クーデター決着です。
なお、過去に投稿した話を一部改訂しました。
髪の毛が青系統の人間はまどマギ地球側にいないと書きましたが、さやかちゃんが青色でした。
お詫び申し上げ、第六話のその部分を訂正、削除しました。
筆者はさやかちゃんはマドカより好きなキャラなのに、なぜか頭に浮かばず恥ずかしい限りです。
宮中へ急ぐ顔良・文醜隊は、大通りを封鎖している禁軍とぶつかった。
徴発した荷車と大盾を並べてバリケードを築いている禁軍は袁の旗を見るや、即座に矢を射かけてきた。
先頭に立っていた文醜は、大剣で矢を弾きつつ叫んだ。
「装甲擲弾兵前へ!!
野郎共、逆賊共をぶっ飛ばせえ!!」
文醜隊から四人一組のチームが幾つも進み出た。
盾兵二人が矢を防ぎ、その陰で一人が幸助がまとめて買い叩いて持ち込んだ百円ライターで火縄に点火し、最後の一人がその火縄が付いたバスケットボール大の球体、炮烙玉を綱でグルグル振り回して、バリケードの中に放り込んだ。
外貨節約のために出来る物は自国で生産しようと努力し、火薬の生産に成功した袁家の新兵科、装甲擲弾兵の初陣だった。
何が投げ込まれたか分からないが、危険な物だと覚った禁軍指揮官が投げ返す事を命じようと立ち上がった瞬間、「ターン」と音がして額に穴が空いて指揮官は絶命した。
後方の馬上から顔良がライフルで狙撃したのだ。
正面から銃を撃たれたのなら、気を使える指揮官は剣で弾けたろう。
だが、文醜と放り込まれた炮烙玉に気を取られていた所に、視界外から存在すら知らぬ新兵器で攻撃されてはどうしようもなかった。
指揮官が訳の分からない死に方をして動揺する兵士達を、火薬がたっぷり詰め込まれた炮烙玉がバリケード毎吹き飛ばし、士気が崩壊した生き残りの兵士達は逃げ出した。
ほとんど損害を受けず、十分も掛けずにバリケードを突破した顔良・文醜隊は、突進を再開した。
浸透突破に成功した曹操隊は、一度も戦闘する事無く宮中の外壁の所に辿り着いた
「私が宮中に潜り込むために、昔作った穴がここにあるのよね」
「はいいっ?!
華淋様それはマズイのでは?」
「ン~、そうはいってもね秋蘭、お祖父様に会うのに、いちいち幾つも門で停められて身元確認とか面倒くさかったのよね。
あ、もちろん官職に就いた後は使ってないわよ。
若☆気☆の☆至☆り♪
まだ直してないわね、よしよし♪
あら、どうしたの皆?」
夏侯惇でさえ、胃を押さえていた。
無理もない、日本で言えば皇居の塀に勝手に穴空けて、出入りしていたような物だからだ。
「「華淋様、お願いですから自重して下さいー!!」」
何進の指示の元、禁軍の兵士達が動き出す。
禁軍は宮中を守るのが仕事だけあって、失脚した豪族や官吏を捕らえたり、刺客と戦ったりする、一般の軍隊とは違う仕事が多々ある。
その禁軍の本陣だけあって、色々な特殊な装備を持った兵が配備されていた。
連弩(ハンドルを廻すと自動装填される弩)を持った部隊が、次々と矢を浴びせかけて注意を惹き付ける。
悉く剣で矢を弾く三人に、目潰しを入れた小袋を大量に投げつける。
目への直撃は防いでいるが、破れた袋から目潰しの粉がバラ撒かれ、三人が動く事で濛々と立ち込めてきた。
目から涙が止まらないが、後少しだけ持ちこたえれば何とかなると耐えていた。
完全にそちらに注意を取られた三人だが、戦術センスに優れた杏子だけは違和感を感じ、警戒を強めていた。
(なぜ、コイツらは焦っていないんだ?
皇子が脱出する前に、アタシ達を倒さなければならないんじゃないのか?
なのに鬨の声を挙げるだけで、何故弱体化したアタシ達に突撃してこない?)
警戒を強めていたのと、太平道の刺客とやり合った経験が無ければ、気付かなかったろう。
「後ろ側」からの微かな殺気と、鬨の
声に掻き消されていた風を切る音に。
振り向いた目の前に、後ろからの弩の矢が迫っていた。
三発がそれぞれを狙っている。
恋子を狙った一発目が近くを通過するのを剣で弾き、自分を狙った二発目を躱しながら、春都を狙った三発目を手で掴んで投げ返した。
投げ返した矢が肩に命中した禁軍兵士が、口から血の混じった泡を吹いて倒れた。
「春兄、後ろに敵が!!
くそっ、コイツら毒矢を使ってやがる!」
軽装の禁軍兵士達が人間ピラミッドを組んで梯子代わりにして、弩を背負って高さ五メートルもある塀をよじ登り、背後から奇襲してきたのだ。
「杏子っ、恋子っ、抜かれたならここで守る意味は無え、下がるぞ!」
春都は恋子と門の柱を両方蹴りで蹴り砕いて門を倒壊させて足止めし、恋子を先頭に後方に続々と塀を乗り越えて来る軽装の禁軍兵士達を蹴散らしながら、退却した。
「「どけぇ!!」」
先行して皇子達の所へ行こうとしていた禁軍兵士達を率いる武将が二人、春都達を足止めしようと先頭の恋子の前に立ちはだかり、一瞬で二人共吹き飛び塀にめり込んでいた。
「邪魔・・・」
門から下がる時失敬してきた二メートル以上有る、門の閂棒のぶっとい角材で凪払ったのだ。
強い筈の指揮官が瞬殺されて動揺する残りの禁軍兵士達は、杏子と春都が追い越しながら蹂躙した。
後ろからは倒壊した門を乗り越え、禁軍主力が津波のように押し寄せて追撃してくる。
厩舎からの出口では皇子一行と、足止めしようとする禁軍との戦闘になっていた。
外周を封鎖していた禁軍の一部が戻ってきたのだ。
桃と袁紹と馬岱が外周からの橋の上で戦いながら少しずつ前進し、董卓は皇子と非戦闘員達を馬車に乗せて手綱を握っていたが、なかなか前進出来ず焦っていた。
「杏子、恋子、桃、突撃だ!!
道を切り開けえ!!
残りの総員後に続けえ!
張勲、残りの火薬玉全部貸してくれ!!」
橋の上を埋めつくしていた敵は、佐倉三姉妹が鉄砲玉の様な勢いで突っ込むと、まるでボウリングのピンの様に次々と吹っ飛んで行く。
春都は唖然として眺めていた。
「うわっ、スゲエ?!
あの三姉妹が揃うとあそこまで強かったのか?!
鍛練でメチャクチャ強いのはわかっていたけど、軍勢相手は初めてだからあそこまで強いとは思わなかった。
これなら何進の・・・
いやいや、皆の安全が優先だ。
余計な欲かいて、死人が出たら目も当てられない。
さあて、俺は俺の出来る事をやるか!」
春都は殿となり、火薬玉をまとめて爆破して橋の渡り板を吹き飛ばした。
「これで前の敵だけに・・・、専念させてくれないか!!」
禁軍兵士達は皇子の脱出を阻止しようと、塀の上によじ登り弩を射掛けようとしていた。
その時、禁軍の後ろから襲い掛かる部隊が有った。
「春蘭、蹴散らしなさい!」
曹の旗を掲げ、禁軍の弓兵達を後ろ側から突き落として回り、これ以上の増援が来るのも阻止しているようだった。
「助かった!!」
春都はホッと一息つき、五メートルを軽く上回る大穴が空いた橋の向こう側で地団駄踏んでいる、ゴテゴテと飾りが付いた鎧を着た禁軍の偉いさんらしい奴に、おもいっきり舌を出してバカにした。
「あっかんべーだ、ざまあみやがれ!!」
皆と合流しようと反転した時、後ろでドスンと音がした。
ギョッとして振り返った春都の眼に、橋の穴を飛び越えてきた何進の姿が映った。
「バカにしおって小僧、貴様だけでもこの私の手に掛けてくれるわ!!」
凄まじい気迫で突進してきた何進の連続攻撃に、春都は防戦一方になった。
戦いが終わったと思って、完全に気が抜けていた所に奇襲を喰らったため、精神的に負けていた。
攻撃を受け損ねて撥ね飛ばされてしまい、倒れた所に何進が上から大剣を振り下ろしてきた。
とっさに倒れたまま剣で防いだが、不利な体勢でのつばぜり合いに力負けして、ジワジワと押し込まれていく。
押し込まれた春都の剣が、身体にゆっくりと食い込んでいく。
「ぐううう!!」
「そおれ、そおれ、このまま押し込んで、真っぷたつにしてくれるわ!!
グワッ!」
堀の向こう側から「ターン」と音がして、ライフル弾が何進の肩に当たり、力が緩んだ。
外周の禁軍を外側から撃破して辿り着いた顔良の狙撃だった。
春都はそのチャンスを逃がさず、両足で何進の腹を蹴り上げて撥ね飛ばした。
剣が手から落ちて起き上がろうとする何進に、腰だめに剣を構えて体ごとぶつかっていった。
剣が何進の腹部を貫いた。
「グッ、こ、こんな小僧ごときにい!
おのれえ、道連れにしてくれるわ!!」
何進の手が春都の首にかかり、腹に剣が突き刺さっているというのに、凄まじい力で首を締め上げてくる。
意識が遠くなりかけるが、辛うじて震える手でポケットから取り出した、幸助に持たされていた護身用の催涙スプレーを何進の顔に浴びせかけた。
「グワアアァ~」
激痛に眼を押さえて、春都の首から手を離した何進の背中に「ドスッ」という音がして一本の矢が突き刺さった。
「さすが秋蘭、お見事♪この距離でよくやったわ」
心臓部を貫かれた何進の眼から光が消え、ゆっくりと倒れ伏した。
「「「春兄!!遅くなってゴメン」」」
膝を突き、首を押さえてゼエゼエと息を吐く春都の所に、皇子達を文醜の所に送り届けた佐倉三姉妹を先頭に袁紹、袁術と張勲が駆け寄ってきた。
何進の死で残る禁軍は降伏し、何皇后は自害してクーデターは失敗に終わった。
ホワイトハウス地下のシチュエーションルームでは大統領に今回の漢帝国事変の結果についての説明が行われていた。
「それでクーデター側勝利との君達の自信満々の予測が間違っていた理由はなんだね?」
大統領の嫌みにペリー准将が答えた。
「言葉で説明するより、この映像を御覧ください」
大スクリーンにドローンが撮影した、突撃する佐倉三姉妹がまるでダンプトラックが全速で突っ込んだごとく、橋の上の禁軍を次々と撥ね飛ばしていくのが映った。
「こういう事です、大統領閣下。
漢帝国ではこのような気功と呼ばれる技術を身に付けた武将と呼ばれる人間が戦局を左右する事が判明しました。
一般の兵士など幾らいても、このように薙ぎ倒される存在でしかありません。
小銃しか無い兵士が戦車を相手にするような物です」
大統領は唖然として眺めていたが、質問した。
「この能力を君は技術と言ったね?
と言うことは、我々も学べばこのアメコミヒーローみたいな真似が出来るという事かね?」
「その人間の希少な素質に大きく左右されるが、身に付ける事は可能との事です」
「危険な技術だな。
一部の人間しか身に付けられず、テロリストなどが身に付けたりしたら、目も当てられない。
アメコミヒーローのような心正しい人間だけが身に付けられる訳では無いのだろう?
地球に持ち込んではならん技術だ。
この技術の研究は認めるが、習得は認められない。
現地に徹底したまえ」
「了解致しました、大統領閣下」
袁家の屋敷に駐留している特殊部隊の指揮官リッパー少佐は、そんな会話がされているとは知らず頭を悩ませていた。
仲良くなった文醜に以前武術の師匠を紹介して貰い、リッパー少佐を始めとする何人か素質の有った者が気功を習得したのまでは良かった。
新しい技術を合衆国にもたらす事が出来たのだから、喜ぶべき事であり上層部からも称賛されるだろうと、ついさっきまで思っていた。
気功を身に付けた部下達が、皆奇行に走るまでの短い間だったが。
「イエーイ♡俺の名前を言ってみろ!!」
などと奇声を発しながら、ミシンで服を作る部下達、まさか気功の副作用で奇行に?
いやいや、そうだとしたら自分はなぜ大丈夫なのだ?
悩んでいてもわからないので、聞いてみた。
「お前達は何をしているんだ?」
「はい、少佐殿、服を作っております」
「いや、それはわかっているが、なぜ服なんぞ作るんだ?」
「もちろん退役後にヒーロー活動する時のために、今からコスチュームを作る練習であります。
自分はサンダーボルトと名乗って活動したいので、稲妻模様のプリントを付けたいのであります」
頭を抱えたリッパー少佐はちょうど戻ってきた副隊長のトリニティ大尉(アンダーソン少佐の奥さん)に声を掛けた。
「トリニティ大尉、君からコイツらにガツンと言ってやってくれ」
「はい、少佐殿、お怒りはごもっともです。
あなた達根本的に間違ってるわよ。
そんなペラペラの薄い布地で戦ったりしたら、すぐに破けてしまうわ。
私を見習い、レザー系統の頑丈な布地にしなさい」
「「「エエエエ?!
そんな、ヒーロー達は皆ピッタリしたスーツ着てるじゃないですか!!」」」
「あのねえ、スーパーマンもバットマンも宇宙人の技術や金に物言わせたスーパー素材でスーツを作っているのに決まってるでしょ!!
あなた達が手に入る普通の布でコスチューム作ったら、スーパーヒーローになって大統領を目指すどころか、変質者と間違われて恥を晒す事になるわよ!
少佐殿が怒るのももっともだわ。
そうですよね、少佐殿」
「違う、そうじゃない。
いや、もういい」
(皆がそうなのに、私だけ違うという事は、おかしいのは私?
おかしいのは私なのか?)
リッパー少佐は知らない。
先行して日本に駐留していた部下達が、異世界についての参考にしようと、日本の創作を調べた事で日本文化に汚染されてしまった事を。
「「「リアル異世界キター!!!」」」
と大騒ぎして、異世界に行けばヒーローになれると信じ込んでいる事を知らない。
これが後の米軍機械化もとい気功化小隊が産声を上げた黒歴史の瞬間である。
そして軍が指示を無視したと激怒した大統領が、報復に軍の予算を大幅削減する事になる。
もちろんリッパー少佐は死ぬほど怒られ、世の理不尽さに涙した。
なお、後に大活躍して英雄になった部下が本当に大統領選挙に担ぎ出されて、リッパー大佐は死んだ目で投票していたという。
「イエーイ、大統領魂だぜい♪」
一刀君オデュセイア物語
米軍基地を脱出した一刀は、鈴々と名乗る少女に助けられ、彼女等の根城に連れていって貰った。
「桃香姉、メリケーン帝国に捕まっていた人を助けてきたのだー!」
「まあ、ひどい目に合わされたのね、大変だったでしょう」
「あ、あのメリケーン帝国っていったい?
米軍じゃないの?」
「私達の国を侵略してきた悪の帝国です。
ある日突然空から巨大な黒い船で現れ、都に降り立ち皇帝陛下を傀儡として操り、この国を支配しようとしているのです。
私達はメリケーン帝国と戦うレジスタンスです。
米軍というのは知りませんが、あなたを騙す為に化けていたのかもしれません」
「そういえば、天井を逆さに走るトンデモな奴がいたり、重たい筈の戦車が空中高く吹っ飛んでたり、おかしい事だらけだった。
あれはハリボテだったのか?」
そのころ米軍基地では、
「トリニティ少佐、少年に付けた発信器の動きが止まりました。
アジトに連れていかれた物と思われます」
「諸君!例の少年が本物の日本人で、なおかつゲートを通った記録が無いという事は、別のゲートが存在する可能性が高い。
何としても少年を救出し、第二のゲートの場所を突き止めねばならないの。
さあ、出撃よ!」
各隊員は気功小隊専用に開発されたサーフボード型ドローンの上に、凄まじい運動能力でバランスを取って立ち、それぞれ発進していった。
もちろん彼等の米軍であるという主張が、一刀君に信じて貰える事はなかった。
当然の結果であろう。
その後の一刀君の運命は知らない。
変なコスチューム着て、空飛ぶサーフボードの上に立ってやって来て、
「ヘイ、ボーイ、米軍だぜい」
信じろと言うのが無理ですよね。
後第一話にも書きましたが、一刀君物語は本編よりもっと後の時系列に起きた事です。