新たなまどマギキャラ参戦です。
禁軍の乱は漢帝国に深刻な傷痕を残した。
宮中にいた官吏、宦官、女官のかなりの部分が殺害されたのだ。
この時代官庁のほとんどは宮中に置かれていたので、官吏の被害は甚大だった。
春都達が禁軍の兵を引き付けていなかったら、もっと殺害されていただろう。
また火災が発生した事で失われた書類も多かった。
そして禁軍が丸ごと逆賊になった事で、宮中を警備する兵もいなくなった。
これを日本で例えれば、首相官邸、官庁街、警視庁が爆撃され、首相以下中央政庁の所属人員の六割が殺害された場合に相当する。
いくら上が命令しても、手足となって働く官吏が居なくては国は回らない。
国家機能が麻痺した。
そしてその点は袁家も変わらない。
張勲は袁家の大人達が全滅してしまったため、袁術を袁家当主にする野望を当面封印せざるを得なかった。
現在まだお子様の年齢でしかない袁術が当主になったりしたら、過労死して袁家が崩壊する未来しか見えない。
引継ぎも全く無しで、これだけ巨大な財閥みたいな家をいきなり継ぐ破目になった上、司徒(三公の一つ、現代の首相)なんていう大変な官職まで押し付けられた袁紹がヒイヒイ言っているのを見て、袁術はビビってしまい、当主になる気が無くなってしまった。
これは二人が一緒に暮らしているからこそ理解出来た事で、原作のように南陽と冀州に別れていたら相変わらず当主の座を狙っていたかも知れない。
日本にいたお蔭で田豊が生き残っていなかったら、袁紹は過労死していたろう。
何進に負わされた傷を癒した春都が袁紹と田豊に毎日のように届けてくれる差し入れの料理やお菓子と暖かい言葉が唯一の癒しだった。
袁紹と田豊は徹夜のデスマーチの苦労を共にした為、お互いを心から信頼するようになった。
袁紹はその生涯で、田豊についてのどんな讒言にも一切耳を貸す事は無く、後世に主君と臣下の理想の関係と讃えられる事になる。
宮中は官吏や宦官のかなりの部分が死亡したため、洛陽にいる豪族達から文官として使えそうな人材を勅令で強制動員して何とか廻している。
新皇帝に即位した劉弁は、乱の直前に袁紹が献上していた電卓を始めとする文房具にいたく感じ入り、袁紹に大量に調達を命ずる勅令を発した。
動員された豪族達には幸助が調達した事務用品が全員に支給され、古代中国の服装の官吏達が蛍光灯と時計が掛かった部屋で電卓をパチパチと叩いて、書類をボールペンで作成してコピーを取っているシュールな光景が日常となった。
その為に袁家の屋敷から宮中まで電柱が立てられ、ゲートから電線が引かれていた。
これにより事務効率が倍以上跳ね上がり、電灯で夜間勤務が可能になったため事務時間が大幅に延長出来るようになり、何とか国家崩壊を免れた。
もちろんブラック企業も裸足で逃げ出すような残業地獄で残業手当も無い。
そうしなければ、全員地獄のデスマーチになるので仕方がない。
司馬家と曹家は真っ先に動員された。
司馬八達全員、まだ子供の司馬懿仲達も動員され、最初は「働きたくないでゴザル!
絶対働きたくないでゴザル!!」と駄々を捏ねていたが、見たことの無い事務用品に好奇心を刺激され、止めに田豊ママさんのアイデアで菓子問屋から直接大量に安く仕入れたお菓子を与えられ、働く気になった。
「ウウッ、これは罠でゴザル!
罠とわかっているのに、手が止まらないでゴザル!」
「ハイハイ、たかがエビせんで騒がないで下さいます♪
皆勤や成績優秀な方には、賞与としてこんな安物じゃない、もっと美味しい高級なお菓子やおつまみが渡されますからねえ♪」
「ちょ、張勲殿は悪鬼でゴザル!お、お代わりぃ!」
「ハイハイ、次の休憩時間まで働いたら、出しますからね♪
しっかりお仕事頑張って下さいね」
張勲は悪い笑顔で豪族の子弟だけが集められた事務室、別名人質部屋を後にした。
人質だろうがなんだろうが使える人間を遊ばせる余裕はないのだ。
洛陽の豪族達を袁家が抑える一方、いなくなった警備部隊の穴埋めは董卓を太尉(三公の一つ軍事担当)に任命する事で、涼州から董卓軍を丸ごと引き抜いた。
遊牧民との関係が安定しているから出来た事である。
涼州の防衛は馬家に任された。
地理不案内な董卓軍には、北部尉だった曹操旗下の兵が道案内と洛陽の民との付き合い方をレクチャーする事でなんとか使い物になるようにした。
曹操は配下の夏侯淵が何進を討ち取った功績で司空(三公の一つで司法と治水担当)に任命された。
凄まじいまでの新皇帝によるお友達人事であるとして、地方豪族からは非難轟々だった。
特に袁紹は親代わりの袁隗が死んだのに、葬儀の翌日から働く人でなしの権力亡者と悪評を立てられた。
儒教では親の葬儀の後三年間は喪に服すべきとされているからだ。
だが、取りあえず政府機能を維持するには、今其処にいる人間を使うしか無かったのだ。
地方からのんびり呼び寄せていたら、その間に政府が崩壊していたろう。
そして当たり前だが、危機に政府を立て直した功労者達を理由も無く首に出来る訳が無かった。
だが、地方豪族達にそんな事が分かろう筈も無く、頻繁に互いに連絡を取り合うなど、不穏な動きが高まりつつ有った。
なお、顔良の狙撃は袁家が銃の事を秘匿するため無かった事にされた代わりに、袁紹から褒美として袁家と沢渡家両方の費用負担での日本での買い物の権利が与えられ、顔良は舞い上がっていた。
「エヘヘ、猪々子ちゃん、こんなにいっぱい円貰っちゃった♡
お土産何がいいかなあ♪
あっ銃貸して下さった隊長さんにもお土産買わなくちゃ♡
あ~、皇帝陛下からの褒美じゃなくて良かったあ~。
麗羽様~、一生ついていきますう♡」
「ウウウ、斗詩ぃ~羨ましいよ~(泣)」
「ウウウ、猪々子ちゃん、でもまだ忙しくて買い物に行けないの(泣)」
いくら大金が手に入っても、使えなくては意味が無い。
春都や佐倉三姉妹にも一番危険な殿や先鋒を務めていた事から官職をという話も出たが、帰国しなければならない外国人という事を理由に幸助と佐倉神父が全力で辞退した。
そう、現状官職は褒美では無く、ブラック地獄への招待券なのだし、日本の基準ではまだ子供なので当然である。
春都は日本の病院に入院していた。
何進のバカ力で防いだ剣ごと吹っ飛んで叩き付けられ、全身重度の打撲と蹴られた事による肋骨骨折による物である。
最初は以前刺客に斬られた時治療を受けた米軍病院に行ったのだが、ナゼか玄関に医者というより学者みたいな人達が並んで春都を出迎え、貼り付けたような笑顔で最新鋭の機器が揃っている「特別病室」に案内しようとした上に「素晴らしい新薬」を使うため、なにやら色々な同意書にサインさせようとしたので、回れ右して日本の病院に入院先を変更した。
気功と若さのお蔭で回復力が高いので、すぐに元気になり、退院も近い。
春都は見舞いに来てくれた袁術と張勲に退屈しのぎに病院を案内していた。
張勲は春都の功績に官職を与えるという書簡を届ける事を口実にブラック地獄から、ちょっと息抜きに抜け出してきたのだ。
流石に袁術の年では強制動員されなかったので、袁術は純粋に見舞いに来ただけだ。
もっとも袁術の方は見舞いは半分口実で、日本に来て買食い出来る貴重な機会を逃がしたくなかった方がメインだろう。
「花より団子」まだまだお子様である。
病院の売店で、袁術は春都に貰ったお小遣いでお菓子を買おうと棚を物色している時、様子のおかしな小学生の女の子に気付いた。
手に抱えたブタさん貯金箱を見て、憂鬱そうな顔で溜め息を吐いている。
「おう、どうしたのじゃ?
お菓子を買うのにお金が足らんのかえ?
十円ぐらいなら分けてやらんでもないぞ」
女の子はビクッとしたが、声を掛けたのが自分より年下の女の子だとわかると安心して返事をした。
「ここのお菓子では無いのですが、有名なお店のとても高いケーキなのです」
「ほう、高いってどのくらい高いのじゃ?
まさか五百円という巨額ではあるまいの?」
「いえ、もっと高いのです!
一個三千五百円、いえ消費税とかいうのがつくのでもっとするのです!」
「う、嘘じゃろう?!
そんな高いお菓子が有る筈がない!
あの究極の美味ハーゲンダックでさえ五百円でお釣りがくるんじゃぞ!
春兄、そうじゃろ!」
春都が苦虫を噛み潰したような顔で答えた。
「あ~、たぶん贈答品に使うような超高級品じゃね。
お嬢ちゃん、何処のなんて店?」
言われた店名に春都は聞き覚えが有った。
「それ、親父の会社が特別な顧客用にお中元とかで買ってる所だわ。
あんな高いとこ、なんでいるんだ?」
「あ、あの入院しているお母さんが、手術する前に食べてみたいって・・・」
「そういや親父が前に寄越したその店のお楽しみカードとかいうのが有ったなあ。
一万円以上買うと一枚寄越して、十枚貯まると一個タダになるの。
俺はあんなお高く止まった店は好きじゃないし、そういう事情なら使わないからあげるよ」
「あ、ああ、有り難う!これでキュウベエに頼まなくてもよくなるのです!」
「「変な名前、誰それ?」」
「キュウベエはキュウベエとしかいいようがないのです。
契約すると願いを叶えてくれるキュウベエなのです」
「なにそのショボい願いの叶えかた。
ケーキなんて買ってくりゃいいだけじゃないか。
五千円もしない金額で、どんな内容か知らんけど、それで契約って騙されてね?
何でも願いを叶えられるってんなら、お母さんを手術が要らないくらいの健康体にしてみろってんだ」
「フッ、春兄小さいの!
たかが一人の健康など小さい、小さい!
どうせ願いを掛けるなら、天下万民の平和と健康を願わんかい!」
「アハハ、それいいね♪
さすが袁術ちゃんは見る所が違うなあ」
「エヘン、そうなると軍隊や医者に金を掛ける必要がなくなり、その分妾はお菓子にお金を使えるのだ!」
「ウン、やっぱり袁術ちゃん、お菓子の国の女王様だった」
「ところで春兄、のう、そんないい物があったなら、なぜ妾にこれまで言わなかったんじゃ?!
妾も食べてみたいんじゃが」
「エエエエ?!二つ分も無いよ!
勘弁してよ!」
春都と袁術がギャアギャア騒いだ事で病院の職員に怒られている間、張勲はその女の子に何やら耳打ちしていた。
なぎさの日記
「お母さんはチーズケーキをとても喜んでくれました。
最初はどうやって買ったの?とビックリしていましたが、お楽しみカードの話をしたら、後で袁術ちゃんと春都兄さまにお礼を言いに行こうねと言いました。
キュウベエには世界中の人が平和で健康で、あのお店のケーキを世界中の皆が毎日食べられるようにして欲しいとお願いしたら、返事をしないでプルプル震え始めました。
そんな大赤字が出来るかあと、いきなり急に大きな声を上げたのでビックリしたのです。
どんなお願いでも叶えてくれると言ったのに、キュウベエは嘘つきなのです。
嘘つきのくせに、お前ごときがそんなお願いを思い付く訳が無い、誰かに言わされたんだろうと失礼な事を言うのです、プンプンです!
私は袁術ちゃんにヒントは貰ったけれど、この願いに決めたのは、私なのです。
特にケーキの事は私とお母さんと袁術ちゃんが毎日ケーキを食べられるように、私一人で一生懸命考えたのだから、私の考えたお願いなのです。
(なお、この願いを叶えるためには、魔法を使わない場合、ケーキ屋さんは毎日六十億個以上のケーキを焼いて、キュウベエ達がサンタクロースの如く全世界に配達しなければならない。
ケーキ屋さんとキュウベエどちらが先に過労死するだろうか?
魔法で叶えた場合、刑務所でも病院でも漂流中のボートの中でもエベレストの天辺でも、およそ人のいる所全てに突然ケーキが毎日現れる事になる)
張勲お姉さんに教わった通り、
「なんでもお願いを叶えるなんて言ってたくせに、本当は何一つ出来ない役立たずの穀潰しじゃないの?
えっ、そんな事はないって?
嘘つきの言う事を信じろって言われても出来ないのです。
だったら私のお母さん治す事が出来るって証明して見せて欲しいのです。
そしたら必要な時にキュウベエの条件で契約してもいいのです」
と言ったら、なんとお母さんの病気がキレイに治ったのです!
キュウベエが契約しろと言うので、
「後六十年たったらするのです。
今すぐするとは言っていないのです」と言ったら、キュウベエの色が白からトマトみたいな赤に変わったので、ビックリしたのです。
キュウベエが「このくそがきゃあ」と知らない難しい言葉を使いました。
どんな意味か聞いても教えてくれません。
他にも知らない言葉を色々使ったのです。
そうしたら白いキュウベエがいっぱいやって来て、赤いキュウベエを連れて行きました。
「これは感情に汚染されて壊されてしまったから、感染しないように処分しなければならないね」
とか難しい事を言って帰って行ったのです。
なぎさがちっちゃい子供だと思って、わざと難しい言葉を使って馬鹿にしているのです、プンプン。
本当にキュウベエは悪い奴なのです。
キュウベエをやっつけるやり方を教えてくれた張勲お姉さんは凄い人なのです。
なぎさは張勲お姉さんみたいな人になりたいです」
お菓子の魔女が生まれなかった代わりに、心をへし折る暗黒幼女、ミニ張勲誕生。
何処かで後任のキュウベエは呟いた。
「あの子はたいした素質持ちでは無いし、感情を発生させる危険な存在だから近付かないようにしよう。
やれやれ、ケーキ一個ととても安上がりの経費で魔女にすぐ出来て大変お得の筈が、簡単な事とはいえ病気にしたり治したり、大したエネルギー量では無いと言え赤字だよ。
次のターゲットへの仕込みを予定より早めよう。
確か巴マミだったね」
なお、春都は袁術だけに買うわけにいかず、袁紹、田豊、張勲、佐倉三姉妹の分まで買わされ、涙目で貯金を下ろしに行った。
??「ハーレム息子め、当然の報いだな。
まあ母さんの分だけは出してやるか」