混ぜるな危険、クロスオーバー   作:コミッサール

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しばらくは恋姫世界中心に進み、まどマギ要素が出てくるのは後になります。
それでは皆様良いお年を♪


第一話 前史 通貨無双

中国が領有権を主張している諸島では、今セレモニーが行われていた。

「平和と友愛の海」式典が日中両国共同で開かれ、日本の領有権を中国が認める代わりに、周囲資源の無期限開発権と救難拠点として中国海警の無期限駐留を日本が認めるものだ。

既に島の周囲の埋め立てが盛大に開始され、大規模滑走路が造られようとしていた。

マスコミはそんな細かい事は報道せず、只平和的解決を讃え、直後の総選挙で与党は大幅に議席を減らしたものの、かろうじて過半数を維持し、政権交代はならなかった。

そんな我々の世界線とは別の歴史を辿った、この世界の片隅で一人の経営者が悩んでいた。

沢渡貿易は小さな商事会社だ。

大手総合商社と違い、石油やら政府が関わる華々しい取引とは縁がない。

今会社は苦境にあった。

前の政権交替以降の極端な円高政策により、国内経済が壊滅状態なのだ。

輸入品がバカみたいに安くなったため、国産品は売れず、製造業に従事していた人達が失業した。

食べ物からパソコンまであらゆる物が輸入品となった。

旅行も国内行く金で海外旅行へ二回行けるとなれば、どちらへ行くか自明の理である。

ますます国内は寂れていった。

いくら安く輸入出来ても、買う人間がいなければ、儲からない。

食糧や石油といった生活必需品は、政府とコネがある大手総合商社が独占している。

これまで沢渡商事が扱っていた、嗜好品(超高級コーヒー、珍しいワイン、美術品、インテリア、等の趣味の品)は売上ガタ落ちで倉庫で埃を被っていた。

不景気による税収減を補おうとした大増税で富裕層が国外に脱出したため、顧客が消滅したのだ。

社長の沢渡幸助は溜め息を吐いて、倉庫に座り込んだ。

総選挙は野党が政権復帰すると予測されていたが、だからこそ危機感を抱いた与党は豪腕を持ってなる幹事長の元、一致団結して手段を選ばなかった。

どこからか流入した莫大な選挙資金と、それをマスコミにバラ撒いてのプロパガンダ、尖閣諸島問題の「解決」と大震災が起きなかった(二十年以内に起きると思われる)事の相乗効果で、かろうじて首の皮一枚で首が繋がり政権が維持されてしまった。

だが、景気は全く回復していない。

政府はアジア共同体とやらが出来れば、関税が撤廃されて移住も自由に出来て人口も増え、中国・韓国市場が手に入り景気が回復すると言っているが、幸助は全く信じていなかった。

何の気なしに蹴飛ばした木箱から、一枚の銅鏡が転げだした。

以前支払いが焦げ付いた相手から、押し付けられた物だったのを思い出した時、突然銅鏡が鏡面から光を放ち、倉庫の壁を照らし出した。

光が照らす壁面が消え失せ、代わりに煌びやかな部屋が現れた。

唖然として覗き込んだ幸助の首もとに、刃物が突き付けられた。

「貴様!怪しい業を!」

「袁家の屋敷と知っての狼藉か!」

ゆっくりと手を挙げた幸助は、甲冑を纏った警備兵に牢に放りこまれたが、すぐに連れ出された。

倉庫を調べに入った警備兵が、倉庫の外側の光景を見たためである。

ビルが立ち並ぶ光景に仰天した警備兵は、拷問に掛けずに丁重に扱う事にしたのだ。

仙人の類いと見なされた幸助は、漢帝国の有力者である袁家の重鎮達と顔を合わせた。

中国では仙人は不老長寿の霊薬に精通していると思われていたからである。

袁隗、袁逢といった重鎮達は、幸助が仙人でないと知って失望したが、すぐに幸助の値打ちに気付いた。

倉庫にあった見た事も聞いた事も無い、様々な高級な食材や酒、家具、美術品、恐ろしく便利な生活用品、カデンセイヒンと呼ばれている宝貝(中国のマジックアイテム)、そして仙薬では無いが凄い効き目の薬の数々。

しかも継続して全て仕入れられるのだ。

こうしたアイテムを皇帝に献上したり、他の有力者への贈り物にすれば絶大な影響力を及ぼせるだろう。

三公を独占するのも夢ではない。

一方幸助は潰れかけていた会社が、新しいお得意様を手に入れるチャンスを逃す訳がなかった。

公表して学問のため政府の手に渡す?

冗談ではない、今の政府に渡せば、宣伝しているアジア共同体とやらのモデルケースとして中国に渡されかねない。

何せゲートの向こう側は古代中国なのだから、現中国政府が領有権を主張してもおかしく無い。

もちろんそんな事になれば、良くて僅かな協力金だけ渡され、全て取り上げられるだろう。

悪ければゲートの向こうと不用意に接触して、現代の感染症を持ち込んだ大量殺人者として糾弾されかねない。

現与党が政権にある限り「公共の福祉、市民の義務」は無視する事にした幸助は、まず倉庫の不良在庫を一掃しようとした。

ここで大きな問題が発生した。

袁家側は全部買いたいのだが、代わりに支払う通貨が無いのだ。

当たり前だが、袁家は円もドルも持っていない。

銅銭?保存状態が良すぎて、古銭として売るのも無理である。

最近作った模造品としか見てもらえない。

となると物々交換しかないが、換金できそうな物が銀位しか無い。

古代中国文明は支配領域内に金山がほとんど無いため、一番換金しやすい金が大量に手に入らないのだ。

まだ発見されていない日本や極東ロシアの金山の場所を教えても、古代の交通技術では遠すぎて無理だし、そもそも今から金山見つけて掘り始めるのでは、金が手に入る頃には会社が潰れているだろう。

それ以外の物?

品種改良前の不味くて、実が小さな農作物や磁器も発明されていない技術が遅れた陶器?

そんな物仕入れても、売れる訳無いだろ。

ゲートの向こうの漢帝国はナゼか歴史上の漢帝国よりやたら技術が進んでいたが(特に印刷、服飾関係)、あくまで古代としては進んでいるレベルでしかなかった。

とりあえず袁家の権力で手に入る限りの銀を集めてもらい、在庫を売って会社は一息つく事が出来た。

こうして交易を続けていたが、次々に問題が発生していく。

漢帝国側では、袁家が献上品の数々で皇帝の覚えがめでたくなり出世した。

当然袁家は更なる交易の拡大を望んで、新たに得た権力を使い漢帝国中から銀を掻き集めた。

近代経済学を知らぬ袁家は、それがどういう結果をもたらすか理解していなかった。

通貨不足によるデフレスパイラルの発生である。

数の主力の銅銭はなくなっていないのに、なぜ通貨不足が起きるのか疑問に思うかもしれないが、千円札や硬貨は残っているが、一万円札が無くなるような物とお考え頂きたい。

だがこの経済混乱をもたらしたのが袁家なら、混乱を収拾したのも袁家だった。

袁家は全く新しい通貨体系の導入を、全額袁家負担で行う事を皇帝に奏上したのだ。

この新通貨は皇帝を感嘆させるほど偽造不可能な精巧な作りで、膨大な製造費用が掛かるモノと思われた。

そのため経済混乱を袁家の失政であるとして、弾劾を行おうとしていた官吏達は矛を納めた。

製造費の負担で袁家が新通貨導入に成功しても財を失ない、失敗に終われば危険を犯して弾劾するまでもなく、袁家は没落するからだ。

だが官吏ほぼ全員の予想に反し、袁家はやり遂げてしまい、かつ財力に衰えは無かった。

そして新通貨は袁家以外の誰も造り出す事が出来なかった。

これにより、通貨発行を袁家が独占し、貴族が勝手に造っていた私鋳銭などはゴミと化した。

好き勝手出来なくなった地方貴族は袁家を恨んだが、中央の官吏達の一部は中央政府の権限強化になったのに気付き、袁家を支持する者達が現れ始めた。

何せ、新通貨と共に無償で導入された、新しい数字表記法と計算方式が画期的過ぎて官吏の仕事を大幅に楽にしてくれたのだ。

商人達も大いに喜び、経済面での袁家の影響力は絶大な物となった。

その一方強大化した袁家が、帝位簒奪を試みるのではないかと警戒する者達も増えたが、ナゼか袁家がそういった動きを見せる事はなかった。

 

時は流れ、この世界に跳ばされたばかりの北郷一刀は、三人のチンピラに絡まれていた。

「おう、変な兄ちゃん銭や銭!

とっとと出しな」

「銭?え、え~と」

「ああ、銭も知らん田舎者かあ?

銭ってのはこういうもんや!

今どき銅銭なんか出すんじゃねえぞ!」

一刀は鼻先に突き付けられたそれを目を丸くしてマジマジと見ていたが、突然ポンと手を叩き地面に横になって目を閉じた。

「なあんだ、夢かあ」

「「「は?ナンだコイツ?」」」

「兄貴コイツ頭おかしいんじゃ?」

「あんまり関わりにならんほうがいいかもしれんなあ」

ひそひそ話し合う三人を無視して、この世界が自分が見ている夢と確信した一刀は眠ろうと努力していた。

最初は創作で流行りの異世界転移かと思ったが、あんなお金が使われている異世界なんてあり得ない。

そうだ「こどもぎんこうけん」とでかでかと描いてある小さな一万円札やプラスチック製の百円玉が異世界のお金なんて有る訳ないだろ!!ふざけんな!!

いくら夢だからってひどすぎる!!

やり直しを要求する!!!

その後の一刀君の運命は知らない。

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