ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

68 / 156
最近少しずつ忙しくなってきており、前回はお休みさせていただきました。


62話

 こんにちは、あるいはこんばんは。黒の撥号。

 ガラル地方でのコネクション作りは順調のようで何よりだ。チャンピオン、ジムリーダー、引いてはマグノリア博士と面識まで持てたことには一同驚いている。

 さて、挨拶はこれくらいにして。

 今回のジムチャレンジ参加の許可要請であるが、結論から言うと許可しよう。まだ面識を持てていないジムリーダーたちとの出会いの場ともなろう。我々としては願ってもないことだ。

 しかし同時に懸念事項もある。我々黒シリーズはあまり人前で活動する側ではない。ひっそりと陰に隠れた存在である。故に公の場で顔を見られるないようにして欲しい。見せるのはコネクションを持った相手だけにだ。あとは好きにしたまえ。ガラルを盛り上げることで新たなコネクションを手にすることも出来るであろう。

 健闘を祈るーーー。

 

「ーーー毎度思うが、あの挨拶は何なんだろうな」

 

 ジュカインと再会して一ヶ月、もうすぐここに来て一年が経とうとしていた今日この頃。

 本部の方から正式にジムチャレンジへの参加許可が降りた。

 これで気兼ねなく参加することは可能であろう。あまり気は向かないが。

 

「ただ条件付きってなるとはな………」

 

 内容としてはあまり気にならない、どちらかと言えば喜ばしい内容ではある。顔を隠す口実が出来たのだからな。

 ただ、そうなると………どう隠したものか。

 帽子……だけでは無理があるだろう。眼鏡かける? あ、サングラスの方がいいか? というかそういうの付けててルール違反になったりしないのだろうか。

 

「さーて、はっちん。いよいよこの日がきたよん」

 

 着々とジムチャレンジの用意が整っていく現実を嫌々ながら受け入れていると、軽快な声で現実に戻された。

 声の主、マスタード師匠が目の前でによによしている。

 今日は待ちに待ったってわけでもないが、爺自らバトル相手になってくれる日である。

 

「そうっすね。ようやく師匠を引きずり出すことが出来ましたよ」

「それについてはワシちゃんも随分悩んだからねん。許してほしいのよ」

「それで? ルールは?」

「本当はルール無用くらいにはしたいんだけどね。一応、はっちんをジムチャレンジに送り出すための儀式みたいなものでもあるから、公式のルールに則ってだよん」

 

 ………ミツバさんといい、ジムチャレンジに向けての俺の推薦材料でも探しているのだろうか。というかジムチャレンジでやれるかどうかを判断してるのか?

 まあ、何にせよ爺さんを倒さない限りは進まないからな。

 公式ルール下における元チャンピオンとのフルバトル、さながらダンデとのフルバトルを想定して臨んだ方がいいだろう。

 

「了解」

「本来はこの島にある二つの塔のどちらかでやるんだけど、はっちん相手だと塔が壊れかねないからね。だからここではルールの範囲内で好きにやってくれたらいいよん」

 

 二つの塔?

 もしかしてあれか?

 チャレンジビーチの砂浜にあった木造の塔。あれと似たようなのが山の方にもあったはずだし。あっちは山登るのが面倒で近くまで行ってないんだけどな。

 

「また難しいこと言いますね。たった四つの技でできることなんて少ないですよ」

 

 好きにしていいと言われても公式ルールのフルバトルともなると、下手に四つ全ての技枠を一気に使い切ることなんて無駄でしかない。どれだけ使う技を少なくできるかが一つの鍵になってくる。だから派手な演出はなかなか難しいのだ。

 

「審判は任せて!」

 

 お、おう………。

 ミツバさんが審判とか、ちょっと道場総出でフルバトルやろうとしてない?

 門下生たちもほとんどいるよね?

 そんな大掛かりなことだっけ………?

 

「………なんか人多くないっすか」

「そりゃはっちんのバトルだからね。みんな興味津々だよん」

 

 結局は野次馬が大半ってことか。

 まあ、いつもいる野次馬ギャルは珍しくいないみたいだが。

 

「興味持たれてもねぇ………」

「それだけはっちんがすごいトレーナーってことだよ。受け入れる受け入れる」

 

 余り期待されても仕方がないだがな。

 基本目立ちたくないのに初っ端からダンデの相手をしちゃったがために、この道場でも持ち上げられてるし。

 まあ、それももうあと少しの辛抱か。ジムチャレンジが始まれば自ずと本土に行くことになる。この好奇な目ともおさらばだ。…………おさらばできるといいな。

 

「んじゃ、始めようか」

「うす」

 

 爺さんはそう言うと、黒い帽子をミツバさんの方へと投げ、後ろへ連続でバク転していった。

 ………………はっ? バク転………!?

 

「ハチ! 全力でワシにかかってこい!」

 

 ッ………?!

 スタッと着地した爺さんの目は、いつものへらへらした軽いものではなく、獰猛な野獣のような目をしていた。

 呼び方も『はっちん』から『ハチ』に変わっている。恐らくこれが爺さんの本気モード、というよりは現役時代の姿なのだろう。

 

「いくぞ、コジョンド!」

「ドラミドロ、まずはお前からだ」

 

 爺さんの最初のポケモンはコジョンドか。

 かくとうタイプの素早い部類に入るポケモンだ。

 

「コジョンド、ねこだまし!」

 

 やはりというべきか。

 初手は躱せない速さで一気に距離を詰めてきての一拍手だった。

 それに怯んだドラミドロは一歩二歩と後退りする。

 

「ドラミドロ、どくびしだ」

 

 ただ、ドラミドロの役割はコジョンドを倒すことではない。

 この後のキングドラが優位になる状況を作り出すことだ。

 そのためにドラミドロには砂浜で見つけた湿った岩を持たせている。あんなもんのどこに雨を長続きさせる効果があるのかはよく分からないがな。謎だわ。

 

「はっけい!」

 

 だから攻撃を受けるのは想定内。

 胴に突きを入れられ、強い衝撃波がドラミドロの身体を伝っていく。

 

「あまごい」

 

 幸い麻痺状態にはならなかったが、コジョンドの動きが速い。

 

「とびひざげりじゃ!」

 

 雨雲を呼び寄せると間髪入れずにコジョンドの膝がドラミドロにクリーンヒットした。

 ようやく雨が降り出す。

 よし、これで整ったな。

 

「ん………?」

「………毒、じゃと?」

 

 ふとコジョンドを見やると顔色がどんどん悪くなっていっていた。

 どくびしは使ったが、あれが発動するのは次の交代のタイミングだ。だからコジョンドが毒状態になるとしたらーーー。

 

「特性、か」

 

 確かドラミドロの特性はどくのトゲとどくしゅ、珍しい個体としててきおうりょく、だったか?

 攻撃技は未だ使ってないのを考えるとドラミドロの特性はどくのトゲなのだろう。

 

「ドラミドロ、クイックターンだ」

「くっ、ストーンエッジじゃ!」

 

 雨が降り続く中、水を纏ったドラミドロは迫り来る岩々を粉砕しながらコジョンドに突進していった。

 そして体当たりと同時に身体を反転させ、俺の持つボールへと吸い込まれるように戻っていく。

 

「キングドラ、ぼうふうでコジョンドを呑み込め」

 

 交代で出したキングドラがすぐさまコジョンドを暴風の渦で呑み込んだ。中でどうなっているかは分からないが効果抜群の技だ。毒もあってダメージは相当だろう。

 

「キングドラ、頭上から入ってハイドロポンプ」

 

 特性すいすいのおかけで目で追えない速さになったキングドラが暴風の側面を大ジャンプして、そのまま渦の中心に潜り込んでいった。

 少しの間の後、暴風が消え去り地面に伏したコジョンドとそれを見下ろすキングドラがいた。

 

「………コジョンド、戦闘不能!」

 

 コジョンドの様子を確認してミツバさんが判定を下す。

 まずはこちらが一本か。

 進化したとはいえ、爺さんのポケモンたちと真正面からやり合えるだけの強力な技を持ち合わせていない以上、まだサポートに回ってもらうことになったが、期待以上の成果を得られたと思う。もう少しすれば充分に戦えるだけの力は付いてくるはずだ。それにキングドラとドラミドロとではスタート地点から差があったのだ。なのに今回効果はいまひとつとは言え、コジョンドの技を耐え抜いたのだから、それだけでも充分強くなっていると思う。

 

「戻れ、コジョンド。………流石じゃ、ハチ。お主の手持ちを考えれば次にキングドラが出てくるのは分かりきっていたこと。ドラミドロの動きも全てキングドラを出すためのものだったのは理解出来る。じゃが、それを抜きにしてもドラミドロの成長はワシの想像よりも上をいっていたようじゃ」

 

 ああ、なるほど。

 爺さんの手としてはねこだましで怯ませ、はっけいで麻痺状態にし、とひひざげりで大ダメージを与えて、残りの一技で一気に片付ける算段だったのだろう。それが思いの外ドラミドロが耐え、攻撃する度にフィールドへの仕掛けが増え、あまつさえ直接攻撃してしまっていたことで毒を浴びてしまったのは計算外だったのだろう。

 

「そりゃどうも」

 

 俺としても毒は想定外だったからな。

 ただ、ここからは毒を伴ってくる。爺さんはどう対処してくるのだろうか。

 

「次じゃ、レントラー!」

 

 二体目のポケモンはレントラーか。

 どくびしが発動し、レントラーの足元に紫色の棘が突き刺さっていく。

 レントラーはでんきタイプ。どくタイプやはがねタイプでない限り、毒状態になってしまう。除去されることもない。

 ただタイプ相性だけで見れば、みずタイプを持つキングドラにでんきタイプのレントラーをぶつけてくるのは間違っちゃいない。

 爺さんはどうする気だ?

 

「キングドラ、ハイドロポンプ」

 

 先が読めないため、先に攻撃を仕掛けることにした。

 雨が降っている状況は有限。この間にできるだけ攻撃しておきたい。

 

「レゥッ!?」

 

 消えたキングドラはレントラーの背後を取り、超至近距離で水砲撃を撃ち放った。

 

「レントラー、かみなりじゃ!」

 

 激しい勢いで俺の方へも飛ばされてきたレントラーが呻き声を上げる。

 するとピシャリッ! と稲妻が走ると、そのままキングドラに落ちてきた。

 雨が降っているとかみなりは必中になるからな。爺さんもそこは狙ってきているだろう。

 

「でんこうせっか!」

 

 毒に犯されて震える身体を奮い立たせて、爪を地面に突き立てると一気にキングドラとの距離を詰めていく。

 

「そのままじゃれつくじゃ!」

「躱せ」

 

 そう易々と食らってやるわけにはいかないので、キングドラはまたもや一瞬で姿を消してレントラーを躱した。

 

「りゅうのはどう」

「ワイルドボルトで突っ込むのじゃ!」

 

 続け様に背後から赤と青の竜を模した波導でレントラーを呑み込まんとすると、身体を捻り地面を蹴り上げて反転し、電気を纏いながら再度キングドラへと突っ込んでいく。

 これ、雨が降ってなかったらキングドラで対処できていただろうか。というか毒状態なのに、それを伺わせたのはさっきの一度きりだけである。

 ………エグいな。

 

「やられる前にやるってか………」

 

 レントラーの捨て身の攻撃にキングドラもとうとう押し切られてしまい、初めてレントラーの体当たりを受けて弾き飛ばされてしまった。

 だが、ワイルドボルトはフレアドライブと同じく反動でダメージを負う技だ。それに加えてキングドラの攻撃を受けているのだから、ダメージは相当蓄積していることだろう。

 保ってあと数回。

 

「かみなり!」

「ぼうふうで自分を包め」

 

 でんこうせっかにしろワイルドボルトにしろ、一度防御としてぼうふうで身を守ろうと思ったら、予想を外して雷が落ちてきた。

 だが、雷も暴風の渦に呑まれてキングドラに当たることはなかった。

 …………これ、上手く風を利用すれば自分の周りだけ雨粒も微細な埃もない無菌状態にして、雨の中でもかみなりが当たらないようにすることもできたりするのではないだろうか。相当技術を要する話ではあるが。

 

「キングドラ、回り込んでハイドロポンプ」

「レントラー、もう一度ワイルドボルトで突っ込むのじゃ!」

 

 キングドラが暴風の渦の中から出てきてレントラーの背後に回り込むと、レントラーが暴風の渦の中へ電気を纏って突っ込んでいった。

 その背中を追うように水砲撃が放たれる。

 すると渦の中で切り返してきたのか、水砲撃の中を雷獣が走り迫ってきた。

 

「じゃれつく!」

「ーーーげきりん」

 

 どこまでも捨て身な攻撃は躱せないと判断し、最後の技を指示した。

 ボコボコに殴り合う両者の攻防はお互いに頭突きで頭をかち合わせたところで、パタリと止んだ。

 

「………あらまあ。キングドラ、レントラー、共に戦闘不能!」

 

 人間でいうところの脳震盪でも起こしたのだろうな。

 ミツバさんの判定が下されると、丁度雨も上がった。

 

「戻れ、キングドラ。お疲れさん」

「戻るのじゃ、レントラー」

「………はぁ、あの捨て身の攻撃には驚きっすよ」

「フッ、すいすいが発動した状態のキングドラに守りに入っても間に合わんからな」

「そもそもすいすいが発動していなければ、レントラーにキングドラでは太刀打ちできていなかったでしょうね」

「それはどうじゃろうな。お主の手腕とお主が育てた技量が合わされば………ワシも気が抜けん」

「そっすか」

 

 …………なるほどな。

 圧倒的な速さの前には守りなど意味をなさないこともある。それならば攻撃に極振りした方がまだどうにかできる可能性があるってわけか。

 まあ、それを可能にするくらいまで実力がなければ無意味ではあるが。

 俺のポケモンたちはどちらかと言えば、圧倒的な速さで翻弄する側だったからな。別口なのはボスゴドラくらいだったし、あれもでんじふゆうを使うことでまあまあ速さを手に入れることができていた。

 うん、これは今までの俺になかった新鮮な戦法だな。頭に隅にでも入れておこう。

 

「さて、次といこうかの」

「ああ。ヤドラン、いくぞ」

「ルガルガン!」

 

 三体目はルガルガンか。それも薄い茶色の真昼の姿。

 ルガルガンはヤドランの的撃ちとかで世話になった。

 ここでその成果を見せる時ってところかな。

 

「アクセルロック!」

「ヤン!?」

 

 どくびしにより毒を浴びたルガルガンは、コジョンドよりも素早いポケモンで四足歩行の脚力を活かして、一気にヤドランとの距離を縮めてきた。

 まあ、ヤドランに比べたら圧倒的な速さだわな。それでレントラー同様、捨て身の攻撃に転じれるかと言えば、答えはノーだ。

 

「ヤドラン、トリックルーム」

 

 それよりもこっちを圧倒的な速さで翻弄する側に変えてしまえばいい。

 ヤドランが左腕のシェルを地面に叩きつけ、素早さが反転する部屋を作り上げていく。

 

「シェルブレードでホリゾンタル・スクエア」

 

 左腕のシェルと右腕に巻き付けた貝殻の鈴を掴み、二刀流の水の剣を携えて、ルガルガンに斬りかかった。

 さっきとは打って変わって、ヤドランが圧倒的な速さを見せている。

 

「ふいうち!」

「ヤン?!」

 

 だが、この素早さが反転する部屋の中でもその効果の影響を受けない技がいくつかあり、その一つであるふいうちによりヤドランの左の一太刀目を躱され吹飛ばされた。

 

「チッ、………それなら。ヤドラン、シェルブレードでバーチカル・スクエア」

 

 ヤドランと目を合わせると再度接近させ、右の一太刀目を振り上げる。

 

「もう一度ふいうちじゃ!」

 

 すると予想通りふいうちを使ってきた。

 

「サイコキネシスでルガルガンの動きを止めろ」

 

 それを超念力で動きを止め、今度こそ右の一太刀目を右上から左下に振り下ろした。そしてすぐさま切り返して左下から右上へと掬い上げる。その勢いを利用して一回転しながら無防備になった右脇を狙って左上から右下へと斬りつけ、着地の踏み込みを使って右上から斬りつけた。

 

「ルガルガン、交代じゃ」

 

 おっ、と?

 まさか爺さんが交代を選択してくるとは。

 ルガルガンではヤドランに歯が立たないと判断したか?

 いや、それとも………そう思わせての本命、とか?

 …………後者の方があり得そうだな。

 

「アーマーガア、はがねのつばさ!」

 

 四体目のポケモンはアーマーガアだった。

 ワイルドエリアで巨大化ポケモンが大量発生した時に、あいつの背中に乗ってってたもんな。しかもはがねタイプを要するひこうタイプだ。どくタイプの技は無効。飛んでいるからヤドランの攻撃も限定される。

 

「ヤドラン、もう一度シェルブレードでバーチカル・スクエアだ」

 

 あの勢いを止めるべく、再び右の剣を振りかぶって右上から左下に斬りつけて、すぐさま切り返して左下から右上へと掬い上げる。その勢いを利用して無防備になった右脇を狙って左上から右下へと斬りつけ、着地の踏み込みを使って右上から斬りつけた。

 

「ホリゾンタル・スクエア」

 

 続けて遠心力を利かせて、左剣で左から右に斬りつける。そしてすかさず切り返して右から左へと振りアーマーガアの鋼の身体を弾くと、そのまま一回転して同じ場所を右から左へ斬りつけた。最後に左下から掬い上げるとようやくアーマーガアの動きが止まった。

 八連撃も必要とかどんだけのパワーがあるんだよ。

 

「しっぺがえし!」

 

 すると急に目の色を変えたアーマーガアが勢いよくヤドランを突き飛ばした。トリックルームを突き破り俺の方へと飛ばされてくる。

 

「ヤドラン………大丈夫じゃなさそうだな」

 

 しっぺがえしときたか。

 圧倒的な速さを前にする逆にそれだけ威力が上がる技を選ぶとか………。

 ルガルガンのふいうちに加えてアーマーガアのしっぺがえしは結構痛いな。どちらもあくタイプの技であり、ヤドランには効果抜群だ。しかも威力の乗ったしっぺがえしだから、ヤドランのダメージも相当入っただろう。

 空を飛ばれては手を出せなくなるし、ここは一度引かせた方が賢明か。

 

「戻れ、ヤドラン。一旦交代だ」

 

 ゆっくりと立ち上がったヤドランをボールに戻して、次のボールに手をかけた。

 

「ウルガモス、アーマーガアを焼き尽くせ。ねっぷう」

 

 出した瞬間にウルガモスが熱風を起こし、アーマーガアが呑み込まれていく。

 

「アーマーガア、ぼうふうでかき消すのじゃ!」

 

 熱風の中から激しい暴風が吹き荒れ、二つの風が相殺されていく。すると熱を帯びて赤くなったアーマーガアが白い煙を上げていた。

 

「ほのおのまい」

「ブレイブバード!」

 

 技を切り替えて、炎を踊らせるとアーマーガアが翼を折りたたんで突っ込んでくる。

 お互い効果抜群の技を受け、一度地面に撃ち落とされた。

 

「ウルガモス、ねっぷう」

「アーマーガア、ぼうふうじゃ!」

 

 再び羽ばたき熱風と暴風がぶつかり合うと、せめぎ合いになった。

 ウルガモスが早く羽ばたけば、アーマーガアも早くなり………ともすれば、アーマーガアは火傷していたのか一瞬顔を顰めたことでリズムが崩れ、熱風が再びアーマーガアを呑み込んでいく。

 

「押し込め、ほのおのまい」

 

 トドメに炎を踊らせ、アーマーガアを呑み込み、地面に撃ち落とした。

 

「アーマーガア、戦闘不能!」

 

 それを見てミツバさんが判定を下した。

 

「アーマーガア、戻るのじゃ」

「戻れ、ウルガモス。よくやった」

 

 爺さんがアーマーガアを戻すのに合わせて、俺もウルガモスをボールに戻した。

 爺さんのポケモンは残り三体。

 あとはガオガエンとサーナイトでどうにかできるだろう。

 

「ハチ、やはりお主の判断は正確で早い。ワシですら読み間違える」

「そりゃどうも。俺としては師匠が意外とパワー系ってことに驚いてますよ」

 

 捨て身の攻撃とか俺の想定外だったしな。

 

「ワシは元かくとうタイプのジムリーダーじゃからな。力でねじ伏せてきて十八年間チャンピオンの座を守っていたのは否めん」

「なるほど」

 

 一応道場の師範だからかくとうタイプのイメージはあっても、普段のあの軽いノリを見てたら、パワー系ってのには結びつかないか。

 まあ、それも込みでの試験なのかもしれない。

 

「んじゃ、次いきましょうか。ガオガエン」

「ジャラランガ、お主の出番じゃ」

 

 さて、次だ次。

 五体目はドラゴン・かくとうタイプのジャラランガか。ソニアも連れていたポケモンだ。

 あの見た目ではがねタイプじゃないってのに驚きだよな。俺もここにきて初めて知ったくらいだし。

 だからどくびしもちゃんと食らって毒状態になっている。

 

「ジャラランガ、インファイト!」

 

 そんなことを考えていると、爺さんが先に動いた。

 

「ガオガエン、DDラリアット」

 

 最初から肉弾戦とか、マジでパワー系過ぎるだろ。

 ガオガエンが両腕を広げて高速回転しながら、ジャラランガのガトリングを弾いていく。

 

「スケイルノイズ!」

 

 するとジャラランガの激しい動きに全身の鱗が擦れ、不快なノイズが響き渡った。

 高速回転していたガオガエンもその不快なノイズに思わずバランスを崩し転倒。

 ハイパーボイスよりも耳に気持ち悪さが残り、耳奥に響いている。

 

「ガオガエン、ニトロチャージ」

 

 すぐに態勢を立て直すために、炎を纏わせてその場から離脱させた。

 

「ジャラランガ、ソウルビートじゃ!」

「ジャララァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 一度ジャラランガから距離を取ると、ジャラランガが長い雄叫びを上げる。それだけで竜の気が活性化し、強いオーラを感じるようになった。

 ソニアとのバトルの際に、あいつのジャラランガも使っていたため、あの後どういう効果の技なのかは調べてある。体力を削って全能力を上昇させるドラゴンタイプの技。

 はっきり言ってこれはさっさと倒さないとヤバいやつだ。

 

「ガオガエン、アクロバット」

 

 ガオガエンはくるくると回転しながら後ろに飛び、空気を蹴ってジャラランガに一気に突撃していく。

 

「ドレインパンチ!」

 

 それを迎え撃つように拳を握りしめるジャラランガ。

 激突と同時に突き出された拳により、ガオガエンの身体が受け止められてしまった。

 時間にして数秒。

 だが、ニトロチャージによりスピードが上がっていたからか、ジャラランガの拳に負荷がかかり、お互いを弾き飛ばすに留まる結果に終わった。

 それでも拳から体力を吸い取られてしまったのは痛い。お互いに効果抜群の技の競り合いだっただけに、回復されたことによりちょっと差が後々影響してきそうで怖い。

 どうにかして倒してしまわないと、長引けば能力を上げたジャラランガが暴れ回ることになるだろう。

 

「ニトロチャージ」

 

 だが、こっちにはニトロチャージくらいしか能力を上げる技がない。ふるいたてるもあるが、この公式ルール下においてはあと一枠しか技を選択することができず、限られた手札でどうにか対処しないといけない。

 やっぱりルール無用の野良バトルの方が俺には合っていると思う。非常にやり辛い。

 まあ、それも含めてのジム戦であるのだから、一種の競技と言っても差し支えないだろう。

 

「ジャラランガ、スケイルノイズ!」

 

 炎を纏った素早い動きで二度体当たりを繰り返すと、再度ジャラランガの鱗から不快なノイズが響き渡る。

 

「一旦距離を取れ」

 

 三度目をやめてジャラランガから距離を取り、ノイズ音から逃れた。

 ニトロチャージではやはり削れても微々たるもんか。

 

「DDラリアット」

 

 未だノイズ音が走る中、両腕を広げて高速で回転しながらジャラランガへと突っ込んでいく。

 ………岩とかを飛ばす系の技もある便利そうだな。全部が全部殴り合いの技になると結構接近する手が狭まってくる。

 

「インファイト!」

 

 多少はノイズ音によるダメージを受けていたとしても、ニトロチャージで突っ込むよりかはダメージが少ないはず。これは単なる俺の希望的観測でしかないから何とも言えんが、かと言って最後の技枠を選択してしまうのも時期尚早な気がする。というかどうせなら決め技のブレイズキックにしてやりたい。

 高速で回転するガオガエンに対し、ジャラランガが拳のガトリング攻撃を始めた。

 初手よりも纏うオーラのおかげか威力が桁違いになっており、DDラリアットを以ってしても弾き返せなくなっている。

 

「ガオガエン、そのままアクロバット」

 

 それならと、逆に弾かれることによりその勢いを使って後転していき、踏み込んで空気を蹴り上げた。

 

「ドレインパンチ!」

 

 やはり素早さだけは上回っているようで、ジャラランガが拳を掬い上げている途中で顔面にガオガエンの頭が直撃した。

 さっきとは打って変わってジャラランガが弾き飛ばされ、地面を二度三度とバウンドしていく。

 効果抜群な上にガオガエンには何も持たせていないため、アクロバットの威力は相当なものになっているだろう。

 

「ニトロチャージで詰めろ」

 

 炎を纏い、ジャラランガとの距離を詰める。

 

「ジャラランガ、躱すのじゃ!」

 

 咄嗟に両手脚を使って飛び退いたことで、ガオガエンの体当たりは空を切った。

 だが、ガオガエンは空を切ったことに気付くと地面を蹴り上げ、ジャラランガを逃がさない。

 

「っ!?」

「ブレイズキック」

 

 爺さんもガオガエンが踏み込んできたことに驚きを見せている。

 そのままガオガエンは左脚に炎を纏い、空中でジャラランガの胴を回し蹴りし、地面に叩きつけた。

 

「決めろ、ブレイズキック」

 

 そして着地と同時に地面に炎が広がり、その全てが右脚に集中していく。

 その脚で駆け出したガオガエンは地面を強く蹴り上げ、一度両脚を折り畳むと、起き上がろうとしているジャラランガに一気に右脚を突き刺しにいった。

 接触と同時に右脚から炎が溢れ爆発を起こす。

 ………うん、いい感じにライダーキックのパターンが増えていってるな。

 

「………ジャラランガ、戦闘不能!」

 

 ふぅ、なんか手強かったな。

 やはりあのソウルビートが痛い。しかも爺さんの場合はドレインパンチによる回復もあったため、ソウルビートにより削った体力を攻撃しながら回復してくるという理想的な技の使い方をしてきたから、余計に面倒だった。まあ、この辺がソニアと元チャンピオンの実力の差といったところか。それでもソニアも本人の自覚がないだけでそれなり以上の実力はあるんだがな。

 

「戻れ、ジャラランガ。………こうもあっさりとジャラランガが敗れるとはな。元々高い能力を全て上昇させた上で攻撃しながら回復していく、理想的な技の組み合わせとポテンシャルを兼ね備えたポケモンだったのじゃが………。やはりハチには敵わぬか」

「スピードでどうにか上回れたからでしょ、勝てたのは。それとインファイトで防御力は下がりますし。一応その辺は頭に入れて立ち回ってましたからね」

「そうじゃな。それが出来ない者がジムチャレンジでも苦戦を強いられる。かと言ってポケモンが対応出来るかは別問題じゃ。一年前はまだバトル初心者という感じであったニャビーを、よくここまで育てたものよ」

「そりゃどうも」

 

 やっぱり慣れないな、この素の口調。いや、あの軽い感じも素なんだろうけど、急に変わられると違和感を覚えてしまう。

 

「では、次へと参ろうか。ルガルガン!」

 

 再びルガルガンの登場。

 恐らく最後のポケモンはウーラオスなのだろう。

 ヤドランが体力を削っているとはいえ、いわタイプだからな。タイプ相性ではガオガエンの苦手とするところだ。しかもさっき見せてきたのはアクセルロックとふいうちという素早く動く技だったからな。ガオガエンの素早さが上がっていても簡単に並ばれる、あるいは上回られる可能性がある。

 

「アクセルロック!」

 

 ほらきた。

 

「グ、ガゥッ!?」

 

 咄嗟に躱したガオガエンの左腕にルガルガンの顔が掠めた。

 

「もうかが発動したか」

 

 左腕を押さえるガオガエンが赤いオーラを纏い始める。もうかが発動したようだ。

 ということは体力ももう少なくなってきている証でもある。

 長引かせるのだけは避けないとな。

 

「ルガルガン、ストーンエッジ!」

「DDラリアット」

 

 ルガルガンが前脚で地面を叩き、次々と岩が地面を穿ってくる。

 それを両腕を広げて高速回転し、粉砕していった。

 

「アクセルロック!」

 

 ただ、それは囮だったのだろう。

 ルガルガンが再度急加速してくる。

 

「飛び退け、アクロバット」

 

 間一髪で後ろへくるくると飛び退き、そのまま踏み込んで空気を蹴り上げた。

 

「アイアンテールで迎え撃つのじゃ!」

 

 まあ、一筋縄ではいかないのは分かりきっていたこと。

 ルガルガンの鋼の尻尾によりガオガエンは弾かれてしまった。

 

「アクセルロック!」

 

 すかさず急加速してくるルガルガン。

 狙いは空中で何とかバランスを取る際に背を向けてしまったガオガエンが着地したタイミングだろう。

 

「ガオガエン、ブレイズキック」

 

 だが、ガオガエンはブレイズキックでの回し蹴りを覚えた。さっきも一度使っている。

 だから着地と同時に右脚に炎を纏い、身体を回転させた。

 右脚は丁度ルガルガンの左頬に入り、軌道を逸らすことに成功した。

 

「トドメだ、ブレイズキック」

 

 上げていた右脚で地面を叩きつけると地面に炎が走っていく。

 

「ルガルガン、ストーンエッジ!」

 

 起き上がったルガルガンが再度地面を叩き、岩々を突き出してくる。

 地面に広がった炎を今度は両脚に纏わせたガオガエンは、突き出してくる岩を足場に二段ジャンプで高く飛び上がると両脚を折り畳み、両脚を突き出して急下降していった。

 

「アクセルロック!」

 

 ルガルガンも負けじと急加速し、ガオガエンへと突進していく。

 脚の炎が爆発し黒煙が上がると、その中からお互いに弾き飛ばされてきた。二体とも着地には成功するものの、その場で力尽きてしまいそのまま地面に倒れ伏してしまった。

 

「ガオガエン、ルガルガン、戦闘不能!」

 

 ミツバさんの判定が下された。

 爺も人が悪い。ガオガエンの上がった素早さを活かす場面がなかった。そうなるようにルガルガンがアクセルロックを使いまくっていたのが辛い。

 

「ガオガエン、お疲れさん」

「戻れ、ルガルガン。よくハチのガオガエンを相打ちに持っていった」

 

 ほんとそれな。

 どくびしで毒状態になっているってのに、それをおくびにも見せずに意地と根性だけで粘られてしまった。そこに爺さんの采配が加わればこの結果も頷ける。

 

「………ダンデみたいに派手というわけでもなく、カブさんみたいに熱いわけでもなく、ピオニーのおっさんみたいに単調というわけでもないけど、パワーもスピードも知恵も知識も経験も、何もかもが高水準ってのは分かりましたよ」

「これでも現役の頃に比べたら判断力もバトルの組み立て方も衰えておる。これが今のワシの本気じゃよ」

 

 それでもこのレベルなのだから、現役の頃は相当すごかったのが伺える。

 まあ、タイプ相性的にはガオガエンが不利ではあったし、ジャラランガとのバトルでダメージが蓄積してたしな。そう思うとルガルガンを相打ちに持っていったガオガエンも凄いということにもなる。

 

「ハチ、お主のトレーナーとしての実力は既にチャンピオン並みじゃ。ワシが手取り足取り教えることは元々ない。だからワシは考えたのじゃ。考えて考え抜いた結果、現役の頃に少しでも近づけたワシのバトルを見せることにしたのじゃよ」

 

 爺さんとのバトルは確定事項ではあった。だけど、ずっと先延ばしにされていたのは、バトル内容をどうするか、どのポケモンで挑むか、そもそも自分の実力が足りているのか、とかそんなことを考えていたのだろう。

 ある意味、俺はこの道場の問題児なのかもな。

 あ、でも問題児第一号はダンデってことにしておこう。

 さて、爺さんとの最後のバトルといこうか。

 

「サーナイト、最後よろしく」

「これが最後の手向じゃ。しっかり受け取れぃ! いでよ、ウーラオス!」

 

 やはり最後はウーラオスだったか。

 ただ、ウーラオスは二つの姿があり、ぱっと見区別が付かない。サーナイトとのタイプ相性はどちらもこちらが不利になることはないため、どちらでもいいっちゃいいんだけどな。

 

「すいりゅうれんだ!」

 

 と思いきやさっさと判別させてくれた。

 すいりゅうれんだを使うということはかくとう・みずタイプの連撃の型だ。流れるようなしなやかな動きで攻撃してくるため、技と技の息継ぎが上手い。実際にバトルしたことはないが、ガオガエンを鍛えてくれたのもウーラオスである。

 

「テレポートで躱せ」

 

 ダダダッと迫り来るウーラオスをテレポートで躱す。

 

「マジカルシャイン」

 

 サーナイトはウーラオスの背後に回ると身体から光を迸らせた。

 サーナイトの動きを追っていたウーラオスには突然の光に、目がやられたことだろう。

 それでも咄嗟に距離を取った辺り、危機管理は高そうだ。

 

「ウーラオス、ストーンエッジ!」

 

 ウーラオスが地面を叩き、次々と岩々を地面から突き上げてくる。

 

「躱せ」

「アイアンヘッドじゃ!」

 

 今度はテレポートを使うことなく躱すと、すかさずウーラオスが突っ込んできた。

 

「サイコキネシスで止めろ」

 

 それを超念力で捕らえて動き止める。

 

「押し潰せ」

 

 そしてそのまま地面に叩きつけ、重圧をかけた。

 見えない力に押し潰され、ウーラオスは起き上がれないようだ。

 

「ウーラオス!」

 

 自力では起き上がれないと判断したのか、ボールに戻すことで強制的にその場から離脱させた。

 そして右手のリストバンドからエネルギーが流れ込み、ボールが巨大化していく。

 

「巨大な拳となりて目前の敵を挫け! キョダイマックス!」

 

 再度ボールから出てきたウーラオスは青と白の巨体へと変化していた。

 これがキョダイマックスの姿か。

 

「キョダイレンゲキ!」

 

 水を纏った巨大な右拳が振り下ろされてくる。

 

「テレポート」

 

 それをテレポートでウーラオスの背後へと移動することで躱すと左脚が振り回されてきた。

 

「まだじゃぁ!」

「テレポートだ」

 

 左脚の遠心力を使って右脚でジャンプし、そのまま右脚を大きく振り回してくる。

 当たりはしなかったものの、風圧だけでテレポート後のサーナイトの身体が吹き飛ばされてしまった。

 

「ダイスチル!!」

 

 そこへウーラオスが地面を叩き、巨大な鋼の棘が次々と襲いかかってくる。

 さて、そろそろこっちも使うとするか。

 

「サーナイト、メガシンカ」

 

 俺の持つキーストーンとサーナイトのメガストーンが共鳴し、サーナイトが虹色の光に包まれていく。

 メガシンカエネルギーの拡散に伴い、巨大な鋼の棘を呑み込んでいき、代わりに淡いピンク色の光がフィールドに広がっていった。

 

「………やはり、か。ウーラオス、キョダイレンゲキ!!」

 

 再び巨大な拳が振り下ろされてくる。

 

「サイコキネシスで止めろ」

 

 それを超念力で一時的に止めた。

 

「テレポートだ」

 

 その間にテレポートでウーラオスの背後へと回り込む。

 

「まだまだぁ!」

 

 またしても回し蹴りが飛んできたが、俺もサーナイトも二度目ともなれば読めているので、それもテレポートで躱していく。

 

「もう一丁ぉ!」

 

 そして三撃目がきてもそれは変わらず、ただひらすらに躱していくが、四撃目以降には風圧も増してきた。

 

「サナッ?!」

 

 それには流石のサーナイトも吹き飛ばされてしまった。

 しかし、そこでタイムリミットが訪れてウーラオスは元の姿へと戻っていった。

 ふぅ、ここからは反撃だな。

 

「はぁ、はぁ………ウーラオス、ストーンエッジ!」

 

 元の大きさに戻ってすぐに接近戦は身体が追いつかないと判断したのか、ストーンエッジを挟んできた。

 地面が叩かれ、地面から岩々が迫り来る。

 

「サーナイト、ハイパーボイス」

 

 折角メガシンカして特性がフェアリースキンになったことなので、俺は耳を塞いでハイパーボイスを指示した。

 

「サナァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 塞いでても耳がキンキンしてくる。

 爆音により迫り来る岩々は粉砕され、衝撃波はさらに奥にいるウーラオスを呑み込んだ。

 最初は何とか踏ん張っていたものの、段々と踠き出して片膝を着くまでに至った。

 

「す、すいりゅうれんだじゃ!」

 

 爺さん自身も今ので耳がイカれたのか、声が上擦っている。

 

「マジカルシャイン」

 

 爆音が止むとすぐにウーラオスが両拳に水を纏って駆け出してきた。

 サイコキネシスで止めようかとも思ったが、耳をやったのならば次は目だと考え、マジカルシャインを選択。

 あと一投足というところで光を迸らせ、ウーラオスを包み込んでいく。

 目の前で光を浴びるとは考えていなかったのか、ウーラオスの脚が止まった。

 

「くっ、アクアジェット!」

 

 それでも爺は冷静を保ち、目が見えなくともこの距離なら当たるだろうと判断し、アクアジェットを選択してきた。

 ほんとこういう地味なところで流石だと思わされるわ。

 

「サ、ナ……ッ!」

「ふっ、よく受け止めた。そのままハイパーボイス」

 

 だが、耳をやられ目もやられたウーラオスに本来の力強さはなく、腕をクロスさせたサーナイトによって受け止められた。

 そのままサーナイトはバッ! と腕を広げてウーラオスを弾き、再び爆音の波で爺さんの方へと吹き飛ばしてしまった。

 ドサッ! と地面に落ちたウーラオスはピクリとも動かない。

 

「ウーラオス、戦闘不能! よって、勝者ハチ君!」

 

 その様子を見てミツバさんが判定を下した。

 ふぅ、疲れた。

 やっぱり元チャンピオンの道場主なだけあって一筋縄ではいかなかったな。パワーも経験も組み立て方も他とは段違いで新鮮だったわ。

 

「戻れ、ウーラオス。よくやったのじゃ」

「サーナイト、お疲れさん」

「サナ!」

 

 労いの言葉をかけるとメガシンカを解いて俺に抱きついてくるサーナイト。

 

「ハチ、約束通りお主をジムチャレンジに推薦しよう。マスター道場の師範として胸を張って送り出せる」

「そりゃどうも」

 

 俺は爺さんの話を聞きながらそのままサーナイトの頭を撫でていると、爺さんは何故かミツバさんから新たなボールを受け取っていた。

 

「しかしじゃ。もう一バトル、ワシの余興に付き合ってくれぬか?」

「………はい?」

 

 もう一バトル………?

 どゆこと?

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。