ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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31話

 さて、どうしたものか。

 支離滅裂な行為をしている目の前の輩にサーナイトに反撃してもらうのは、有りか無しか。

 サーナイトに倒してもらった場合、ポケモンに命令する悪いトレーナーとこじつけられるだろう。そうなるとこんなトレーナーにはなりたくないという解放者が出てくるかもしれない。それはそれで致し方ないことなのだろうが、相手はプラズマ団。奴らの思うような展開になるのだけは避けたい。

 俺が黒いのの力で倒した場合は、俺が化け物扱いされるだろう。プラズマ団はねじ伏せられてもまた別の問題が出てきそうだ。

 結果、どっちも面倒なことになるのは変わりない。

 となると俺が取るべき行動は………。

 

「………解放を謳っておきながら、自分はボールからポケモンを出してあまつさえ命令を出すのか」

「うるさい! これはポケモンを解放するための最終手段なのだ!」

 

 取り敢えず煽る。

 煽って逆上し、相手から攻撃させる。

 そうすれば正当防衛が成立だ。それからならば反撃しても問題ないだろう。

 まあ、それでも修道士擬きの男は何かとこじつけてくるだろうがな。

 そこすらも叩くなら、やはり俺が自らやったように見せるのが一番か。俺が化け物扱いされたところで、長くイッシュにいるわけでもなさそうだから、さっさとあのビルに帰って辞令が下されるまで引きこもれば良いだけの話だし。

 

「ダストダス、ヘドロばくだん!」

「サーナイト、ニャビー。一旦戻っててくれ」

 

 方針が決まるとサーナイトとニャビーをボールに戻して、一直線に飛んできたヘドロを右に躱す。

 

「ワルビアル、ダメおし!」

 

 今度は背後から気配を感じたため、前に飛び込んで躱した。

 

「ダストダス、もう一度ヘドロばくだん!」

 

 次はまた正面からヘドロが飛んでくる。

 丁度片膝立ち状態だったので、立てている右足を踏み込んで反転し、背後で次の指示を待っていたワルビアルの腹辺りを目指して走った。

 結構ね、ワルビアルを正面にすると赤黒い身体にびびっちゃうね。爪とか裂かれたら死にそうだし、立ち向かうのも気合がいるわ。

 

「ダークホール」

 

 そして、目の前に黒い穴を作ってもらい潜り抜ける。

 破れた世界に繋がっていたわけではないようで、単なるワープ装置のような作りだっのか、穴に飛び込んだ次の瞬間には背後で爆発音がした。

 振り返ると後ろにはヘドロばくだんを受けて悶えるワルビアルの姿が。

 

「あ、なるほど。そういう感じね」

 

 どうやらダークライも気を遣ってくれたみたいだ。

 あたかもワルビアルの背後に一瞬で駆け抜けたように見せ、ワルビアルとの同士討ちを狙ってくれていた。もちろんヘドロばくだんの爆発で黒い穴は消失。証拠も綺麗に消し去っている。流石黒いの。

 

「なんでワルビアルに?!」

「お、おい、お前っ!?」

 

 当然、連携が乱れた二人は怒鳴り合いを始めた。

 

「何をしているのです? 早く彼のポケモンたちを解放して上げなさい」

「「は、はい!」」

 

 修道士擬きの男もそんな二人を見て呆れている感じだ。

 

「ダストダス、どくガス!」

「ワルビアル、アイアンテール!」

 

 あ、どくガスはまずいな。

 吸えば俺もただじゃ済まないだろう。

 

「まもる」

 

 だからドーム型の防壁でワルビアルの鋼鉄の尻尾と毒ガスを弾いた。

 

「サイコキネシス」

 

 そして、どくタイプのダストダスに向けて超念力を指示し、左手の動きで横にいるワルビアルにぶつけるように示す。

 

「きあいだま」

 

 そのまま右手を押し出し、エネルギー弾を放った。

 ワルビアルはダストダス共々倒れており、そこにエネルギー弾が着弾すると爆発が起きていく。

 

「………まさかこれで終わりか?」

 

 黒煙の中からは動く気配がない。

 ………え、マジで?

 見た目の割に弱くない?

 それともダークライが強いだけなのか?

 

「くっ………」

「肝心な時に使えねぇな、ワルビアル! さっさとそいつを引っ捕らえろ!」

 

 最早素が出てるぞ。

 口は悪く、やられたのをワルビアルのせいにしている。

 まあ、確かに俺も呆気に取られたけどさ。だからって、トレーナーのお前が言えることじゃないだろうに。

 

「………あなた、何者なんです? 生身の人間がポケモンの技を使うなど、聞いたことがありませんよ」

「そりゃ、ないだろ。俺もないし」

 

 そんな人間がいたら、それこそ大問題だと思うぞ?

 人間かポケモンかなんて物議を醸して、絶対こういう輩に目をつけられているだろうな。

 ………全く、想像力が足りないよ。

 

「そもそも、いつから俺のポケモンがサーナイトたちだけだと思ってたんだよ。バカなのか?」

 

 いや、バカだったな。

 バカだから発想力もなく、こんなくだらないことしてるんだったな。

 聞いた俺がバカだったわ。

 

「な、んですって……?!」

「まだポケモンがいたのか!?」

「早くそのポケモンも解放しなくては!」

 

 うわー、まだポケモンがいるって事実だけでポンポンポンポン新たなポケモンが出てくるんですけど。

 

「………はあ、面倒くさ」

 

 ガマガル、ホイーガ、クリムガン………おう、クリムガンじゃん。ちょっと意外。

 んで、アフロなケンタロスと電気ビリビリ放ってるギャラドス的な奴は名前を知らない。聞けば思い出すかもしれないが、その程度の認識しかないポケモンだ。

 

「バッフロン、アフロブレイク!」

「シビルドン、ブレイククロー!」

 

 アフロがバッフロンで電気ビリビリの方がシビルドンか。シビルドンは聞いたことがあるような気もする。

 

「ガマガル、マッドショット!」

「ホイーガ、ころがる!」

「クリムガン、ドラゴンテール!」

 

 連携も何もない全員による一斉攻撃。誰かの技に重ね合わせるとかいう知恵すらも見せないのだから、チームとも言えない程のお粗末さである。

 

「まもる」

 

 全て正面からしか来ないため、受け止めるとも容易い。

 こんな奴らにポケモンを語られるのもポケモンたちが嫌だろうな。もっとポケモンたちの可能性を引き出せるようになってから言えってんだ。ポケモンの得手不得手すら把握してないんじゃ話にならん。

 

「………うそ、だろ」

「全く効いてない?!」

 

 五体のポケモンの技を一斉に浴びせればどうにかなるとでも思ってたんだろうな。

 それだったら、さっきの時点でやられてるっつの。

 

「………ちょっとは頭を使えよ。連携も何もないただの一斉攻撃でやられるんだったら、ダストダスの毒を浴びてワルビアルに切り裂かれてるっつの」

「ば、化け物め!」

「俺が化け物なら、俺より強い奴は漏れなく皆怪物だぞ」

 

 こいつら、ウルトラビーストなんか目にした時には気絶するんじゃね?

 そう思うとウルトラビーストに立ち向かったアローラ民の方がよっぽど強いわ。

 

「んで、その化け物相手に次はどうするんだ? お前らの本気ってのはその程度なのか?」

「「なっ?!」」

「くっ、クリムガン、ドラゴンクロー!」

 

 俺の挑発に最初に動いたのはクリムガン。

 今度は尻尾ではなく爪を振りかざしてきた。

 

「サイコキネシス」

 

 大袈裟に両腕を開いて、クリムガンの動きを止める。

 

「ホイーガ、ハードローラー!」

「バッフロン、メガホーン!」

「シビルドン、かみくだく!」

「ガマガル、バブルこうせん!」

 

 遅れて他の四体も突っ込んできた。

 

「クリムガンで受け止めろ」

 

 それをクリムガンを動かし盾にして受け止める。全ての攻撃を無防備に受けたクリムガンはもちろん戦闘不能に。何なら思いもやらないものに攻撃してしまったことでポケモンたちも困惑している。

 

「あくのはどう」

 

 その間に残りのポケモンたちも黒いオーラで修道士擬きの男の方へと飛ばしていく。

 

「………何度やってもお前らでは俺には勝てない。諦めて帰れ」

「いけませんね、いけませんよ。これではポケモンたちがあまりにも可哀想です。ポケモンを盾に攻撃を受け止めるなど、あってはならないことですよ」

「なら、今度はアンタが出てくるか?」

「それはワタクシにポケモンであなたを攻撃しろと仰っているのですか?」

「部下にはさせといて上司は高みの見物ってのもどうかと思うがな」

 

 どこまでもこの男は下衆野郎だな。

 こんなのが上司だなんて部下の方が可哀想になってくる。こういう男こそ、部下を盾にして攻撃を受け止めそうだわ。

 

「やはりあなたをこのまま帰すわけにはいきませんね。かと言って使えない部下を持ったがためにどうしたものか………」

「さっさと帰ればいいだろ」

 

 手を使い尽くしたのならさっさと帰ってくれよ。何をそんなにごねてるんだよ。

 それとも何か? 俺にお前らの命まで奪えというのか?

 流石に大衆の面前でやる気はないぞ?

 そんなことをすれば捕まるところか俺が殺されてしまうわ。

 

「仕方がありませんね。あなたのことは彼らに任せるとしましょう」

 

 はっ? 彼ら?

 なに? まだ何かいるの?

 

「アギルダー、かげぶんしん!」

 

 すると突然、大量のポケモンに囲まれた。

 こいつらはアギルダーだな。ゲッコウガが仲間にしていたし、あいつと戦闘スタイルが似ているから相性がよかったのを覚えている。

 ………え、まさかこれが新たな敵ってこと?!

 

「「「な、なんだ?!」」」

 

 あ、どうやらプラズマ団の方のポケモンでもないみたいだな。

 となると第三者か?

 第三者が出てくると話がややこしくなったりしない? 大丈夫?

 

「チャンピオンのアデクさんだ!」

「アデクさん!」

 

 ………チャンピオン?

 チャンピオンってのはつまり、そういうことだよな。

 

「………誰?」

 

 振り返るとそれはそれはフラダリの髪型に似てなくもないじーさんが、モンスターボール掌でバウンドさせていた。

 知らない顔だ。

 なんか、フラダリといい髪型がポケモンに見える人ってどういう気持ちでそんな髪型にしてるのかね。俺だったら注目され過ぎて外に出られなくなるわ。

 

「………チャンピオンのご登場ですか。これは流石にこちらが不利ですね。いいでしょう。今日のところは引き下がるとしますよ」

「で、ですがっ!」

「人間一人も碌に捕らえられないあなたたちでは何をしても無駄と言っているのですよ、ワタクシは」

「「「ッ?!」」」

 

 修道士擬きの男ですらチャンピオンと言っているのだし、本当にこの赤毛のじーさんがあのチャンピオンなんだな。

 強そうではあるが、それ以上に髪型がインパクト過ぎて俺としてはそっちの方が気になってしまう。

 

「まだやる気なら今度はわしが相手するぞ」

 

 ポンポンとさらにポケモンを出すチャンピオン。

 あれはシュバルゴとバイバニラと、アフロケンタロスだな。つか、一人でアギルダーとシュバルゴを連れているとか自分で進化させたのだろうか。

 ただ、一際プレッシャーを放っているのがチャンピオンの髪型とよく似ているポケモンがいる。

 ウルガモス。

 どこか辛そうな感じもするが、放つプレッシャーが他のポケモンの比ではない。恐らく彼の切り札ともいうべき存在なのだろう。

 ウルガモスを見た瞬間、下っ端どもは後退りして修道士擬きの男を連れて行ってしまった。ポケモンたちをボールに戻しもしないで。そのせいで奴らのポケモンたちは自力で追いかけることになってしまい、倒れたクリムガンがお荷物となっている。

 所詮、その程度の奴らだったってわけだ。修道士擬きの男くらいだろうな。あのプレッシャーを涼しい顔で流せるのは。というかそっちの方が異常とも言えるか。

 やはりあの修道士擬きの男は危険だ。

 

「無事か?」

「まあ」

 

 威嚇のために出したポケモンたちをしまったチャンピオンが声をかけてきた。

 

「お前さんが戦っていたようだが、ポケモンは連れていないのか?」

「いえ、ポケモンの解放を謳う奴らにポケモンたちで対峙したら難癖つけられそうだったので。生身の人間が相手しているように見せかけてただけですよ」

「見せかける………?」

 

 どうやら俺の戦闘シーンを見ていたらしい。

 流石にダークライの名は出すわけにもいかないし、何と説明するべきか。しないわけにもいかないだろうし…………。

 

「あー………見えないポケモンが俺を通して技を出せば、俺が技を出しているようにも見えるでしょ?」

「………なるほど、ゴーストタイプのポケモン辺りを連れていたというわけか。どうやらお前さんはポケモンの長所を理解しているようだな」

 

 あ、ゴーストタイプと誤認してくれちゃった。

 実際はあくタイプであるが、似たようなものだし都合がいいのでそういうことにしておこう。勘違いしてくれてラッキー。

 

「して、青年。この状況をどうするつもりだ?」

「好きに言わせておけばいいっすよ。イッシュに長居するつもりもないので」

 

 未だ野次馬どもは俺を指差しながらヒソヒソと話している。中には写真を撮っているやつもいるな。

 まあ、サングラスに帽子も被ってるから顔も髪型も割り出される可能性は極めて低いし大丈夫だとは思うが。それに当時の俺のポケモンの象徴でもあるリザードンはいないから、もし顔バレしても他人の空似で片付けられる。

 

「わしはまた良からぬことに巻き込まれないかが心配だな」

「まあ、そう簡単には死にませんし、俺のポケモンたちが死なせてくれませんから大丈夫っすよ」

 

 既に巻き込まれているような気もするが………。

 ウルトラホール。

 あれは思った以上に謎が多そうである。俺然り、リラ然り。恐らく他にも犠牲者はいる。それでもまだ一つの仮説も上手く立てられていないときた。

 巻き込まれる方の身にもなって欲しいわ、マジで。

 

「わしももうじじいだが、初めて出会うタイプのトレーナーだのう」

「んじゃ、まあ。取り敢えずありがとうございました。長々と相手するのも面倒だったんで、チャンピオンが登場してくれたことで早い幕引きになりましたよ」

「それなら結構。わしの肩書きも役に立つ時があってよかったわい」

 

 一応助けられた身なのでお礼は言っておこう。

 ただ、このままこの場に留まれば、また別の問題が起きかねない。何て言ったって、チャンピオンと話してるんだ。あの野次馬どもがいつ特攻を仕掛けてくるかも分からない。過激なファンがいたら面倒なだけだし、さっさと帰ろう。

 

「あ、そうだ。一ついいですか」

「なんだ?」

「ポケモンを解放するんだったら、解放された後にポケモンたちがどうなるかも考えて解放しろよって言っておいてください。解放するしないはあの人たちの勝手なんで」

「それはわしも案ずるところではあるのう。よし、分かった。野次馬どもには伝えておこう」

 

 野次馬がポケモンをどうしようが俺には関係のない話ではあるが、バカに捨てられるポケモンたちのことを思うと何も言わないでおくのも気が引けるというものよ。

 

「お前ら、出てきていいぞ」

「サナ!」

「ニャブ!」

 

 ボールに戻していたサーナイトとニャビーを出すと二人して抱きついてきた。

 

「面倒なのはお帰りになったぞ。俺たちも散歩の続きといこうぜ」

 

 ………あの修道士擬きの男は『彼らに任せる』とか何とか言っていた。ということはいずれまた誰かに狙われることになるのだろう。それが今すぐなのかどうかは分からないが、来るなら来ればいい。今の俺はただでさえ面倒なことになっているんだ。そこにちょっかいをかけようってんだから、殺される覚悟があると思っていいだろ。

 つか、狙われる側の俺が遠慮なんてする必要がない。返り討ちにしてズッタズタにしてやればいいのだ。

 ………はあ、カロスに帰りたい。

 

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