ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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69話

 自称アイドルとの会合後、ターフタウンに向かうべく歩いていたのだが、思いの外上り坂ばかりで、日が落ちる頃には俺の身体が悲鳴を上げていた。

 こんなことならウルガモスで飛んでいけばよかったと後悔している。

 取り敢えず、『この先ガラル鉱山』と書かれた立て札の近くにある開けたところで野宿することにしたのだが、いやはや参ったね。

 

「ザグザグ」

「ザグザグ」

「ザグザグ」

「ザグザグ」

「ザグザグ」

 

 大量のジグザグマに囲まれてしまった。しかも好意的な雰囲気ではなく獲物を狙うかのように。

 どうしようか。

 これだけの数ともなると群れを成している可能性が高い。ということは進化形であるマッスグマ、あるいはさらに進化したタチフサグマがいる可能性があるということだ。

 ただ、何というか。

 あの好奇心旺盛で知られるジグザグマがある一定の距離から詰めて来ないというのが何とも違和感を覚えてしまう。

 サーナイトもガオガエンもまだ何もしていない。

 一体何が原因なのだろうか。

 

「まあ、今のところ害はないし、飯でも食うか」

 

 リュックから縦長の缶詰を取り出し、プルタブを持ち上げる。

 中にはゴローニャのように茶色に焼き上がったパンが二つ。保存用のパンであり、こういう時には結構お役立ちの代物。そしてなんと言っても世間では『ゴローニャのパン』として知られている有名な食べ物である。ガラル地方にも売っててびっくりだったが、有り難く購入した。

 

「妙な気配がするものだから来てみれば………これはどういう状況なんだ?」

「ダンデ………?」

 

 パンを一口頬張ったところでジグザグマの群れの中から野生のダンデが現れた。焚き火の灯りにでも吸い寄せられたか?

 

「おお、ハチではないか!」

 

 あちらも俺に気がついたようで戦闘態勢に入る、ということもなくこっちに近づいてくる。

 まさかジグザグマの親玉はダンデだったのか?

 

「サーナイト、サイコキネシス」

「サナ!」

 

 なんかジグザグマよりも身の危険を感じたため、サーナイトに動きを止めてもらった。

 人間相手に何の躊躇いもなくサイコキネシスを使うサーナイトちゃん、マジ卍。

 

「んほっ!?」

 

 おいやめろ。

 気持ち悪い声を出すな。

 

「………お前、何してんの?」

「いやー、ナックルジムの裏でリザードンと合流する予定だったんだが、もう三日も合流出来なくてな」

 

 ……………はっ?

 こいつは何を言ってるのだろうか。

 ナックルジムの裏で? リザードンと合流予定? それが三日前の話で今も彷徨ってると?

 ツッコミ所しかねぇ………。

 いや、そもそもここから近いのってエンジンシティだぞ?

 それが三日も彷徨ってここまで来たってか?

 バカだろ、こいつ………。

 バカを通り越して恐ろしいまである。

 

「お前マジで一人で一歩も動くなよ。ナックルシティってあれだろ? エンジンシティよりも北にある、ワイルドエリアの北の街の。何でそんなところにいた奴がエンジンシティを過ぎてガラル鉱山前まで来てるんだよ」

 

 どこをどう動いたらこんなところに辿り着くんだよ。意味分かんねぇよ。

 

「む? ここはガラル鉱山が近いのか?」

「そうらしいぞ。そこに立て札があるだろ」

 

 俺も目印にしていた立て札を指差してやると、まじまじと文字を読んでいくダンデ。焚き火の灯りで辛うじて読めるだろう。

 

「ふむ、ではこっちにいけばナックルシティだな」

「待て待て待て! お前はもう動くな!」

 

 何でそうすぐに動こうとするんだよ。サーナイトに超念力を使ってもらってて助かったわ。

 

「くっ、立ち止まったらオレの身体は硬くなってしまったのだろうか。ふんぬっ!」

 

 おいやめい。

 下手したら身体捥げるぞ。

 

「何だよ、この面倒な時に」

 

 ダンデが力技で強引にでも動こうとしていると、俺のスマホに珍しく電話が来た。

 見ると未登録の番号。

 …………どうしようか。

 番号を教えたのなんてソニアか爺さんかミツバさんくらいだしな………。あ、あとシャクヤとカブさんもか。

 けど、シャクヤやカブさんが未登録番号でかけてくることはないし、爺さんやミツバさんは以ての外だ。候補としては弱いか。

 もしかしてソニア辺りが予備のスマホからかけてきたとか?

 あるいは国際警察の方からという線も考えられなくもないが、壱号さんを通さずにというのはまずあり得ない。となるとそこも可能性は低いだろうな。

 さて、誰がかけてきたのやら。

 

「もしもし?」

『あ、ハチ?』

 

 おっと?

 ソニアよりも気の強そうなこの声ーーー。

 

「………その声はルリナか?」

『そそ。ちょっと緊急事態でさ。ソニアに番号聞いた』

「あんにゃろ………。まあいい。それで緊急事態ってのは?」

 

 何勝手に番号教えてるんだよ。

 今度会ったらお仕置きだわ。

 

『アンタ、ダンデと知り合いだったよね?』

「まあ、不可抗力ながら」

 

 特に遭遇する気はなかったのにな。

 まさかガラルに来た翌朝にはチャンピオン登場だったもんな。世界はこんなにも狂ってるのかと思えるレベルだわ。

 

『あいつ今どこにいるか知らない?』

 

 ……………………。

 

『もう三日も連絡付かないみたいでさ。こっちから連絡しても繋がらないし。まあ、いつものことだろうってことにはなってるんだけど、それにしたって三日も足取りが掴めないってのは異常なわけよ』

 

 ……………………。

 やっぱり野生のダンデはケーシィ並みに捕獲が難しいようだ。

 というか既に方々に迷惑かけてんじゃねぇか。何やってんだよ、無敵のチャンピオン。

 

「あー、その………非常に言いにくいんだが、俺の目の前にいるんだわ」

『はあ!? マジで?!』

 

 多分ダメ元でかけてきたんだろうな。

 予想外のことにルリナの声が音割れし、思わずスマホから距離を取ってしまった。

 

「マジマジ。大マジよ。なんかさっき野生のダンデが現れてさ。一応捕獲はしておいたんだが………」

 

 それでも強引に逃げ出そうとするのだから、マスターボールでもないと捕まらないんじゃないかと思えてしまう。カツラさんに頼んでダンデ用のマスターボールを開発してもらおうかな。

 

『ナイス、ハチ! 今どこにいるの!』

「エンジンシティから出てガラル鉱山前で野宿中。『この先ガラル鉱山』って立て札があるところでジグザグマの群れに取り囲まれながらキャンプしてるぞ」

 

 不思議なことにまだいるんだよな、あいつら。もしかして腹減って何か食わせてくれって魂胆なのだろうか。

 

『はっ? え? はっ? なんか今とんでもないこと聞こえてきた気がするんだけど、まあいいわ。どうせハチとダンデだし。それよりエンジンシティから向かったガラル鉱山前ね。何をどうしたらそんなところに辿り着くのか分からないけれど、そう伝えておくわ』

「なるべく早く迎えを寄越してくれると助かる。この野生のダンデ、全然言うこと聞かねぇ………」

『ガラルのジムバッジを取ってないからでしょ』

「全部取ったとしても言うこと聞きそうにないんだが?」

『そこはもうアンタの技量次第ね。言っとくけど、私らは既に匙を投げたわ』

「おい」

 

 匙を投げたって………。

 それって最早誰にも制御出来ないってことなのでは?

 そんなもんを押し付けられても困るんだけど………。

 

「俺に面倒を押し付けられてラッキーとか思ってるだろ」

『ラッキー通り越してハピナスって感じだわ』

 

 うっわ、酷ぇ………。

 この妙に言葉遊びで返してくる余裕たっぷりな感じ。

 ダンデが俺の目の前にいると分かった途端これだよ。

 

『あ、それとハチ』

「なんだよ」

『さっさとジム戦に来なさいよ。もう殆どのチャレンジャーが私のところに来ちゃったわよ』

「へいへい」

『んじゃ、その迷子よろしく』

「へーい」

 

 さて、どうしようか。

 迎えが来るまではどんな手段を使ってでも野生のダンデを押さえつけとかないとだからな。どうしてくれようか。

 

「ルリナは何だって?」

 

 いつの間にかドカっと座り込んでいるダンデが聞いてくる。

 サーナイトちゃん、解放しちゃったの?

 

「『いい歳して迷子になってんじゃねーよ、バーカ』って」

「それ、一言一句違わずハチの心の声だよな………?」

「さあ? どうだろうな」

 

 多分、俺以外もそう思ってると思うぞ。

 

「つか、三日も彷徨っといて何で誰にも連絡入れねぇんだよ」

「連絡? ああ! 忘れてたぜ!」

「おい………」

 

 そもそもこいつの場合、迷っている自覚がないため、人に頼るという発想すら思いつかないのだろう。

 何をどうしたらこんな大人が出来上がってしまうのやら………。

 

「キバナならSNSの使い方もお手のものなんだが、オレはそういうの苦手でな。登録とかも殆どやってもらった上で使ってるぜ」

「少しは自分でやるようにしろよ」

 

 俺も人のことは言えないが。

 だから気持ちは分からんでもない。

 ただ、衆目に晒される身ともなるとそうも言ってられないのも事実。

 

「今まで使ってこなかったものをいきなり使えと言われてもな。登録したところで使うことも少ないし、連絡を取ることもないんだ。便利かもしれないが、オレの生活では優先順位がかなり下になる。それで慣れろというのは無理な話さ。尤も……これを聞かれたらソニアには呆れられるだろうがな」

「そうだな、一旦引いた後にしょうがないなーとか言ってなんだかんだで色々してくれるんじゃねぇか?」

 

 ソニアのことだ。

 ダンデに頼み込まれたらしょうがないなーって言って手伝ってくれるだろうし、色々世話しそうだ。

 

「………ん? ハチ、君はもしかしてソニアと知り合いなのかい?」

「あれ? 言ってなかったっけ?」

 

 ルリナに知られていたからてっきりダンデも知ってるもんだと思ってたわ。

 そういえば確かにダンデの前ではソニアの話はしたことないかもしれない。

 

「聞いてないぞ! ソニアは! 元気なのか!?」

「元気だよ。半年くらい前までは自分の在り方に悩んでいたみたいだが、少しは吹っ切れて前を向けるようになったぞ」

「そうか、そうか…………」

 

 ダンデは噛み締めるように事実を受け止めた。

 ソニアが言っていたように本当にダンデとソニアは連絡を取り合っていないようだ。それでもお互いの情報を仕入れている辺り、間に入っているのはルリナなのだろう。他にはカブさんという線もあるが、ソニアとの関係を考えるとルリナくらいしかいないか。

 

「連絡取ってなかったんだってな」

「ああ、オレが忙しいのもあるが、何となく避けられてるような気がしてな。ルリナたちの話を聞く限り嫌われたからってわけではなさそうだったから、まだ平静を保てていたんだが………」

 

 一応避けられていたことは自覚しているらしい。ただその理由までには至っていないようだ。

 

「まあ、有名なポケモン博士の祖母がいて、無敵のチャンピオンが幼馴染って環境だったら悩みの一つや二つくらい生まれてくるだろうよ」

「ハチは何に悩んでいるのか知ってるのか?」

「そうだな。知らないわけではない。ただこればっかりは本人の口以外から言うことでもないだろ」

 

 特にソニアの悩みの種はダンデとマグノリア博士なのだ。悩みというよりかはコンプレックスとはっきり言った方がいいか。

 こればかりは本人に知られたら立ち直れないまであるからな。俺も口を閉ざすしかない。

 

「そう、だな………ソニアが何に悩んでオレから距離を取っているのかは気になるし心配ではあるが、今はそっとしておくべきなんだよな」

「ああ、お前は無敵のチャンピオンとしてあり続ければいいんだよ。待つのがお前の仕事だ」

「分かった。…………ただやっぱりハチやルリナには嫉妬してしまうな。オレもソニアに悩みを打ち明けられたかったぜ」

「そこは立ち位置の問題だな。ルリナは女で親友。俺はソニアのことを全く知らなかった。だから話してくれたってのもある。まあ、俺の時はついに爆発したって感じだったが」

 

 あれは悩みを打ち明けられたなんてものじゃない。八つ当たりもいいところである。

 

「………なあ、ハチ」

「なんだよ」

「一発殴っていいか?」

「何でだよ」

 

 こいついつから暴力系主人公になったんだよ。

 お前無駄にマッチョなの分かってるからな?

 俺との身長差もあれば、体格がまるで違う。

 そんなのに殴られてみろ。全治一ヶ月は軽くいくだろうよ。

 俺はまだ死にたくない。

 

「なんかムカついた」

「おい………」

 

 しかも逆恨みじゃねぇか。

 そんなことで怪我させられたんじゃ理不尽にも程があるぞ。

 

「そういえば、まだジム戦に出ていないそうじゃないか」

「………誰のせいだと思って」

 

 話題を変えてきたかと思えばこれか。

 

「ん? オレが何かしたのか?」

「そうだな、一ヶ月前お前とルリナが俺を巻き込まなければこの一ヶ月、調査に明け暮れることもなかっただろうよ」

「オレとルリナ………開会式の日のダイマックス同時発生の時か?」

「そう、それ」

 

 まあ、あの時関わらなかったら関わらなかったで、そう遠くない未来で後悔しているだろうがな。

 

「確かカブさんの話だとそっちには異様に強いシェルダーがダイマックスしていたらしいじゃないか」

「ああ、カブさんからは通常であればワイルドエリアのスタッフたちだけで対処しているし、完遂出来ていると聞いた。だが、あの時はそのスタッフたちがコテンパンにやられていたんだ。どうにか俺たちが到着するまで粘ってくれていたが、結構ギリギリだったようだぞ」

「それで調査をしていたと?」

「ああ。お前の方も強かったんだろ?」

「そうだな。キバ湖東とミロカロ湖南に跨って近い場所で二ヶ所同時ってのもあったし、そもそも地上でダイマックスが起こっていること事態が異常なんだ。それにオレたちの方は陸上はアーマーガアで水上がギャラドスだったんだ。ワイルドエリアのスタッフたちが手こずるのも理解出来る範疇ではあったさ」

「なるほど、そっちは二体とも進化形だったわけか」

 

 アーマーガアとギャラドス。

 そして位置的にも近いとなると、挟み撃ち状態になっていたとも考えられる。

 それはそれでキツそうだな。

 一体を制御してもう一体に技を当てるとか出来たら楽かもしれないが、そんなことが出来てしまうトレーナーはまずいないだろう。だからやっぱりダークライはチートである。

 

「ああ、だから余計にそっちのシェルダーのことは気にはなっていたんだ」

 

 ただ、ダンデたちの方はそれだけだったようだ。

 アーマーガアもギャラドスも黒いオーラが見えた奴はいなかったらしい。進化前のシェルダーはダーク化擬きになり、進化後のアーマーガアやギャラドスは普通だった。

 ここに何か法則性があるのかもしれないが、単なる偶然とも考えられる。というか分かっていること自体が少なすぎるので、未だ何とも言えないのが実情だ。

 

「それで、何か分かったのか?」

「いや、全く。この一ヶ月を棒に振ったまであるな」

「そうか………」

 

 あれだけ調べ回ってこれだからな。

 この一ヶ月を返して欲しいくらいだ。

 

「けど、こんなところにいるということはそろそろジム戦に挑むつもりなのだろう?」

「ああ、一ヶ月調査して分からないのなら、これ以上調べたところで何も掴めないだろうからな。一旦調査は保留だ」

 

 調査してたらジムチャレンジが終わってましたじゃ話にならないからな。そろそろマジで動こうと思った矢先にこれである。嫌なタイミングで野生のダンデを引き当ててしまうとか、とことん運がないな。

 

「…………ハチは何故そこまでガラルのために動いてくれるのだ?」

「はっ?」

 

 いきなりこいつは何を言い出してんだ?

 ガラルのため?

 そんなこと全く思ったこともないんだが………。

 

「元はと言えばお前が原因だし、俺だって中途半端に関わるのは御免なんだよ。関わった以上、結果が分からないとモヤモヤして夜しか眠れなくなる」

「そ、そうか………ん? しっかり寝れてるのでは?」

「要は自分のためだって話だ。ガラルのためとか一回も思ったことはない」

「それはそれで冷たくないか?」

「そうか? もし仮に敵さんがいたとして、敵さんにダンデがボコられようが何とも思わないが、カブさんがボコられたんならボコり返すくらいは俺だってするぞ?」

「………オレの時にもボコり返してくれてもいいんだぞ?」

「無敵のチャンピオンがボコられてる時点で俺の手に余る案件だと思うんだがな」

「まあ、それもそうか。いや、しかしだな………」

 

 ダンデがボコされる未来すら見えないが、仮にそんなことがあれば俺一人がダンデを下がらせて追随したところで結果は変わらないだろう。やるんだったら誰も見てないところで、あるいは俺が俺だと分からないようにした上でやらないと、後々面倒なことになる。いっそ最初からウツロイドに憑依された上で登場した方が身バレを防げるかもしれないな。

 

「グォォォン!」

「お、この声はリザードン!」

 

 どうやらようやくお迎えが来たらしい。

 バッサバッサと降下してくるリザードンの威圧にとうとうジグザグマたちが捌けていった。

 

「探したぞ、ダンデ!」

「おお、キバナではないか!」

 

 リザードンの背中から一人の男が飛び降りてくる。

 どうやらキバナがリザードンとともに迎えに来たらしい。

 

「何悠長にキャンプしてんだよ。ほら、帰るぞ。明日はキルクスジムでメロンママとマクワのバトルを観戦するんだろうが」

「ん? もう日取りは決まったのだな!」

 

 へぇ、ニュースで話題になってたマクワの親子対決が明日行われることになったんだな。

 まあ、俺はさっさとターフタウンに行くつもりだけど。

 

「ああ、ったく親子対決の日が近いぞって話をした直後に姿を消すとかマジでやめてくれよ」

「ナックルジムの裏でリザードンと合流する予定だったんだが、気がつけば合流出来ずに三日も経っていてな。いやー、参った参った」

「参ったのはこっちだっつーの。んで? そっちは?」

「ああ、ハチだぞ。偶然出会った」

「出たよ、ハチ。お前らのその妙なエンカウント率は何なの? 何かしらある時に限っているじゃねぇか」

 

 呆れた顔で俺を見てくるキバナ。

 なんか当たりが強かったのが段々と呆れに変わってきている気がするのは俺だけだろうか。

 

「俺に聞くな。毎回寄ってくるのはダンデの方からなんだ。俺は不可抗力だ」

「そうかよ」

 

 ただ、さして興味はないらしい。

 恐らく未だに俺に対して思うところがあるのだろう。

 どうでもいいけど。

 

「つか、さっきジグザグマたちに囲まれてたよな?」

「囲まれてはいたがそれ以上何もして来なかったんだよ。あの好奇心旺盛なジグザグマが」

「そりゃ、お前から妙に強い気配を感じるからじゃねぇの?」

「ああ、オレもそれに釣られて来たんだぜ!」

 

 強い気?

 強い気なんて俺出してたか?

 殺気を放つ必要もないし、そんな強い気が放たれてるのだったら俺も気付くとは思うんだけどな………。

 

「強い気ねぇ………」

 

 うーん、俺が気付かない、あるいは敵とは判断しない気…………で強い気……………。

 

「こんなん?」

「「ッ!?」」

 

 地面を軽く蹴って黒いオーラの風をぶわっと二人に浴びせると、二人の顔色が変わった。

 

「おい、ダンデ。さっさと帰るぞ。ここにいたら殺される」

「いや、流石にそれはないだろう? ない、よな………?」

 

 おい、気持ち悪いからガタイのいい男がオロオロとするな!

 あとこっちを見るな、なんか今のお前の顔気持ち悪い!

 

「お望みとあらば」

「よし、キバナ。帰ろうか」

「変わり身はっや!」

 

 気持ち悪かったのでさらに脅しをかけてみると、ダンデはさっさとリザードンの背中に飛び乗ってしまった。

 キバナが呆れてるぞ。

 

「ったく………出てこい、フライゴン」

「リザードン、すまなかったな。帰ろうか」

「グォォォン!」

「んじゃ、帰りはフライゴン、よろしく頼むぜ」

「フリィィィ!」

 

 そして二人はそのまま飛び去っていった。

 あいつ、本当何なんだろうな。どこを歩いたらナックルシティからここまで辿り着けるのやら。普通、ワイルドエリアに出た時点でここは違うってなるだろ。いくら方向音痴だからって度が過ぎるとかのレベルじゃない。方向音痴の他にも欠けているものがあるのではないだろうか。

 いい医者紹介した方がいいのかね。

 

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