ダンデのリザードンの案内(決してダンデの案内ではない)でげきりんの湖なるエリアが見えてきた。
いや、何で急いでるっていうのにあらぬ方向へ行かせようとするんだよ!
方向音痴にも程があるだろ!
ユキノ以上にやべぇぞ!
まあ、目の前にはもっとヤバい光景があるけどな………。
湖の上に巨大化したギャラドスが。その奥の陸地に巨大化したキュウコンが。
うん、湖の方は地獄絵図だな。巨大化したギャラドスとかもはや破壊の権化じゃねぇか。
「キバナ! カブさん!」
リザードンから飛び降りたダンデは、キュウコンと戦っていた二人のトレーナーに声をかけた。
どうでもいいけど、足腰丈夫そうだな。
「遅ぇよ、ダンデ」
「待ってたよ、ダンデ君」
続いて俺たちも陸に着地する。
「状況は?!」
「オレ様とカブさんがここ、ルリナとメロンさんが湖上の巣穴をやってる」
「二ヶ所で発生しているというのか……!」
「ああ、こっちはキュウコンで五体目だ。流石のオレ様たちでも参っちまうぜ。ジュラルドン、ストーンエッジ! ヌメルゴン、ハイドロポンプ!」
既に二人で五体も相手にしているのか。
疲労はかなり溜まってそうだな。
「それにしてもマスタードさんを召喚するとは。ダンデ君も大胆だね」
「カブちん、久しぶり」
「マスタードさんもお元気そうで何よりです。マルヤクデ、ねっさのだいち! バシャーモ、スカイアッパー!」
あ、バシャーモがいる。
ガラル地方にもバシャーモがいるのか?
「悪ぃ、カブちゃん! 遅れちまった!」
「ピオニー君! 来てくれて助かるよ!」
するとまた一人、肌が黒いおっさんがやって来た。
カブと呼ばれる初老に近そうな人の知り合いだろうか。
「うぇっ?! 鋼の大将!?」
対して、ダンデに声をかけられていた長身の肌黒青年は、おっさんの登場に驚いている様子。
なに? この人有名人なの?
「よぉ、キバ坊!」
ニカッとハニカム色黒オヤジ。
表情一つをとってもうるさい人だな。
「んで、ダンデよぉ。何でスタッフ連れて来ちゃってんの? バカなの?」
「キバナ、彼も戦力の一人だ」
「はっ?」
「マスタード師匠の道場にたまたまいたから連れてきたんだぜ」
「いやいやいや! 無理だろ!」
ワイルドエリアのスタッフがどれくらいの実力なのかは知らないし、そもそもトレーナーなのかも分からないが、すごい言われようだな。それだけダンデの言動を信用されてない証なのかもしれない。
突拍子もない奴だもんな。
「ウルガモス、ぼうふうで砂を巻き上げろ」
仕方ないので戦力になることは見せつけておくことにした。
巨大なキュウコンの周りを暴風で覆い、砂を巻き上げていく。
「サイコキネシスで固定しろ」
そして巻き上がった砂を超念力でその場に固定させた。
これでキュウコンがいつ攻撃しても自滅してくれるだろう。
「お、おい何を……」
「キュウゥゥゥウウウウウウッ!?」
キュウコンが炎系の技を出した瞬間、キュウコンの周りで次々と爆発が起きていく。
ダイマックスって巨大化してる分、狙いところが多くて使い勝手悪そうだよな。
「これは……! 粉塵爆発!?」
何の炎系の技を出そうとしたのか分からないが、攻撃が飛んでくることはなく、キュウコンが元の大きさへと戻っていった。
「要は倒せばいいんだろ?」
「あ、ああ………こんなん有りかよ……」
「そもそもこんな緊急事態で真っ向から勝負してたんじゃ、こっちの身が保たないだろ」
巨大化したポケモンなら自分の技を受ければ相当のダメージを受けると思うんだけどな。そのやり方だって色々あるだろうに………。
「で、湖上の方の助けはいかないのか?」
「そうだった! 誰か水上で戦えるポケモンはいますか?」
忘れてやるなよ。今も必死に戦ってるんだろう?
こんな連中と肩を並べないといけない女性陣も大変だな。
「ヌメルゴンなら水は好きだが、流石に水上戦は無理だな」
「僕も基本ほのおタイプだからね。みずタイプが出てくる巣穴では効率が悪いと思うよ」
「ワシちゃんも難しいね。アーマーガアくらいだよ」
「なら、オレがいこう。みずタイプはガマゲロゲしかいないが、飛行能力があるのは三体いるからな。ちなみにハチは?」
「あ? 無理、パス」
ウルガモスくらいしか飛べないし、俺がいったらウルガモスに掴んでいてもらわないといけないから結局攻撃ができなくなるんだよ。しかもこっちもほのおタイプだし。それくらいお前分かってるだろ………。
まさかこのチャンプ、それすらも分からないバカ……ってことはないよな?
「飛行能力ってんならオレもハッサムとドータクンがいるぜ」
「よし、ならオレとピオニーさんがルリナたちと合流だな。ここはキバナたちに任せる!」
「おい、こいつ置いていくのかよ!」
こいつ呼ばわりのどうも俺です。
指刺すなや。
へし折るぞ。
「あ、それとキバナ。ネズは?」
「あいつはマスコミを抑えてる。映像を拵えようとするバカをはっ倒してくるってよ」
「そりゃ、何よりだ」
やっぱりいるんだな、メディア関係者。
「ところで師匠、この二人は?」
「キバナちんとカブちんだよ。二人とも現役のジムリーダーで、それぞれドラゴンとほのおタイプを専門としてるのよ」
「へぇ………だからバシャーモか」
「でもカブちん、バシャーモは基本バトルに出さないよね?」
「公式戦ではね。一応ジムリーダーが使うポケモンはガラル地方に生息している種族ってルールがありますから」
「そうだっけ? ワシちゃん忘れちった」
へぇ、そんなルールもあるのか。
………ん? てことはバシャーモはガラルには生息していない?
「ん? ああ、僕はホウエン地方出身なんだ。そしてバシャーモが僕の最初のポケモンでね。公式戦では使わないけど、実力は僕のポケモンの中でもトップなんだ。だからこういう時には大変頼もしい相棒なんだよ」
なるほど、そりゃバトルに参加させてるわけだ。
こういう時にこそ、頼れる相棒を使う場面だもんな。
「バシャーモ………うん、いい毛並みですね。ほのおタイプらしく、戦闘モードでは毛が立っている」
「君はブリーダーなのかい?」
「いえ、ちょっとばかしほのおタイプにもバシャーモにも縁があったってだけですよ」
バシャーモの毛並みを観察していると右腕にあるものを見つけた。
「へぇ」
これはこれは。
まさかガラル地方に、それもジムリーダーに使い手がいたとはな。
「カブさん、次バシャーモの本気見せてもらってもいいですか?」
「おい、お前……! 何勝手に!」
「いいよ。どうやら君はこれを知っているようだからね」
そう言ってカブさんは首から下げたペンダントを見せてきた。
ああ、そこに入っているのね。
「ッ!? カブさん、まさか!」
ん?
こいつも知っているのか?
「ヒヒィィィィィィイイイイイイイイイイイイッッ!!」
するとさっきキュウコンがいた方向から鈍い雄叫びが聞こえてくる。
見るとなんか白い雪だるまのようなポケモンが巨大化していた。
「次はヒヒダルマのようだね。これは好都合だ。いくよ、バシャーモ。燃え上がれ、メガシンカ!」
あ、あれイロハが仲間にしてた方のヒヒダルマだ。
ということはリージョンフォームか。やっぱり頭ぼっこりしてんな………。マジで雪だるまだわ。
火だるまから雪だるまねぇ………。
「カブさんのメガシンカ………久しぶりに見たぜ」
白い光に包まれたバシャーモは姿を変えてヒヒダルマの方へと駆けていく。
メガシンカしたことで特性はかそくなっている。時間が経てば経つ程目にも止まらぬ速さになるだろう。
「ウルガモス、バシャーモを援護しろ。ねっぷう」
「コジョンド、とびひざげり!」
「ジュラルドン、ラスターカノン!」
相手が雪だるまならこの面子でどうにかできそうだ。ヒヒダルマのリージョンフォームはこおりタイプ。イロハのヒヒダルマのようにダルマモードになればこおり・ほのおタイプになるんだっけか。
各々が攻撃を仕掛けていく中、バシャーモがヒヒダルマを駆け登っていく。
「バシャーモ、インファイト!」
顔面に向けて攻撃が集中しているところにバシャーモが背後から連続で殴りつけた。
「ヒヒィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイッッ!?!」
すると激昂したヒヒダルマが高速で回転し始める。
バシャーモ、ウルガモス、コジョンドはその場からすぐに離脱したが、どっしりとしたジュラルドンとやらは即座に反応出来ずに吹き飛ばされてしまった。
「ジュラルドン!?」
一直線に壁面に衝突したジュラルドンに反応はない。
多分、戦闘不能に陥ったのだろう。
「チッ、バクガメス!」
トレーナーの方はちゃんと状況を理解しているようで、代わりのポケモンを出して、ジュラルドンの方へと向かっていった。
「連続で五体も相手にしているんだ。しかもタンク役はジュラルドン君に任せてたからね。ジュラルドン君には相当疲労が溜まっていたんだと思うよ」
カブの呟きに一撃でやられたわけではないのは分かった。
緊急事態に呼び出されるようなジムリーダーだしな。そんな柔な鍛え方はしてないか。
「受け止めろ、トラップシェル!」
振り下ろされる拳に向けて、バクガメスとやらが突っ込んでいき、背中を向けた。
拳がぶつかると同時に甲羅が爆発し、ヒヒダルマが後ろへと仰反る。
「ウルガモス、畳み掛けろ。ほのおのまい」
「バシャーモ、フレアドライブ!」
「コジョンド、インファイト!」
そこへ畳み掛けるようにそれぞれが攻撃を加えていった。
だが、あと一歩決定打に欠けている。倒し切れていない。
「どうやら壁が貼られてたみたいだね」
「壁?」
「巣穴に出現するダイマックスポケモンは時折見えないシールドを貼るんだ。身体がデカいから攻撃が入っているように見えるけど、壁によってダメージが入りきらない。厄介な防壁だよ」
「お前、ワイルドエリアのスタッフだろ? 常識じゃねぇか」
ほっとけ。
ウルガモスの時にはなかったから知らねぇんだよ。
要はその壁を失くせばいいって話だな?
「メガバシャーモの特性かそくを活かして攻撃を加え続けてください。バクガメスとコジョンドはその援護。あいつの攻撃はウルガモスで引きつける」
「いや、何でお前が指示出して……!」
「分かった。やってみよう」
「いやカブさん、信用し過ぎでしょ」
うん、それは指示を出した俺も思うわ。
「マスタードさんのところにいる人だよ? しかもバシャーモのメガシンカを一眼見ただけで見破って、というかそもそもメガシンカを知っていてかつメガバシャーモの特徴を理解しているんだ。それに砂を巻き上げて粉塵爆発を起こすような発想の持ち主は、今この場において十二分の戦力だと思うよ」
淡々と述べられる俺の評価に俺も色黒男も若干引いた。
自分のことながらここまで評価されると逆に気持ち悪くなってくるわ。
「キバナちん、はっちんはダンデちんとやり合えるくらいには強いから大丈夫だよん」
「……はっ? ダンデと? マジ?」
「マジマジ」
よし、なんか目の色が変わったしさっさと戦闘に戻ろう。
会話を続けてたら面倒なことになりそうだ。
「ウルガモス、ヒヒダルマの顔面にいかりのこなを振り撒いてやれ」
いかりのこな。
捕まえた時には既に覚えていたみたいなのだが、俺も使い所がないなーと思っていた技。
だが、こうして徒党を組んでレイドバトルをするとなると、役に立つ場面もあるというわけだ。
「ヒッヒィィィイイイイイイイイイッッ!?!」
うわっ、アレくしゃみか?
奥の岩壁が衝撃波でヒビ入ったり、ちょっと崩れてるぞ。あれ、絶対次衝撃が加わったら雪崩れのように崩れるんじゃねぇの?
最早軽い災害レベルじゃん。くしゃみで災害とかマジで笑えねぇよ。
「チッ、今だけはお前の案に乗ってやる! バクガメス、かえんほうしゃ!」
「バシャーモ、連続でブレイズキック! シールドを壊すんだ!」
ヒヒダルマの視線はずっとウルガモスを追っていて、いつ攻撃しようかと狙いを定めている。
そこへ背後からバシャーモが現れ、連続で攻撃し続けていった。
そして追撃となったバクガメスの炎とコジョンドの蹴りがトドメとなり、パリン! と割れた。
見えなかったけど、本当にあったんだな。
ひかりのかべに近いものがあるのかもしれない。
「ウルガモス、ヒヒダルマの顔面にオーバーヒート!」
多分巨大化しても顔は弱いはずだ。
至近距離から後先考えないフルパワーの炎を受ければ、一溜りもないだろう。
「ヒヒィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイッ!?!」
顔面から煙を上げながら後ろにバランスを崩したヒヒダルマが、どうにかバランスを保とうと両腕を振り回すために、周りの岩壁が破壊されていく。
「畳み掛けろ! バクガメス、お前もオーバーヒート!」
「コジョンド、きあいパンチ!」
「バシャーモ、インファイト!」
ウルガモスに続くように他三体の猛攻撃が始まった。
始まってしまえばそこはジムリーダーたち。あっという間に俺たちの出番が奪われていく。
そうこうしているとヒヒダルマが最後の悪足掻きのように両腕を振り回し始めた。
「バクガメス、トラップシェル!」
そこへバクガメスが背中を差し出したことでヒヒダルマの拳が直撃し、爆発した。
「………やっと倒せたぜ」
ようやくか。
確かにここのポケモンたちは猛者の集まりなのかもしれない。
「やったね、キバナちん。今回のラストアタック賞だよん」
「なんか釈然としねぇな……」
元の大きさに戻ったヒヒダルマの様子を見に行くとピクリとも動かない。
…………死んでないよな?
オーバーキルで内部の氷が溶けたとかになってたら洒落にならんぞ。
「な、なんだ!?」
するとどこからか低い唸り声が聞こえてきた。
遅れて地響きもし、軽く地面が揺れ、岩壁がさらに崩れていく。
「チッ、丘の上にも発生しやがった!」
「………ピンチだね。人手が足りないよ」
どうやらこの奥にも巨大化したポケモンが現れたらしい。
この件に何人が戦力として導入されているのか知らないが、ダンデの方は水上戦らしいし、こっちにまで手は回せないだろう。出すなら陸上戦側からしかない。
仕方ない、あいつらを出すか。
「んじゃ、ここは三人でお願いします」
「「はっ?」」
うわっ、めっちゃこっち見てくるじゃん。
「お、おい、待て! 一人でレイドバトルなんて無茶だ!」
「それにこれは君が背負う責任じゃないよ!」
「はっ? 責任? んなもん微塵も感じてないですし、単にこれが妥当な組み分けってだけですよ」
元チャンプの爺さんもこっちにいるんだし。多分、いざとなったら本気を出して対処してくれるはずだ。
「それにこのウルガモスはレイドバトルで俺が単独で撃破したポケモンっすよ。ちゃんと実績はあるんで」
「い、いや、だからってだな………」
「マスタードさん、彼を止めなくていいんですか?」
「大丈夫だよん、はっちんなら。まだまだ本気を出してないもの」
「………粉塵爆発で?」
「あれは序の口序の口」
粉塵爆発が本気とかどんなトレーナーだよ。逆に危険すぎるだろ。
「というわけで師匠。俺も本気出すんで、師匠も本気出してくださいね」
「オーケーオーケー、ワシちゃん超がんばっちゃうよー」
すごく不安を煽る軽快さだが、多分大丈夫だろう。大丈夫ってことにしておこう。
後ろ手に手を振って俺は丘の上へと向かった。緩やかにカーブしており、右の岩壁から巨大化したポケモンが段々と見えてくる。
「お、おお……」
巨大化していたの全体的にピンク色の四足歩行ポケモンだった。
つか、これあいつだ。リージョンフォームしたギャロップだ。
確かエスパー・フェアリータイプ。カントーでの会議の時に説明されたのを思い出したわ。
なるほど、リージョンフォームしたギャロップはこんな感じなのか。
炎の立髪がパリピのロン毛みたいになっててちょっとナルシストっほい。
まあ、どんなポケモンが来ようともやることは決まってるんだがな。
「お前ら出てこい」
爺さんたち三人が見えなくなったところでウツロイド以外のポケモンをボールから出すと早速サーナイトが抱きついてきた。もうお決まりパターンになりつつあるな。
「サーナイト、ウルガモス、クレセリア、ダークライ。あのデカブツを倒して沈静させるぞ」
一応四人は必要とか言ってたので、ダークライとクレセリアも呼び出した。
一人だし、こっちに気にかける程あっちにも余裕はないだろうし、見られることはないはず。
「ニャヒートは俺を守っててくれ。こんな地形で暴れられたら絶対何か飛んでくるから」
「ニャフ!」
ただ、ここは岩壁に囲まれた丘の上の断崖絶壁。ちょっと下を見やればミロカロスの頭が見える。多分ダンデたちが相手にしているポケモンなのだろう。
そんなところなのだから、巨大化したギャロップが技を使ったりすれば壁が崩れたりしかねない。ダークライを投入する今、ニャヒートには俺を守ってもらわないと。最悪ウツロイドを出すという選択肢もあるが、あいつは最後の切り札だ。
「さて、やるとしますか」
何が起きているのか。そもそもの原因が掴めればいいのだが………。