ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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43話

「ダークライ、さいみんじゅつ」

 

 恐らくダークホールではあの穴に入れるだけで一苦労しそうなので、正面から眠らせることにした。

 どうやら巨大化しても眠ってくれるらしく、ギャロップは立ったまま眠り始めた。

 

「ウルガモス、ちょうのまい。サーナイト、ダークライはシャドーボール。クレセリアはダークライの手助けだ」

 

 ギャロップの弱点タイプとなるむしタイプの技を高威力で放つために、ウルガモスには能力を上昇させ、サーナイトとダークライに攻撃をさせる。

 二発の影弾を当てると唸り声のような奇声が漏れるが、目が覚めることはない。

 それなら攻撃の手を緩める必要はなし。

 

「全員で総攻撃。サーナイト、ダークライはもう一度シャドーボール。クレセリアはシグナルビーム。ウルガモスはむしのさざめきだ」

 

 二発の影弾に加えて、今度はクレセリアとウルガモスにも攻撃させていく。

 さっきのバトルやウルガモスとの戦闘から、ダイマックスしたポケモンに馬鹿正直に真正面から挑むのは無謀だという結論に至った。それよりも使えるものは何でも使う精神くらいないと、破壊されていく地形の変化に巻き込まれて二次被害に遭う確率が高くなる。現にさっきのバトルでは岩壁が破壊されて崩れていっているんだ。一歩間違えれば、岩壁の雪崩に巻き込まれる大惨事になりかねない。

 生き埋めで死ぬとか一番嫌な死に方だぞ。ただでさえ通り魔に刺されて死人扱いされているんだし。もっと普通にのんびりと過ごしたいわ。

 

「ギュロロロロロロロロロロロロロッッッ!!!」

 

 効果抜群の技を当てまくってるというのに倒れる気配がない。何なら目を覚ましやがった。無駄に体力あり過ぎだろ。

 

「来るぞ。サーナイト、メガシンカ」

 

 一発目の攻撃をやり過ごすためにサーナイトをメガシンカさせて、そのエネルギーで相殺していく。

 

「次が来るぞ。クレセリア、ダークライ、前に出てまもる」

 

 だが、それだけでは終わらず、すぐに次の技を発動してきた。技の規模がデカい分、対処するのにもそれ相応の時間がかかるし、その間に次の技を用意されたのでは、こちらが仕掛ける隙もない。

 なるほど、それが巨大化したポケモンの強みということか。そして巨大化するポケモンの実力が高ければ高いほど、ドデカい技を乱発できてしまうというわけか。ここからはオレのターン! みたいなことが始まるわけだ。

 

「サーナイト、シャドーボール。ウルガモス、むしのさざめき」

 

 だからこそ、多人数での対処が推奨されてるんだな。

 タンク役とその後ろから攻撃する役と大まかに二手に別れて対処する。

 レイドバトルという名称にもしっくりくるな。

 

「これでも倒れないか………」

 

 やはりメガシンカしたサーナイトしか攻撃が通りそうにないな。あとはダークライくらいか。だが、巨大化したポケモンの攻撃技はクレセリアだけでは防げない。それこそ、ダークライも入れて伝説二体で防御に徹してもらわなければ、俺たちが保たないだろう。

 本当にここのポケモンたちは野生でも実力が相当だ。並のトレーナーのポケモンでは勝てないらしいのも頷けるわ。

 

「一斉に攻撃だ! リザードン、かみなりパンチ!」

「おうよ! ドータクン、チャージビーム!」

「ラプラス、フリーズドライ!」

「カマスジョー、じごくづき!」

 

 この声………ダンデ……と他の三人か?

 あいつら………この下で戦ってる………っ!!

 あるじゃねぇか、手っ取り早い攻撃手段が。

 

「ウルガモス、下のミロカロスにいかりのこなだ。奴の気を惹きつけろ」

 

 さっと崖から見下ろして巨大化してるポケモンを認識するとウルガモスにミロカロスの意識を張り付けさせに行かせた。

 

「ロォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?!」

 

 下の方からこちらに向けての雄叫びが響いてくる。その声に反応するかのように、ギャロップも声の主の方向へ顔を向けエネルギーを溜め始めた。

 片方はよく見えないけど、まるで怪獣バトルの様相だな。ガラル地方は巨大化現象を使って怪獣バトル物の映画とかも作れるんじゃねぇの?

 

「モォォォォォォスッ!」

「ミロォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 戻ってきたウルガモスは上手くミロカロスの気を惹きつけたようで、ハイドロポンプやハイドロカノン以上の水砲撃ーーーZ技ならあんな感じなのかなと想像してしまえるような巨大な水の塊に追いかけられている。

 

「ウルガモス、ギャロップの方へ向かえ」

「ロロロロロロロロロッ!!」

 

 遅れてギャロップも技を発動してきた。ただ、こちらは普通のマジカルシャインだった。

 身体中から光を迸らせて、迫り来るウルガモスに備えている。

 頃合いだな。

 

「ダークライ、クレセリア。サイコキネシスでウルガモスを強制離脱させろ。ウルガモスは身体の力を抜いて急降下」

 

 ガクンと身体の力を抜いたウルガモスが方向を変え、ヒラヒラと落ちていく。そこへすぐに二体の力が加わり加速して急降下していった。

 一方でウルガモスの頭上をぶっとい一閃が走り、ギャロップに命中した。恐らくウルガモスを挟み込もうとしていたのだろうな。突然ウルガモスが急降下したことで目標を失い、水の一閃から身を守る行動が取れずに諸に喰らい岩壁に激突した。

 

「ニャヒート、にどげりで飛来物を頼むぞ」

「ニャフ!」

 

 二次被害の対処は任せ、サーナイトに視線を送った。

 あっちも分かっていたようで影の弾丸を溜め込んでいる。

 

「サーナイト、シャドーボール」

 

 それを発射させ、その間にウルガモスが無事に戻ってきたのを確認して、ダークライとクレセリアにも指示を出した。

 

「追撃だ。ダークライ、シャドーボール。クレセリア、シグナルビーム」

 

 防御もクソもない状態で次々と効果抜群の技が打ちつけられて、鈍い絶叫を吐いている。

 

「最後だ。ウルガモス、むしのさざめき」

 

 再びギャロップの顔の前に躍り出たウルガモスが声を荒げる。身体中に打ち込まれたダメージに耐えながらも何とかウルガモスを睨み返してくるが、それだけ。反撃の動きすら見せないギャロップはとうとう限界がきたのが見て取れた。

 その音波でギャロップの意識が完全に途切れ、巨大化した身体も徐々に戻っていく。

 

「これで終わりだ、ミロカロス! リザードン、ソーラービーム!」

「ドータクン、チャージビーム!」

「カマスジョー、すてみタックル!」

「ラプラス、フリーズドライ!」

 

 崖下からはダンデたちがトドメを刺しに行く声が聞こえてくる。あっちもあっちでどうにかなったみたいだな。

 バタリと倒れたギャロップに近寄ってみると、すやすやと寝息を立てていた。膨大な力から解放された故の睡眠、と捉えるべきなのだろうか。そうなると意図せずこのギャロップは巨大化して力に呑まれていたってことになるのか。

 ………考えすぎかもな。ギャロップの心情までは読み取れないが、状況的にはそういうのが一番あり得そうな話だ。

 ただ、そう仮定した場合、何故この一帯にだけ巨大化するポケモンが次々と現れるのかが疑問になってくる。ダンデたちの反応を見る限りこれは異常現象。何ならダンデはそう口にしてもいた。

 考えられるのは巨大化させるエネルギーが何かの拍子にこの一帯に集まるようになってしまった、あるいは龍脈辺りが変わって温泉みたいに吹き出しているかってところだな。

 分かっているのはーーー。

 

「結局、この穴で何が起きてるんだ………?」

 

 穴を覗き込んでみるも、暗くてよく見えない。

 巨大化させるエネルギーはこの穴を通じて広まっている。しかもこの穴はさっきのところにも似たようなのがあった。恐らくダンデたちが戦っている下の湖上、あるいは湖内に同じような穴があることだろう。

 そういえば、島でも似たような穴を見かけたっけか。

 となるとこの穴が巨大化現象が起きるポイントってわけなんだが………、内部を調べてみないことには分かりそうにないな。

 

「行きたくはないが、原因が分からなければこの戦いに終わりはないだろうしな………。ダークライ、クレセリア、ウルガモス。お前らは目立たないように草葉くらいで待機しててくれ。ニャヒートは一旦ボールな。サーナイト、穴の中を調べに行くぞ」

「サナ!」

 

 各ポケモンたちに指示を出してサーナイトと共に穴の中へ飛び込んだ。途中で超念力が掛かり、落ちるスピードが緩やかになっていく。

 光が入り込むのが穴だけなので、着地することには足下はすっかり真っ暗だった。

 まるで下水道に入った気分だな。異臭がしないだけマシではあるが。

 

「明かりが欲しいな」

 

 とは言ってもサーナイトはフラッシュを覚えてないからな。せめて火をとも思うがこちらも未習得だ。

 仕方ない、ニャヒートを出すか。

 

「ニャヒート」

「ニャフ」

「おにびとか使えるようになってたりは………しないよね?」

「ニャフ」

「ですよねー」

 

 そう都合よく技を覚えているわけないよなー。

 となると………負担はデカいだろうけど、サーナイトに頼むしかないか。できるかは分からんが。

 

「サーナイト、マジカルシャインを維持したままいけるか?」

「サーナー………サーナ!」

「おお……!」

 

 頼んでみたら意外とできてしまった。

 

「………結構制御するの大変だよな?」

 

 そう聞くとコクリと首を縦に振る辺り、光を放出しすぎて俺たちに攻撃しないよう、制御に集中しているのが伺える。

 

「すまんが、しばらくはそのままで頼む」

 

 再びコクリと頷くので俺はそのまま先へ進むことにした。

 明かりを得て分かったのだが、この空間……異様に広い。さっきのギャロップが余裕で入りそうなくらいはある。

 地下にこんな空間があって地盤とか大丈夫なのか?

 

「……ニャ?」

「どうかしたか?」

「ニャフ」

 

 足元にいたニャヒートがペシッと何かを俺の方へ投げてくるので、キャッチしてみるとなんかザラザラというかゴワゴワした感触に手が襲われる。

 何だろう、アスファルトっぽい? いや、それにしては硬い部分もあるしな………。

 ボロボロというわけでもなく力を入れても崩れない部分があり、サーナイトの方に翳してみると硬い部分だけが光を跳ね返していた。

 ………金属か?

 まさか鉱石が発掘できる隠れ穴だったり……?

 

「んなわけないか。ニャヒート、サンキューな。取り敢えずこれは地上に持ち帰ってみることにするわ。先に進もうぜ」

 

 ひとまず謎の感触の石っぽい何かを持って先に進むことにする。

 しばらくすると壁にたどり着き、一箇所だけ穴が空いているのを発見した。

 その穴は先に続いているようで、まるでポケモンが掘ったような綺麗さである。

 そして先に続く地味に下り坂がしんどそう。

 

「行くか」

 

 結局、何が起きているのかは入っても分からなかった。なら、可能性がありそうなところに進むしかないだろう。

 

「ん?」

 

 ただ、先に進むにつれてちょいちょいキラリと光る時が増えてきた。恐らく光を反射するような鉱物が四方に埋まっているのだろう。

 ニャヒートもそれくらいには反応しなくなり、ずんずん奥へと進んでいく。夜目が効く生き物にはサーナイトの光で充分先が見えるんだろうな。羨ましい限りだ。

 

「うお、何だこれ………」

 

 暗闇の中、突如大量に光を反射してくる場所があった。

 一面銀世界、とまではいかないが無数に反射してくるため、今いる場所の広さも特定できるくらいは明るい。

 

「同じ………?」

 

 手に取ってみると感触はさっきニャヒートが投げてきた鉱物と似ていた。大きさこそバラバラだが、どれも光を反射して輝いている。

 

「何なんだろうな、この石」

 

 疑問は残るが、まだ先があるようなので進んでいく。下り坂は終わったらしく平坦な道だ。徐々に光る鉱物も増えていき、両サイドに転がっている反射する石で足元からの街灯のようになってきている。

 そして道なりに進んでいくとまたしても異様な広さの空間に出た。中央付近には天井から光が差し込むポイントもある。

 つまり、あそこと同じような穴の地下にたどり着いたということか。

 ここまでは一本道。

 なのにここだけ謎の鉱物が大量に転がっていた。さっきの場所よりも遥かに多いと思う。何なら穴の真下で山になっており、俺の身長を優に越している。

 こんなところで山にして積まれてるなんて、それこそ上から落とされないとこうはならないと思う。あるいは穴からここまでの壁が崩れて落ちてきたか?

 

「ッ!? お前ら、戻れ!」

 

 急に鉱物の山が濃いピンク色に光出したかと思えば、天井の穴を抜けて地上へとぐんぐん伸びていく。

 嫌な予感がしてサーナイトたちをボールに戻したが、正解だったな。

 鎧島でもたまに見かけたピンク色の光。ミツバさん曰く、ポケモンが巨大化する現象を起こすエネルギーなのだそうだ。

 このエネルギーがあるからガラル地方ではダイマックスが発生する。それが今異常な頻度で次々と巨大化するようになっているのが問題、というわけだ。

 つまり、このエネルギーを発生させている、という表現でいいのかは分からないが、この謎の石の山を除去してしまえばピンク色の光の発生頻度も抑えられるかもしれない。

 だが、今はそんなことをしている余裕がない。一刻も早くここから出なければ、人間に効果があるのかは分からんが、こんな地下で巨大化してしまったら洒落にならん。巨大化したポケモンがすっぽり収まるような空間とはいえ、暴れられたら最悪崩落する可能性もある。

 

「くそっ、上り坂……!」

 

 忘れていたが帰りは上り坂になるんだった。

 くそ、めっちゃキツい。

 こうなったらーーー。

 

「来い、ウツロイド」

 

 ウツロイドに憑依してもらい、浮遊して一気に駆け上ることにした。

 

「マジカルシャイン」

 

 サーナイトと同じ要領で身体を光らせ、先を示す。

 あっという間に俺たちが潜り込んだポイントまで帰還し、そのまま急上昇して脱出に成功した。

 折角なので上空から状況を見渡してみる。

 俺たちがいる周辺は俺のポケモンたちが警戒しているだけで何か起きた様子はない。倒したギャロップも多分ダークライたちが運んだのだろう。草むらの方へと移されている。

 

「モス」

 

 するとウルガモスが近寄ってきた。

 おかえりとでも言っているのだろうか。

 

『「ナニカヘンカハアッタカ?」』

 

 そう問いかけると首を横に振る。

 やはりここは何も起きてないみたいだな。

 ならばと、次に崖下のダンデたちの方を見下ろすとミロカロスから変わっていた。何だあの青色………ポケモンか?

 

「ボォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 あ、ちょっとそれとなく見えた。あれは多分、ホエルオー………ホエルオーっ!?

 

『「マジカ………」』

 

 いやいやいや!

 一番巨大化したらまずい奴じゃね?!

 バトルどころではないだろ………。最悪津波とか起きてそうだ。けど、加勢する前に一度爺さんたちと合流しておいた方がいいだろう。穴の中にあった鉱物のこととか聞かないとだし、あわよくば俺が加勢にいかなくても済む。ほら、ダンデたちの方はメディアとかに取られそうな位置だったじゃん?

 こことか一番奥まってて見えなさそうだし、出来ればここで対処してたいくらいだ。

 んで、その爺さんたちの方は………リザードン……いや、ダンデのリザードンが巨大化した時のような姿だからキョダイマックスの方か。方角からしてさっきたどり着いた穴があそこだったんだろうな。出現のタイミング的にも。

 すると一瞬下から照らされた感覚を覚え、ウルガモスとともに咄嗟にその場から離れると、俺たちのところの穴からもピンク色の光が伸び出し、穴の近くに戻ってきていたポケモンが巨大化していく。

 

「次は何だ………?」

 

 ………いや、本当に何だこのポケモン。

 全身生クリームというかホイップクリームというか、その辺のを絞って出したみたいな身体してるぞ。

 ………うーん、ケーキ?

 甘そうで美味そう…………うん、もうこいつ種族名が分からないからクリームポケモンでいいな。

 つーか、何で逃げてないんだよ。こんな状況の時に戻ってきたら巻き込まれるって思わないのかね。

 それとも日常茶飯過ぎてガラルのポケモンは巨大化することに危機感がない、とか?

 分からんが、こいつも倒して元に戻さないと被害が出るんだろうな。

 

「ウツロイド」

 

 ウツロイドに声をかけ解除してもらう。

 

「サーナイト、ニャヒート。第二ラウンドだ」

 

 ウツロイドをボールに戻し、代わりにサーナイトとニャヒートを呼び出した。

 さて、さっさとこのクリームポケモンを倒して穴の中のこととか爺さんたちに聞きにいかないとだな。

 

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