投稿日と発売日が被るとは………。
「ウルガモス、サイコキネシス!」
最初の巨大化したポケモンは、見た目青いオクタンのような姿をしているオトスパスというポケモンだった。
タイプはかくとう。半年もこの島にいれば、名前と姿くらいは覚えてくるというもの。ましてや爺さんが「ガラルのポケモンだよん」って言って本棚から漁ってきた図鑑を俺に手渡してきたからな。ただ、あの爺さんのはかくとうタイプ中心のものが多かったため、何故かガラルのかくとうタイプには詳しくなってしまった。
いや、今そんなことはいい。
とにかく奴はかくとうタイプであり、あの触手に絡まれると厄介なのが分かっていれば、対処は可能だ。
「サーナイト、ひかりのかべで足場を作れ」
ボールからサーナイトを出して、見えない床を作らせていく。そこへ一度着地すると、ウルガモスを解放して攻撃へと向かわせた。
「ウルガモス、ぼうふう!」
着いてきたキングドラもウルガモスに負けじと水砲撃で攻撃を加えていく。
さて、どうバトルを組み立てていこうか。ウルガモスとサーナイトはこのままでいいとして、ガオガエンとヤドランをどう使ったものか。俺自身は黒いのの力で足場を作ることだって可能だから、俺に対する防御を用意する必要はない。最悪白いのもいるしな。
ただ、やはり懸念されるのは連鎖的に起こるであろう他の巣穴での巨大化だ。一発目がここから発生したところを見るに、根源はこの穴の中にあるのだろうが、エネルギーが充満すれば他の穴にまで影響を及ぼしかねない。いや、もう影響は出ているんだったな。どこかで二体目が出ていたはずだ。となると同時に巨大化したポケモンを相手にすることになるため、手札を残しておきたいのも事実。
「やったことはないがこの手が一番効率良さそうだな」
基本サーナイトとウルガモス、それに協力を買って出たキングドラに攻撃を任せ、俺がその間を潜り抜けオトスパスの上でガオガエンに攻撃させる。オトスパスが攻撃に転じたら、とんぼがえりでボールに戻し、ヤドランの超念力で一気に離脱。そしてオトスパスを弱らせたところで、俺がもう一体の方へ攻撃を仕掛けにいく。恐らく注意を引きつけることはできるだろうから、そのタイミングでウルガモスに攻撃を躱しながらこちらに来てもらうとしよう。オトスパスの技を使ってもう一体にダメージを与え、ダイマックス同士でバトルさせてどちらかのダウンを狙い、残ったもう一体を俺たちで一気に片付ける。
これだな。
「ガオガエン、ヤドランも出てこい」
見えない足場にガオガエンとヤドランも出した。
二体とも足場がないのに落ちないことに目を見開いている。
「今から作戦を伝える。サーナイト、ウルガモスは自己判断で攻撃を加えててくれ。可能ならキングドラにも指示を出してやってほしい」
「サナ!」
「モス」
「ガオガエンとヤドランは俺と一緒にオトスパスの頭の上に突っ込むぞ。ガオガエンは奴の上で好きなだけ暴れろ。ただし、俺がとんぼがえりを指示したら、それだけは何が何でもやってくれ。離脱の合図だ。ヤドランはその交代として出す。サイコキネシスを使って一気に離脱してくれ」
「ガゥ!」
「ヤン!」
「二体目がもう出ているが、オトスパスにある程度ダメージが入ったと判断したら、俺たちの方で二体目に攻撃を仕掛けにいく。注意を惹きつけたタイミングで、ウルガモスにはオトスパスの攻撃を惹きつけながらこっちに来てほしい。合図として黒いオーラを打ち上げる」
「モス!」
「恐らく巨大化したポケモン同士でバトルになるはずだ。だから片方が落ちたタイミングで、もう片方を一気に片付ける。いいな?」
「サナ!」
「モス!」
「ガゥ!」
「ヤン!」
「んじゃ、それぞれ役割を頼むな。解散!」
作戦を伝え終わるとガオガエンとヤドランをボールへと戻し、サーナイトとウルガモスはオトスパスの方へと向かっていった。
俺もその後を追うようにして黒い足場を走っていく。
「ダークライ、お前にはこの前のように巨大化したポケモンを倒したら穴の中に潜って、原因であろうねがいのかけらをあっちの世界に送ってきてほしい。危なくなったら影に潜るなり、あっちの世界に潜るなりしてくれ」
「……ライ」
「それまでは俺が死なないようにサポートは頼むぜ」
走りながら最後の一体に指示を出していると、丁度オトスパスの触手が俺の方へと突っ込んできた。
足場を階段のようにして躱し、触手に沿ってオトスパスを駆け登っていくと、巻き戻される触手に追いかけられる羽目になったのは言うまでもない。
「あくのはどう」
だが、それくらいなら黒いオーラで弾くことは可能だ。
そして、そのままオトスパスの頭の上に到着すると、ガオガエンをボールから出した。
「いくぞ、ガオガエン。アクロバット」
かくとうタイプのオトスパスには効果抜群。
何気にアクロバットって使い勝手がいいんだよな。
今みたいにボールから出した勢いでそのまま攻撃に転じられるし、攻撃した後は相手を蹴って離脱し、くるくると後転しながらエネルギーを溜めてまた突撃していけば、理論上永遠に攻撃することだって可能だ。身体が大きくなったからといって使いにくくなることもなかったし、何より威力がすごい。
流石全身を使った技なだけはある。
「サーナ!」
「モォォォッ!」
サーナイトとウルガモスは連携し、ぼうふうで巻き上げた海の漂流物をサイコパワーで操り、次々とオトスパスに投げつけている。ついでにぼうふうによる荒波に足元が呑まれてオトスパスはバランスを崩し、次の攻撃が中々来ない。
「ガオガエン、好きなだけ打ち込め!」
「ガゥガゥガァ!」
………あれ?
キングドラは?
あいつ何してる?
「ドラ!」
オトスパスの触手が上がったかと思えば、そのまま固定されたように動かずーーー。
「ドラ!」
それならばと水中からウルガモス目掛けて伸びた触手も、ウルガモスに届く前に動かなくなりーーー。
「ドラ!」
苛立ったオトスパスが口を開こうとすると、半開きのままそれ以上は開かなくなりーーー。
「いや、めっちゃかなしばりしてるやん…………」
何その地味な嫌がらせ。
お前、そんな戦い方するのかよ。暴れてたのは何だったんだってくらい陰湿なんだけど…………。
そりゃ攻撃が飛んでこないわけだわ。
だが、よくよく見てみればすぐに解除されているようで、本当に一瞬だけ効果が発揮しているみたいだ。ダイマックスしたポケモンにかなしばりって効きにくいのかもな。
それでもウルガモスが躱す時間を設けたり、オトスパスにストレスを与えているという点ではめちゃくちゃ優秀である。
「パァァァアアアアアアアアアアアアアアアスススススッッ!!!」
ついに激しい咆哮を上げ、全触手を振り回し始めた。
うわー………めちゃくちゃ苛立ってるぅ………。妙なストップを食らって相当頭にきてるぞ。
「戻れ、ガオガエン! とんぼがえり!」
流石に何をしてくるか分からないため一旦離脱に走る。
「ヤドラン、離脱だ」
「ヤン!」
とんぼがえりで戻ってきたガオガエンをボールに戻し、代わりに出てきたヤドランに捕まり、一気に加速してその場を離脱。
「なみのり」
着地する場所もないため、荒れ狂う波を支配し足場にした。
うん、このメンバーなら俺たちがいなくても何とかなりそうだな。思いの外、キングドラが陰湿なサポートをしていることで被弾の確率が格段に少ないし、こいつらだけで大丈夫だろう。
そうと分かれば、俺たちはもう一体の下へ向かってしまおう。
「サーナイト、こっちはもう一体の方に行ってくる! オトスパスは任せたぞ!」
「サナ!」
何となく嫌な予感はする。
聞き覚えはあるのだ。野太くなったとしても鎧島に来てから割と身近にいるし。
「ザァァァァメェェェェェエエエエエエエエエエエエッッッ!?!」
ほーら、やっぱり。
北西の方へ移動すれば想像していた通りのポケモンが巨大化していた。
また厄介なポケモンが巨大化してるじゃないの。
「サメハダー………」
海を眺めていると普段から他のポケモンを襲っている姿が見受けられるのだが、事人間に対しては砂浜に立っていても目が遭うと一直線にこっちへ向かってくる凶暴なポケモンである。
多分、野生のポケモンの中での遭遇率は一、二を争うレベル。というか俺に向かってアクアジェットで吹っ飛んでくるのが名物にでもなっているのかと問い質したいくらいだ。
そうは言っても門下生たちも俺程ではないが遭遇というか襲撃されているみたいだし、そういう奴らなのだろう。それが巨大化したとなれば…………ため息しか出ないな。
「ラァァァァァァァアアアアアアアアアアアアイイイィィィッッ!!」
するとどこかで新たなポケモンの野太い唸り声が聞こえてきた。恐らく三体目が出たのだろう。願わくばソニアが見ている方であって欲しいのだが…………。
というかもうここまできたら、あの事件の再来ってことで間違いないだろう。となれば、対処の仕方も当初の見込みで問題ない。
まずは巨大化したポケモンを倒し、エネルギーを発散させないとな。そのためにもサメハダーの攻撃を利用しよう。
「ヤドラン、サイコキネシスでサメハダーの上に行ってくれ」
「ヤン」
なみのり状態から切り替わり、超念力でヤドランとともに身体が上昇していく。
途中巨大化したサメハダーの口の正面に来たのだが、絶妙なタイミングで口を開くもんだから、尖った歯が何本も見えて、今にも食われそうな絵面だった。
「ダークライ、さいみんじゅつ。完全には眠らせずに身体を支配しろ」
そのまま上昇し、サメハダーの上を取る。
そしてダークライにさいみんじゅつでサメハダーの身体を乗っ取らせることにした。
これが上手くいけば怪獣バトルも夢じゃない。
「ザァァァァ、ザァァァァ、ザァァァァアアアアアアアアアッッ!?」
「ぐっ……!?」
サメハダーが踠いているが、最後には黒いオーラで包み込み、乗っ取りに成功した。
ただ、ダークライでも相当力を必要とするのか、俺も一瞬意識を飛ばしそうになった。
ダイマックス、戦えば戦う程どういうものなのかが分かってきたが、想像以上のエネルギーだな。ダークライを以ってしてこれだ。サーナイトでは眠らせることもできないだろう。なるほど、かなしばりも効かないわけだ。
「オトスパスの方へ向かえ」
そのままサメハダーの頭の上に着地し、今もサーナイトたちが戦っているオトスパスの方へと移動する。
「サーナイト! ウルガモス! キングドラ! 一旦離脱しろ!」
オトスパスの背後へと辿り着くと、マジカルシャインを放つサーナイトと、ぼうふうとたつまきでオトスパスの触手を押さえつけているウルガモスとキングドラに離脱を促した。
「サナ!」
「モス!」
「ドラ!」
「ダイストリーム!」
「ザァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」
そして三体が離れたのを確認してから、サメハダーにダイストリームを撃たせるようダークライに指示を出した。
「パァァァアアアアアアアアアアアアアアアススススッッ!?」
後頭部に巨大な水砲撃が直撃したオトスパスは前のめりに倒れていく。
それに合わせて雨雲が発生し、雨が降り出した。
これはダイマックス技を出すとタイプごとに追加効果が発生し、みずタイプのダイストリームの場合は雨が降り出すのだ。
「ダイストリーム!」
オトスパスの反応を待たずに二発目を発射させる。
丁度振り返ったオトスパスの顔面に直撃し、今度は後頭部から海に倒れていった。
二度も巨大な身体を海に沈み込ませれば、津波が発生するわけで…………。
「キングドラ、波を操ってオトスパスを呑み込め!」
「ドラ? ドラー!」
その波をキングドラになみのりで制御させ、オトスパスを呑み込ませた。
流されるオトスパスは波を突っ切るように触手を伸ばし、何とか立て直そうと踠いているが、巨大な身体を起こすには至っていない。あの身体を起こすのなんて海の上では無理じゃないか………?
「ダイアタック!」
最早見ていられなくなり、さっさとトドメを刺すためにサメハダーを突っ込ませた。
「パァァァアアアアアアアアアアアアススススッッ!?!」
だが、踠いていた触手を重ね合わせた一撃がサメハダーを受け止めた。
恐らくあれはダイナックルだろう。あくタイプのサメハダーには効果抜群だが、体勢が不安定なオトスパスでは勢いのついたサメハダーを撃ち返すことはできないはずだ。
「ザァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
案の定、サメハダーが押し切り、オトスパスの身体を吹っ飛ばした。その吹っ飛ばされたオトスパスは、とうとう限界がきたのかエネルギーを飛散させていく。そして、身体の大きさが縮み出し、元の大きさへと戻っていった。
これでダイマックス状態は終わったな。ついでにここからでは見えないが戦闘不能になっていることだろう。
「よし、まずは一体。次はこいつだ! 一気に倒すぞ!」
まあ、まずは一体撃破。
次はこのサメハダーを倒す番だ。
「サナ!」
「モス!」
「ドラ!」
俺の合図を皮切りに三体ともサメハダーへと飛び込んできた。
「ヤドランは一旦戻ってくれ。ガオガエン、出番だぞ。にどげり」
ヤドランをボールに戻し、再びガオガエンを出してサメハダーの頭上で攻撃させていく。
「サーナ!」
「モース!」
「ドラドラドラ!」
サーナイトはマジカルシャイン、ウルガモスはむしのさざめき、キングドラが…………うん、なんか異様に速くなってて何してるかが見えない。取り敢えずサメハダーの周りを動き回っては攻撃しているのだけは分かるのだが…………待てよ? 今雨降ってるんだよな……。もしかしてキングドラの特性ってすいすいか?
それならば急劇に速くなったのも納得がいく。あるいはこうそくいどうを使っているかだな。
「ガゥ!?」
「どした、ガオガエン」
「ガゥ……」
すると頭を何度も蹴り付けていたガオガエンが脚を気にし出したため、様子を見てみることにした。
赤く腫れ上がっているな………。
特性さめはだか。
ならば、技を変えてみよう。
「ガオガエン、きゅうけつで体力を吸い取ってやれ。んでもってお前も回復してしまえ」
「ガゥ!」
ガブッとサメハダーの頭に噛み付いたガオガエンはちゅーっと体力を吸い上げていく。
これで足の腫れも引いてくるだろう。
「ザァァァァ…………ァァァ………ァ…………」
しばらくすると四方から攻撃を受けていたサメハダーの身体からエネルギーが飛散していき、元の大きさへと戻り始めた。
攻撃力が高い反面、防御が低いサメハダーはやはりオトスパスよりもあっさり倒れてくれたな。
「戻れ、ガオガエン。今だ! ダークライ!」
「ライ!」
合図を出すと俺の影から飛び出したダークライがオトスパスが巨大化した巣穴から中に潜っていった。
まあ、速くて黒い何かが穴に吸い込まれていくようにしか見えなかったけどね。
「お、おお、おおおおおおっ!?」
ただな。
忘れてたわけではないんだけどな。
ダークライが俺の影からいなくなったことで、足場がなくなったわけですよ。しかもサメハダーも元に戻って真下には海しかない状況。
「サナ?! サナァァァアアアアアアアアアアアア!!」
それを見たサーナイトがめちゃくちゃ焦った顔で俺の方に飛び込んできた。
おかけで海ポチャしなくて済んだんだが、代わりにサーナイトの腕が腹にめり込んで身体がくの字に折れ曲がっているのは…………うぷっ。
「………はぁ、はぁ、気持ち悪っ…………」
そのままサーナイトが作り出した見えない床に降ろされたのだが、マジで吐き気しかない。身体を真っ直ぐにしようなんて以ての外だ。
四つん這いで吐き気を抑え込んでいると遅れてウルガモスとキングドラもやってきたようだ。顔を上げるのすら辛くてどういう表情をしているのか分からないが、視線が突き刺さってるような気がする。特にキングドラの。何してんだ、こいつって思われてそう。
「………ライ」
しばらくするとサメハダーが巨大化した方の巣穴からダークライが戻ってきた。
やはり地下では繋がっているみたいだ。さっさと対処していなければ、ここら辺一帯で次々とポケモンが巨大化していただろう。しかもソニアが砂に描いていた巣穴の位置と数を考えると、ワイルドエリアの時よりも大惨事になっていた可能性もある。
「どうだった?」
俺のところまで戻ってきたダークライに聞いてみると、コクリと首を縦に振った。
「そうか、やっぱりあの時と同じだったんだな。全部取り除いたんだよな?」
再びコクリと首肯。
これでハッキリした。
今回のもあの時と同じだ。つまりはこれを起こした犯人がおり、ワイルドエリアの時と同一犯の可能性が高い。となると今この島には犯罪者が潜んでいる可能性が高いってわけだ。
…………多分、今この瞬間も俺たちのことを見ている可能性もあるのか。
「よし、ならソニアのところに戻るか」
犯人には悪いが俺のテリトリーに侵入した以上、それ相応の報いは受けてもらわないとな。最悪生きて帰れるとは思わないことだ。国際警察だとかは関係ない。絶対に見つけ出して報復してやる。