ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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今年最後の投稿になります。
今年もお付き合いいただきありがとうごさいました。今年は去年に比べて話は進んだかなと思いますが、ようやくジムチャレンジが本格的に動き出したところなので、まだまだ話は続くことでしょう。
来年も引き続き完結に向けて投稿していきますので、よろしくお願いします。
皆さん、よいお年を。


78話

『それでは登場していただきましょう!』

 

 ミッションクリア後、フィールド中央への入り口で待機していると、俺の紹介がされていた。

 いやー、聞いてるだけで恥ずかしいわ。

 ウールーたちの懐き方が異常だの、進化させてしまうとか予想外だの、終いにはバイウールーに乗ってクリアは前代未聞だの、当の本人が一番よく分かってるっての。意図してやってないんだから、変に誇張してくれるなよな。

 そして付いた渾名がーーー。

 

『ミッションクラッシャー、仮面のハチ!』

 

 ーーーこれだし。

 こんなの聞かされて普通に出ていけるわけがなかろうに。

 覆面姿で本当によかったと思う。多分、あの紹介の雰囲気からして、覆面姿でなくともこんな扱いをされていただろうからな。

 素顔でやるくらいならキャラを作っておいた方がちょっとは気が楽というもの。

 

『そして我らがジムリーダー! レイジングウェイブ、ルリナ!』

 

 熱狂的な歓声を受けながらフィールドに出ると、対面の入り口からめちゃくちゃニヤついた顔のルリナが出てきた。

 

「見てたわよ、ジムミッション」

「お前のポケモンたち、癖強すぎない? 最初のルンパッパが一番まともに感じられたぞ。ギャラドスもまともっちゃまともだったが、ギャラドスらしくねぇし、しれっと色違いだし」

「そりゃ、アンタを一目見たくてジムミッションに参加するような子たちよ? 今更でしょ」

「確かに」

 

 普段いない奴らが俺見たさに参加してるくらいだもんな。

 癖のない奴がいないわけないわな。

 

「てか、ギャラドスのあの性格的に俺を見たがるようには思えないんだが?」

「そう? 最後の門番やりたいって言い出したのあの子よ? そこからルンパッパが最初の門番やるとか言い出して、他の子も自分も自分もって聞かなくなったから、あとは好きにしなさいって感じに放り出してきたんだけど」

「おおう、まさかの言い出しっぺがあのギャラドスなのかよ」

 

 自信なさげなくせにそういうところは自己主張強いのか。

 本当にバトルに対して自信が持てれば開花するんだろうな。ちゃんと自己主張自体は出来るんだし。

 

「それにルンパッパとギャラドスへのアドバイスはこっちでも勉強になったわ。観客も真剣に聞いてたくらいよ」

「そりゃどうも。つっても俺は考えられる一例を取り上げただけだぞ」

 

 俺としては何の変哲もない一般論を言っただけなんだけどな。

 観客までそんな真剣に聞いてるとか、皆ルンパッパやギャラドスのことを知らない系か?

 

「そう? みずタイプ専門にしている私でもみずのはどうの使い方は知らなかったわよ?」

「あれは…………まあ、何というか俺のポケモンに最初みずのはどうと他二つくらいしか技を使う気がなかった奴がいてな。進化したらしたでそのみずのはどうで変なもの作り出したりしてたからヤドランにもやらせてみたらってやつだ。ただ、案外理にかなってはいるんだよな」

 

 メモされて当然と思えるのはゲッコウガによるみずのはどうの使い方くらいだろう。コマチのカメックスもゼニガメの時からみずのはどうだんとか言って弾丸にしていたけど、ゲッコウガのはそれを含めて自由自在に操るんだから、上位互換とかのレベルではない。

 ほんと、あの頭だけのギャラドスの上に乗って悪ノリしてた光景が鮮明に思い出されるわ。マジであれは衝撃的だった。

 

「アンタのポケモンの方がよっぽど癖が強いじゃないの」

「あれは癖が強いなんてもんじゃない。異常だ」

 

 まあでも、そんな発想に至るくらいでないとポケモンがポケモントレーナーになることもないのだろう。

 

「あ、そうそう。先にアンタにこれを見せておくわ」

「何だよ………またコメント欄かよ」

 

 今度はなんだって?

 えっと……『スイッチの門番増えてるw』『何かルンパッパ講座始まったんだけど』『やべぇ、めちゃくちゃ勉強になる』『つか、仮面のハチの知識量よ』『ジムトレーナーかわいそう』『えぐっ……!』『トサキント笑』『サーナイト、尊い………』などなど。

 うん、多分この先も逐一コメントされてるんだろうな。そしてやっぱりあの横切ったのはトサキントだったか。

 

「盛り上がってんな」

「これでもほんの一部よ? で、バトルが終われば………ね」

「想像したくねぇな………」

「アンタは既に注目の的ってことよ。よかったじゃない。皆がその恥ずかしい姿に興奮してるわよ」

「言い方よ」

 

 それだけ聞くと俺の恥ずかしい姿にただただ興奮してるみたいじゃねぇか。

 そんな変態まみれの地方ってどうなのよ。薄い本とかでしか需要ないだろうに。

 ……………やっべ、薄い本で嫌なもん想像しちまったじゃねぇか。絶対俺とダンデとかで薄い本作るんじゃねぇぞ!

 やめやめ。

 

「それにコメント欄だけじゃないわよ。実際にあのモニターで実況付きで観ていたここの観客たちもサーナイトの可愛さに悶え苦しんでいたわ。実況なんか使い物にならなかったわね」

「あのファンサにやられたか。本人にはまったくその意図はなかったみたいだが」

「そのくせバトルは無茶苦茶だから、皆もう情緒がおかしくなってるわね。可愛い顔してやることがえげつないのよ」

 

 オタマロに口の中でバブルを弾かせたり、クラブのハサミを開かせなかったり、ヘイガニの背後にテレポートからの10まんボルトだもんな。

 まあ、そう指示した俺のやり口がえげつないのは確かだろう。

 

「ばっかばか。それは俺のやり口がえげつないだけであってサーナイトがえげつないわけじゃない。ここ大事」

「…………はぁ、トレーナーがトレーナーならポケモンもポケモンってことね」

 

 いやぁ、照れるぜ。

 褒めてないだろうけど。

 

「で、あそこにいた奴らはバトルには出てこないってことでいいんだろ?」

「ええ、私のとっておきでアンタのその自信も戦略も全部押し流してあげるわ。覚悟をしておきなさい!」

 

 不敵な笑みを浮かべるルリナはマジで悪人面していた。

 俺、今から何されるのだろうか。

 そんなすごいことされるのか? いや、すんごいことされるのか?

 俺はドMクルセイダーじゃないから喜ぶような性癖を持ち合わせてないんだよなー。

 そして俺たちはフィールドの両端へと移動した。

 

『それではルールを確認しておきましょう! 使用ポケモンは三体。どちらかのポケモンが全て戦闘不能になった時点でバトル終了となります。なお、公式ルールに則り、ダイマックス技等を除き、技の使用は原則四種類までとなっているのでご注意ください』

 

 ターフジムは二体だったが、ここは三体か。

 やはり順を追うごとに使用ポケモンが増えてくるのだろう。

 

『それではバトル始め!』

 

 審判の合図が送られた。

 

「いくわよ、グソクムシャ!」

「ヤドラン、よろしく」

 

 ルリナの最初のポケモンはグソクムシャか。グズマが連れていたむし・みずタイプのポケモンだな。

 

『両者一体目はグソクムシャとヤドランだぁぁぁッ!!』

「であいがしら!」

「シェルアームズ」

 

 同時に指示を出したものの。

 

「ヤン!?」

 

 速いな。

 初手だけ一瞬で詰め寄れる独特な技、であいがしらには太刀打ちするのは無理だったか。クイックドロウも発動しなかった。

 だが、弾き飛ばされただけで、どくタイプのおかげで大ダメージとはなっていない。

 

「グソクムシャ、アクアブレイク!」

 

 勢いを殺さないよう攻撃の手を緩めることなく、グソクムシャが斬りかかってきた。

 

「シェルブレードで受け止めろ」

 

 右腕にぶら下げてあるかいがらのすずを使い、グソクムシャの水の刃を水の刃で受け止める。

 

『まずはアクアブレイクとシェルブレードの交錯!! 体格がある分、グソクムシャの方が有利でしょうか!』

 

 アクアブレイクとシェルブレードってこうして見るとほぼ一緒だよな。追加効果も両方とも相手の防御力をダウンさせるものだし。威力が低い分、シェルブレードの方が不利に感じるが、それもヤドランが使うのならば話は別だ。

 

「シェルアームズ」

 

 右手でもシェルブレードを使えるようにしておけば、こんな風に受け止めた矢先に懐へ一発入れることも可能だ。

 

「ムシャア!?」

 

 左手の巻貝から紫色の毒を直接ぶつけ、グソクムシャを吹き飛ばした。

 

『ど、どういうことだぁぁぁっ!? 一つしかないシェルを使ってシェルブレードで受け止めていたはずのヤドランが、そのままシェルアームズでグソクムシャを吹き飛ばしたぞぉぉぉっ!!』

「なっ!? ど、どうしてシェルブレードで受け止めていたのにシェルアームズが使えるのよ?!」

 

 うわ、実況と同じこと言ってるよ。

 

「どうしてだろうな。ヤドラン、シェルブレードでヴォーパル・ストライク」

 

 ルリナからはどっちの手でシェルブレードを使っていたのか見えなかったみたいだな。そして実況からも。

 俺の後ろとか二体が交錯したのを真横から見ていた観客は気付いてるかもしれないが、敢えて俺が種明かしをする必要もないだろう。

 

「アクアブレイクで受け止めて!」

 

 ヤドランが態勢を立て直そうとしているグソクムシャに突っ込んでいき、水の刃を突きつけるとアクアブレイクで上に弾かれてしまう。

 

「そのままバーチカル・スクエア」

 

 だけど、二刀流ならば関係ない。

 

「二刀流!?」

 

 右手で右上から水の刃を斬り下ろし、続けて左下から斬り上げる。そして右回りに一回転しながら今度は左上から斬り下ろすと、腕の甲冑のような殻で受け止められ距離を取られた。最後の一撃を入れるために踏み込んでいくと、グソクムシャが水の刃を掬い上げてくるものの、そのまま右上から左下に斬り下ろした。

 縦斬り四連撃。

 恐らくどこかのタイミングで追加効果が発動していたのだろう。アクアブレイクが真っ二つになり、グソクムシャが跪いている。

 

『なんとヤドラン!! シェルブレードを二刀流で使っています! しかも独特の剣技で! 恐らく先程のシェルアームズもここに秘密があるのでしょう!!』

「ゼロ距離でシェルアームズ」

 

 間髪入れずに左腕から毒を飛ばしてグソクムシャを弾き飛ばすと、グソクムシャはそのままルリナの持つボールへと戻って行った。

 ん? 戻って行った?

 

「ドヒデ」

 

 代わりに水色と紫色が特徴的なドヒドイデが飛び出してきた。

 

『グソクムシャ、特性ききかいひが発動し、ドヒドイデと交代だぁぁぁ!! つまりグソクムシャの体力は半分にまで削られたということになります!』

「ああ、グソクムシャの特性ってききかいひとか言ったっけな」

 

 そういえば、グソクムシャの特性にそんなのがあったような気がする。

 

「ドヒドイデ、まずはどくびしよ!」

 

 ドヒドイデはオクタンが逆様になり、触手が地面に向けて胴体を覆うようにして垂れているような姿なのだが、オクタンとかとは違ってあれは触手ではないらしい。確か前にムーンから聞いたような気がする。あいつも進化前のヒドイデを連れていたからな。

 その触手擬きから毒の棘が無数に飛ばされ、地面に埋め込まれていく。

 ちょっと厄介だな。これで交代したら次のポケモンは毒状態にされるのが確定だ。たった一体を除いては、だが。

 けど、予定にはなかったんだよな。今日はヤドランとサーナイト、そして最後にガオガエンをと思っていたんだが。

 でもまあ、背に腹は変えられないか。

 ごめんな、サーナイト。

 取り敢えずはあの触手擬きを何とかしないとな。あの壁を崩さない限りは硬い防御でドヒドイデにやりたい放題されかねない。

 

「ヤドラン、あいつの急所はあの触手んてなのの中の本体だ。まずはあの壁を捲るぞ。シェルブレードでホリゾンタル・スクエア」

「ヤン!」

 

 ドヒドイデに突っ込んでいき、右の刃で右から左に水平斬り。戻すように左から右へ水平斬り。そのまま右回りに一回転して再度左から右へ水平に斬りつけ、最後は右下から掬い上げるように左上へと斬り上げてみた。

 ………うん、ぺろんと触手擬ぎが一枚捲れただけか。

 それもすぐ元の位置に戻ってしまうし、このまま同じことをしていても意味はなさそうだ。

 それならーーー。

 

「ワイドフォース」

 

 ヤドランがドヒドイデを左の水の刃で突くと、刃の先からカンッ! という甲高い音の波が広がり、一瞬にして衝撃波が生まれた。するとドヒドイデの触手擬きをミチミチと地面から引き剥がしていく。

 一枚、また一枚と捲れ、ドヒドイデの本体が見えた瞬間ーーー。

 

「今よ! ねっとう!」

 

 ーーーヤドランの顔面に向けて熱湯を噴射されてしまった。

 

「ヤン……ッ!」

 

 まともに受けてしまったために、ヤドランは顔に火傷を負ってしまっている。

 

「ふふっ、耐えた甲斐があったわ。ドヒドイデ、たたりめ!」

 

 不敵な笑みをよく似合う。

 なるほど、狙いはこれか。

 防御力の高いポケモンならでは戦い方だな。

 

『我らがジムリーダー! ドヒドイデの防御力を活かし、攻撃を耐え続けての反撃!! ヤドランは火傷状態になり、かつ効果抜群の技を受けた上にその威力はさらに倍!! 片膝を付いて立っているので精一杯というのが伝わってきます!!』

「毒が効かない相手にどう戦うのかと思えば………」

 

 霊気を浴びたヤドランは片膝を付いて、呼吸が荒くなっている。

 

「これくらい出来なきゃ、カブさんにもネズにも止められちゃうもの」

 

 そりゃそうだ。

 カブさんなんかは公式戦でこそ使えないが、メガシンカを習得しているトレーナーでもある。本人もバシャーモが一番強いと豪語していたくらいだ。そんなベテラン相手にこれくらい出来なければ、ダンデの相手なぞ夢のまた夢だろう。

 ちょっと舐めてたわ。

 というか最早ジム戦の域じゃない。絶対今までの挑戦者相手にはこんなことしていないだろ。俺だけ理不尽過ぎないか?

 

「戻れ、ヤドラン」

 

 まあ、それくらい危険視されているということでもある。

 ルリナなんかはソニアから俺のあることないことを吹き込まれているだろうから、余計に危険視されているはずだ。

 

「あら、交代?」

 

 だが、俺も黙ってやられるわけにはいかない。

 一応不本意ながらダンデと約束してしまっているしな。どうにかしてあいつとのバトルに在り付けないと、あのバトルジャンキーが後々面倒なこと言い出すだろう。

 それを避けるためにも勝利は至上命題。

 

「ああ、正面から崩すのは無理そうだからな。正直なところ、こいつを今回出すつもりはなかったんだよ。相性的にもカブさんのところかなって考えてたんだけど、勝たなきゃ意味ないしな」

 

 ただ、ぼんやりと決めていた予定は狂ってしまった。

 本来なら、今日はサーナイトとガオガエンとヤドランでいこうと思っていたのだが、どくびしを撒かれている以上、こいつを出すしかないのだ。

 

「アンタの予定を狂わせられたのなら、嬉しい限りだわ!」

「ほんといい性格してるよなぁ………。ドラミドロ、まずはどくびしの解除だ」

 

 ドラミドロ。

 どく・ドラゴンタイプのこいつなら、フィールドに撒かれたどくびしを吸収して解除出来るのだ。

 悪いな、サーナイト。今回は出番なくて。

 

『ハチ選手、ヤドランを交代させ、ドラミドロを出してきました! そしてどくタイプであることを使い、ドヒドイデがばら撒いたどくびしを全て回収していっています!!』

「なるほど、そのために予定変更したってわけね」

 

 ドラミドロがどくびしを吸い込んでいくのを見て、ルリナは俺の意図を理解したようだ。

 理解したようだが、それだけなら50点である。

 ただそれだけのためにドラミドロを出したわけじゃない。

 

「ドラミドロ、えんまくからのとけるだ」

 

 まずは黒煙でフィールドを覆い、ルリナからも観客からもドラミドロとドヒドイデの姿を隠した。

 そしてその中をドラミドロは液体上になり、ドヒドイデの方へと向かっていく。

 

『こ、黒煙で何も見えなくなりました! ドラミドロは何をするつもりなのでしょうか!!』

「こんな目眩しで私らが動揺するとでも? ドヒドイデ、回転しながらねっとうよ! 勢いで煙を晴らしなさい!」

 

 そのドヒドイデは全ての触手擬きを伸ばして先の方から熱湯を噴出させ、何度もジャンプしては回転を繰り返して黒煙を晴らしていった。

 

「いない?!」

 

 いやいやいや。

 ちゃんといたぞ。

 黒煙が晴れていく中、俺はちゃんとドラミドロが見えていたからな。

 

「ドラミドロ、10まんボルト」

「ラミィィィイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

「ヒデェェェェエエエエエエエエエエエエッッッ!?!」

 

 俺が指示を出すといきなりドヒドイデが電撃を浴びせられた。

 

『い、いいい一体どこから電撃が飛んできているのでしょうか! 実況席から見る限りではドラミドロの姿はありません!』

「もう一丁」

「ドヒドイデ、トーチカ!」

 

 再度同じ指示を出すと今度はドヒドイデが紫色の防壁を張り、防御姿勢になった。

 

「ラミィィィイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

「ヒデェェェェエエエエエエエエエエエエッッ!?!」

 

 だがしかし。

 効果はなかった。

 うん、だってねぇ?

 その防壁、外からの攻撃にだけ耐えられるわけじゃん?

 

「痺れたか。構わずもっとだ」

「守りが効いてない?! ………まさかッ!? ドヒドイデ、真下よ!」

「遅い」

「ラミィィィイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

「ヒデェェェェエエエエエエエエエエエエッッ!?!」

 

 ルリナはようやく気付いたみたいだが、もう遅い。

 再三に渡り電撃を至近距離から浴びせられたドヒドイデはダメージと痺れで動けないでいる。

 

「トドメだ、りゅうのはどうで撃ち上げろ」

 

 ズドンッ! と打ち上げられたドヒドイデはそのままルリナ方へと飛んでいき、ドサッと地面に落ちてピクリとも動かなくなった。

 

『いたぁぁぁああああああああああああっ!?! まさかまさかのドヒドイデがいた真下に隠れていました!!』

「ドヒドイデ、戦闘不能!」

 

 ドヒドイデの弱点は触手擬きの中にある本体。

 だからドラミドロは液体上になって触手擬きの隙間からドヒドイデの真下に移動したのである。そこから至近距離で電撃を浴びれば急所には入るわ、見えないから反撃も出来ないわでこの有様だ。

 いやー、見えないのは本当に辛い。

 

「ドヒドイデ、戻りなさい。ごめんなさい、気付くのが遅かったわ。はぁ、………やられたわ。まさか煙幕は私への攻撃でもあったのね。私から見えなくして煙の中を身体を溶かしてドヒドイデの脚の隙間から中に侵入。どこかに消えたように見せかけてずっと真下から攻撃し続けていたと」

「言っただろ? 正面から崩すのは無理そうだって」

「本当に憎たらしいバトルをしてくれるわね。内側に潜られてたんじゃ、トーチカも意味をなさないわけだわ」

 

 どんな防壁も中からの攻撃は防げないからな。

 そして何よりとけるという技がいけない。固体物質でもあるポケモンを液体に変化させる技なんて、こうやって隙間から入るために使って下さいって言っているようなものである。

 そう、悪いのはとけるという技が悪いのであって、俺は決して悪くないのだ。だから憎たらしいとか言われても困るのだよ。

 

「もう一度よ、グソクムシャ!」

『再びグソクムシャの登場です! ドラミドロを倒せるか!?』

 

 再度グソクムシャの登板か。

 となるとミッションに参加していなくてバトルにも出ていないポケモンとなると………………カジリガメくらいしか知らないな。そもそもルリナのポケモンを知らないわけだし、カジリガメが出てくる可能性がまだあるということだけは頭に入れておこう。

 

「であいがしら!」

 

 やはり初手はであいがしらだった。

 こればかりはドラミドロも避けられないし、避けられるとしたらサーナイトがテレポートで間に合うかどうかだろう。

 

「そのままシャドークローで地面に突き刺して!」

 

 勢いを止めずにグソクムシャは右の爪を地面に突き刺した。

 すると突き飛ばされたドラミドロの影から禍々しい爪が伸びてきて、ドラミドロを上へと突き上げてしまった。

 恐らく攻撃の手を緩めると主導権を奪われるとヤドランで学んだのだろう。

 

「今よ! ドリルライナー!」

 

 空中では身動きが取れないと考えての技選びなんだろうな。というかドリルライナーを当てるためにこの展開を作り上げたと言った方が正しいか。

 だがな。ドラミドロはドラゴンタイプを持ち合わせている上に、さっき見せたばかりのチート技を持っているのだ。

 

「とける」

 

 両腕を前に突き出して回転しながら上昇してきたグソクムシャが突き刺さる前に、身体を液体状に変化させて真っ二つにされた。分離した液体はグソクムシャの両脇をくぐり抜け、地面に向かう途中で再び合体し、元の姿に戻っていく。

 

「なっ!? そんなの有り?!」

『ド、ドラミドロ………とけるを利用し、液体状になることでグソクムシャの攻撃をすり抜けました! 何という発想でしょうかっ!!』

 

 有りなんだなー、これが。

 だってとけるだもの。

 

「10まんボルト」

 

 そして下から電撃を飛ばす。

 

「アクアブレイクでぶった斬りなさい!」

 

 くるりと空中で反転したグソクムシャが水の刃を携えて急下降してきた。

 何という力技。

 もしかするとあの水の刃は純水で出来ているのかもしれない。

 ………………ゲッコウガたちじゃあるまいし、グソクムシャがそんな器用なこと出来るかね。

 

「ドリルライナー!」

 

 水の刃で電撃を相殺すると両腕を前に突き出して、回転しながら落下してきた。

 流石にこうなるとドラミドロではしんどいか。

 今のパーティーではドラミドロが一番若手だからな。力も他の奴らに比べたら劣るし、経験も浅い。

 重力を味方に付けたグソクムシャにはここでとけるで躱したところで追撃されて徐々に体力を奪われかねない。何なら先にこっちがやられる可能性だってある。

 恐らくグソクムシャにも意地があるだろうから、何が何でもドラミドロを倒そうとしてくるはずだ。そうなったポケモンは変に覚醒したような状態になるから手に負えなくなる。

 

「10まんボルト」

 

 相討ち覚悟が関の山だな。

 ドラミドロにグソクムシャが突き刺さる瞬間、電撃がグソクムシャを呑み込んだ。

 そしてズドン! と両者が地面に叩きつけられて砂埃が舞う。

 

「グソクムシャ、ドラミドロ、戦闘不能!」

『引き分けだぁぁぁあああああああああっ!! 体力が残り少ないグソクムシャの猛攻が効いたとみるべきか、ドラミドロのサプライズが効いたとみるべきかは分かりませんが、しかし高度な攻防だったのは確かです!! バッジを掛けたバトルとは思えない、それくらいの迫力がありました!!』

 

 しばらくして砂埃が晴れるとグソクムシャもドラミドロも地面に倒れていて気絶していた。

 よかった、相討ちには持っていけたみたいだな。

 とけるを使ったことで防御力も上がり、ほんの少しだけでも攻撃を耐えられたのが功を奏したのだろう。

 うん、やっぱりとけるはチート技だわ。

 

『これで我らがジムリーダー、残りのポケモンは一体になってしまいました! やはり最後はあのポケモンでしょうか! また、ハチ選手のポケモンは手負いのヤドランともう一体。ガオガエンがでてくるのかサーナイトが出てくるのか。或いは他の初お披露目のポケモンが出てくるのか!! 期待が高まる瞬間ですっ!』

「ドラミドロ、お疲れさん。お前のおかげで後が楽になったぞ」

「戻って、グソクムシャ。よくドラミドロを倒したわ。ありがとう」

 

 さて、ルリナの最後のポケモンは何が出てくるのやら。

 カブさんならマルヤクデだろうなってのは想像できるのだが、付き合いはあってもルリナとはバトルしたことがないからな。

 ルンパッパ、横切ったトサキント、あの青いやべぇ奴とあいつに呑まれていたカマスジョー、それにぬぼーっと立ってるだけのヌオーと赤いギャラドス。そこからグソクムシャとドヒドイデときて…………うん、さっぱり分からん。

 そもそもカブさん以外、手持ちポケモンをまるで知らないからな。カブさんですら、バシャーモが出せないってのとマルヤクデが切り札だってことを本人から聞いてるくらいだし。

 これはもう知らないことを楽しむしかないだろう。

 

「………いくわよ、カジリガメ!」

「ガオガエン、派手にいくぞ」

「ガゥ!」

 

 一応仮面のハチを象徴するポケモンだからな。

 相性が悪かろうがガオガエンは出しておかないと、ネットでバカにされかねない。

 いやまあ、バカにされるのはネットを見ないしアカウントもないからどうでもいいのだが、後々引っかかってくれる人が少なくなるのは面白くないからな。

 

『両者、ようやく切り札を出してきました! 相性的にはハチ選手のガオガエンが不利ではありますが、どう覆すのか!』

 

 あーだこーだ考えても結局は想定内のポケモンであった。

 あったのだが………ガオガエンが不利すぎやしませんかね。

 みず・いわタイプとかくさタイプの技が欲しいところなのに、ガオガエンはくさタイプの技を覚えてないんだよ。何ならまだでんきタイプやじめんタイプの技も覚えてないから、抜群を狙えるのはかくとうタイプの技だけである。

 さあ、どうしようか。

 

「まずは走りながらおにびだ」

 

 取り敢えず、カジリガメには火傷状態になってもらおう。

 ダダッと走り出したガオガエンの周りに火の玉が十個程作られていく。

 

「アクアブレイクで叩き落としなさい!」

 

 するとカジリガメの口から弓のように水の刃が伸び、首を振ってガオガエンが飛ばした火の玉をぶった斬っていった。

 

「ブレイズキック」

 

 だが、こちらもそれで止まるつもりはなく、ガオガエンは地面を蹴り上げてジャンプした。

 

「てっぺき!」

 

 それと同時にカジリガメの顔の前に鉄の壁が作られていく。

 

「と見せかけてのおにびだ」

 

 両脚を折り畳んだ状態で火の玉を飛ばし、鉄壁を両側から回り込む形でカジリガメにぶつけた。

 

「ガメェ……!?」

 

 どうやら上手く入ったみたいだな。

 

「もろはのずつき!」

 

 だが、それも束の間。

 いきなり鉄壁をぶち破りながらカジリガメの顔が飛んできた。

 着地のタイミングを狙われたか。

 

「ガゥ!?」

「カジリガメの首を掴め」

 

 右半身に頭突きを食らうも何とか身体を捻り、左腕でカジリガメの首を拘束。

 いやマジか。

 カジリガメの首ってあんなに伸びるのかよ。

 ゲッコウガの水で作った顔だけのギャラドスみたいで一瞬本当に首が捥げたのかと焦ったじゃねぇか。

 

『さ、最初から読み合い、フェイントが交錯するバトルで実況席でもバトル展開を理解していくのがやっとの激しい攻防となっております!』

 

 何とも雑な実況だな。

 頑張って追いついてこいよ。

 

「………右腕をやられたか」

 

 ガオガエンはキツく絞めることでカジリガメが首を戻せないようにしているが、その右半身はダランと下がっている。

 どうやら今の一撃で右腕をやられたらしい。

 いや、あんな超高火力の捨て身の、しかも効果抜群の技を半身とはいえまともに受けてまだ立っていられるだけ儲けものと思った方がいいだろう。

 

「ガオガエン、少しでもいい。きゅうけつで体力を吸って回復だ」

「ガーゥ!」

 

 カブッとカジリガメの首に噛み付き、体力を吸い上げていく。

 これで右腕が少しでも回復してくれるといいのだが………。

 

「カジリガメ、首が戻せないなら身体で向かうまでよ! 10まんばりき!」

 

 はっ?

 おいマジか。

 

「ガオガエン、一旦離せっ」

『カジリガメ、首を戻せないからと身体から突っ込んでいくぅぅぅ!!』

 

 まさか首を戻せないからって、身体をこっちに持ってくるようにするとかめちゃくちゃだろ。

 危険なので一旦カジリガメから離すと、頭の重みでバランスが崩れたカジリガメは身体が宙に投げ出され、首を戻しながら一回転していった。

 

「………こりゃいい」

『な、なんと?! 頭の重みでカジリガメの身体が宙に投げ出され、甲羅から地面に着地してしまったぁぁぁ!! これはカジリガメ、大ピンチです!!』

 

 あーあ、可哀想に。

 甲羅から地面に落ちて、そのまま甲羅が食い込んでしまっているじゃないか。

 どうぞお腹を攻撃して下さいと言っているようにしか見えない。

 まあ、当然やるけどね。

 

「ガオガエン、カジリガメの腹に連続でインファイト」

「本当にポケモンの特徴を突いてくるわね…………」

 

 好機とばかりに突っ込んでいき、カジリガメの腹に飛び乗ると連続で拳を打ち付けていく。

 

「カジリガメ!」

 

 すると急にカジリガメが消えてボールに戻されてしまった。

 あーあ、いいところだったのに。

 ダイマックスを使える奴はずるいよなー。最後のポケモンであっても途中でボールに戻すという手が使えるんだから。

 

「スタジアムを海に変えるわよ! カジリガメ、キョダイマックス!」

『ここでカジリガメのキョダイマックス!! 我らジムリーダーが本気でハチ選手を倒しにいきます!』

 

 巨大化したボールから出てきたカジリガメは徐々に巨大化していき、二足歩行になった。

 …………はっ?

 どういうことだってばよ。

 二足歩行の甲羅持ちとか最早カメックスじゃねぇか。しかもみずタイプだし。

 

「ダイロック!」

『まずはダイロック! この巨大な岩壁に押し潰されては一溜りもありません!! ハチ選手、どうする?!』

 

 超どうでもいいことに驚いていると、早速巨大な岩の壁が作り出され、勢いよく倒された。

 全く、あれだけデカいと逃げ場がないじゃねぇか。

 

「インファイト」

 

 巨大な岩の壁に対しては出来ることが限られてくるので、押し潰される前に脱出経路を確保することにした。

 無理矢理にでも右腕も動かし、拳で正面部分だけを集中的に衝撃を与えていく。

 徐々にヒビが入り、最後に蹴りを入れると岩壁に穴が空いて、そこから脱出することができた。

 

『な、なんと?! 岩壁に穴を開けてそこから脱出しました!! この発想はなかった! いや、あったとしてもなかなか出来ることではありません!! 本来ならば地面に潜ったり両脇から急いで逃げるというのが定石なところに、真正面から壊しにいったのは過去に何人いたことでしょうかっ!?』

 

 そして倒れ落ちた岩壁の衝撃で砂嵐が吹き荒れ出した。

 

「ガゥ!?」

 

 全く、見えないってのは本当に辛い。

 意趣返しのつもりなのだろうが、これはこれで利用する価値はある。

 

「ガオガエン、一発デカいのいくぞ!」

 

 見えないことを逆手にZ技を使うことにした。

 Zリングに力を込めるとガオガエンとのパスが繋がる。

 そしてお互いにカクトウZのポーズを取り、パワーを充填していった。

 

「キョダイガンジン!」

「全力無双撃烈拳」

 

 頭上から巨大な水の塊が発射されようというタイミングで、巨大なカジリガメの脚に全力で拳のガトリングをお見舞いすると、ガクッとバランスが崩れ、発射された水の塊はガオガエンから逸れて地面を穿った。ただし、その衝撃はガオガエンにも伝わっているらしく、一瞬動きが鈍ったように見えた。

 だが、まだまだと拳を何度も何度も打ち付けて最後の一発を大きく入れると、その巨体は後ろにもバランスを崩して倒れ始めた。

 

「なっ………!? 強制、解除?!」

 

 それと同時にカジリガメの大きさが戻り始めた。

 ルリナが言うようにまだ戻るタイミングではなかったはず。

 ………なるほど、Z技にはダイマックスを強制解除するだけの瞬間的なパワーがあるのかもしれないな。

 

「これは………」

「よかった。そこまでは解除されなかったみたいね」

 

 だが、気づくとフィールド全体がトゲトゲ地獄になっていた。恐らくキョダイガンジンとやらの効果なのだろう。ガオガエンに直撃しなかったとはいえ、地面を穿つ程の威力である。これくらいはあってもおかしくはない。

 ふぅ、身動き一つ取ればすぐにガオガエンの身体に突き刺さりそうだな。

 

「ガゥ、ガォォォォンンンッ!!」

 

 おお、きたか。

 どうやらもうかが発動したようだ。

 それにしてもこのもうか、リザードン並みの猛々しさがある。

 

「さあ、そのトゲトゲ地獄に呑まれてなさい! カジリガメ、アクアブレイクを投げつけるのよ!」

 

 身動きが取れないとみて、正面から水の刃を投げつけてきた。

 躱そうとすれば岩のトゲトゲ地獄か。

 まあ、猛々しいもうかが発動した今、避ける必要はなさそうではあるが。

 

「ガオガエン、もうかの炎を爆発させろ」

「え、はぁ!? 岩が溶けてる?! しかもアクアブレイクも蒸発した!?」

 

 さらに活性化させたもうかの炎により、周りのトゲトゲも徐々に溶け始め、正面から飛んできた水の刃も蒸発していく。

 

「その炎を全部脚に回せ」

 

 周りにトゲがなくなったのを確認してから、もうかの炎を脚に纏わせるように指示。

 脚に回った炎はやがて地面に広がり、ガオガエンの周りを火の海へと変えていく。

 もちろん岩で出来たトゲトゲも溶解していっている。

 

「な、に………これ………!」

 

 ルリナも実況も観客も時が止まったかのように静まり返っていた。

 

「トドメだ、ブレイズキック」

 

 そして、その炎全てを右脚に再度吸収していき、ダダッと駆け出した。

 

「カ、カジリガメ、落下地点を予測して躱しなさい!」

「ガメェ!?」

 

 ルリナはカジリガメに躱すように指示を出すも、ここにきて火傷の痛みが走ったようで思ったように身体を動かせないでいた。

 その間にもガオガエンは地面を蹴り上げ、太陽をバックに脚の炎をさらに活性化させていく。

 

「ここで火傷の痛み!? くっ………カジリガメ、もろはのずつき!」

 

 間に合わないと踏んだルリナはもろはのずつきを指示し、カジリガメはこれに意地で応え、空中で両脚を折り畳んでいるガオガエンに向けて首が伸びてくる。

 

「ウーッ………ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 重力を味方に付けたガオガエンはカジリガメの頭を踏みつけ、首を押し戻すように落下していく。

 それに抗うようにカジリガメも踏ん張るものの、ジリジリとその身体は後退させられていた。

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」

 

 まるで隕石みたいだな。

 ブレイズキックがライダーキック風になり、さらに進化してその威力を増している。というかもうかのおかげだろうな。いわば、ライダーキックもうかバージョンって感じだな。

 

「カジリガメ!?」

 

 ズドンッ!! と鈍い音が響いたかと思うとカジリガメから爆発が起き、二体とも黒煙で見えなくなってしまった。

 

「ガゥ……ガゥ………ガゥ………ガゥ………」

 

 黒煙が晴れるとガオガエンが荒い呼吸で地面に片膝をついていた。右腕はダラリと垂れ下がり、身体からは白い煙が立ち昇っている。

 その横にはカジリガメが地面にめり込んでいた。

 ………え? めり込んでんの?

 

「カジリガメ、戦闘不能! よって勝者、ハチ選手!」

『き、決まったぁぁぁあああああああああっ!!! ガオガエンの渾身のブレイズキックにより、キョダイガンジンで出来上がった岩の棘も溶かされ、さらにはもろはのずつきを押し返し、そのままカジリガメを地面にめり込ませてしまいましたっ!! 何という炎!! 何という威力!! 相性など関係ないと言わんばかりの重たい一撃!! こんなバトルをジム戦で観られようとはっ!! これはチャンピオンカップがますます楽しみになってきます!! ジム戦とは思えない大迫力なバトルをした二人に惜しみない拍手を!!』

「お疲れさん。お前の新たな武器が見つかったな。今はゆっくり休め」

 

 こっちに戻ってくる余力も無さそうなので、そのままガオガエンをボールに戻すことにした。

 

「お疲れ様。まさかあんな隠し玉があったなんて私も思わなかったわ。今はゆっくり休みなさい」

 

 カジリガメも起き上がる気配がないため、ルリナもそのままボールに戻している。

 ルリナが入ってきた方の中央入り口からトレーを持ったルリナとお揃いのユニフォームを着た女性が出てきたので、俺もルリナもフィールド中央に向かった。

 

「………やられたわ。というか最後のアレ、何よ」

「あー………特性のもうかが発動した結果というか、俺もあそこまでパワーアップしていたのは知らなかったというか」

「つまり、ぶっつけ本番でああなったと?」

「まあ、そうだな。思い返せば、ガオガエンのもうかが発動したのって数えるくらいだったような気がするし。おかげで俺もいいもの見れたわ」

「はぁ…………、全くアンタといいダンデといい、なんかどっかぶっ飛んでんのよね」

「あいつと同じにするのはやめてくれ。俺はあんな方向音痴じゃない」

「アレもアレでぶっ飛んでるけども! まあいいわ。私に勝ったのだし、バッジをあげる」

 

 その言葉に従うようにジムトレーナーがトレーを差し出してきた。

 バッジを受け取るとなんかキラキラした目で見られていたのは見なかったことにしておこう。

 

「次、カブさんに負けるんじゃないわよ!」

「へいへい、分かってるよ。誠に遺憾ながらダンデとの約束もあるしな。俺は返事した記憶はないんだが、いつの間にか約束事になっていたけど」

「どうせバトルのことでしょ」

「わー、さっすがルリナさん。よくわかってるー」

「あのバトルバカはそれしかないでしょうが」

「違いない」

 

 なんかこうスタジアムでバトルしていると、ジム戦って気分じゃなくなるよな。しかも今回はルリナも本気できていたようだし、最早ポケモンリーグ大会並みの感覚である。

 どっと疲れたわ。

 今日はもうガオガエンたちをポケモンセンターに預けたら、飯食ってさっさと寝よう。

 

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