ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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36話

 鎧島に来てすぐにクラッカー事件に見舞われ、質問攻めにされた後。

 待ちかねていたかのように宴会が始まった。

 ノリが軽いとは思ったが、ここはどこぞの魔物の国なのだろうかと疑うレベルだわ。みんな宴会好き過ぎるだろ。

 ひとまず酒は回避。

 代わりに出されたジュースも一通り飲むだけ飲んで、あとはお茶で流していた。

 そんなこともあり、二日酔いは回避できたわけだが…………。

 

「起きてもう寝たいとか久しぶりだわ………」

 

 疲れが全然取れていない。

 ギガドレインで吸われた気分だ。

 元々大勢でワイワイするのに慣れてない上に、あのキャラの濃い夫婦に翻弄されっぱなしだったのが効いているのだろう。

 あの人たち、もしかしなくても天敵かもしれない…………。

 

「おざます」

「およ、はっちん。おはようちゃん」

「………なんか、昨日と空気違くないすか?」

 

 爺さんは昨日と変わりない。

 それよりも門下生の兄弟子たちの方。

 俺が起きるの遅かったから怒っているのだろうか……。なんか、そんな感じのピリピリ感が肌を突き刺してくる。

 

「さすがはっちんだね。空気感の違いにいち早く気づくなんて。答えを言うとお客さんが来てるのよん」

 

 客?

 その人のせいでピリピリしていると?

 

「………ヤバい人とか?」

「うーん、まあある意味?」

 

 どういうことだよ。

 ガラルのことなんてほとんど知らないんだから、含みを持たれても分かんねぇよ。

 

「あ、そうだ。ワシちゃんいいこと思いついちゃった」

 

 まあ、俺は女将さんのところに挨拶でもしてくるかね。

 

「ダンデちん、ちょっちこっちに来てくれない?」

「はい、師匠!」

 

 …………。

 

「あの、何故手を……?」

「チミ、逃げそうだから?」

「ミツバさんのところに挨拶しにいくだけですよ?」

「なら、後からねん」

 

 えぇー………。

 もうこの爺さんの思考回避がさっぱり理解できねぇよ。一体何考えてんだよ。怖いよ、怖い。怖すぎる。

 

「師匠、どうかしましたか?」

「ダンデちん、はっちんとバトルしてくれない?」

「はい?」

「バトル! やります! やらせてください!」

 

 おい。

 なんか呼ばれてすっ飛んできたかと思えば、二つ返事で答えるなや。

 どんだけバトルしたいんだよ。

 

「し、師匠……大丈夫なんですか?」

「相手はダンデさんですよ?」

「だからだよん。はっちんがどんなバトルを見せても対応できそうなダンデちん相手ならはっちんも気兼ねなく実力を発揮できるでしょ?」

「そ、それはそうですけど………ハチさんがすぐに倒されちゃうって可能性も………」

「大丈夫、大丈夫。ワシちゃん、これでもいろんなトレーナー見てきたからね。なんとなく分かるのよ」

 

 姉弟子たちにすげぇ心配されてるんだけど。

 俺、そんな弱そうに見えてるのかね。

 

「はっちん、昨日はいつかだなんてワシちゃん言ったけど、このバトルではっちんの本気を見せてねん」

「言うと思いましたよ。それなら、さすがに寝起きはキツいんでちょっと準備させてください」

「オッケー、オッケー。あそこの扉から外のフィールドに出られるから、準備できたら出てきてね」

「外にフィールドあるんすね」

「モチのロンよ。ワシちゃん、これでもバトル大好き人間だからね。現役時代はもっとすごかったのよん」

「まあ、バトル好きでもなければ道場なんて開いてませんもんね」

「そうだねー。んじゃ、よろぴくねー」

 

 はぁ…………。

 寝起きでバトルですか………。

 取り敢えず、お茶か水もらってこよ。

 台所へ向かうとミツバさんが洗い物をしていた。

 

「あら、ハチくん。おはよう」

「おざます」

「聞こえたわよ。ダンデくんとバトルするんだって?」

「ええ、まあ。寝起きドッキリもいいところですよ」

 

 俺に気がついたミツバさんは洗い物をやめて冷蔵庫からお茶を出してコップに注いでくれた。

 すげぇな、この人。

 まだ何も言ってないってのに。

 

「はい、お茶」

「よく分かりましたね。いただきます」

 

 ぷはーっ。

 生き返る。

 夜も思ったよりも暑くてじとっとした寝汗をかいたくらいだ。脱水とまではいかなくとも喉は渇いてる。

 はぁ、さっぱりした。

 さすがに寝起きのままだと頭が働かないからな。さっぱりさせたかったのは本当だ。

 ただ、バトルを言い渡された辺りからもう一つの目的がここにはできていた。

 

「そういえば、マスタードさんと結婚して道場を一緒に経営してるみたいですけど、ミツバさんはバトルってします?」

「そうだね、ダーリンと結婚してからダーリンの影響でやるようになったわよ」

「なら、ダイマックスも?」

「一応ね」

「へぇ」

 

 結婚してからバトルを始めてダイマックスもできるようになったのか。

 となると俺もいずれダイマックスが使えるようになるかもな。

 

「なら、ダイマックスってどれくらい巨大化してられるんですか?」

「うーん、技を三回くらい使ったら元に戻る、かな。でもポケモンによるよ?」

「いえ、参考までに目安が欲しかっただけなんで」

 

 あの有識者会議でガラル地方ではダイマックスなるものがバトルに取り入れられていると言っていた。言うなればカロス地方とかでのメガシンカの導入と同じ類だろう。そうなると実力者たちは挙ってダイマックスを使用してくるはずだ。あのダンデって男がどれくらいのレベルなのかは知らないが、あの爺さんがそこら辺のトレーナーをぶつけてくるとは思えない。あのダンデという男もそれなりの実力者ではあるだろう。となるとダイマックスが使われてもおかしくはない。

 

「あらあら、ハチくんて実は狡賢いのね」

「情報はあるに越したことはないでしょ」

「あの人たちは外から来たハチくんにダイマックスを見せて驚かせようとしてたみたいだけれど、今回はハチくんの方が上手だったようだね」

「………確かにそういうの考えてそうですね。まあ、ダイマックスを使ってくるかどうかも分かりませんし、どちらにしてもダイマックスしたポケモンとは初バトルですからね。サプライズになるのは変わりませんよ」

 

 問題はダイマックスに対してどう対処するかだ。見たこともないため対策のしようもないが、対抗手段がないわけではない。

 それに爺さんは今の俺の本気をご所望だ。

 気兼ねなく使ってやるとするか。

 

「今までここに来た子たちの中では、あんたが一番度胸がありそうだね」

「慣れてるだけですよ」

「ダーリンたちを楽しませてあげてね」

「了解」

 

 ミツバさんもこう言ってるんだ。

 ダイマックスを見せて俺を驚かせようとしたあの爺さんを逆に驚かせてやるか。ついでにあのダンデってやつも。

 ひとまず部屋に戻り着替えてから、虹色に光る石が特徴的なネックレスと変な形の土台がある黒いブレスレットをつけて外のバトルフィールドに向かうことにした。

 

 

 

   ✳︎   ✳︎   ✳︎

 

 

 

「あ、はっちん。着替えてきたんだね」

「ぼーっとしたままじゃ本気なんて出せませんからね」

 

 外に出ると門下生たちが今か今かと待ち侘びていた。

 

「………なんか、みんなそわそわしてません?」

「そりゃ、無敵のダンデのバトルが見られるからね。生で見られるなんてレアものなのよ」

「………はっ? あいつ有名人なんすか?」

「そだよー。詳しくはバトルが終わってからね。先入観なくダンデちんとバトルしてほしいから」

「まあ、それはいいですけど………」

 

 先入観なくって………そんなにあのダンデってのはヤバいのか?

 ただ強いのかクセが強いのかは分からないが、少なくともそう言い切れるものがあるってことなんだろう。

 ………そうか、強いのか。無敵のダンデ、無敵………ね。

 

「………悪いな、待たせちまって」

「構わないさ。オレはバトルを待ち侘びているこの時間も好きだからな!」

 

 待ってる時間も好きって………。

 これ、トレーナー自身がキャラの濃いヤバいやつなんじゃ…………。

 

「ルールは一対一の一本勝負だよん。ただ、ワシちゃんがはっちんの実力を見たいから技の使用制限とかはなしね。だからお互い思いっきりやりなさいよ」

 

 昨日ここに来た時に質問攻めに遭い、そこで手持ちのことは聞かれていた。だから爺さんも俺がサーナイトを出す前提でルールを決めたんだろうな。

 

「それじゃ、はっちんとダンデちんのバトル、始め!」

「いけ、リザードン!」

 

 ッ!?

 まさかのここでもリザードンが出てくるのか………。

 アローラでもリザードンがいたし、大人気過ぎない?

 

「サーナイト」

「サナ!」

 

 さて、運び屋のリザードンはまだまだな感じではあったが、無敗のダンデとか言われてるらしいこの男のリザードンはどこまでの強さを有しているのやら。

 

「まずはご挨拶だ! リザードン、かえんほうしゃ!」

「サーナイト、ひかりのかべをA字型に展開するんだ」

 

 口から吐き出される炎を見えない壁を自分の前にA字型に展開して炎を枝分かれさせた。

 

「「「ッ!?」」」

「受け止めるんじゃなくて………」

「流した………?」

 

 炎の勢いや熱量からして相当育てられている。

 少なくともアローラのリザードンとは比にならない。

 

「ならば、これはどうかな! リザードン、エアスラッシュ!」

 

 今度は数で押し込もうってことか。

 

「サイコキネシスで受け止めろ」

 

 だが、これくらいなら超念力で受け止められる。

 

「全部止められるとは………やるな!」

 

 無数に飛んでくる空気の刃をその場に留めると、素直に驚かれた。

 ガラル地方ではこのエアスラッシュにやられたポケモンが数多くいるのだろうか。

 

「リザードン、だいもんじ」

「サーナイト、刃を全部だいもんじにぶつけろ」

 

 押し寄せる大の字型の炎に受け止めた空気の刃をぶつけていく。

 すると次第小爆発が連続していき炎が破裂した。

 

「はがねのつばさだ!」

 

 いつの間にっ!?

 黒煙の中から翼を鋼のように硬くしたリザードンが飛び込んできた。

 

「サナ!?」

 

 さすがに俺もサーナイトも反応が間に合わず、サーナイトが翼で飛ばされてしまった。

 

「………なるほど」

 

 威力、スピードともにあいつらに近いものを感じる。ただ、あいつらは自身よりも格上の相手と対峙している経験がある分、鬼気迫るものがあるが、それでもこのリザードンはあいつらと比べても遅れをとっていない。少なくともサーナイトよりは格上だ。そこにダイマックスが加われば、想像に難くない強さだな。このリザードンにサーナイトが勝てるとすれば、ダークライやクレセリア、ギラティナと対峙したことで得た精神力くらいか。それを活かしながら相手が知らないであろうメガシンカとZ技という二つの手札を上手く使って隙を作り出すしかないだろう。

 

「サーナイト、相手のリザードンはお前の兄貴分たちレベルだ。だから、力の出し惜しみはしなくていい」

「サナ!」

 

 立ち上がったサーナイトに声をかけると、まあ大丈夫そうだ。

 

「リザードン、ねっさのだいち!」

 

 すると先にリザードンが地面を叩いて砂を巻き上げてきた。

 

「サイコキネシスで砂を固定しろ」

 

 初めて聞く技だが、ネーミング的に熱い砂で攻撃してくるのだろう。

 

「ッ、連続でねっさのだいちだ!」

 

 あれは何かを閃いた、そんな顔だな。

 

「ひのこ!」

 

 ッ?!

 

「サーナイト、砂は捨てて今すぐまもるを使え!」

 

 ヤバい。

 まさかそういうこともしてくるのか。

 いくら何でもリザードンにも被害が出るぞ。

 

「「「うわぁぁぁっ!?」」」

 

 観戦組の門下生たちが悲鳴を上げている。

 それもそのはず。

 今目の前で起きているのは粉塵爆発だ。

 リザードンが巻き上げた砂をサイコキネシスで固定してしまったがだめに無風状態と同じようになり、そこに敢えて勢いのない火の粉を散らしたことで爆発が次々と起きていった。

 途中でサーナイトも防壁を張るのに成功したため、過度なダメージは受けてないと思うが、先の攻撃のダメージもあるし楽観は出来ない。この男もリザードンも技を使う度にエンジンがかかっていっている印象だ。

 

「リザードン、追い込むぞ! ぼうふう!」

 

 防壁の外側が暴風圏になり、打ち砕かんとばかりに防壁を圧迫していく。

 

「サーナイト、大丈夫か!」

「サ、サナ……!」

「よし、ならサイコキネシスで逆回転させて風を止めるんだ!」

 

 この状態では俺も声を張らないとサーナイトに指示が届かないというのが何とも辛いところだ。口を開けたら巻き上げられた砂が口に入ってくるからな。そうでなくとも手で目を覆わないと目にも入ってくる始末。

 

「サーナッ!」

 

 次第に暴風が萎んでいき、風が治まった。代わりに防壁は無くなっているが、特に暴風を止める時にダメージを受けた形跡はない。

 心なしか観客陣も安堵している。

 

「さあ、ここからはチャンピオンタイムだ! リザードン、キョダイマックス!」

 

 だが、一人だけ元気な男がいた。

 粉塵爆発からの暴風によりフィールドはえらいことになっているというのに、一人だけその影響を一切感じさせない溌剌とした声に………なんとなくヤバい理由が分かった気がした。

 多分、そういうことなのだろう。

 その無駄に元気な男ーーダンデが変なポーズを取ったかと思うと、ボールを取り出してリザードンを戻した。

 そのボールは段々と膨れ上がっていき、雪だるまの片方くらいの大きさになると後ろへ放り投げた。

 ついに来たか。

 恐らくこれがダイマックスーーいやキョダイマックスなのだろう。

 

「グォォォオオオオオンンンンッッ!!!」

 

 ………おいおいマジか。

 巨大化って一体何メートルあるんだよ。

 高層ビルを見上げる感覚だぞ。

 一吠えするだけで地響きがすごい。

 

「キョダイゴクエン!」

 

 そんなポケモンから技なんか出されたら、そらどうしようもないわ。

 口から吐かれた炎だけでも隕石が降ってきたのかってレベルの恐怖を覚えるぞ。

 何気に俺の周りに黒いオーラがあるというね。

 影にいる奴ですら危険に感じている証拠だ。それくらいダイマックスはヤバい。

 

「まもる」

 

 ひとまずさっきミツバさんが言っていた技を三回使わせるところまで持っていかないとな。それまでどうにか耐え切らねば。

 

「サ、サナッ!?」

 

 いやまさかとは思っていたが、炎に包まれた瞬間に防壁が破壊されてまうとは。

 フィールドには飛び散った炎が残り火となり燃え続けている。言うなれば炎のフィールドというところか。

 

「まもるで防げるほど、ダイマックス技やキョダイマックス技は甘くないぜ!」

 

 こうなったらやはりアレを使うしかないな。

 俺は予め用意してきたクリスタルの中から黄色いのを取り出し、左手のZリングに嵌め込んだ。

 一応、エスパーとカクトウとアクも持ってきていたが、リザードンが相手ならばデンキZが最適だろう。

 

「サーナイト、デンキZだ」

「サナ!」

「リザードン、次はダイスチルだ!」

 

 俺たちは急いで腕をクロスさせてからポーズを取っていき、パワーを充填していく。

 その間にもリザードンは地面を叩き、ストーンエッジのように地面から鋭利のある鋼を突き上げてくる。

 

「スパーキングギガボルト」

 

 そこに狙って最後のパンチで電撃の塊を打ち込んだ。

 ぶつかった瞬間、鋼の勢いは止まり、爆発を起こしながらも突き出た鋼を削っていく。

 

「えぇっ!?」

「ダイスチルが破壊されたっ?!」

 

 何やら外野では驚愕の声が上がっているが、それどころではない。この男に容赦という二文字はないのだろう。粉塵爆発から暴風でそれを痛感した。今気を緩めてはあいつになぶり倒されてしまう。

 

「キョダイゴクエン!」

 

 再び業火がサーナイトに襲いかかってくる。

 ………ふぅ、これで三発目。

 Z技の直後だからどうなるのかは心配であるが、使う順番を逆にした時のようなことにはならないだろう。

 頼むぞ、サーナイト。

 

「ーーーメガシンカ」

 

 俺のネックレスにつけたキーストーンとサーナイトのネックレスにつけたメガストーンが共鳴し、サーナイトが炎の中で虹色の光に包まれていく。

 やがて、光が弾けると同時に周りの炎も放出されるメガシンカエネルギーに呑まれ、跡形もなく消えていった。

 

「なっ!? 炎が、消えた………?!」

 

 同時に淡いピンク色のオーラがフィールドを包み込んでいく。

 

「これは、ミストフィールド……?」

「テレポート」

 

 外野の反応は無視して、サーナイトに指示を出した。

 

「ッ!? リザードン、後ろだ!」

 

 瞬間移動で巨大なリザードンの背後に周り込むと、遅れてリザードンが首を動かしてくる。

 

「かげぶんしん」

 

 そんなに見たいのなら見せてやるよ。

 これだけの数があれば、リザードンも探さなくて済むだろ?

 

「10まんボルト」

 

 まあ最も、四方を囲まれた状態で分身一体一体から電撃を浴びれば、相当なダメージになるだろうが。

 

「グォォォンンンッ!?」

 

 巨大化すること火力・耐久力ともに上がるというメリットはあるだろう。それも桁違いに、だ。

 だが、同時にデメリットもある。巨大化したことで背後に回られたりすれば、範囲系の技でもない限り捉えることが出来ないだろう。しかも身体がデカい分、狙われる箇所もかなり増える。

 ただ、ダンデの場合はそれすらも実行に移す前に倒してきたのだろう。

 

「………ようやくか」

 

 するとリザードンが段々と小さくなり始めた。巨大化していたから元に戻り始めたと言った方が正しいか。

 

「キョダイマックスを耐え切った………」

「こんなの初めてじゃないか………?」

「………あれ? サーナイトってあんなだったっけ?」

 

 一度俺のところへテレポートで戻ってきたサーナイトを見て姿の変化に違和感を覚えた者もいるようだ。

 

「………まさかリザードンのキョダイマックスを耐え切られるとは。こんな感覚久しぶりだぜ。だからこそ、絶対勝つ! リザードン、れんごく!」

「テレポート」

 

 当たれば火傷になってしまう技だが、ミストフィールドがある今当たっても状態異常にはならない。まあ、テレポートで躱すんだけどね。

 

「そう何度も同じ手は食らわないぜ! リザードン、尻尾を振り回せ! アイアンテール!」

「俺もサーナイトもお前たちが読んで動いてくるってのは読んでるんだよ。サーナイト」

 

 敢えてリザードンの真後ろにテレポートし、リザードンの攻撃を誘い、さらにテレポートして頭上を取った。

 

「10まんボルト」

 

 そして再び電撃を浴びせるとリザードンは遅れて飛び上がってくる。だが、サーナイトに届く前に身体に痺れが走ったようだった。

 あーあ、折角ミストフィールドがあったのに。無駄に飛んじゃったから麻痺するんだぞ。

 

「くっ、リザードン、フレアドライブ!」

「リフレクター」

 

 痺れを誤魔化すように身体を炎で包み再度飛び上がってくるリザードンの前に少しピンクっぽい壁を作り出した。

 まあ、予想してはいたが一瞬で砕かれてしまったが、その後にも続けてリフレクターを張っていく。サーナイトの目の前にたどり着いた頃にはすっかり勢いを失っており、そこを電気を纏った拳で地面に叩きつけた。

 やはりメガシンカしているとこのリザードンとの差が埋まるみたいだな。何なら攻守が切り替わっているまである。

 

「グォォォオオオオオンンッ!!」

 

 おっと、どうやらもうかが発動したみたいだな。

 

「サーナイト」

「サナ!」

 

 再びテレポートで俺のところに戻ってくるサーナイト。

 さて、ここからあいつらはどう出てくるか。

 

「げんしのちから!」

 

 ………ん?

 もうかが発動しているのにか?

 ………いや、使用目的はそこじゃない。追加効果の全能力の上昇を狙ってのことか。

 

「サーナイト、マジカルシャイン」

 

 これは面倒なので飛んでくる岩ともどもサーナイトから迸る光で呑み込み、リザードンが加速する前に一旦視界を奪った。

 

「トリックルーム」

 

 念には念を入れて素早さがあべこべになる部屋にも閉じ込めた。

 

「かげぶんしん」

 

 さて、仕上げといこうか。

 

「トドメだ、サーナイト。10まんボルト」

 

 分身でリザードンを囲い込み、全方位から電撃を浴びせていく。

 

「リザードン!?」

 

 ダンデがリザードンに呼びかけるも、その声も虚しくリザードンはバタリと倒れてしまった。

 

「およよ……リザードン、戦闘不能。はっちんの勝ち」

 

 倒れたリザードンの様子を見にきた爺さんがそう判定を下した。

 はあ………疲れた。

 ダイマックスは受ける側も相当体力を持っていかれるわ。巨大化するためプレッシャーが半端ない。

 さて、何となく嫌な予感しかしない無敗の男に勝ってしまったわけだが…………公式バトルじゃないんだし大丈夫だよな?

 

「チャンピオンタイムイズオーバー………オレの負け、か。………負けたのなんていつぶりだろうか」

「ダ、ダンデさんに、勝った………?」

「ハチさん、すげぇ!」

「あの無敗のダンデに勝った!」

「サナー!」

「おう、お疲れさん。身体は大丈夫か?」

「サナ」

 

 メガシンカを使ってからZ技を使った時は倒れてしまったが、Z技を使ってからメガシンカを使うと大丈夫なようだ。まだ楽観はできないが、Z技からのメガシンカという流れは固定しておいた方がいいのだろうな。

 

「お疲れさま、リザードン。ゆっくり休んでくれよ」

「いや〜、はっちん勝っちゃったねぇ」

「そっすね」

「オレもまさか負けるとは思ってもみなかったぜ。君は強いんだな」

「たまたまだ、たまたま。無敗のダンデなんて言われてるらしい有名人がガラル地方で主流のダイマックスを使わないはずがないだろ。だから、バトルする前にミツバさんからダイマックスの効果時間を聞いておいたんだよ。それで耐え切る算段を立てておいたってだけのことだ」

「まず、耐え切るポケモンってのが初めてなんだがな」

 

 やっぱりそうか。

 何となくそんな気はしていた。

 

「公式ルールだったら話は別だ。限られた技で対処するのは無理がある。耐え切ったとしても大ダメージは免れないと思うぞ」

「ダンデちん、これが非公式バトルでよかったねん」

「オレとしては堂々とバトルしたかったですがね」

「あ、だったらはっちんジムチャレンジに挑戦したらどう?」

「ジムチャレンジ? ジム戦に行けと?」

「うん、ガラル地方ではジムチャレンジってイベントが年に一回開かれるのよ。期間中にジムバッジを八つ集めることができたら、チャンピオンカップに出場できるってわけ。非公式ルールとはいえダンデちんに勝ったはっちんならもしかしらたチャンピオンになれるかもね」

 

 ジム戦か。それにチャンピオンカップ。

 やっぱりそういうことなのだろう。

 ………まあ、今すぐには無理だな。

 流石にあいつらを出すわけにもいかないし、そうなると手持ちが圧倒的に足りない。ガラル地方の情報を集める上では本土を練り歩くいい材料ではあるが、それは要相談ってところだな。

 

「そのチャンピオンが誰なのかは知りませんけど、次は最高の舞台でなんて気が早すぎるでしょ」

「………ん? オレのこと知らないのか?」

「知らんな。無敗のダンデとか言われてるのすらさっき知ったくらいだ。ましてやチャンピオンがこんな野良試合で負けるとは思えん」

「なっ………!?」

 

 というかこんなところでチャンピオンに勝ったなんて話が外部に漏れてみろ。面倒なことになる未来しか見えないっつの。

 

「いいだろう! だったら、必ず君にはジムチャレンジに参加してもらうからな! そこで勝敗を付けようじゃないか!」

 

 そう言い残してダンデはさっさと行ってしまった。

 

「………はっちん、実は気付いてるでしょ」

「そりゃ、自分でチャンピオンタイムとか言ってましたし。無敗のダンデなんて呼ばれ方するのもそこしかないでしょ」

 

 やっぱりこの人は俺が気付いてることに気付いていたか。ダンデ本人はどうか分からなかったが、この爺さんに至ってはノリが軽くとも師範なだけはある。

 

「よく見てるね〜」

「特技は人間観察なんで」

「さてと、これからはっちん忙しくなりそうだね」

「勘弁してください。ただでさえ今のバトルで他の門下生たちの目の色が変わってるんですから。新たな面倒事は起こさないでくださいよ」

「なるべく気をつけるよん。なるべくね」

 

 ………絶対何か企んでるだろ。

 一体どこまで上から話を聞かされているのやら。それとも何も知らないのにこんななのだろうか。

 つくづく掴めない爺さんだわ。

 

「あ、それとみんなも。今日のことは内緒だからね? くれぐれも外部に漏らしちゃメッ! だよ?」

 

 ………ほんと、マジで。

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