1月28日一部改訂しました。
まどマギ世界に青い色の髪の毛の人間はいないと書きましたが、さやかちゃんが青なのを思い出したからです。
誠に失礼致しました。
謹んでお詫び申し上げます。
アメリカ異世界調査部隊はこの世界についての極度の情報不足を解消すべく、作戦会議を開いていた。
なにせ天体観測と無人偵察機を使った調査では、地形が中国に似ている事と天体は地球から見える物と変わらない事位しかわからないからだ。
この世界が一見地球そっくりであるが、別世界である事は米軍も把握していた。
接触した漢帝国の主要人物ほぼ全てが女性になっているのだから、気付かない筈が無い。
こうした違いがある以上、見えない場所が地球と同じとは限らない。
極端な話、実は地球と全然違っていて、アメリカ大陸が存在しないという可能性さえあり得るのだ。
この問題解決のプランについて、空軍参謀のルメイ中佐がプレゼンテーションを行った。
「諸君、この問題を一撃で解決する手段がある。
人工衛星の打ち上げだ!」
「戦車の持ち込みさえ苦労しているのに、打ち上げロケットだと?
何を馬鹿げた事を言うか!」
「空軍だけあって地に足が着いていないな」と反論と罵倒が殺到した。
だが、ルメイ中佐は淡々と世界中へ偵察を派遣するのに係る時間、必要とする航空機の大きさと燃料と整備部品の量、そうした大型機を多数運用するのに必要な飛行場の大きさと建設用重機の数の計算結果を突き付けた。
その膨大な量と必要な時間の長さに対し、打ち上げ施設とロケット一基、トータルで見た場合のコストと時間は遥かに少ない事を理路整然と説明し、反論を悉く論破した。
ゲートを通してロケットを持ち込む困難については、一転して困難だからこそやる値打ちが有るのだと熱く語って盛り上げ、共にアメリカンドリームを掴み取り、いつか我々をハリウッドで映画化して貰おうと叫んで、「USA!USA!!」の大合唱で迎えられた。
直ちにプロジェクトチームが組まれ、打ち上げ用資材と輸送手段の調達が始まった。
開発に成功したばかりの比較的小型のミノタウロスⅣ型ロケットは全高23,88m直径2,34mの四段ロケットだ。
大型観光バスが12m弱だから約二台分の長さになる。
とはいっても一段ずつバラして運べばいいので、一段当たり大体6mでしかない。
ロケット本体だけでなく、危険極まりないロケット燃料や発射台建設資材、ロケット追跡用レーダーや管制施設などが様々な形に偽装されて、日本の市街地を通りゲートを抜けて送り込まれた。
袁家が用意した洛陽郊外にある練兵場には発射台が突貫工事で建設され、ロケットが組み立てられた。
最初アメリカ側から発射台建設の許可願いが出た時、袁家は何を言っているか理解出来なかったが、幸助の説明でやっと理解して、派手なロケット打ち上げを見せれば皇帝のご機嫌取りに使えるかと、許可を出していた。
打ち上げは無事成功し、行幸して見学した皇帝は大いに感銘を受け、アメリカ側で主導したルメイ中佐に褒美を取らせた。
この場にいた誰一人として、人工衛星を二世紀の世界で打ち上げる事の意味をわかっている者はいなかった。
この時代、星が途轍もなく遠い場所にある太陽だと理解している人間はほとんど存在しない。
この時代の世界中の人々にとり、星とは神々の座す所か人々の運命を司る神秘な物だと思われていた。
最近でさえヒトラーも占星術士に頼ったり、戦後アメリカの大統領でさえ占星術士の意見で条約調印の日時を決めていた位なのだ。
ましてこの時代、占星術は科学として扱われ、国家方針を決めるのに堂々と使われる時代なのだ。
そんな世界に、色々機能を詰め込んで大型の衛星になったため、目でハッキリ見えて凄い速度で動く新しい星なんてトンデモな物が、突然出現したらどうなるか?
世界中にパニックが広がった。
天動説の体系化を行う筈の大学者プトレマイオスは完成したばかりの著作を焼き捨て、ローマ帝国で五賢帝最後の皇帝が後継者の変更を考え、ゲルマン人の族長が部族の進出方向を変更し、インドのカニシカ王がより仏教にのめり込んでヒンズー教徒を強制改宗させようとして内戦が始まり、中米のマヤ文明では人間の生け贄が禁じられる宗教革命が起き、南米では出来たばかりのモチェ王国で逆に大勢の人間の生け贄が捧げられ、それが切っ掛けで内戦に突入した。
文明国から未開の部族まで、世界中てんやわんやの大騒ぎの中、何も知らない米軍は打ち上げ成功パーティーを盛大に開き、ルメイ中佐は勲章貰って昇進していた。
そして漢帝国もパニックの例外では無い。
古代中国では天の中心たる北極星は皇帝を象徴する神聖な物であり、天に新しい星(彗星等)が現れるのは天の地上への警告と思われていた。
もちろん皇帝や袁家など洛陽にいる上層部は皆説明を受け、あれは星では無く、打ち上げた物が空高く飛んでいるだけだと理解していた。
だがテレビもラジオも新聞も無い漢帝国では、それ以外の人々にはそれは伝わらない。
たとえ伝わっても、人が星を作ったなぞあまりにトンデモ話なので、誰も信じなかった。
洛陽にいる下級官吏や軍人達にも伝わっていないし、まして地方豪族達はまったく知らない。
このロケット打ち上げこそ、漢帝国動乱の号砲となった。
元々袁家の農業革命による豊作貧乏が続き、地方豪族の不満は限界に達していた。
彼等が暴発しなかったのは大義名分が何もなかったからだ。
豊作にした事を理由に袁家を弾劾し反旗を翻すのは、流石に無理筋だった。
だが天が政治を嘆き、警告を送ったとなれば話が変わる。
党錮の禁で地方に逃げ延びていた儒家が扇動し、汚らわしい蛮族と交易するのみならず洛陽にまで入れたから天が怒っているのだと煽りたてた。
皇帝を惑わし、蛮族に中華を売り渡す袁家を撃てと、袁家が普及させた印刷機を使い大量生産されたスローガンのポスターが、あちこちの役所や門に張り出された。
「蒼天既に怒り、尊皇攘夷当に立つべし」
袁家の派閥と見なされていた役人達があちこちの地方で暗殺される事件が頻々と発生した。
袁家情報部は、これら地方の事件の情報収集と役人の警備にマンパワーを吸いとられてしまい、洛陽が手薄になった時それは起きた。
その日袁紹は袁術と共に、二人の皇子の所に献上品を届けに訪問・・・と言うのは口実で、自慢に訪れていた。
袁紹が初めてのバイトに行き、初めて円の給与を貰って舞い上がり、全額お土産を買うのに使い、献上という名の配りに来たのだ。
自分が好きに使える円を握り締めて買い物する夢のために、春都や佐倉三姉妹について日本の事を散々勉強し、米軍に泣き付いて年齢と身元を誤魔化し、アメリカ資本の某ハンバーガーショップでのバイトに漕ぎ着けたのだ。
ドリルヘアーを揺らして、千円スマイルで「いらっしゃいませ!」という袁紹様はカルト的な人気が出て、行列が出来る程だった。
初給与の買い物には春都と佐倉三姉妹を荷物持ちに従え、幸せいっぱい、笑顔いっぱい。
全額お土産に使ってしまい、自分の分のお金がなくなって悄気ている袁紹に呆れた春都は、自分の小遣いから袁紹の分の土産を持たせた。
なお袁術は袁紹のバイトに自分も一緒に参加すると駄々をこねた。
「麗羽姉さまだけ買い物出来るなんてズルイのじゃ~!
妾もマットでバイトして、ハーゲンダックをお腹痛くなるまで食べてみたいのじゃ!」
どう見ても子供にしか見えないから、労働基準法に引っ掛かって無理と言われベソを書いた挙げ句、幸助のトランクケースに密航して日本へ行こうと企んだ。
重量で見破られて袁槐に死ぬほど怒られ、張勲には置いて行こうとした事でしこたま言われ凹んでいたが、袁紹が袁術の分のお土産でハーゲンダックをいっぱい買って来たので直ぐにご機嫌になった。
皇子には、まず引き連れてきた董卓と馬岱(馬超は粗相しないか不安がられて代わりに馬岱が来た)を紹介した後、可愛いデザインの文房具と電卓をそれぞれに献上した。
和気藹々と日本の土産話を始めた時、俄に宮中が騒がしくなり悲鳴が響き始めた。
「何事ですの?!」
袁紹の問いに隣の控え室にいた春都と佐倉三姉妹が答えた。
「「クーデターだ!!」」
大将軍何進の禁軍(宮中警備近衛軍)が突如宮中に侵入、袁隗を始めとした袁一族を誅殺し、皇帝たる霊帝を弑逆したのだ。
宮中にいた宦官や官吏達も悉く口封じに殺戮された。
禁軍の兵士達には袁家が皇帝を弑逆したため、已む無く宮中に突入したと騙し、二人の皇子を押さえて何皇后の後見で帝国を支配するつもりだった。
なぜ何進がこのような暴挙に走ったか?
原因は幸助が持ち込み、袁家が霊帝に献上した様々な娯楽用品にあった。
それまでは皇帝と云えど、娯楽といえば基本酒と女とギャンブル位しかなかった。
だから現代製品が持ち込まれる前は何皇后の所をよく訪れていた。
だがボードゲームやらマンガやら献上されて、足が遠のき始めた。
決定打となったのは、米軍がゲート経由で通信インフラを整備し、洛陽周辺でのインターネット環境が使えるようになった事である。
二次元のキャラに霊帝は嵌まり、皇后に無関心になった。
皇后は不満を溜め込み、何進も失脚するのではないかと不安に駈られていた。
そんな時に尊皇攘夷騒ぎが起き、今目の前に手薄になった宮中があり、袁一族が全員中にいる。
史実の十常待並みに地方豪族から悪評を立てられている袁家を倒せば、圧倒的な支持で磐石な地位を築けるのではないか?
「敵は宮中にあり!!
陛下を救え!!宮中にいる者は全て逆賊ぞ、降伏も認めず悉く殺せえ!!」
何進は誘惑に負けた。
米軍の事をきちんと良く知っていたら、誘惑に負けなかったろう。
発作的に起こした行動のため、間際になるまで誰にも相談すらしていないため、盗聴網にもかからなかった。
洛陽北部尉に就任したばかりの曹操は、宮中の方から鬨の声が聞こえ、煙が上がっているのに気付いた。
「兵の半分を門の守備に残し、残りは着いて来なさい!!
誰も門を通してならないわよ!
春蘭、秋蘭行くわよ!!」
曹操隊は、宮中へ向かって大通りを突進して行った。
洛陽の一番長い日の始まりだった。
調べたら思ったよりロケットが小さくて、驚きました。
元大陸間弾道弾を、一部設計いじって作ったので小型だそうです。
追伸、五賢帝最後の一人は大秦国王安敦さんです。