ポケモントレーナー ハチマン 完   作:八橋夏目

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9話

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 いつか来るとは思っていたが、本当に来やがるとは………。

 

「おいおい、またかよ!」

「何故こうもギラティナに狙われるのですかね」

 

 おっさんたちは辟易しているようだが、俺的には予定していなかったシナリオではない。

 こういう事もあるだろうと腹を括っていた。

 

『「サーナイト、ヤッコサンハオレタチニヨウガアルラシイ」』

 

 初のメガシンカを経て、何度も何度もメガシンカした姿へと変わってはバトルをして来たが、今のところ暴走する兆しはない。ただ、一つ分かったのが、メガシンカ時に毎度ミストフィールドが展開されるらしい。どうやら力の解放の副産物で出来てしまうようだ。カルネさんのサーナイトにはそんな現象がなかったため、うちのサーナイトのみの現象と考えていいだろう。

 あ、ちなみにミストフィールド自体もメガシンカしなくとも習得していた。本当に謎の現象だわ。特性も従来のフェアリースキンのようで新しく習得していたスピードスターが爆発するくらいだし、関係がなさそうである。メガシンカして技を新しく習得ってところも謎ではあるがな。

 

「サナ………?」

 

 また行っちゃうのという目をして来るので、つい俺も笑みが溢れてしまう。

 だが大丈夫だ。なんせ今回のメインはサーナイトだからな。

 

『「トイウワケデ。オマエモコイ、サーナイト」』

「サ、サナァ!」

 

 俺が手を差し伸べると、パァァッと明るくなっていくサーナイト。可愛いすぎて俺氏、死にそうでござる。

 

「ライ」

『「ナンダヨ、ダークライ」』

 

 鼻血が出そうな気分に浸っているとダークライがサーナイトとの間に割り込んで来た。

 なんだよ、今いいところなのに。

 

「ライ」

『「ア? ボール?」』

 

 そして何故か腰に付けた唯一のサーナイトのボールを指差して来る始末。一体何だって言うんだよ。

 

「ライ」

「なあ、ダークライは元々テメェのポケモンだったんだよな?」

 

 すると助け舟なのかマツブサが口を挟んで来た。

 

『「ア、アア」』

「だったら、今でもテメェのポケモンだってことだろ」

 

 ん?

 つまりどういうことだ?

 ダークライは元は俺のポケモン………? まあ、一応ボールに入れたな。すぐに犠牲になっちまったが。

 そして、サーナイトのボールを指差して来たことと何の関係が…………?

 今更、俺について来ようとは思わないだろうし………はっ? まさかそういうことなのか?

 

『「オマエ、イイノカ?」』

「ライ」

 

 ダークライは俺の頭の中を読んだように首を縦に振った。

 いやいやいや、そもそもお前ら生身の身体なのか?

 あの時、俺に力を与えてお前は消えたんだろ? クレセリアも似たようなことをユキノにしたみたいだし………。

 あーもう! 考えてもこいつらのことだけはさっぱり分からん!

 

『「ウツロイド、ハイパーボールヲニコダシテクレ」』

「しゅるるっぷ」

 

 そして何故此奴はご機嫌なのだ?

 もうタイミングから何やらまで色々と訳が分からん。好きにしてくれ!

 

「しゅるるるるー………」

 

 ウツロイドは器用に身体の内部を動かしてリュックを漁り、ハイパーボールを二個取り出した。

 いや、器用すぎでしょ! 触手も使わずに内部を動かすとか、俺が内臓を動かすようなもんだぞ。怖い怖い、超怖い。あと怖い。

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 そうこうしている間に、ギラティナの叫び声は大きくなって来ている。

 

「ライ」

「クレヒ」

 

 ボールを受け取ったダークライはまずクレセリアを呼びボールに触れさせた。そのままクレセリアはハイパーボールへと吸い込まれてプパン! という音とともに捕獲された。

 そして、それを確認したダークライも自らにボールを当てボールへと吸い込まれていく。地面に落ちたボールは揺れることもなくプパン! と音が鳴り捕獲完了となった。

 

『「……………」』

「サナ?」

 

 別れは結構ショックだったんだがなー。有事の際だし致し方ないと腹を括ってたのに、再捕獲はあっさりすぎね?

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 ッ!?

 変な感傷に浸ってる場合じゃない。さっさとギラティナを倒すなり追い返すなりしないと。

 

「おい、オレたちは先に逃げるからな!」

『「アア、ソウシテクレ。アトハナントカスル」』

 

 触手を伸ばして二つのハイパーボールを回収し、ウツロイドの内部へと取り込みリュックの外ポケットへ投入。

 

『「イクカ、サーナイト」』

「サナ!」

 

 成長したサーナイトの初陣がギラティナか。そうでなくともダークライ相手にメガシンカしてたんだから、流れ的にはリザードンに近いものがある。まあ、あいつ程イレギュラーな存在にはならないだろうが、同じくメガシンカするカルネさんのサーナイトに比べたら大差ないだろう。

 ならば、やれるとこまでやって結果を分析するまで。ついでにギラティナが度々俺の前に現れる理由も探れれば儲けもの。まあ、そこは期待しないでおくが。

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 キャンプ地から飛び立ってすぐ、ギラティナが現れた。

 今から神を相手にするというのに酷く冷静だ。気持ち悪いくらいに冷静である。この前は急遽対応しなければならなかったのと、一人だったというのも大きいのかもしれない。それと守らなければという不安感もあったか。だが、今回は一人じゃない。守らなければと思っていた存在が肩を並べられるくらい成長してここにいる。その分、肩の荷も降りたということだろう。ただ、それは戦場に立つ時において重要なことでもある。俺は守るべきものが増えたことでそれを痛感した。

 

『「サーナイト、ビビッテナイカ?」』

「サナ!」

『「リョウカイ。ソンジャ………イクゾ。サーナイト、メガシンカ!」』

 

 サーナイトも強くなったことで自信を得られた。だからこの場に立っていても物おじしていない。ダークライたちが鍛えたという部分も大きいだろう。

 キーストーンとメガストーンが共鳴し出し、サーナイトを白い光が包み込んでいく。

 その間にもギラティナは姿を消した。初っ端からシャドーダイブかよ。

 

『「マジカルシャイン」』

 

 この暗闇の中に溶け込んで攻撃してくるのなら、閃光を走らせればいい。突然の光には目が持っていかれ、一瞬でも怯んでしまうものだ。

 

「ギィ?!」

 

 そこか!

 メガシンカと同時に出来上がったミストフィールドの紫っぽいピンク色の淡い光もまた下からギラティナの影を写し出していた。

 

『「ミギウシロニテレポート。ツヅケテノノシカカリ」』

 

 声のする方ーー右背後にサーナイトをテレポートさせ、光に照らされたギラティナに思っい切り踏みつけさせた。

 メガシンカしたことでサーナイトの特性はフェアリースキンに変化している。ノーマルタイプの技はフェアリータイプの技へと変化し、ゴースト・ドラゴンタイプのギラティナには効果なしどころか、効果抜群を得られるようになった。

 ジャイアントキリングとでも言うのかね。でもまあ、使えるのは初手だけだろう。サーナイトの実力を計りかねている今だからこそ上手くいったと考えておいた方がいい。過信は禁物。

 

「ギィナアアアアアア!!」

 

 踏みつけられたギラティナは反撃と言わんばかりに、細長い六本の翼をサーナイトに向けて走らせて来る。

 

『「サイコキネシス」』

 

 それをなんとか超念力で動きを止めるも、やはり相手は神。メガシンカしたサーナイトの力を以ってしても動じない。何なら押し返して来ているまである。

 逆に考えれば、サーナイトがギラティナにあと一歩のところまで迫っているという驚きの展開だ。

 

『「イッキニチカラヲカイホウシテ、テレポートデハイゴニマワレ」』

 

 鬩ぎ合う力の片方が一瞬で無くなれば、もう片方は反発して来る力が無くなり、自身の力に身を持って行かれる。

 今のギラティナとの場合、六枚羽であるためそれほど身を持って行かれるということにはならないだろう。しかし、一瞬の隙は出来上がる。しかもサーナイトの位置取りは探しにくい背後。絶好の機会が出来上がる。

 

「サーナ!」

 

 サーナイトが一瞬で消えるとギラティナの翼は劈くるように前へ前へと伸びていく。忘れていたが、これ俺の前に来る奴じゃん。

 というわけでウツロイドさん。よろしく。

 

「しゅるるるるー」

 

 テシテシと俺に向かって来る六枚羽を叩き落としていく触手さん。生身の身体だったら、こんなこと絶対出来ないよな。ここにいる時だけはウツロイドに憑依されている方が超安全なような気がしてくるわ。

 

『「シャドーボール」』

「サナ!」

 

 サーナイトがギラティナの背後に現れたのを確認して、背後から攻撃させていく。

 ギラティナの次なる動きは…………消えずに反転。尻尾は竜の気を帯びていた。

 

『「ドラゴンテールカ。ハネカエスツモリダナ。サーナイト、トリックルーム」』

 

 素の動きはまだギラティナの方が早い。テレポートでどうにかなっているだけである。となれば使う以外にない。

 

「サーナ!」

 

 サーナイトにより動く速度が反転する空間に閉じ込められたギラティナは、丁度影弾を弾き返すところだった。

 

『「カワシテフトコロニモグリコメ」』

 

 流石にトリックルーム下では動きが丸見えになっている。

 サーナイトはギラティナがシャドーボールを打ち返した瞬間に、懐へとテレポートし身体を丸めた。

 

『「マジカルシャイン」』

 

 次に何をするのかはサーナイトも予想出来ていたみたいだ。これもダークライと只管バトルをしたことで、バトルの流れを読む経験が培われたと言っていい。それがなければサーナイト自身が戸惑っていた可能性もある。

 全身から光を迸らせたサーナイトに、ギラティナがようやく気が付いた。だが、まだトリックルームに対応出来ておらず、動きが丸見えな状態である。

 

『「ムーンフォース」』

 

 これならこっちを使っても問題ないだろう。

 この世界でどうやって月の光を得るのかは分からないが、恐らく体内に蓄積されているエネルギーから消費されていくものなのだとしておく。でなければ、サーナイトの背後に月が見えたりしない……………あ、いるな。月に関係したポケモンが。しかも二体。

 一応ボールに入っているため直接的な関与はないのだろうが、もしサーナイト自身が月のエネルギーを蓄えることが出来るのなら、ダークライやクレセリアからエネルギーをもらっていたと仮定することも出来る。

 なるほど、その可能性はあるな………。

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 抗うように咆哮するギラティナは、絶叫の木霊だけを残して一瞬で消えてしまった。

 またシャドーダイブか………。

 となると照らして姿を確認するまで。

 

『「サーナイト、マジカルシャイン」』

「サナ?!」

 

 ………は?

 

『「サーナイト!?」』

 

 サーナイトが技を出す前に何かに突き飛ばされた。トリックルームの部屋の壁に撃墜したサーナイトは、壁と衝撃に挟まれたことで脳震盪に近い目眩を起こしている。今すぐに立ち上がることは困難か。

 ならば先に原因の究明だ。

 

「ギィナアアアアアアアアアッッ!!」

 

 仕掛けたのは十中八九ギラティナだ。

 だが、俺の予想に反して動きが速かった。

 …………シャドーダイブ、じゃないってことなんだろうな。

 となると…………ゴーストダイブ? いや、シャドーダイブと同じようなものだ。トリックルーム下でいきなり速くなるなんてことはない。速くなるってところだけを見れば…………でんこう、いや……かげうちか!

 なるほど、だからトリックルームの効果を受けなかったのか。しかもサーナイトがメガシンカする時に同時に出来上がるミストフィールドも、浮いていられては効果を発揮しない。

 こうなるとシャドーダイブはもちろんながら、かげうちにも要注意ってことになるな。

 

『「サーナイト、ダイジョウブカ?」』

「サナ!」

「ギィ、ナァァァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 おいおいマジかよ。

 サーナイトがダウンしているのを狙ったのか?

 たかがギラティナの咆哮でトリックルームが強制的に壊されるとか……………。これが神の咆哮、だとか言わないだろうな。小説で読むのとはわけが違うぞ。実体験とかスケールが違いすぎるっつの。

 

『「カナシバリ」』

 

 取り敢えず、かげうちは使用不可にしてやる。その上で、あの巨体が消えるのをどうにかしないとな。シャドーダイブも金縛り状態にしたいが流石にそれは無理な話だ。例え封じたところでギラティナはゴーストタイプ。タイプ特有の消える能力は持ち合わせているため、消えることだけに関してはデフォルトと考えなければならない。

 

「サーナ!」

「ギィ? ………ナ」

 

 チッ、またシャドーダイブか。

 再三に渡りマジカルシャインを使えば、ギラティナの思う壺だ。別の対処を考案しなければ………!

 

『「サーナイト、メイソウダ。イッタンオチツコウ」』

 

 動かざること山の如しって訳ではないが、無策に攻撃し続けるのは得策ではない。ギラティナの攻撃が来るまでに数秒の間がある。それを逆手に取られたのがかげうちだったのだが、金縛りでそれもない今、目を瞑って心を落ち着かせることは可能だ。

 その間に俺は反撃の方法を構築するとしよう。

 まずマジカルシャインがギラティナを探し出すのに有効ではあったが、その反面として正面に来られては俺が視認出来ないことが分かった。

 あと有効打なのはムーンフォースとノーマル技だ。ただ、ハイパーボイスはギラティナの咆哮でかき消される可能性が高い。となると残るはスピードスターとのしかかりか。

 さいみんじゅつで眠らせるという方法もあるが、果たして寝てくれるかどうか。全く想像が出来ないためバトル展開にも組み込みにくい。でも試すだけ試すのは有りか。

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 来たッ!

 

『「サーナイト、カケブンシン」』

 

 ギラティナが姿を見せた瞬間に影を増やして回避。

 

『「テレポート」』

 

 そしてテレポートでギラティナの視界から消えさせた。

 

『「サイミンジュツ」』

 

 ギラティナの背後に移動したサーナイトがさいみんじゅつをかけていく。

 

「ギィナァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 やっぱりダメか、効いてない。

 逆に位置バレしてしまったようだ。

 

『「スピードスター」』

 

 反転して来たギラティナに向けて星型のエネルギー弾を放っていく。特性のおかげで今はフェアリータイプの技となり、ギラティナには当たれば効果抜群。

 なのだが、そのギラティナは顔面で砕きながら一気に詰め寄って来た。

 

『「テレポートデカワセ」』

 

 あれはただ突っ込んで来たわけじゃない。あのパワーにあの防御力。恐らく何かしらの技………ああ、アイアンヘッド。あれならあの砕かれようも頷ける。

 

「サナァァァァァァッ?!」

 

 サーナイトがギラティナの突進をテレポートで躱した瞬間、移動先にギラティナがおり、アイアンヘッドを受けて遠くへと飛ばされてしまった。もはや俺の目からは視認出来ない距離。

 

『「ッ?!」』

 

 しまっ、た………!

 慌ててサーナイトのところへ飛んでいこうとしたら、目の前にギラティナが現れた。よく見ると辺りには無数のギラティナの姿があるではないか。

 だが、ギラティナは一体しか存在しないのでは………? これも技が? となると………かげぶんしんが濃厚か。それでテレポートしたサーナイトが吹っ飛ばされて訳だ。

 くそっ、今回も奴の狙いは最初から俺だったのかよ。サーナイトとバトルしているように見せかけての不意打ちとか…………人間より狡賢いんじゃねぇのっ?

 

『「ウツ、ロイド!」』

 

 六枚羽の連続攻撃をウツロイドの触手で一本一本受け止め、途中で触手の先に毒を巡らせるも、互いに触手ないし六枚羽が使えない状態になった。毒状態になってくれては………ないだろうな。

 そんな中、ギラティナが大きく口を開いた。

 

『「チッ、ウツロイド! ミラーコート!」』

 

 何が出されるのは目に見えているため、先手を打っていつでも返せるように態勢を整える。そして大きく開いた口から吐き出されたのは青と赤の竜を模した波導だった。

 超至近距離から前回のお返しだと言わんばかりに顔がある。これだと振り回さないのも事実。マジで俺に出来ることなんてこの攻撃を受け止めるしかない。

 

『「オイコラ、ナニヲスルキダ」』

 

 何とも言えない焦燥感に駆られていると、背後から嫌な気を感じた。振り向くと大きな黒い穴が渦巻いている。ダークホール、とも違う何か。どちらかと言えばウルトラホールに近い気もするが、こっちはより禍々しく見える。

 

「サナァァァァァァッ!!」

「ギィ……」

 

 ッ?!

 ヤバッ!?

 てか、戻って来るの早過ぎね?!

 どうやって戻って来たんだよ!

 影移動でもしないと無理だろ!

 

「サナ?!」

『「ウォォォオオオオオオオオオオオオッ!?」』

 

 サーナイトが俺の予想よりも早く戻って来たものの、ギラティナは咄嗟に消えることで、俺は押さえ付けたいた力がなくなり変な態勢に。そこへサーナイトが拳を振り上げた姿が滑り込み、一発サーナイトに殴られながらもサーナイトを受け止め、その勢いで二人して背後の黒い穴に吸い込まれ始めた。

 最早抗うことも出来ない。というかギラティナが意外にも策士過ぎて笑えるレベル。何ならダメ押しにもう一発シャドーボールがサーナイトの背中に直撃した。

 そして何も出来ぬまま黒い穴に吸い込まれていく最後にチラッと見えたギラティナは、何故かおっさん二人を追いかけ回していた。

 対象替えるの早くね………?

 

『「………ハ?」』

 

 というのも束の間。

 急に眩しい光に包まれた。

 

『「オォ、オォ、オオオオオオオォッ!?」』

 

 急に身体が引っ張られるようにして加速した。

 何事かと引っ張られる方を見やると青く茂った木々が広がっている。その奥には青い海も。

 はい………?

 どういうことだってばよ?

 これ、丸っ切り現世じゃん!

 

『「ウツ、ロイド…………ウツロイド?」』

「しゅ、る……」

 

 声をかけてみるが反応が薄い。思いの外、ミラーコート時に消耗したのかもしれない。

 え、なに?

 あいつ、俺たちを現世に戻すためだけにあんな無駄に力を行使して来たってわけ?

 その一番の被害者がウツロイドってなんか可哀想すぎるだろ。

 何とか俺も態勢を戻そうと試みるものの、重力が邪魔をして思うように動かせない。

 あれ? 前はもう少し動けてなかったか?

 

「しゅ、るるる!」

 

 ようやく反応が戻って来たウツロイドが身体を起こして、地面に激突までは避けることが出来た。

 サーナイトは、………メガシンカが解けて気を失っている。

 

「コ、ケェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエッッ!!」

 

 おいおいおい、一難去ってまた一難。何か現れたんだけど!

 

「しゅるるるるるぷぷ、しゅるぷぷ! しゅるるるるるぷぷ、しゅるぷぷ!」

 

 あ、ちょ、お怒りなのは分かるけども、急に憑依を外すなよ。

 

「ぅ、っ………」

 

 ヤバ………、息が………っ!?

 つか、アレ………あのトサカ………カプ・コケコなんじゃ…………。

 くっ………身体も重っ…………!

 

「コケェエエエエエエエエエエエエエエエッ!!」

 

 これはエレキフィールドか?

 目の前ですげぇ帯電してんだけど………こわっ!

 ウツロイドにより憑依から解放された俺の身体は力なく地面に倒れ伏している。そのため目の前がすごいことになってしまった………泣いていい?

 

「じぇるるっぷ!」

 

 まさかとは思うが、ウツロイドに憑依されていた代償で俺の身体は呼吸不全の仕方を忘れてしまったとかではないだろうな………?

 有り得なくもない話だが…………マジで息苦しい…………。

 あ、こら! 俺を守ろうとしてるみたいだが、下手に攻撃するんじゃありません!

 

「ウォー!」

「ガオガエン、DDラリアット! ルガルガン、アクセルロック!」

 

 と思ってたら太陽の光が遮られ、そこからポケモンたちが降って来た。

 人、来たみたいだな…………。助かる、のかね…………。

 

「ム? これはっ?!」

「ウツロイド!? それに………ハチマン?! そうか、それで………ッ!!」

 

 ヤバい………酸欠とかいう問題じゃなくなって来た。頭痛い。誰か俺を知ってるっぽい人が来たみたいだが、最早姿を確認するのも難しい。マジで呼吸不全で俺死ぬぞ!? 死界から帰って来て即死とか笑えねぇだろ。

 

「ハラさんはカプ・コケコを! ウツロイド! 頼む、今はハチマンのボールに戻っててくれ!」

 

 ん?

 鬼火………?

 一体どこから…………?

 あ、文字が浮かび上がって来た。これ、俺知ってるわ。

 

『イマハネムレ。ワレノチカラデシナセハシナイ』

 

 あ、はい………。なら、オナシャス。俺もう、限界ッス。寝るッス、ダークライさん。

 …………どうか、次に目が覚めた時には死界にいることがありませんように。

 

「お前は………っ?!」

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