混ぜるな危険、クロスオーバー   作:コミッサール

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大変御待たせ致しました。
色々書き直したため、遅くなりました。
新たに三件も感想を頂き、誠に有り難う御座います。
感想は筆者の元気の素です。


第四話 前史 米帝無双

アメリカは対日政策を大きく転換した。

ゲートだけは絶対にアメリカが独占しなければならない。

恋姫世界の利権の独占のみならず、ゲートの原理が解明出来れば、他の異世界への道も開けるかも知れない。

また解明する事で得られる科学知識は、様々な他の分野に応用出来るだろう。

逆に他国(日本含む)の手に渡れば、アメリカの地位の転落もあり得る。

だから万が一にも奪われる事の無いように倉庫には特殊部隊が常駐し、部隊がすぐに応援出来るように、倉庫の隣の土地をアメリカの民間航空会社に買収させヘリポートが作られた。

倉庫の周囲の土地はアメリカ資本が札束で顔を叩くようにして全て買い取り、倉庫を囲むように壁が異様に分厚くてやたら頑丈な、まるでトーチカ陣地のようなビルが建設されている。

そして横須賀には常に強襲揚陸艦一隻が海兵隊を乗せて待機していた。

また部隊の交代と称して、ステルス戦闘機一個戦闘航空団が沖縄に配備され、グァム島に戦略爆撃機部隊が前進した。

空母機動部隊のローテーションも変更され、日本近海には最低でも二個機動部隊が常に遊弋していた。

また戦略原潜部隊の核攻撃目標リストに、ある座標がひとつ追加された。

渡す位なら壊してしまえ。

アメリカの総意である。

 

その検討過程でアメリカ人では無い幸助が、ゲートを押さえているのは危険だと主張する者達が多く現れた。

幸助を始末して倉庫を手に入れるプランが検討されたが、それほど法外な通行料を取られていなかった事と、幸助が予防措置を講じていたのと、袁家と家族ぐるみでしっかりした絆を結んでいたためギリギリで却下された。

今後は幸助にアメリカ国籍を取らせる方向で勧誘工作が行われる事になった。

 

日本政府については、現政権を引き摺り落とすため、アメリカのマスコミに政権幹部のスキャンダルが次々と報道された。

NSAが日本国内の通話を盗聴して手に入れたスキャンダルをアメリカのマスコミにリークしたのだ。

海外のマスコミに大々的に載せられては、いかに現政権に籠絡された日本のマスコミも無視出来なかった。

日本のマスコミを押さえて安心しきって脇が甘くなり、好き放題ヤラカシていた政権幹部達は、次々と容赦ない検察の取り調べを受け辞職に追い込まれていった。

官僚達を顎でこき使い、責任を押し付けてきたツケが来たのだ。

特に総選挙の時の莫大な選挙資金が中国国営企業からの物だった事が暴かれたのは大打撃だった。

 

中国政府はなぜ突然アメリカが方針転換したか分からず、混乱していた。

だがまだ軍事力では勝てないので、諜報に力を入れてアメリカの方針転換の理由を探ると同時に、せめて日本だけは手に入れようと工作に力を入れ、日本国内で双方のエージェントが暗闘を繰り広げる事になる。

 

韓国はこれまで日本叩きをして、賠償要求が次々と叶えられて調子に乗っていた所に、突然のアメリカの態度変更で梯子を外され孤立した。

 

北朝鮮はアメリカが軍を動かす口実にされたため、中国からも何かヤラカシたのではないかと疑われ、国境を閉じて引き篭もり責任の所在を巡り粛清の嵐が吹き荒れた。

 

日本政府は突然周囲が戦争前夜と言える程緊張が高まったのに狼狽え、ただ右往左往していた。

首相がアメリカ大統領に電話を掛けた

「東アジアは平和と友愛の地であり、紛争など起きない。

アジア共同体で解決するから私を信じて欲しい」

同時通訳が英語に翻訳する。

「トラスト ミー」

大統領の額に青筋が浮かんだ。

「その言葉を聞いたのは二度目だね」

「は?!」

「で、一回目は実現したのかな?」

「き、緊張を高める在日米軍基地からの出撃は認められない!」

「では安保条約は破棄して敵対するという事になるのだから、穀物輸出は出来なくなるね。

日本に対し、かってのココムのような貿易制限が必要になるだろう。

いやあ、日本の方から破棄してくるのでは仕方がない。

議会も納得するだろう」

「まっ、待って頂きたい!」

「いいとも今はまだ我々は友好国だからね。

いつまで続くか分からないが?

それまで基地は好きに使わせて貰うよ♪」

電話を切った大統領は補佐官に命じた。

「日本政府が在日米軍の追放と安保条約破棄を計画していると、裏からリークしたまえ」

「大統領、マスコミがホワイトハウスに問い合わせて来た場合は否定では無く「ノーコメント」でよろしいですか?」

「その通り、あの愚か者は私の言葉を否定せず、待ってくれとしか言わなかった。

つまり安保条約破棄とアメリカと敵対するという事を認めたと解釈出来るのだから、嘘では無い訳だ。

後は軍が動いている事を深読みしたマスコミが尾羽をつけてくれるだろう。

第二次太平洋戦争とかね」

日本国内では収拾のつけようの無い大混乱が拡がり、政党を与党から野党に鞍替えする議員達が現れたため、与党は議会の過半数を失った。

内閣不信任決議が通過し、野党に政権が移行した。

幸助はこの事を予測していたため、有り金はたいて株に注ぎ込み、今回の騒ぎで日本企業の株価がドン底に墜ちた瞬間に買いまくり莫大な利益を上げた。

 

その金と株主としての力で、暗殺後の混乱する袁家の必要とする物資を安く仕入れて支援した

幸助は一人息子を殺され掛けて激怒し、反袁家派閥の根絶やしに掛かったのだ。

支援物資の中には盗聴器や無線機などが多数含まれ、袁家は女官達に日本製の化粧品やお菓子を与えて籠絡し、宮廷のあちこちに装飾品に偽装した盗聴器を設置させた。

これにより宦官や官吏の会話を調べ、党錮の禁では正確に反袁家派閥を狙い打つ事が可能になった。

この仕事を任された張勲の実家は、幸助の資料を元に新たに設立された袁家情報部を取り仕切る事になる。

また皇帝を始めとした要所に日本製品を献上して、暗殺の罪で反袁家派閥に厳罰が下るように工作した。

これにより党錮の禁は史実より遥かに厳しい粛清となり、史実で流刑で済んだ人間達が軒並み処刑されていった。

その代わり盗聴による正確な情報のお蔭で、史実では多数いた冤罪被害者はほとんど出さなかった。

 

さて幸助はこれまで新通貨導入や農業革命、工場設置、遊牧民族との貿易など袁家で多くの業績を成し遂げてきたが、外国人イコール蛮族と見なされ蔑視される中国では、幸助は袁家の外では侮られずうまく交渉を行う事は出来ない。

また異世界の事を袁家以外に知られないようにするためにも、幸助は表舞台に出る訳にはいかなかった。

幸助の代わりに表に出たのが田豊だった。

田豊は袁家の外への交渉を、幸助の指示に従って行っていた。

幸助は相手の事情に合わせて、田豊に交渉のやり方を手取り足取り指示して教え込み、なぜこの相手にはこのように交渉するか、理由もキチンと懇切丁寧に説明していた。

出会った時はまだ中学生ぐらいの年齢だった田豊は、幸助の教えを乾いた大地が水を吸い込むように吸収し交渉術を身に付けていった。

袁家の外からは、幸助のした事のほとんどは田豊の業績と思われていた。

その事を田豊はひどく気に病み、心の中は幸助への申し訳無さでいっぱいだった。

(幸助様、本当は幸助様の功績なのに悔しいです。

いつか幸助様が表舞台に出られるように、世の中を変えてみせます!)

一方幸助は袁家から田豊が疎まれていると思い込んでいたため、善意で田豊の立場を改善してやっているつもりだった。

だがこのお蔭で幸助は自覚せずに田豊の最大の弱点を矯正していた。

田豊の最大の弱点は対人コミュニケーション能力の致命的な低さである。

この為どんなに優れた策を建てても、主君に採用して貰えない。

他の長所全てを帳消しにする、致命的な欠点だった。

おそらく知恵を磨こうと学問ばかりに励み、他人と付き合う事が少なかったためだろう。

だがこの世界では幸助の交渉術を学び、幸助の代理として官吏達や袁家の幹部達と付き合って交渉に駆け回ったため、対人コミュニケーション能力を大きく向上させる事が出来た。

田豊はスーパー田豊に進化した。

 

今日も田豊は涼州との間を行き来していた。

袁家の元に涼州から「行儀見習い」と称して、豪族達の子弟を送りたいと申し出てきたのだ。

先の袁逢暗殺事件とその後の清流派粛清で終わった政争で、涼州豪族達はすぐに旗幟を鮮明にして袁家支持を打ち出す事が出来なかった。

涼州は洛陽から遠すぎて、知らせが入るのに時間が掛かりすぎるのだから仕方ないのだが、官位や経済支援を散々受けて既に袁家派閥と見なされていたのに、何もしなかったというのは外聞が悪すぎた。

そこで子弟を人質に出す事で改めて袁家に忠誠を示そうというのだ。

 

その受け入れの調整であちこち駆け回りながら、田豊は袁家の支配地域とそれ以外の土地の経済格差に眼を見張った。

洛陽と袁家支配地域、涼州と各々を結ぶ街道沿いは農業革命で安い食料が溢れ、活気に溢れていた。

袁家は生命線たる涼州との物流を改善するべく、幸助が持ち込んだセメントと学校校庭地ならし用ローラーを使って街道の大規模整備を行っていた。

「思い込んだら中華の道を~♪」

ローラーを牽く工事人夫達の戯れ歌が響き、不足する労働力を補うべく流民達が次々に雇われていた。

拡大する経済に充分な通貨が供給され、緩やかなインフレが起きていた。

それに対し、それ以外の土地はこれまで通りの非効率な農業しか無く、袁家支配地域から安い食料が流入したため食料価格が下落していた。

地方貴族達は税で徴収した食料が高く売れず、財政難を補うため増税していたが、これは流民の増大と袁家支配地域への流入を加速する悪手だった。

食料価格が安くなっていなかったら、反乱や暴動が起きていただろう。

農村は荒廃して社会不安が増大し、新興宗教が流行りだしそうな状況になっていた。

 

田豊の報告を聞いた幸助は、考え込んでいた。

(そういえばそろそろ史実の黄巾の乱の時期が近い。

これだけ変えたんだから、そのままの形では起きないだろうけど、用心は必要だな。

万一治安が大幅に悪化するような事が起きたら、アメリカが直接介入しかねない。

新興宗教は厄介だ、どうしたらいいかな?

そうだ、宗教には宗教。

こちらが制御できる別の宗教を持ち込んで、黄巾の元になる太平道に先んじて、信者になりそうな人間をみんな確保してしまったらどうだろう?

そういや、春都が下級生の家の教会が破門されて困ってるとかで、女の子二人に飯喰わしてたな。

ちょっくら行ってみて、そこの神父がどんな人間か見てみるか。

後田豊さん全然色仕掛けして来ない所見るとハニトラは私の誤解だったんだな。

勘違いからずっと面倒見てたせいで、そういう関係だと回りから見なされてしまった以上責任取らなきゃな。

春都と家族会議しなくちゃ、指のサイズも調べておくか)

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