ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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44話

「ウルガモス、ちょうのまい。サーナイト、サイコショック。ダークライ、あくのはどう」

 

 巨大なクリームポケモンにサーナイトとダークライが攻撃していく。その間にウルガモスは舞いながらクリームポケモンの上を取りーーー。

 

「クレセリア、ウルガモスにてだすけ。ウルガモスはねっぷう」

 

 クレセリアのパワーを与えられたウルガモスの灼熱の熱風が吹き荒れた。

 

「マァァァホォォォォォォオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 うげっ!?

 なんか巨大な星が次々と降ってくるんだけど?!

 これこそ流星群なんじゃねぇの!?

 

「ッ、全員防御!」

 

 こんなの躱す云々の話じゃねぇわ。

 隕石が落ちてくるようなもんだから、下手に動く方が被害が大きくなる。

 みんなそれぞれが防壁を張り、身を守っていく。

 

「ニャヒート、ほのおのうず」

「ニャフゥゥゥ!」

 

 後方にいる俺たちのところにはまだきていないみたいだが、いつ降ってくるか分からんからな。それに防壁にぶつかって衝撃波が生み出されているのだ。被害がなくて安全とは言い難い状況である。

 

「………やっぱり押し返せないか。ニャヒート、アクロバット」

 

 ニャヒートではまだまだ火力不足が否めないな。

 ニャヒートはジャンプして回転しながら一度後退し、一気に巨大流星群に突っ込んでいく。俺たちの方へ落ちてきていた隕石擬きは粉砕され、空中分解していった。

 ただ、地面のあちこちに着弾した破片がピンク色の淡い霧のようなオーラを作り出していく。

 これは………ミストフィールドか?

 だが、巨大流星群のすぐ後に技を使った動きはなかった。ということはあの巨大流星群の影響している可能性が高い、か………。

 取り敢えず、このクリームポケモンはフェアリーあるいはエスパータイプの可能性が高い。ドラゴンタイプもいなければドラゴンタイプの技を使える奴もいないからあまり効果はなさそうであるが、少なくともドラゴンタイプは避けておくべきだろう。

 

「ダークライ、あくのはどう」

 

 このクリームポケモンがエスパータイプなら効果抜群であるが………巨大化してると効いてるかどうかも判別しにくいな。

 色々技を撃って反応を確かめるしかないか。

 

「クレセリア、シグナルビーム」

 

 クレセリアの光線もあまり効いている感じがない。

 なら、次は対フェアリータイプでやってみるか………と言いたいところだが、どくやはがねタイプの技を使えるのってウツロイドだけなんだよな………。

 あいつをまた呼び出すのが一番手っ取り早いのだが、一応ここは地上だ。穴の中の地下通路とは違い、いつどこで見られるかが分からない。分からない以上、迂闊に外に出すわけにもいくまい。ましてやここにはダークライとクレセリアもいるのだ。最早それだけで新聞の一面は愚か、世界中のトップニュースになり兼ねない。そこに未確認生命体が加われば、俺がメディアに吊し上げられるのは目に見えている。そうなれば、当然トレーナーはいるのか、トレーナーは誰だと騒ぎ立てられることになり、俺もガラルにはいられなくなるだろう。

 カロスにいる時はそこまで気にしてもなかったし、協会の立て直しをする頃にはクレセリア共々あっちの世界にいたからな。気を使う必要もなかったが今は違う。マスコミが来てて、俺自身も身バレを防がなければいけない現状、限られた手札の中でどうにかやり過ごすしかないだろう。

 まあ、それは成り行きということもあるが、一応は自分で決めた道。あいつらのところに戻るためのことと思って割り切るしかない。

 ………そう思うといちいちタイプ確認なんかするのも面倒だな。バトル自体に余裕はあるが、知らないポケモンだからとタイプ相性を探ろうかとも思っていたが、なんかアホらしくなってきたわ。

 

「ダークライ、さいみんじゅつ」

 

 まずは眠らせて。

 

「ウルガモス、ほのおのまい」

 

 空中にいるウルガモスがクリームポケモンの顔面に炎を踊らせている間に。

 

「サーナイト、Z技だ」

 

 サーナイトと同じポーズを決めて黒いリングから力を注ぎ込んでいく。デンキZのポーズってベルトでもあれば変身ポーズっぽいよな。今はどうでもいいか。

 

「スパーキングギガボルト」

 

 そして、サーナイトに充填されたエネルギーを解放し、雷撃の塊を拳で叩きクリームポケモンにぶつけた。

 

「マホォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!?!」

 

 すると打ちどころが悪かったのか後ろに傾いていくクリームポケモン。明確な脚もなさそうなその身体は支えを失い段々と倒れていく。

 ……寝てるってのもあるか。いや、寝ててあの叫び声って、どんな夢を見させられてるんだ? 想像したくねぇ………。

 

「畳み掛けろ。ウルガモス、ねっぷう。クレセリア、サイコショック。ダークライ、あくのはどう」

 

 タイプ相性なんか捨てて己と同じタイプの技を使わせ、畳み掛けていく。顔面に熱風を受け、下からは隕石擬きの残骸を打ち込まれ、最後に黒いオーラで包み込まれて、オーラの嵐の中で隕石擬きの破片が何度も何度も打ち付けられていった。そのことには巨体が横たわっており、黒いオーラが消え去ると既にその巨体の姿はなく、元の大きさにへと戻っていた。

 ………思ったよりも小さいポケモンなんだな。

 さて、早いところあっちと合流しないとか。

 

「ウルガモス、しばらくここを見張っておいてくれ。俺は一度あの人らのところへ合流してくる。巨大化したポケモンが現れたら叫ぶなりして知らせてくれ。ただ、無理はするなよ」

「モス」

 

 ウルガモスを見張りに残し、クレセリアをボールに戻してサーナイトとニャヒート、それと俺の影に戻っていったダークライを連れて、丘を下って爺たちのところへと向かった。

 

「まだあっちは決着ついてないのか」

 

 カーブしている丘を降りると巨大化したポケモンとバトルしていた。

 俺が離れてから何体目のポケモンなのかは知らないが、今相手にしているのはダンデのリザードンが巨大化した時の姿とよく似ている。恐らくキョダイマックスの方なのだろう。

 

「ヌメルゴン、ハイドロポンプ!」

「バシャーモ、かみなりパンチ!」

「ルガルガン、ウーラオス! ストーンエッジ!」

 

 ………真昼の姿のルガルガンは分かるが、なんだ………あの黒いポケモン。爺のポケモンなのか………?

 俺ガラルに来て二ヶ月半くらい経つが一度も見たことねぇぞ。

 つまり、あのポケモンは爺の本気モードってことか?

 まあいい。効果抜群の技を受けてもストーンエッジくらいしか痛手になってなさそうなお強いリザードンを大人しくさせるとしますかね。

 

「ダークライ、さいみんじゅつ」

 

 影の中から腕を伸ばして背後からリザードンを眠らせていく。不意打ちだから抵抗されることもない。

 

「今だ!」

「ヌメルゴン、ハイドロポンプ!」

「バシャーモ、ストーンエッジ!」

「ルガルガン、ストーンエッジ!」

 

 俺が合図を送ると水砲撃が一閃と、両脇から地面を突き上げる岩がリザードンに襲い掛かる。

 

「トドメじゃ! ウーラオス、すいりゅうれんだ!」

 

 その岩を足場にして爺の黒い………リングマ的なポケモンが走り込み、懐に飛び込むと四肢全部を使い、連続で殴りつけていった。

 

「ウー、ラゥッ!」

 

 最後に重たい一撃を入れるとあの巨大が後ろへ傾き倒れ始める。

 こっちはZ技で何とか押し倒せたってのに、素手で押し倒せるとか………。

 

「……はぁー……ったく、リザードンのキョダイマックスは毎度ヒヤヒヤさせられるぜ」

「ダンデ君のリザードンを思い出すからね。でもやっぱりダンデ君のリザードンは別格かな」

「っすね。ありゃマジでバケモンだぜ。ま、それを今年倒すのがオレ様だがな」

「ふふっ、頼もしい限りだね」

 

 元の大きさに戻ったリザードンを見て、鼻を高くしている色黒男は放っておこう。

 

「おかえり、はっちん。怪我はないみたいだね」

「そんなヘマしませんよ。それよりあっちにもあった穴の中を調べてきたんすけど、この鉱物って何か分かります?」

 

 早速例の鉱物を爺さんに見せた。

 

「おお、これはねがいのかたまりだね」

「ねがいのかたまり?」

「この巣穴に投げ込むとピンク色の光の柱が立ち昇り、ダイマックスしたポケモンが現れるようになるのよん」

「へぇ、なら方角からして多分この穴の中になると思いますけど、これと同じようなのが大量にあったのも全部投げ込まれたものってわけか」

 

 それらしい積まれ方だとは思ったが、マジでそういうものだったんだな。

 

「………それ、どれくらいの量だった?」

「俺の身長を優に越すくらいには山になってましたよ。何ならそいつよりも」

 

 色黒男を指差して言うと当の本人がこちらに詰め寄ってきた。

 色黒で高身長とか威圧感半端ねぇな。性格もオレ様気質だし。

 

「いやいやいや、待て待て待て! お前、この穴の中に潜ったのか!? 一人でっ?!」

「いや、ポケモンとだが」

「そういう意味じゃなくてだな……言い方を変える。お前とポケモンたちとだけで潜ったのか?」

「あ、ああ、原因が掴めればと思ってな」

「………とんだ怖いもの知らずなスタッフだな。いいか、あの巣穴にはダイマックス現象を引き起こすガラル粒子が多分に充満してるんだ。それもこんなダイマックスが連続で発生する中で潜り込むとか自殺行為だぞ!」

「別に自殺願望もなければ何の対策もしないで潜ったわけでもない。最悪の場合に備えて外で待機させたポケモンもいるし、もし巨大化しても早々に眠らせるように先にバトルで示しておいた。それに、一応スタッフの仕事はしておかないとだろ?」

 

 知識もないのに何の対策も立てずに潜るわけがないだろうに。それくらいの危機意識は持ってるっつの。

 

「ハッ、お前バカだろ」

「そうだな。バカかもな。けど、お前に俺と同じことができるか?」

 

 俺よりはダイマックスに関して知識はあるだろうし、現役のジムリーダーらしいからそれなりの実力はあるだろうから俺がやらなくても穴の中に潜ってたかもしれないがな。それでも一人でやろうとはしないだろう。俺だってウツロイドという手札がなければ、穴には潜っても奥を探ろうだなんて思いもしないからな。

 

「まあまあ、キバナ君。彼のおかげで何となく状況は掴めたんだ。彼を問い詰めるより先に僕たちにはやるべきことがあるでしょ?」

「っすね。すみません」

 

 カブさんに宥められた色黒男は素直に怒りを収めた。

 

「………はっちんって実は好戦的?」

「んなわけないでしょ。今だって嫌々来てるレベルですからね?」

「その割には積極的に調べてくれてるじゃん?」

「さっさと片付けて帰りたいだけですよ」

 

 この爺、によによとしやがって。

 誰が好きでこんな面倒事に首を突っ込むかよ。今まで散々巻き込まれてきたんだからもう充分だっつの。

 

「………状況は分かった。恐らく原因はオレ様よりも高く山になっているねがいのかけらだと思う。それとこれは、経年蓄積によるものじゃない。オレ様を超える高さの山になっているなんて話は聞いたことがねぇ。それにここはげきりんの湖周辺のパワースポットの中でも人気の巣穴だ。山になる前に中でダイマックスしたポケモンが暴れてその辺に散らばっちまう。だから例外だとしても異常だ。オレは今回のこれは故意による犯行だと考えるぜ」

 

 …………え?

 ダイマックスってこの穴の中で起きるもんなの?

 あ、じゃあ地上で巨大化してることからして異常事態ってことだったのか………?

 うわ、マジか………。知識がないって本当に支障しか出ねぇな。

 

「そうだね。それだけ蓄積されているんだったら、それだけダイマックスしたポケモンが現れたということ。なら、その度に地下のポケモンが暴れるだろうし、それだけのバトルで山が残っていることがおかしいよ。十中八九、誰かが一度に大量に……ダンプカーで積んできて投げ込んだくらいのことは想定しておくべきだろうね」

 

 そりゃダンデが爺さんと、ついでに俺も狩り出すわけだわ。

 異常事態どころかガラル滅亡の危機くらいまであるんじゃねぇの?

 ただまあ、この件がどれだけヤバいことなのかは理解した。ついでに状況とそこに至った経緯もカブさんの推測が妥当なところだろう。

 となると次はこの状況をどう打開するかだな。

 

「なるほど。んで、対処法は?」

「まず考えられるのは、ねがいのかけらの山を除去することだね。でも穴の中にある以上、地上に引き上げるのは困難だね。僕たちが対応に当たってからもう七体を相手にしている。倒して次のポケモンがダイマックスするまでに長くても十分がいいところだ。そんな短時間で引き上げ作業なんてしていられないよ」

 

 あの石ころの山を十分で地上へ引き上げるのは無理だろうな。ポケモンの力を借りて数の力でどんどん引き上げるって手もあるが、この場合ひこうタイプ及び飛行能力のあるポケモンを揃えるよりはサイコキネシスを覚えたポケモンを揃えたいところ。それも相当の実力がなければ運び出す前にまた光の柱が立つことだろう。そうなれば数で押し切ろうとした反動で大量の巨大化ポケモンが一気に現れることになる。人とポケモンを集めるのも一苦労な上にリスクがデカ過ぎだ。

 これなら他の手を考えた方がまだマシと言える。例えば………焼くとか?

 

「………なら、焼くのはどうです?」

「焼いて力が霧散すればいいんだけどね………」

「無理だろうな」

 

 まるで焼いたことがありますって顔してますよ、カブさん。いくらほのおタイプが専門のジムリーダーだからって、それはまずいでしょうに。

 

「うーん、みんな賢いねぇ。ワシちゃん、若い子たちの成長が超うれぴいよ」

 

 一人俺たちの会話を聞く事に徹していた爺さんが軽快な口調で笑い出した。

 緩すぎだろ、この爺。

 

「師匠は何かないんすか?」

「そうだねぇ、マグノリアちん曰く、ねがいのかたまりはねがいぼしの欠片のようなもの。つまりガラル粒子の塊みたいなものだからね。それだけ大量にあれば、地上に引き上げてもダイマックスするポケモンが現れるんじゃない?」

 

 ………はあ。

 緩い割にちゃんとした思考は持ち合わせてるんだよな………。

 マジで食えない爺さんだわ。それと誰よ、マグノリアちんって。聞いたことがあるようなないような名前だが…………。

 

「………なら、どうしろってんだよ! どこかガラル粒子のないところに一瞬でワープさせられない限り無理だろぉぉぉぉ!」

 

 手の打ちようがないことに苛立った色黒男がポケモンかと思える悲鳴を上げ出した。

 ………ガラル粒子とやらがないところに一瞬で、か。

 

「………やっぱり、それしかないか」

「あァ?」

「な、何か方法を思いついたのかい?」

 

 ねがいぼしだとかねがいのかたまりだとかガラル粒子だとか、ピンときてないことは多々あるが………。

 できるできないは抜きにして、深く考えずに手っ取り早く片付けられるのは、あの山を一瞬でワープさせることだ。それもあっちの世界に。あそこならガラル粒子とやらもないだろうから、ポケモンが巨大化することもない。というかポケモン自体があいつ以外にほぼいない。

 

「できるかどうかは分かりませんけど、やってみる価値はあるかもってだけですけどね」

「「ッ!?」」

「………はっちん、ワシちゃんたちは?」

「別に何も。ここで待機しててくれれば」

「おい待て! 何をする気だ!」

「何ってお前が言ったんだろ。ガラル粒子とやらがないところに一瞬でワープさせるんだよ」

「はぁ!? んなの無理に決まってんだろ!」

 

 だからできるかどうかは分からないって言っただろうが。

 それでも試してみる価値はあると判断しただけだっつの。

 

「………もしかしてサーナイト君はテレポートが使えたりするのかい?」

「ええ、まあ。使えますけど」

「………いや、は? テレポートで? ガラルの外に出すっていうのかっ?!」

「あー、うんまあ、そんな感じ?」

 

 やべぇ、その手もあったか。

 でもサーナイトがここからカロスにテレポートできるわけでもないし、できたとしても距離と持っていく質量が桁違いだ。負担がデカすぎるからどっちにしろ却下だわ。

 

「んじゃ、そういうわけなんでパパっとやってきますよ」

 

 時間は有限。

 ここでうだうだしていたら、次のポケモンが現れてしまう。その前にさっさとできるかどうかの確認して、可能ならさっさと終わらせないといつまでも帰られない。

 だから言うや否や穴の中へ飛び込んだ。

 すぐ後についてきたサーナイトの超念力により身体がゆっくりと降下していく。

 徐々に明かりも少なくなり、それを見越してかサーナイトがマジカルシャインで照らしてくれた。広い空洞の中央付近にしっかりと乱反射する鉱物の山があり、ここがさっき地下を進んできたところと同じなのが分かった。

 

「っと……」

 

 改めて見るとすげぇ量だな。こんなもんを投げ込んだ奴がいるかもしれないんだろ?

 世も末だわ。

 

「ダークライ、この山あっちの世界で保管できたりするか?」

「……………」

 

 ダークライにあっちの世界で保管可能か確認してみる。

 そもそもあの冥界で物の保存とかできるのだろうか。冥界だぞ?

 生身の人間が踏み込むのも結構危険だと思うし、物に関しては消滅してもおかしくはない。

 

「ライ……」

 

 だが、その心配はないらしい。

 

「なら、頼む。ギラティナの手にも渡らないようにしてくれると助かる」

 

 どこにどう保管するつもりなのかはダークライに任せるしかないが、保管ができるのであればありがたい限りである。用途はまだ何も思いついちゃいないが、特殊な力を秘めた石がこれだけ大量にあるのだ。消滅させてしまうのは勿体無い。

 ダークライは黒い穴を鉱物の山の上から下ろしていき、次々と呑み込んでいく。どうかギラティナには見つかりませんように。

 

「………よし、山は無くなったし一度戻ってみるか。まだ立て続けにダイマックスするようであれば、その辺に散らばってるのも回収するしかないだろうな」

 

 綺麗さっぱり鉱物の山が無くなったのを確認し、地上へ戻ることにした。

 これで地上での巨大化現象が止まないようなら、もう一度潜って欠片残らずあっちの世界に送り込むか、他の原因を探るしかないだろう。後者なら振り出しに戻るようなものだ。

 既に疲弊が溜まってきている対処組では戦力が足りなくなってくるし、休ませなければトレーナーの集中力も切れてくる。他の実力のあるトレーナーに応援を要請しないとだろうし、それで人が集まるかどうかも分からない。今現在ガラルの実力者はジムリーダーや四天王しかいないってことなら、間違いなくガラルはめちゃくちゃになるだろうな。そしてこの件は世界に広められて、ようやく外部から戦力が補えるかどうか。それまでに現在の対処組が保つかなんて想像しなくても分かることだろう。

 

「サーナイト、地上まで頼む」

「サナ!」

 

 俺としてはそうはならないことを祈るしかない。悪い方へ悪い方へと事が進むようであれば、いよいよもって俺が対処しなければいけなくなってしまう。それだけは何としてでも避けければならない。

 

「よっと」

 

 さて、どうなったか。

 今のところ新たに発生してはいない。ウルガモスからの合図もなさそうだし、丘の上も未だ出現はしていないのだろう。残るは湖上のだが、ここからでは見えないため判断のしようがない、か。

 

「お、終わったのか………?」

「そりゃもう作業の方は一瞬で」

 

 色黒男があり得ないものを見るかのような目で俺たちを見てくる。

 いや、テレポートってことになってるんだから、一瞬で終わるだろ。テレポートでも時間を食うようなら最初からこの案を遂行してないっつの。

 

「無茶苦茶すぎるだろ………」

「ポケモンたちが優秀なんでな」

 

 こいつを適当にあしらい老人たちの方に視線で様子を伺った。

 

「今のところ出てくる気配はないよ。ただ君の仕事が思ったよりも早かったからね。クールタイムはまだ切れてないんだ」

「なら、俺は丘の上で待機しておくことにしますよ。もしあっちで出たとしても人がいないんじゃ対処もできないですからね」

 

 そう言って俺はこの場を離れる事にした。さっきも突然丘の上の穴でも巨大化したポケモンが現れたんだ。最悪を想定して動いておく必要があるだろう。

 

「はっちん、よろぴくねー」

 

 とても軽い見送りを背にウルガモスが待つ丘の上へと向かった。

 

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