混ぜるな危険、クロスオーバー   作:コミッサール

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本日、この後にもう一話投稿予定です。
日常話なる物を初めて書こうとしたら、なぜかこんな話になってしまいました。
日常話には、また挑戦します。


第九話 閑話 バイト無双

袁紹がハンバーガーショップでバイトを始めたので、沢渡一家は佐倉三姉妹共々様子を見に行った。

もちろん袁紹なんて名乗れないので、在日米軍の軍人の子供という事にして、エンジェルという名前で米軍に身分証を出して貰っている。

あの袁紹がうまく出来ているか心配なのもあるが、袁家から袁隗までも見に来た為、その護衛を兼ねていた。

「幸助付き合わせて済まないね。

あの子は悪い子ではないのだが、若くして亡くなった妹の忘れ形見という事で、少し甘やかしてしまったと思っている。

それでいて私も袁逢も自分の子供では無い事で距離を置いてしまった。

そのせいか名門の血筋だけを頼りに、肩肘張って生きる子になってしまった。

春都君に面倒見て貰うようになってから、大分角が解れてきたようだが、あの子が一人でうまく出来るか心配でね」

一行は袁紹を緊張させないように、わざわざ外のドライブスルーの所でハンバーガーを買い、店内に持ち込んで座った。

 

袁紹が接客しているのとは少し離れた所に全員帽子をかぶって座り、様子を伺った。

さすがバイトの教育がしっかりしている事で有名なアメリカ資本ハンバーガーショップだけあって、袁紹もマニュアル通りそつなくこなしているようだった。

店内を見回す程の余裕はさすがに無いので、こちらには気付いていないが。

袁紹に問題は無いのだが、お客様の方に問題が発生していた。

袁紹はとっても印象的な容姿だ。

豪奢なロングの金髪をドリルヘアーに纏め、長身でスタイルが物凄い。

何よりも、頭に王冠を被っていてもおかしくない輝ける女王の如く堂々とした物腰と、ハンバーガーショップの制服のミスマッチが異彩を放っていた。

当然注目を集め、良からぬ連中が死骸にたかるハエのようにたかって来てしまった。

「お、お姉さん、写真撮ってもいいかな?!」

「お姉さん何処に住んでいるのかな?」

「モデルにデビューさせてあげるから、一緒に来なよ♡」

マニュアルに無い事態に硬直する袁紹。

都合の悪い事に店長が留守で、他のバイトは当てにならない。

袁隗が立ち上がって助け舟を出そうとした時、袁紹は笑顔を崩さず悠然と答えた。

「お客様、当店はハンバーガーショップですので、メニューにある食品とスマイル以外は販売しておりません。

当然わたくしも販売しておりません。

また今は勤務中ですのでプライベートな質問にはお答え出来ません。」

袁紹の言葉にはユーモアで偽装されているが罠が仕込まれている。

下手な返事をすれば、袁紹という人間を買おうとしたと認める事になりかねない。

もちろん防犯カメラが音声も記録してあるし、人身売買は重罪である。

袁紹はただ笑顔で立っているだけなのに、その男達の顔に汗が浮かび、威圧されていく。

「お客様、何かありましたか?」

店長が帰ってきた。

男達は我に返ると、慌てて帰っていった。

袁紹はお客様や店員達から拍手喝采を浴び、真っ赤になって照れていた。

 

その姿を袁隗は眩しい物を見るような眼で見ていたが、顔にゆっくりと笑みが拡がっていった。

「ああ、あの子はもう何があっても大丈夫だろう。

もう私が護る必要は無い」

袁隗は袁紹の回りが落ち着くのを待ってから、静かに袁紹の前の列に並んで順番を待った。

袁紹がやっと気付いて「お、おば様」と慌てたが、袁隗は笑顔のまま口の前に一本指を立てて袁紹を黙らせると注文した。

「店員さん、持ち帰りでハンバーガーを二つ包んで貰えるかな」

「は、はい、ポテトはいかがですか」

「ああ、それも二つ貰おうかな」

キチンと接客出来た袁紹を満足げに見て、袁隗は帰路に付いた。

 

「袁隗さん、せっかく来たのに袁紹ちゃんと話をしなくていいんですか?」

「いや、麗羽にはその内落ち着いてじっくりと話したい。

仕事の邪魔になってはあの子に悪いし、今日は急いで帰らなければならなくなった。

これから袁逢の墓に行って、ゆっくり語り合いたい。

あの子があんなに立派になった事を報告してやらねばならんからな。

ああそうだ、幸助何処かいい酒を売っている店を教えてくれんかな。

そこに寄って一本買っていこう。

ハンバーガーとポテトとやらを袁逢の墓に供えるのだが、飲み物が無くては怒られてしまうからの。

私も今日は酔いたい気分だ」

その日、日が傾くまで袁隗は袁逢の墓の前で満ち足りた表情で酒瓶を傾けつつ、のんびりハンバーガーとポテトを食べていた

その後多忙を極める袁隗が再び日本に来る事は無く、袁隗と袁紹はその後二度と会う事は無かった。

袁紹がバイト代で買ったお土産を配りに宮中に来た日、袁紹と袁術を含む袁一門全員が宮中に揃っているのを確認した何進は決起した。

玉座の間で致命傷を負って倒れた袁隗の耳に、何進の信じ難い命令が聞こえてきた。

「皇子以外で宮中にいる者は全て始末しろ!

真実を告げる口を完全に塞ぐのだ!!」

(ば、馬鹿な?!そんな事をしたら国を支えている官吏達が全滅してしまう!!

支える者無くて、どうして国が成り立てようか?!

国その物が滅んでしまうぞ!!

この愚か者めがァ!!

ああ、麗羽、美羽、こんな未来しか残せない不甲斐ない大人ですまぬ。

だが今の麗羽ならきっと切り抜けてくれる。

それをこの眼で見る事が出来ぬのが、唯一の心残り・・・)

 

袁紹がバイト代で買った袁隗の分のお土産は皇子の所へ先に行ったため、袁隗に渡される事は無かった。

だがもし袁隗に先に渡そうとしていれば、袁紹は袁隗と一緒に殺害されていた可能性が高い。

渡される事の無かったお土産は、袁紹が袁隗の棺に入れ、以後毎年命日にハンバーガーとポテトを墓に供えていたという。

 

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