この当時のアメリカの政権の行動を参考に・・・結論魔王モード。
洛陽市内袁家の屋敷では顔良と文醜が私兵を引き連れ、宮中への出撃準備に追われていた。
以前盗聴網構築のため幸助が持ち込んでいた無線機で、春都から急報が入ったのだ。
今屋敷には袁家の者は居ないので、使用人に避難を命じて後顧の憂いを断ち、全力出撃する。
屋敷に駐留していた米軍特殊部隊の隊長が
二人を激励し、自分達が同行出来ない替わりに私物のライフルを貸してくれた。
「俺達が屋敷は必ず守るから、安心して行って来い!」
「「有り難う!」」
手を振って跳び出して行く二人を見送った後、隊長は手をグッと握り締め暗然と呟いた。
「すまん、許してくれ」
「華淋様、斥候が禁軍が宮中に攻め込んでいるのを確認しました。
周囲が包囲され、道路が皆封鎖されています」
「なるほど、何進が乱心したということね。
秋蘭、私が先頭に立つから、兵を後続させなさい。
ちょっと変わった道を通るから、しっかり付いて来なさいね♪」
曹操隊は裏路地や建物と建物の間の狭い隙間、低い塀を乗り越えて人の家の庭を通過し、浸透突破を開始した。
「あ~ら、食事中ご免なさいね♪」
時には家の中の食事中の部屋も通過したが、鬼の北部尉の進路を邪魔出来る度胸の有る者は居なかった。
「懐かしいわねえ。
昔暴れていた頃、警吏から逃げるのによく使った道なのよ♪」
華淋様の前に道は無く、通った後に道は出来る♪
控え室にいた春都達は皇子二人を保護して脱出を開始した。
この場で最年長の春都が素早く仕切った。
「誰も武器持って無い状態で、
長引いたらこっちが不利だ。
時間を掛けずに脱出するために、ひたすらまっすぐ突き進むぞ!
俺達が派手に立ち回れば立ち回る程、敵を惹き付けて皇帝陛下や袁隗様の方に回る敵が少なくなる!
杏子、恋子、其処の壁ぶち破れえ!!
戸口は使わず、出来るだけ壁破って進むぞ!!」
「「「えええええ?!」」」
宮中の建物を破壊しまくるという漢帝国の貴族には思い付かない、不敬極まりない破天荒な作戦に仰天する袁紹、董卓、馬岱を他所に、二人の皇子は顔を見合せて頷き合うと命じた。
「「構わぬ、やれい!!」」
杏子と恋子は欠片も躊躇わずタブルライダーキックモドキでぶち破った。
袁術は派手な展開にキャッキャッと大喜びだった。
「いけー、いけー、ルパン戦法じゃあ!」
「美羽様、それを言ったら五ェ門戦法でしょうが?」
「いいんじゃよ、細かい事は♪」
突っ込む張勲と袁術の遣り取りに、緊張していた皆の顔に少しだけ笑顔が戻った。
先頭に最強の佐倉三姉妹を押し立て、宮中に詳しい袁紹が頭を抱えながら、三姉妹の後ろから進路を指示した。
二人の皇子とお付きの文官や女官の前後を董卓と馬岱が固め、袁術を背負った春都と張勲が殿を務めた。
壁をぶち破っていきなり現れる非常識な一行に、禁軍の兵士達はマトモに対応出来ず次々と奇襲を受けてぶちのめされ、武器を奪われた。
壁の穴から追跡しようとする敵には、春都が蹴りで柱をへし折って崩したり、袁家が試作していた火薬玉を張勲が放り投げて壁を吹き飛ばし足止めした。
「私のようなか弱い文官にこんな後衛をやらせるなんて、最低な男ですねえ」
「いや、俺が側にいれば張勲や袁術ちゃんを守れると思ったからだよ!
爆弾投げるか弱い文官が何処の世界にいるんだよ?!
だいたいなんでそんな物持っているんだ?
宮中は武器持ち込み禁止じゃないのかよ?」
「いやですねえ、これは刃物でも弓矢でも毒でもありませんから、漢の法の上では武器ではありません。
火打石と同じ発火の道具です。
持っているのは袁術様に手を出そうとしたら、あなたを吹っ飛ばすために決まっているでしょう」
「んな事するかあー!!
袁術ちゃん何歳だと思ってるんだよ。
俺はこんなおチビちゃんに手を出したりしねえよ!!」
「フン、どうだか?
ま~た三人もお相手を増やして、内一人は袁術様とたいして年が変わらないじゃないですか。
一体何人女を泣かせたら気が済むんですか?」
袁術が泣きそうな顔で春都の背中から顔を出した。
「のう、春兄は妾が嫌いなのかや?
これまで遊んでくれたのは、本当はイヤだったのかえ?」
「そんなわけあるか!
ああ、大きい声出して悪かったな。
俺は袁術ちゃんは大好きだし、俺の命に代えても守るからな!」
張勲が小声で呟いた。
「ほら、泣かせた。
そういうところですよ、この女たらし」
霊帝と袁隗を玉座の間で殺害後、本陣を中庭に移動していた何進は皇子の行方についての報告に困惑していた。
宮中の見取り図を元に、発見報告有った場所を包囲するように予備の兵を送り込んで行くのだが、何度もアッサリと包囲を抜けてしまうのだ。
次々と予備兵力を注ぎ込んで行くが、完全に翻弄されていた。
だがその時何進は気付いた。
発見場所を繋ぐと一本の直線になり、そしてその先に厩舎が有る事を。
「い、いかん!兵を先回りさせろ、急げえ!!」
「閣下、もう予備が居りません。
全て追跡に回っております」
「ええい、ならば本陣全員付いて来い!!
後外周の封鎖に回した兵に伝令を送れ!
厩舎から外に出るルートを固めろと!
全てを得るか、身の破滅か、二つに一つ、運命を掴み取るぞ!!」
最後の壁をぶち破り、建物の外に出た一行は厩舎に急ぐが、お付きの文官や女官が足が遅く手間取っていた。
其処へ迂回してやって来た何進直卒の部隊が殺到して来る。
春都は袁術を張勲に渡した。
「袁術ちゃん、あいつらぶちのめしたら行くから先に行っててくれ。
張勲頼んだぞ」
「死んで袁術様と私を泣かしたら許しませんからね!
閻魔大王に紙銭百万貫の賄賂送って、ウソつきの罪で舌を抜かせて貰いますから」
「こわっ!て言うか閻魔大王って裁判官なのに賄賂通じるのかよ?!
張勲済まねえ、冗談のお蔭で少し気が楽になった」
「えっ?冗談?何が?」
「おいいっ?!」
桃に皆の護衛を頼んで同行させ、杏子と恋子と三人で門の所に戦列を組み立ちはだかった。
何進は吼えた。
「チッ、武将クラスが三人か!
禁軍を舐めるなよ!
これまで武将クラスの人間が暴れる事件は何度も有ったわ!
全て鎮圧してきた禁軍のやり方を教育してやれい!」
洛陽郊外の元練兵場に建設された宇宙基地では、人工衛星からのデータを元にこの世界の地図の作成が行われていた。
基地の回りはフェンスに囲まれ、四方に見張台が建ち、監視カメラ以外にも様々なセンサーが設置されていた。
その他にも常に複数のドローンが飛行し、広域を監視していた。
これまであちこちの政情不安な発展途上国に駐屯してきた経験の有る米軍は、この未知の世界でも油断はしていなかった。
一見歓迎されているように見えても、政変ひとつで全部一気にひっくり返るのが発展途上国である。
今洛陽上空を哨戒飛行していたドローンが、異変を探知した。
宮中に軍隊が突入し、一部では火災も発生している。
明らかにクーデターだった。
これまでアメリカにやや友好的だった袁家の政権を転覆し、より民族主義的な政権を樹立しようという試みである可能性が高いだろう。
こうした事態の発生の可能性については、他の様々な可能性と共に、既に検討されていた。
アメリカは戦前の戦争計画レインボープランに於いて、世界中様々な国との戦争作戦計画を策定している。
日本やドイツはもちろん、レッドプラン、つまり当時最大の友好国であった対イギリス戦計画や、驚く無かれアメリカで内戦が始まった場合の作戦計画まで存在した。
恐らく現在でもオレンジプラン、対日戦争作戦計画に当たる物は存在しているのだろう。
初めてのお使い、もとい異世界で慎重になっていた米軍は、当然そうした場合の作戦計画を策定していた。
作戦計画に基づいて、基地の自衛の為の戦闘準備を開始すると共に、戦況観察から近衛部隊が丸ごと参加しているクーデター側の勝利を予測し、ホワイトハウスに報告して指示を受けた。
洛陽市内、袁家の屋敷に駐留している特殊部隊から通信が入った。
「司令部!司令部!こちらはいつでも出られるぞ!
出撃許可を、今なら袁家首脳陣や皇帝を救出出来る可能性が高い!!」
「ネガティブ。
自衛以外の戦闘許可は出ていない。
本国は不介入を決定した。
諸君はゲートの守備に専念せよ」
「!!!、バカな!クーデター側は我々に敵対的な・・・まさかっ?!」
「余計な憶測は不要だ、待機せよ」
別の無人機オペレーターから報告が入る。
「ルメイ司令、当基地に歩兵約二個中隊相当の集団が攻撃隊形で接近中、指示を」
「防衛マニュアルに従い、フェンスを越えて来てから攻撃する。
この戦闘は正当防衛であると、明白な証拠を残さねばならない。
しかしながら、フェンスを越えた後どのような手段で攻撃するかは、本官の判断に任されている。
よって以下の手段で攻撃する」
淡々と攻撃方針を説明するルメイ大佐の言葉に、最初は本国の方針に真っ赤な顔で憤慨していた、オペレーターや参謀達の顔色は蒼白に変わっていった。
袁家が呼び込んだ汚らわしい蛮族に、身の程を弁えさせるべく侵攻してきた禁軍別動隊指揮官は、あまりの抵抗の無さに首を傾げた。
相手も蛮族とはいえ軍隊だというのに、柵を倒しても矢の一本も飛んで来ない。
かといって降伏もしないし、逃げる様子も無い。
数十人しか居ないという話だし、十倍の兵力差に怯えて震えているのだろうか?
もしも黄巾の乱が起きていて、豊富に実戦経験を積む事が出来た指揮官達が存在していれば、ワナを疑い偵察を出していたろう。
だがこの世界では黄巾の乱が起きなかったため、いまだ実戦経験ゼロの指揮官は、前進を止めなかった。
変なやたら長いクネクネした太い筒のような物がいくつも転がっていたが、簡単に跨げる程度の物で進撃の邪魔にもならない。
そう思った時、その物体の先端部から大量の液体が噴出してきた。
大型ロケット導入のため用意されていた液体ロケット燃料だった。
白煙を上げるヒドラジンを吸い込み肺を灼かれてのたうち回る者や、液体酸素を全身に被り氷像と化す者など阿鼻叫喚の騒ぎが起きたが、本当の地獄はこれからだった。
一発のロケット弾が着弾し、何名かを即死させた。
その時、即死出来た者達は幸運だった。
バラ撒かれていたロケット燃料が瞬く間に燃え上がり、灼熱地獄の中数百名の兵士達が火達磨になって踊る死の舞踏が始まった。
指令室の中にまで数百名の断末魔の絶叫が響き、オペレーター達が吐き気を堪える中、後ろ側から声が響いた。
「ちゃんと映像記録は取れているかね?」
基地司令のルメイ大佐は仏像のような静かな笑みを浮かべていた。
「は、はい、記録は取れていますが、戦車を出せばここまでの事をせずとも済んだのでは?」
「フム、上官に対するその態度はあまり褒められた物では無いが、その疑問は皆共有しているだろうから答えよう。
理由は二つ有る。
ひとつは他の民族全てを蛮族と蔑む漢帝国に対し、合衆国が蛮族ではない対等な存在だと認めさせるためには、「恐怖と衝撃」を彼等の心に刻み込む必要があると上が判断しているからだ。
我々がこれまでずっと紳士的に振る舞ったため、漢帝国には我々を侮る者達が大勢いる。
合衆国が敵には容赦しない恐るべき存在だと漢帝国に理解させねばならない。
その為にはこうした戦闘が起きねばならないのだ。
二つ目の理由はこの基地の皆に褒美を下さった霊帝陛下への手向けだ。
何も出来なかった我々だが、せめてこのぐらいの仇討ちはしたいではないか。
たとえ下さったのが、日本のお金のオモチャでもね。
さてペリー准将に報告して、ブラックシップ計画の前提条件がひとつ充たされたと伝えたまえ」
ルメイ大佐は知らない。
霊帝が褒美をお金にするか、インターネットに触発された霊帝自作の色々ヤバイイラストにするかギリギリまで迷っていた事を。
もしそうなっていたら、霊帝の「同じ趣味だと思って、喜んで貰えると思った」発言でルメイ大佐の社会的地位がドン底に墜ちていた未来があり得た事を知らない。
知らぬが仏。
中国の古典民話等を読むと、地獄とは天帝という皇帝の下の亡者管理の一役所でしかありません。
閻魔大王も中間管理職の役人です。
中国のあの世は役人が役所に務め、金があり、賄賂が通じ、天兵という軍隊が有り、書類が行き交い、改竄される現世そのまんまの世界です。
なお現世で遺族が紙銭というお供え物を燃やすと、あの世の亡者の所にその金額が送金され、亡者の生活費や賄賂に使われます。
筆者は死んでもそんな世知辛い世界は勘弁して欲しいですが、中国の人達には理想の世界なのでしょう。