるのか?」

『オレっちたちを舐めるなよ。見てくれだけで惑わされるような人間と一緒にするな』

 

 流石ポケモン。

 人間の上位互換たちは俺が顔を隠していても、当たり前のように判別出来るんだな。

 

「話が早くて助かる。お前がここにいるということはイロハも近くにいるのか?」

『生憎、イロハは会場だ。オレっちはイロハと雪女の今日の手持ちに入らなかった者と、お前に置いていかれたポケモンたちでミアレの警ら隊と育て屋の防衛線を組んでいる。そしてオレっちこそがこのミアレ警ら隊の隊長である!』

「警ら隊………」

『ドータクン、サイコキネシスで避難者を守れ!』

 

 警ら隊。

 去年の出来事を意識して組まれたのか?

 そりゃ、何かあった時のための戦力確保には俺たちのポケモンを使うのが手っ取り早いが、何というか用意が良すぎないか?

 まあ、いいか。

 今はその『何かあった』時だ。

 

「つまり、襲撃の方はお前たちに任せていいんだな?」

『ああ、だからここはいい! 北側は雪女のポケモンをおデブと合流させた! 東側はヘルガーとボスゴドラが向かっている! 恐らくあっちは野生のボスゴドラの群れも協力してくれているはずだ! だからお前はさっさとリザードンを連れて敵の頭を潰せ!』

 

 なるほど、持ち場をそれぞれ与えられているわけか。それもトレーナーごとにチームを組んでって感じなら、トレーナーがいなくとも連携しやすいだろう。

 そうするとアレだな。リザードンがあそこにいたのもヤドキング軍の一員で出動中だったってことか。

 俺がこのままリザードンを連れて行くと、俺のポケモンたちの持ち場だけ戦力が下がらないか?

 ボスゴドラの群れが協力してくれるっぽいが、あそこの連中が全員が全員一騎当千ってわけでもないだろうし、群れを守る必要性もある。

 

「了解。俺もそのつもりだったからな。ただ、リザードンは元々の役割をさせる。一応、警ら隊での火力担当なんだろ?」

『無駄に頭の回転が早くて嫌になるぜ』

「というわけで、リザードン。お前は自分の役割を果たせ。俺は俺でどうにか出来る」

「シャア!」

「因みに西は? 誰のポケモンも向かわせてないみたいだが」

『あそこはシャラジムの女二人が担当だ。だからオレっちたちは西のことまで考えなくていい』

 

 シャラジムの女二人って………ユイとコルニか?

 ということはつまり、ミアレシティ中央付近にあるスタジアムにユキノとイロハ、それにハルノが既にプリズムタワー付近で戦闘中。北はユキノのポケモンたちとおデブ………はザイモクザか。東が俺のポケモンたちとボスゴドラの群れ。南がイロハのポケモンたちで西がユイとコルニって陣形ってわけか。ユイは分かるが、何でコルニまでミアレに来ているのかはさておき、四方に戦力が割り振られているのなら、俺は自由に動いても構わなさそうだな。

 

「分かった。それなら俺は敵の頭を叩きにいくとするわ。それと地中からの攻撃にも気をつけろよ。俺もさっき攻撃を受けた」

『了解。さっさと行け!』

「頼むぞ」

 

 そう言って、再びリザードンを上昇させていく。

 思わぬ奴との再会だったが、逆に現場を指揮するあいつでよかったかもな。情報が得られたのは大きい。

 

「リザードン、プリズムタワー付近まで行ってくれ。ハルノに加勢する」

 

 高度を上げ終わり、再びプリズムタワーの方へと向かっていく。

 さて、そろそろ呼び出しますかね。

 

「来い、ウツロイド」

 

 ボールから出てきたウツロイドが俺に憑依していき、呑み込まれていく感覚に襲われる。

 

『「サイショカラゼンリョクデイクゾ」』

「しゅるるるるる!」

 

 さらに身体が大きくなり、白色半透明から黒へと変化していく。

 

「シャア?!」

 

 異変に気付いたのか、振り返ったリザードンが俺の姿を見て驚いた。

 

『「ホンキモードッテヤツダ………エッ? マジカヨ………コノジョウタイヲハチロイドッテイウラシイゾ」』

 

 直接脳に送り込まれてきたこの状態の名称、その名もハチロイド。ハチマンとウツロイドをくっつけたんだろうが、人工知能搭載のロボットにしか聞こえない。

 

『「リザードン、ヒガシハマカセタゾ!」』

「シャア!」

 

 パルシェンに乗ったハルノらしき人物の背中が見えたため、俺はそのままリザードンから飛び立った。

 あーあ、もう少しリザードンといたかったんだがな。半年ぶりなんだぞ。それもこれもこんな事件を引き起こしてくれたあの男とカラマネロを処断しなければ気が済まないわ。

 

「………く、メタグロス、コメットパンチ! ゾロアーク、あくのはどう!」

 

 メタグロス二体がカラマネロへと突っ込んでいくのが見えた。一体は恐らくゾロアークなのだろう。特性のイリュージョンで姿を変えているようだ。

 

「バンギラス、ワルビアル、うちおとす!」

 

 プリズムタワーの頂上からはバンギラスとワルビアルが追撃を仕掛けている。ハルノの頭上にはネイティオもおり、今日はカメックスが手持ちにいないらしい。なんか珍しいな、カメックスがいないなんて。

 まあ、カラマネロ一体に対して手持ちフルメンバーなのだから、やはり相当の実力者なんだろうな。リザードンやゲッコウガが苦戦するのも頷ける。

 

「ッ!?」

 

 そっちはもうしばらくハルノに任せて、男の方を先に処理してしまうことにした。

 

「ポ、ポケモン、なのか………?!」

 

 こんな形で男の目の前に出てみたら、目を見開いて言葉を失っている。

 まあ、これで平然とされたら逆にこっちが驚くな。俺自身、今の姿は化け物染みていると思う。初見だったら一瞬頭が真っ白になっているかもしれない。

 

『「アローラノヒホウヲウバッタモノニコタエルギリハナイ」』

「ぐあっ?!」

 

 だからと言って容赦はしない。

 黒い触手を男の首に巻きつけて死なない程度に締めた。

 掴みもバッチリなため、早速尋問していく。

 

「えっ………?! な、なに!? ポケモン……?!」

 

 遅れてハルノも気づいたようだ。

 

『「コタエロ」』

「な、何を……している?! カラマ……ネロ、はや……く、こいつを、引き剥がせぇ………!」

 

 男はカラマネロに助けを求めているものの、カラマネロはハルノと戦っている。それを跳ね除けて助けに来れるとでも思っているのだろうか。

 

「なっ………?!」

 

 と思いきや、カラマネロが一度手を止めてこっちをチラッと見てなお、無視した。

 なるほど、カラマネロにとってこいつはもう用済みなようだな。

 そりゃそうか。こいつも人間だ。人間を殺戮しようとするカラマネロがこの男だけ生かしておくわけがないわな。

 

『「オマエハ、カラマネロヲシタガエテイルツモリカモシレナイガ、ドウヤラアヤツラレテイタノハ、オマエノホウダッタヨウダ」』

「くっ、マグカルゴ、ヘルガー!」

 

 締めていたのが首だけだったため、自由に動く手で自らの手持ちのボールを開いた。中から出てきたのはマグカルゴとヘルガー。どちらともほのおタイプか。

 なら。

 

『「パワージェム」』

 

 細かい岩を飛ばして二体まとめて後ろの壁に打ちつけた。

 効果は抜群だし、手加減もしなかったんだ。起き上がったとしても次はバンギラスとワルビアルにトドメを刺させればいいだけ。

 

「なっ………?!」

『「ツギハナイゾ」』

 

 殺気を放って首を締め付ける力を少しだけ強くする。

 

「ぐぁっ……!」

『「ソレデ、アローラノヒホウヲツカッテ、ナニヲスルキダッタンダ?」』

 

 喋れるようち強めただけ力を弱めた。

 聞いているのに答えられないようにする程、俺は外道になるつもりもない。まあ、殺したい気分ではあるけども。うっかり殺しちゃったらごめんね。

 うわっ、今の俺やべぇ奴だな。こいつらと対して変わらんぞ。

 

「最終……へいき………を、再現……して人間を、殺す………貴様も、殺す………邪魔をする者は、全員殺すのだ!」

 

 ククイ博士からあの珠の製造法を聞いて浮かんだ通りの答えだな。

 

「ぐはっ?!」

 

 思わず力をまた強めちゃったけど、まあいいか。

 取り敢えず、シャムとカーツ関連のアローラの秘宝を巡る騒動と、カラマネロ三体による育て屋とクチバジムの襲撃は繋がっているのは間違いない。となるとあっちにはウルトラホールを開く技術もあるということだ。最終兵器の再現は不可能になったが、ウルトラビーストという危険因子が消え去ったわけではない。

 これは、さっさとこいつらの仲間も捕まえてしまわないとな。何が起こるか分かったもんじゃない。

 

『「アワレダナ」』

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺ーーーぐうっ!」

 

 最早殺すとしか言わなくなった人形に聞いたところで詳しいことが聞けそうにないため、投げ飛ばすとドカッとマグカルゴたち同様壁に身体を打ちつけた。ポケモンよりも脆い人間の身体には意識を飛ばす程の威力が出てしまったみたいだ。

 うるさいよりいいか。

 

「………貴様」

『「ッ?!」』

 

 もう意識が戻ったのかと思ったが、目を見て理解した。

 

「貴様、何者だ。我々の計画をどこまで知っている」

 

 目に色がない。

 カーツはカラマネロにより催眠術で本当に人形のような扱いを受けていた。

 これ、本来は人間との通訳としてだけの価値しかなかったのでは………?

 

『「ニンゲンヲリヨウシ、ニンゲンヲコロシ、ハムカウポケモンモミナゴロシ。ソシテメザスハセカイノオウッテトコロダロ」』

「如何にも。だが、ガラルでの我々の同胞の犠牲があってこそのこの計画。邪魔する者は貴様の言う通り皆殺しである!」

『「ソノワリニハナンドモシッパイシテイルミタイダガナ。カロスノソダテヤシュウゲキ、クチバジムノシュウゲキ、アローラノヒホウノサンダツ。ホカニモ、セカイカクチデポケモンケンキュウシャヲシュウゲキシテイタノモ、オマエタチノシワザナノダロウ?」』

 

 そういえば、世界各地でポケモン研究者を狙った事件は、あるポケモンのデータを盗むためでもあったんだよな。それがこいつらカラマネロ及びシャムとカーツの犯行ということは、狙っていたのはマギアナに関するデータなのではないか?

 マギアナは機械仕掛けの身体にソウルハートと呼ばれる核で動き出す人工的に造られたポケモンだ。狙っていた人工的なポケモンのデータというところも合致する。

 ………マジか。

 これまでの事件が色々繋がってくるとなると、俺は既に事件の渦中にいたということになる。

 

「………だからこそ、あの男から消すことにしたのだ。要所要所であの男に邪魔をされたのだからな。あれはその報いだ」

 

 あれはその報いだったのか。

 そうか、そうか。

 よし、取り敢えずこいつは殺そう。

 

『「フッ」』

「何がおかしい」

『「イイヤ、ベツ、ニ!」』

 

 不意打ちで触手をカラマネロに突き刺した。

 そして、毒を流し込んでいく。

 

「カマッ!?」

『「ニンゲンノシュウネンヲアマクミルナヨ」』

 

 どくづき。

 カーツの方を見ていた奴から急に攻撃されたのでは、躱すことも出来なかったのだろう。

 カーツへの催眠術まで解けてしまっている。

 

「カマ、ネ!」

 

 突き刺した触手を強引に引き剥がすと、カラマネロはプリズムタワーから逃走し始めた。

 もう尻尾を巻いて逃げるのか。

 結局、強かったのはバトルだけってか。急所を負わされた途端逃げ腰になるとは、何と情けない。

 

『「ニガスカヨ」』

 

 カラマネロの背後を追いかける。

 

「え、ちょ?!」

 

 ハルノには悪いが、今はあいつを捕らえることの方が先だ。このまま逃げられたのでは今までと同じでしかない。

 スピードはそこまでない。

 ただ、段々と身体の色が変わり始めている。具体的に言えば、水色に。恐らく、ほごしょくで身体の色を青空に溶け込むように変えているのだろう。タイプ変化は空だし、ひこうタイプか?

 

「カマネ!」

 

 あくのはどうか。

 振り返ったカラマネロが黒いオーラを放ってきた。

 ならーー。

 

『「ミラーコート」』

 

 反射して撃ち返し。

 

『「クロスポイズン」』

 

 そして、そのまま距離を詰めて両腕のようになった触手に毒を入れてX字に斬りつけた。

 だが、身体が完全に水色へと変化してしまっている。今の一撃は運が良かっただけだろう。

 

『キングドラ、エンペルト、消火を急げ!』

 

 あ、やべ………っ!

 斬り飛ばしたカラマネロが消火活動をしているキングドラとエンペルトの方へと落ちていってしまった。アスファルトやコンクリートの中に水色がいると、これはこれで異様に目立つが、周りに人やポケモンがいるため攻撃もしにくい。

 ここは、どうやらプラターヌ研究所よりも東の南口のようだな。こんなところにまで戻って来ていたのか。

 

「カマ!」

 

 くそっ、この状況は催眠術を操るカラマネロにとって、いい駒を発見したかように映るよな。

 

『「サセルカヨ!」』

 

 何か周りのポケモンたちに仕掛けるような動きをしたため、咄嗟にその間に割り込んで球体型の防壁を張った。

 

『「クッ」』

 

 いや、何でさいみんじゅつの波でノックバック食らうんだよ!

 怖すぎだろ………。

 後ろにいた奴、すまん。

 

「カマネ!」

 

 間髪入れずに禍々しい光線、はかいこうせんが飛んできた。

 

『キングドラ、エンペルト、ハイドロポンプ!』

 

 それを俺の後ろから二本の水砲撃が飛んできて受け止めてくれた。

 後ろにいたのはお前らか。

 やり返すなら今だな。

 

『「10まんボルト」』

 

 ほごしょくを使ったことでひこうタイプに変化していると仮定してのでんき技。

 効果抜群にならなくとも等倍のダメージになるため、賭けに走ってみた。

 

「カマネ!」

『「マジカ………」』

 

 まさかの触手を地面にまで伸ばして、アースさせてしまった。

 よもやカラマネロがアースを知っているとは。

 バトル面で強いのは、こういう人間社会の理論も理解しているからというわけか?

 まあ、そうでもないとここまで過激な思想家にはならないか。

 

『レールガン!』

 

 追い討ちをかけるように後ろから二閃が走った。

 チラッと後ろを見るとヤドキングとデンリュウがでんじほうを放ったらしい。

 

『ファッ?! 何なのだ、あのカラマネロは!? 全然効いていないではないか! それにあの黒い生き物はオレっちたちと同じポケモンなのか?!』

 

 だが、その悉くを強靭な身体で弾かれてしまった。

 おい、ヤドキング。

 その黒い生き物とやらはまさかとは思うが俺のことではないだろうな?

 さっき、顔を見なくとも俺だと気付いたくせに、この姿だと判別出来ないのかよ!

 

『「バカヂカラカ」』

 

 文字通りの馬鹿力だな。

 しかも特性あまのじゃくにより能力が上昇している。というか上昇したからこそ、弾けたのかもしれない。

 ウツロイドもさっきマグカルゴとヘルガーを倒したことで能力が上がっているが、遠距離防御面のみ。対して、カラマネロは攻撃力も上昇しているから、これからはより一撃が重たくなってくるだろう。

 

「カマカマカマッ!」

『「チッ、ニガスカ!」』

 

 またもやほごしょくで体色を変化させ始めた。今度は何タイプに変化するのだろうか。

 マジであの技は場所によってどのタイプに変化するのか読めない時があるからな………。

 そうなると無難な技で攻撃するしかなくなってくる。

 

『「アノヤロウ、テイクウヒコウヲツヅケヤガッテ」』

 

 周りにある建物や人を巻き込まないのを知った上での、この逃走ルートなのだろうな。

 全く、根性悪いにも程がある。

 

『「………ア」』

 

 そういえば、今のあいつはタイプが変化してるんだったな。なら、あくタイプが無くなっている可能性が高いわけだ。

 サイコキネシス使えそうじゃん。

 

『「サイコキネシス」』

 

 超念力で逃走するカラマネロの動きを強引に引き止めた。

 

『「クッ………」』

 

 やっぱり抵抗して来やがったか。

 めっちゃ重いんだけど!

 気を抜けば脱せられてしまいそうだ。

 だが、ここで一撃入れないとまた逃げられてしまうだろう。

 どうする………技の併用が出来る程の余裕はないし、誰か俺の言うことを聞いてくれる奴がいれば………。

 

「シャア!」

「カマ?!」

 

 来ちゃったよ。

 え、もうそんな東側に来てたのん?

 というか君、自分の持ち場は?

 

『「リザードン、カエンホウシャ!」』

 

 見れば、下にはボスゴドラが複数体いた。あの中にうちのボスゴドラもいるのかもしれない。

 

『「ウワット……!」』

 

 下でボスゴドラたちと戦っていたヌメルゴンたちの一体が、俺に向かって体当たりをして来た。恐らく、カラマネロにより操られてのことだろう。でなければ、ボスゴドラの群れからの攻撃の中でそんな行動を起こせる余裕はないだろ。

 それにしてもコドラやココドラが多いのかと思ったが、物の見事にボスゴドラばっかりだな。うちのボスゴドラが群れの長を引退出来たのも群れ全体の戦力が上がったからというわけか。

 

「シャア!」

「カマ!」

 

 抑え込んでいたカラマネロの拘束は既に解けてしまっており、逃走しようとしたところをリザードンに道を塞がれたようだ。

 ほごしょくは使われていない。元の体色に戻っているところを見るとタイプも元に戻っているのだろう。

 あく・エスパータイプ。むしタイプの技が使えればいいのだが、今のところウツロイドには使えないらしい。唯一弱点を突ける技となるとーー。

 

『「マジカルシャイン」』

 

 光を迸らせカラマネロを包み込むと、カラマネロは踠き始めた。

 

「ヘッガ!」

 

 お、ヘルガーさんも登場だ。

 しかもここでカラマネロをちょうはつしてるし。

 おかけでほごしょくはしばらく使えない。マジありがてぇ。

 

「カマネ!」

 

 怒ったカラマネロが水を纏った二本の触手でリザードンとヘルガーを叩きつけた。

 今のは、アクアブレイク……か?

 ……………カラマネロって水技も使えるのかよ。

 

『「アイアンヘッド」』

 

 頭を硬くしてカラマネロとの距離を一気に詰める。

 

『「どくどく」』

 

 そして触手を突き刺し、再度猛毒を流し込んだ。

 さっき初手で毒注入したのに、顔色変わらねぇんだよな。逃げているのを見ると一定の効果はあるのだろうが、まだまだ弱かったということなのだろう。

 

『「ウグッ!?」』

 

 猛毒を注入している間に超念刃でやり返して来やがった。

 鋼鉄化した頭で受けたため衝撃が痛かった程度であるが、頭で受けるのも考えものである。根本的に脳が揺さぶられて気持ち悪い。

 

「カマネ!」

『「チッ、マモル!」』

 

 顔を上げた途端、禍々しい光線を放ってきた。

 咄嗟に防壁を張ったが、力が弱かったようで防壁は安易と割れて、はかいこうせんを受けてしまった。

 なのに、今度は痛みがない。

 意味分かんねぇな、この身体も。

 

「シャア!」

「ヘガ!」

 

 戻って来たリザードンが心配そうに俺の横に並び、下からはヘルガーも見上げてきている。

 リザードンに俺だと知らされたのかもな。ヤドキングは判別出来てなかったし、この姿ではヘルガーも判別出来るとは思えない。多分、リザードンやゲッコウガでも無理だろう。

 …………あれ?

 そういえば、ゲッコウガはどうした?

 こういう時、あいつが指揮を取ってそうなものなのだが、未だに気配すら感じないんだけど。

 

『「ダ、ダイジョウブダ。ナンカヨクワカランガ、ハカイコウセンニハツヨイラシイ」』

 

 それよりもまたも逃げ出したカラマネロを追わなくてはな。

 あー、マジで面倒くさい。さっさとくたばってくれよ。俺が先にくたばりそうだわ。

 

『「オマエラハココヲシシュシロ。カラマネロハオレガツカマエテクル」』

「………、シャア!」

 

 リザードンが何か言いたそうであったが、それを聞くのも全てが終わってからだ。

 俺は大通り上空を翔けていくカラマネロの背中を追った。

 

「カマッ?!」

『「ッ?!」』

 

 もう少しで追いつくという距離でカラマネロが何者かによって撃ち落とされた。

 一瞬見えた弾の軌道から左の方角から撃たれていたのは確か。左側で撃ち抜けるポイントなんて…………プリズムタワーか?

 え、ハルノ?!

 なら、バンギラス辺りのうちおとすか………?

 こっわ。

 あの距離で撃ち抜いたとでもいうのかよ。

 

『「クサムスビ」』

 

 丁度地面に落ちてくれたので、草を伸ばして拘束を試みた。

 ただ、さっきもばかぢからで相殺されたからな。あまり効果を発揮しないだろう。

 なので、連続で草を伸ばしてぐるぐる巻きにしてやった。

 

『「カムゥムムムゥッ!!」』

 

 中で大分暴れているな。

 なら、一気にトドメを刺すとするか。

 

『「オマエノヤボウモココマデ………ッ?!」』

 

 至近距離からトドメのマジカルシャインを放とうとしたら、上から気配を感じ、咄嗟にその場から飛び退いた。

 

「カマ!」

 

 その勘は正しかったようで、二体目のカラマネロの触手が俺がいたところに刺さった。

 だが、一つ言っておこう。

 俺は今マジカルシャインを放とうとしていたところだ。何なら光を放出する直前だった。それが発射直前に飛び退いたため、顔を上げた瞬間に二体目のカラマネロに向けて撃ち放ってしまった。

 力を維持するのも結構難しいのな。

 

「カマカマカマ!」

 

 効果は抜群なのだろうが、あまり効いている感じがしない。

 こいつも一体目同様、無駄に強いカラマネロなのだろう。

 一体目も倒し損ねているし、これであの草の拘束が解かれてしまえば、相手の形勢逆転にもなりかねない。

 

「見つけたぞ、カラマネロ! ジバコイル、電気網!」

 

 うわ、なんか聞き覚えのある太い声がしてきたぞ。

 おデブのご登場か………?

 

「アブソル、メガホーン!」

 

 先陣切ったジバコイルが二体のカラマネロの頭上から巨大な電気網を降らせてくる。

 そこへ正面から白い翼の生えたメガアブソルが、頭の刃を光らせて突進してきた。

 ここはもうザイモクザ管轄になるのか。

 というか他の野生のポケモンの相手はどうした?

 それと何でお前がカラマネロを追ってるんだよ。いや、主犯の連中ではあるため捕縛しなければならないが、民間人の避難優先じゃないのかよ。

 

「カマカマカマ!」

 

 うっわ、こいつもばかぢからで跳ね返しやがった。

 どんだけあまのじゃくがいるんだよ。

 

「ユキメノコ、ツンベアー、つららおとし!」

 

 あ、ユキメノコとツンベアーもいる。ユキメノコはユキノのだろうが、ツンベアーもこおりタイプだし、ユキノのポケモンなんだろうな。

 

『「チッ」』

 

 頭上から降り注ぐ氷柱では痛くも痒くもないってか。

 カラマネロは降り注ぐ氷柱に向けて飛び、頭で砕いてしまった。

 いや、これは好機と見るべきか。

 カラマネロは一体目のカラマネロのピンチにやって来た。ということは助ける意志があるのだろう。こちらとしては二体同時に相手するのは骨が折れる。つか、無理。

 なら、ここは距離を詰めて一体目から引き剥がすのがベストだな。

 

『「ドクヅキ」』

 

 両触手に毒を盛り、飛んだカラマネロとの距離を詰めていく。

 下にはザイモクザもいることだし、一体目が復活しても時間は稼いでくれるはすだ。

 つか、あいつは俺の姿に顔色一つ変えなかったな。

 何ならユキメノコも。

 

「カマカマネ!」

 

 俺の接近に気付いたカラマネロが超念刃を放ってきた。

 それを身を逸らして躱し、腹に一突き。二撃目でさらにカラマネロを打ち上げた。

 

『「ッ?!」』

 

 今一瞬、何かが走り抜けなかったか?

 ゲッコウガ………?

 

「カマーッングッ!?」

「パルシェン、ミサイルばり! バンギラス、ギガインパクト!」

 

 げっ、一体目の方が復活………何かあったな。走り抜けた奴の仕業だろうか? それとも今の声の主であるハルノか?

 まあいい。倒してくれたのならそれで充分だ。俺は目の前の敵だけに集中出来る。

 俺を睨みつけたカラマネロはその先にも視線を巡らせ急降下してきた。

 

『「ワルイガ、ココハツウコウドメダ」』

 

 悪いが、一体目の所に戻らせはしない。

 何なら溜まりに溜まった鬱憤を晴らさせてもらう。

 

『「トリックルーム」』

 

 カラマネロの方が動きが速かったし、逃げられないようにするためにも部屋に閉じ込めた。

 

「カマカマ!」

 

 スピードは………俺の方が速いみたいだ。

 だが、恐らくカラマネロもトリックルームを使えるのだろう。下手に動き回ることなく、その場で触手を広げて一回転した。

 そしてパリン! という音が鳴り部屋が砕けた。

 はっ?

 マジで?

 そうくる?!

 

『「サイコショック」』

 

 すかさず砕けた破片を超念力で操り、カラマネロへと飛ばしていく。

 

「カマカマカマ!」

 

 それをカラマネロはばかぢからで全て弾き返してきた。

 

『「マジカルシャイン」』

 

 散らばった破片がある今なら、光を発するこの技も効果をいつも以上に出せるのは証明済みだ。

 

「カマネ?!」

 

 すかさず光を迸らせると、今度こそカラマネロが呻き声を上げた。

 

『「デンジハ」』

 

 追い討ちで電磁波を送って痺れさせる。

 

「クァマ!」

 

 足掻くカラマネロの触手がぐいんと遠心力を得て、俺の喉元を狙ってきた。

 咄嗟に左触手で受け止めるも、衝撃で弾き飛ばされていく。

 何とか踏み留まったが、一撃が重い。

 それに今の技は………何だったのだろうか。躱す方に意識がいってたからよく見てなかったな。

 

「カマカマ!」

 

 くっ、痺れさせたはずなんだがな………。

 黒くなった触手でカラマネロが反対側から斬りつけてくる。

 つじぎり、だろうか。

 

『「ハタキオトス」』

 

 それをこっちも触手で叩き落として回避した。

 

「カマ!」

 

 続けて飛んでくる超念刃も叩き落とし………。

 

『「ッ?!」』

 

 かと思いきや、頭上から高エネルギーの唸りを感じ退避すると何もないところから一閃が走っていった。

 いつの間にみらいよちを使ってたんだよ………。

 躱したのを好機と見たのか、今度はカラマネロの方から距離を詰めて来た。

 再度振われるのは喉元を狙った技。

 ああ、なるほど。じごくづきか。

 二度目ともなると、受け止めるのも可能だった。

 

「カマァァァ!」

 

 だが、その突き技は囮だったらしく、受け止めた瞬間に炎を吐かれてしまった。

 こいつ、かえんほうしゃも使えるのか。

 ………………。

 ねぇ、何でかえんほうしゃはまともに食らったのにほぼダメージないんだよ。まさか遠隔技には異様に強くなってるとか?

 未だにウツロイドのことはよく分からない。分からないが強いのは確か。リザードンやゲッコウガ並みの実力を持つカラマネロとここまでやれているのもウツロイドのおかげでしかない。

 そんなこんなしている頭上に竜巻が発生していた。

 原因はもちろんカラマネロ。

 サイコパワーの波を回転させて竜巻を生み出していたのだ。作られていく空気の渦に呑まれる形で、周りの空気も巻き上げられて上昇気流へと変わっていっている。次第に雷雲が発生することだろう。

 

「カーマ!」

 

 さらに加速し、強い風の中、流されないようにバランスを保つので精一杯に追い込まれてしまった。

 狙いの一つはこれか。

 攻撃して来ないとみると、カラマネロは超念力で俺の動きに制限をかけてきた。

 ………………いや、なんか普通に動かせるんですけど。何なら固定してくれた分、俺がバランスを取る必要もなくて安定しているまである。

 ほんとにどうなってんだよ、この身体! 効いてないとかマジで意味が分からん。あなたどくタイプでしょうに。

 

「カムゥ?!」

 

 するとようやく痺れに耐え切れなくなったのか、カラマネロが苦しそうに唸り声を上げた。暴風も弱まり押し込むなら今がチャンスだな。

 俺の、俺たちの平穏を奪ったカラマネロたちには罰を与えた上で退場してもらおう。

 

『「ハヲクイシバレヨ、サイジャクーーー」』

 

 過去俺が出会ったポケモンの中でも伝説のポケモンたちを除けば、群を抜いて最強なカラマネロたち。リザードンやゲッコウガですら倒せなかった相手だが、悪人としては人間を侮りすぎていて三流の最弱だ。

 

『「ーーーオレノサイキョウハチットバッカヒビクゾ」』

 

 対して俺はポケモンたちの力を借りなければ直接戦うことも出来ないカラマネロたちが下に見る最弱の人間だ。その最弱様の最強の技を食らって一生眠ってろ。

 せーの、ハチマンパーンチ!

 ウツロイドによって名付けられたただのパンチ。

 なのに、何でこんな勢いが出るんですかね、ウツロイドさんや。

 

『「………ナグッタトコロデスッキリハシナイカ」』

 

 普段からケンカすらしない俺が殴りつけても鬱憤が晴らせるわけないか。

 カラマネロは真っ逆さまにただただ堕ちていく。

 

「カ、カマ………!」

 

 踠き、足掻くも痺れがそれを邪魔しているようだ。

 よし、もっと痺れさせておこう。

 

『「カミナリ」』

 

 サイコウェーブによる竜巻で発生した雷雲から、雷を落とした。

 雷撃に包まれ、黒焦げになって堕ちていくカラマネロの先を見て気付いた。

 あの先ってミアレスタジアムじゃね?

 まあ、いいか。あとはダメ押しでZ技を叩き込むだけだし。バトルしてたらごめんなさいとしか言いようがないが。

 ドカッ! と強く地面に身体を打ちつけたカラマネロを追ってスタジアム内のフィールドに降り立つと、既にバトルは中断されていた。

 そりゃそうだ。こんな状況でバトルなんてしていられないわな。俺としても有難いことだ。事が事でも、俺自身がバトルの邪魔をするような形になってしまうのは、元主催者としても忍びない。

 

「………ポケモン、なのか?」

 

 背後からはエックスの驚愕する声が聞こえてくる。正面奥にいるガオガエンの覆面の方は顔が見えないため分からないが、観客からも似たような視線をひしひしと感じる。

 取り敢えず、話は後だ。

 俺は腕をクロスさせてZ技のモーションに入った。

 両腕をクロスさせて円を描いて胸の前で突き出し。そして、徐々に上げていって、右手の方が下にくるようにして両腕を開いた。その時左足も前に出し、膝立ちのようなポーズになる。

 どうやらポーズに問題がなかったらしく、膨大なパワーが蓄積していくのが分かった。

 

『「ーーーアシッドポイズンデリート」』

 

 地面から毒の沼が出現し、伏したカラマネロを呑み込んでいく。

 見ているだけでおどろおどろしい。

 黒紫色のドロッとした毒が消えると紫色に染まったカラマネロが倒れていた。

 

「今のは………」

 

 さて、これからどうしようか。

 捕縛してどこに連れていくべきだ?

 相手は催眠術の使い手。下手な機関では乗っ取られる可能性もある。警察なんかよりは実力者のチャンピオンたちの方が安心出来るというもの。

 それに折角観客の前で敵の頭の一つを叩き潰したのだ。このままここを離れたのでは観客の方に不安を与えてしまう。しかも今の俺の姿ではどちらが敵なのかも怪しいレベル。

 ここは素直に公表して処遇をこの覆面に委ねることにしよう。チャンピオン級の実力者ならば、橋渡し役にもなれるだろう。

 

『「コイツハシュハンノイチミノカラマネロダ。ショグウハマカセル」』

「………犯行声明を語っていた男の後ろにいたあのカラマネロか」

 

 あの映像にカラマネロがいたことに気付いていたのなら話が早い。

 

「ガオガエン、カラマネロを取り押さえろ」

 

 ボールから出てきた覆面と同じ顔のガオガエンがカラマネロを担ぎ上げていく。

 ニャビーが進化したらああなってしまうんだよな……。ちょっと複雑だ。

 

「エックス! 後ろ!」

 

 すると、観客席の方からエックスに呼びかける声がした。

 俺も振り向くとエックスの背後、観客席の頭上に虹色の穴が開き始めている。

 

『「ッ!?」』

 

 ウルトラホール。

 やはりカラマネロたちは複製していたであろうあの装置をどこかで使っていたみたいだ。

 くそっ、またあの悲劇が繰り返されるのか?

 冗談じゃない!

 アクジキングに呑み込まれたジュカインのためにも、絶対に阻止する!

 

「な、何が………」

 

 ウツロイドにはウルトラホールを開く力がある。恐らく他のウルトラビーストも持っている力だ。

 その力を使って強引に穴を絞り込んでみる。

 

『「………クッ」』

 

 一個対処するだけでも結構な負荷があるな。

 慣れていないってのもあるだろう。

 

『「ッ?!」』

 

 おいおいマジかよ。

 今度は三つ同時に開きやがった。

 いけるか、これ。

 

『「クッソ………!」』

 

 頭が痛くなってくる。

 ある意味、空間の歪みを戻しているようなもんなんだからな。しかも自分が開いたものじゃないのを。それを慣れない手つきで対処しようってんだから無茶な話だ。

 けど、俺がやるしかない。ウルトラホールないしウルトラビーストに対処出来るのは今の俺が最適だ。なんせこっちもウルトラビーストなんだからな。

 

『い、一体何が起きているのでしょうか!? 外では野生のポケモンたちによる暴動が各地で起きているとの情報も入っていますが、これもあの男によるものの一つなのでしょうか! あの黒い生物が何者なのかも分かりません! ですから皆さん、どうか! どうか身の安全にはお気をつけ下さい! 順番に落ち着いて脱出して下さい! 脱出出来たとしても外も危険な状態です! 決して一人にはならないようお願いします!』

 

 三つ目を閉じたところで今度は五つに増えていた。キリがないわ発生時間が短縮されていっているわで、このままでは俺一人では間に合わないかもしれない。

 

「エックス、あの穴を攻撃する」

「それは………?! 分かりました」

「サーナイト」

「サラメ、いざ!」

 

 二つ三つと閉じたところで、フィールドが二つの高エネルギーに包まれた。

 

「「メガシンカ!」」

 

 やはりあのサーナイトもメガシンカ出来たか。

 

「サラメ、フレアドライブ!」

「サーナイト、サイコショック」

 

 残りの二つをリザードンとサーナイトが攻撃するも閉じるまでにはいかなかった。

 だが、何かが出てくるということもなく、俺が閉じるまでの時間稼ぎにはなるのかもしれない。

 

「モース!」

 

 するとウルガモスが覆面の男のところへとやって来た。

 奴のポケモンなのだろうか。

 

「チャンピオン及び四天王は街を守れ! 運営は観客の安全を第一動け! ここは俺たちが何とかする!」

 

 覆面の男はウルガモスから何かを伝え聞くとその声を荒げ、ユキノたちに指示を出した。

 やはり知り合い、気心の知れた仲ということか。

 ………なんかザワッとする。

 嫉妬してるのかね………。

 

『「イッキニバイニナッタカ」』

 

 ウルトラホールは倍の十個にまで増えている。

 それを俺が一つ一つ消している間、エックスのリザードンと覆面男のサーナイトが穴に向かって攻撃し、ウルトラビーストの出現を抑える流れが出来た。

 時間に制限はあるが、一人での対処という焦りからは幾ばくか解放され、一つ一つを確実に閉じていけるのはいい。

 十個全てを片付けるとさらに増えた。最早数えるのも億劫というもの。

 

「サーナイト、シャドーボールを投げ込め。ガオガエン、ヤドラン、かえんほうしゃ」

「リザードン、やきつくす! ラスマ、シャドーボール!」

 

 流石に手が足りないと感じたのだろう。リザードンとサーナイト以外のポケモンも出してきて、数には数で抑制し始めた。誰が出てきたのかは見ている余裕がないけどな!

 そして、何とか残り二つというところまで来て変化が起きた。

 

「ブゥゥゥゥンンッ!」

 

 突如、穴の一つが広がりドデカイ何かが出てきたのである。

 

『「ッ?!」』

 

 とうとう来やがったか。

 それにしても機械音というかエンジン音というか。

 ポケモンの音とは思えないものである。

 

『「テッカグヤ………!」』

 

 現れたのは竹のような姿のウルトラビースト、テッカグヤ。確かそんな名前のデカブツだった。

 攻撃性はそんなにないが、ロケットみたいな奴で地に降りて再度飛び立つ時の被害が尋常じゃないとか何とか。

 着陸される前にこのまま押し返すしかないな。

 

「カイカイカイィィィィィィーッ!!」

 

 どこからかポケモンの叫び声が聞こえた。

 テッカグヤではないのは確か。

 

「やっと見つけたか。サーナイト、押し返すぞ」

「サナ!」

 

 すると覆面の男が腕をクロスさせ、見たことのあるポーズを取った。

 

「マキシマムサイブレイカー」

 

 なるほど、Z技で押し込むつもりか。

 いや、というか何でそんな的確な対処が出来るんだよ。Z技を使えるのも驚きだけども。何ならこれメガシンカした状態でのZ技じゃん。使える奴いたのかよ。

 まあ、いいんだけどね。俺の負担が減るのは確かなんだし。ここは素直に甘えておこう。

 

「今だ! 押し込め!」

『「ウオォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」』

 

 Z技でクソ重い身体が押し返され始める。

 俺も上から首? の割と細いところを掴んで持ち上げていく。これがまた中々の力技を要求された。こんなん人間の体じゃ無理だわ。ウツロイドの本気モードだから何とかなっているだけである。

 いっそ技で………あ、これなら使えるか。

 

『「ブンマワス」』

 

 ふぬぬぬぬぬぬぬっ!!

 ぶんまわすという技なのにぶん回せない!

 重い重い重い!

 あ、でもちょっと動いた。

 

「ヤドラン、会場全体にまもる」

『「ウォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」』

 

 何とか頭の位置を反転させることは出来たが、方向を変えたせいで上昇する速度が加速していく。

 確実にウルトラホールへ返すにはまだ軌道がズレている。ここから俺が修正していかない限りは、宇宙の彼方まで飛んでいき、いずれどこかにまた現れる可能性もある。

 何だって俺がこんな目に遭わなければいけないのだろうか。それもこれも全部カラマネロたちやシャムとカーツのクソどもせいだ。

 ぶっ殺してやりたい気分だが、奴らはもう伸びていて相手をする意味もない。大人しく監獄されるのも見届けるとしよう。

 

『「ヌォォォオオオオオオオオオオオオッ!!」』

 

 最後のありったけの力を込めてテッカグヤを引き上げた。

 おかげで視界は青空から一面、どんよりした暗い世界に変わってしまっている。

 テッカグヤを押し返したはいいが、俺もウルトラホールへと呑み込まれてしまったようだ。

 この穴、吸引力が結構あったんだけど。

 それともテッカグヤの影響なのか………?

 そのテッカグヤはウルトラスペースのどこかへと飛んで行ってしまい、ここにはいない。

 

「アアァァァァァァッッ!!」

『「ッ?! アクジキング……」』

 

 代わりにウルトラホールの先で待っていたのは、一体のアクジキングだった。

 ジュカインを呑み込んだ奴かどうかは分からないが、アクジキングというだけであの時の映像が頭に流れてくる。

 ウルトラホールはまだ開いている。だが、今戻ったとしてもアクジキングも同時にやってくることになるだろう。そうなれば、厄災はさらに悪化する。街の一つや二つ無くなってもおかしくはない。

 

「アアァァァァァァッッ!!」

 

 俺を敵と見做したのか、両腕から竜を模した波導を撃ち出してきた。

 それを躱して光を迸らせる。

 

「アアァァァァァァァァァッッ!!」

 

 さらに大きく口を開き次の攻撃が来るのだと感じた瞬間。

 

『「アダッ?!」』

 

 口の中から何かが飛び出してきて、撃ち抜かれた。カラマネロがバンギラスか何かに撃ち抜かれたような感じだ。

 背後のウルトラホールからは大きく軌道を逸らされ落下、ぶつかった何かもどこか別の方向へと飛んでいった。

 技、ではないよな。何だったんだ、今のは。

 

『「………オイ、ウツロイド! オイ!」』

 

 ウツロイドさん?!

 ヤバい。

 ウツロイドの反応がないぞ。

 お、おお、おおおおおっ!?

 ちょ、マジでこれどうするんだよ!

 真っ逆さまに落ちるだけで身動き取れないんですけど!?

 いや、動けるけど、ウツロイドの能力が一切使えないとか生身と変わらないだろ! 落下運動に抵抗出来ねぇ!

 

『「オレノサイゴハウルトラホールニノマレテオワリッテカ」』

 

 ………お?

 急に青空になったぞ?

 まさかウルトラホールから脱出出来た……?

 いつウルトラホール開いたんだよ。

 気付かないくらい焦っているのは自覚あるけどもだな………。

 

『「…………………」』

 

 これ、どうやって着地すんの?

 ウツロイドは無理だし、ダークライ………?

 

『「ダークライサン、マジタスケテ」』

 

 すると、落下速度が落ち着き、ふわふわと浮遊感が溢れてくる。

 それにしても太陽が眩しい。そう感じてしまうのは何かの予兆なのだろうか。

 

『「イテッ」』

 

 最後はドサッと落ちた。

 衝撃でなのかウツロイドは俺から剥がれ、白色半透明な元の姿へと戻っている。

 

「お疲れさん」

 

 仕方ないのでウツロイドをボールに戻して辺りを見渡すと、どうやら着陸したのは建物の屋上だったらしい。フェンスで覆われ、監獄された気分だ。

 さてさて、ここは一体どこなのやら。

 フェンスの方へと行き、見下ろしてみた。

 

「うわ、高っ、怖っ!」

 

 高層ビルの屋上かよ。

 下見るんじゃなかった。

 ウルトラホール閉じるのに物凄い負荷がかかってたから、今更ながら頭が痛い。しかも今高層ビルから見下ろしたため、吐き気まで催してきた。

 けど、見ないことには分からないしな。

 やだな………見たくないな………。

 はあ………仕方ない。

 気を取り直して………。

 

「…………知らない街だ」

 

 いや、全部が全部覚えているわけじゃないけども、少なくとも俺が見てきた景色にはない感じだ。近いところでミアレシティだが、生憎とプリズムタワーが見当たらない。高層ビルだから見晴らしはいいのだが、それでも見えないってことはミアレシティではないのだろう。

 マジでどこだよ、ここ。

 一体カロスのどこに帰って来たんだよ。

 

「どうするんだよ、ミアレシティじゃないならあの後どうなったのか超気になるじゃねぇか」

 

 ウルトラホールどうなったんだよ。

 もしまだ開くようならウツロイドが必要になるんじゃねぇの?

 あ、でも今戻れたとしてもウツロイドは使い物にならないか。相当負荷かかってたんだし、ぶっ倒れるのも当然だ。

 ………戻れないのなら任せるしかない、よな。

 どうか、無事であってくれよ。

 それにしても俺、カロスに戻れたと思ったら、またカロスに戻るための活動をしないといけないのかよ。

 誰だ、俺をカロスに帰したがらない奴は!

 神にも見放されたっていうのか?

 ふざけんなっ!

 そんな奴がいるのなら、見つけ出してネチネチと締め上げてやる!

 ………マジ帰りたい。

 

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