Fate/清っと Order   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

6 / 6
リボン付き清姫(6度目)

 

 

「緊急会議です!」

「うん、意気込みは分かるけど姫の炬燵を使わないで?」

「だってここしか座るところが」

「姫の部屋を汚部屋みたいに言うのやめて? じゃなくて姫の部屋じゃなくていいじゃん。私忙しいの」

「ネーム真っ白なのに?」

「ふぎゅ」

 

 カルデア某所、刑部姫の部屋。

 そこはあらゆる英霊が闊歩するなかでも異彩を放つオタク部屋がおっきーの部屋となっている。

 その炬燵は女性サーヴァントの溜まり場になることが多く、刑部姫は宝具で閉じてやろうかと真剣に考えている。

 

 因みに一回マジでそれをやってカルデア精鋭人に突破されて部屋が滅茶苦茶になったことがあるので飽くまで考えているだけである。

 

「もうすぐバレンタインじゃないですか」

「そうだね」

「どうしましょう」

「いや知らないよ。普通に作ればいいじゃん。なに作ってもまーちゃんなら喜ぶでしょ」

「でもなんか。最近凄い人や凄い物作る人多いじゃないですか!」

「まあねぇ」

 

 身の丈のチョコだったり。聖遺物だったり。

 他の暫定ライバルたちも隙あらば清姫からマスターを略奪せんと色々計略を回してるなか。清姫がもっとも警戒してるのはその名だたる英霊ではなかった。

 

「もうほんとなんなんでしょうかね。マシュさんは」

「マシュちゃん? あの子そんな変なの作ったっけ」

「作ってませんよ。至って普通なんです。なんですけど………なんなんですかあのクオリティは!!」

 

 一番最初のハートチョコケーキでさえ西洋菓子に疎かった清姫が思わず舌を生唾を飲むぐらい綺麗で。

 その次のホワイトハートケーキなんかもう段階すっ飛ばしてなんか凄いの作りましたし。

 そのまた次のマンゴーフルーツケーキなんか、もう輝いてましたよ! (レシピ動画凄かった)

 最後なんてもう、なんですかあれ。プロですよ、プロ過ぎてマスターガチ勢も一歩引きましたもん。

 

「今年はどんなとんでもないものが出るかと思うと………」

「マシュちゃんの上達力は異常だよね。それでもきよひーには愛があるじゃない。いざとなったらあのリボン清姫とかあるじゃん。初見時にマスターの度肝抜いたさ」

 

 刑部姫がヘラヘラ笑いを浮かべながら茶かす。

 こうなると清姫は気合いを入れてリボン巻く復習をしてきます! と言って飛び出すのだが。

 

 今回は何故か頬を赤らめて炬燵布団で口許を隠した。

 

「きよひー?」

「今年は、やりません。というより、もうやりません」

「え? なんで」

「………………実は。いつも通りマスターの後方警備をしていた時なのですが」

「ストーカーね」

 

 ホワンホワンきよきよー………

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~今日もますたぁは素敵です」

 

 乙女力全快でハートが飛び交うオーラを醸し出す清姫はカフェルームで男性サーヴァントと談笑しているところを入り口から見ている。

 廊下ですれ違う人やサーヴァントもいつもの光景と対して気にすることなく通りすぎる。

 

(いったい何を話されておるのでしょうか。もう少し近付いてみましょう)

 

 ササッとカフェルームに入るゴルドルフ所長(冷や汗)の巨大な体躯にコッソリと紛れ込みマスターの2つ隣のテーブルに身を潜めた。

 

 ストーキングスキルという唯一無二のスキルを持つ彼女は半ば気配遮断的な効果(マスター限定)も付与されており、今回も最愛のマスターには気づかれていなかった。

 

 え? マスターは愛さえあれば気づくんじゃないかって? 

 それは清姫がマスターに対して集中的に気配遮断(自己暗示)を使ってるからである(きっと)

 思い込みで龍になったのだからこれぐらいはお茶の子さいさいである。

 

 してマスターと談笑しているのはロビンフッドとオリオン(熊)だった。

 いったい何を話してるのか。

 

「もうすぐバレンタインですよ」

「それで?」

「清姫どんなので来ると思う?」

「普通の奴じゃねえのか? 一昨年も去年も特に変なもの入ってなかったろ?」

「紅先生の指導の賜物だわ。チョコ饅頭で次がホールケーキ。旨かったなぁ………」

「惚気か? 惚気だなこのやろう? 俺は去年もチョコになったんだぞコラァ!!」

「うるさいクソデカ恋愛感情持ち。お前は今すぐアルテミスとイチャコラチュッチュしやがれ! 召喚してやったんだからエモエモ空間だせコラァ!」

「あーー! 足を基点に振り回さないでぇぇー!」

 

 カルデアマスター。

 数々のカップルの仲を応援するものである。

 

「いやさ。毎年恒例ながらさ。あれあるじゃない」

「あー。? 私をた・べ・て♪ っていうリボン付き清姫ってやつだろ? かー! 羨ましいなぁ、しかし身体にリボンといったらあれだよな、裸にリボ」

「クラッチ」

「ぶぎゅぅ!? ちょ、アイアンクローやめて? なんで? なんでさぁ!?」

「お前清姫でいやらしいこと考えたろ。アルテミスにチクるね」

「やめてぇ! 今度チョコになるだけじゃなく溶かされちゃう!!」

(私のために怒ってくれてる。ますたぁ素敵! 好き!)

 

 それはそれとして先ほどオリオンはなんと言ったのか? 

 裸にリボン? 裸に!? さ、流石に際どすぎますわね………でも、でも、キャーーー。

 

 一人悶絶しながらも今は会話を聞かなければと口から炎を出すのを抑えて続きを聞いた。

 すぐ後ろにいる蛇ガールにびくびくしてるゴッフは完璧に無視しつつ。

 

「はいはい二人とも。話進まないから漫才はそのへんでな? それで? そのリボンお嬢さんがどうだって? いつも通りならなんの問題もないだろ?」

「………それがさ。なんというか………きよひー最近更に綺麗になったと思わない?」

「そうか? あんまり変わらねえと思うけどよ」

「サーヴァントは基本成長しないからな。体型が少し変わる程度はあると思うけど」

「んーとね。その、色気が増してきたのよ、彼女」

 

 そう、最近清姫は美少女な装いながら美人になってきている。

 カルデアに召喚されてもう6年たつ。12歳で他界し、そのままの姿で現界した彼女も精神的にはもう18歳。

 肉体に精神が引っ張られるのが英霊とはいえ。大なり小なり精神的な成長はあり。清姫も例外ではない。

 

「最近隣にいると別種のドキドキを感じてさ。しかも無防備だし、だからといって手なんか出すのはなんかアウトだなって思って」

「え? もしかしてまだそういうのはなしなのかマスターは?」

「あるわけないだろ」

「流石にそれはヤボってもんだぜオリオン。精々キスのぐらいはしてるだろうさ」

「………………」

「え、まさか? 嘘だろマスター」

「ねえのか?」

「いやあるよ………………5回ぐらい」

「「えーーーー?」」

 

 マスターと清姫は紆余曲折の末に心からの交際を果たした。

 それからも仲睦まじい、いやそんなもので済まされないほど甘い関係を構築した彼らはカルデアきってのベストカップルとして時には嫉妬を、時には暖かく見守られてきた。

 そんな二人が本島の意味で付き合ってからもう数年。流石にABCのAぐらいは毎日してるもんだと思っていた。

 

「流石に大事にしすぎじゃね?」

「いや、ほんと清姫って逸話の割りに本当にウブでさ。最初にやろうとしたら直ぐに赤面してそのままパタリと倒れるぐらい」

 

 普段から「子供は何人欲しいですか?」とか「子供の名前は珍姫というのはどうでしょう!」とか(その名前だけは何があろうと阻止すると心に決めた)

 などなど思わせ振りな発言が目立つ清姫だが。

 

 いざ此方から踏み込むとクラスバーサーカー宜しく途端に日和って顔を真っ赤っ赤にしてしまい、最悪前述のようにキャパオーバーで倒れてしまう。

 

「まあそれでもなんとかキスまでは………ってそんなのはどうでもいいんだよ………清姫ももう18でしょ。精神的に」

「うん」

「これまでも度々そういう、その………えっと」

「お誘いとか?」

「う、うん。まあそういうの。その度にまだ責任取れる歳じゃないから駄目って言い続けていたんだよね」

「マスターの国だと結婚出来るの18からだったよな。あ、そういうことか」

「うん、そゆこと」

 

 清姫は(精神的に)18歳になった。

 ということはだ。

 

「もう俺と清姫はそういう関係になってもいいのだって暗黙の了解がたってしまってな」

「成る程、誤魔化してきたけどもう誤魔化せない領域に来たと」

「いや勘違いしないでくれ? 俺だって男だから清姫とはそうなりたいよ?」

(そうなのですか!!?)

「清姫はあんな容姿なのにスタイル抜群でそれなのに無自覚でも誘ってくるからほんと理性がヤバい時もあった。あとなにより可愛いし! 好き!!」

 

 清姫は所長の影(厳密には所長の肩)から思わず覗き込んだ。

 いつもいつもやんわりと断るから自分に魅力がないのではと危惧していたが、まさか杞憂だとは。

 清姫は体温が更に上がるのを感じた。所長は体温が下がるのを感じた。

 

「ようするにだ。次リボン付き清姫が来たら理性がブロークン・ファンタズムしてマスターのマスターが真名解放しちまうと」

「最低な言い回しだなこのプレイボーイめ! BBにお仕置きさせるぞ!」

「だけどどうすんだ? あの嬢ちゃんなら今年もやるだろ」

「そうなんだよ! もうどうしたら良いかなぁ!」

「フェルグスの旦那に相談したら?」

「部屋は取ってあるルート待ったなしだわ畜生!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「というわけなのです」

「お疲れ様でーす! おやすみ!」

「見捨てないで下さいまし!」

「うるさい! 惚気になるんだろうなと思ったら案の定惚気だったわ! 爆発しろ!」

 

 実装当時は男を手玉に取ってお金を搾り取るイメージが先行していた刑部姫であったが。その身恋愛クソザコサーヴァントの一柱を担うほど乙女な女の子なのであった。

 

「ていうか明らかに人選ミスでしょ。もっといい人いるじゃん。玉藻っちとか」

「あの人は水着霊基の時バレンタインでマスターを食べようとしたから駄目です」

「薫子さんは?」

「あの人はもう未亡人オーラで無自覚にマスター狙うので駄目です。今年の礼装で数多くのマスターの心を射貫きましたし油断なりません」

 

 OL薫子さんいいよね。

 

「もう大人しくリボン巻いてマスターに食べられたらいいよ」

「そんな投げ槍な」

「早くしないと妖精組に取られるよきよひー。モルガンとかメリュジーヌとか明らかにヤバいの来るよ。きよひーと付き合ってるとか関係なく取りに来るよあの人ら」

 

 バーサーカー全解雇とかカルデア滅ぼすとか言う奴はスケールが違う。

 

「………………」

「なんか怖がってる感じ? きよひー」

「それは………」

「もしかしてさ。迫ったらまた断られるとか思ってたりする? 安珍の時みたいにさ」

 

 安珍清姫物語では安珍に一目惚れした清姫が夜這いをかけにいって断られ。「帰りにはよります」と言われたのに清姫を恐れた安珍は嘘をついてそのまま遠くに行ってしまい。

 嘘をつかれた清姫が追いかけて鐘の中で蒸し焼きという物語。

 

 もし例年通りに行って断られたら? 

 清姫はかつてのトラウマが甦ることを恐れていた。

 

「勿論恥ずかしいというものもあります。でもそれよりもまた怖がられるのが怖いのです」

「まーちゃんなら大丈夫だと思うよ? 清姫が求めても断らないし。嘘をつかないって決めてるならなおさらでしょ。てかそんな言うならリボンやめたら?」

「それはそれでマスターをガッカリさせてしまうのではと」

「もー、そういう恋愛経験値は同人しか知らないよ姫はー………どっちにしろさ。まーちゃんは決して無理強いはしないと思うよ?」

「それはわかってます。ますたぁは優しいですから」

「わかってるじゃん。仮にリボン巻いて行ってさ、清姫が誘ったらまーちゃんはちゃんと応えてくれるし。清姫がやっぱり駄目だって言ったらまーちゃんも受け入れてくれるよ。つまりどんなきよひーでも、まーちゃんはオールオッケーってことでしょ」

「そうでしょうか」

「最後はきよひー次第だよ。でもウカウカしてるとさっき言ったみたいに妖精組とかその他古参サーヴァントに取られるかもよ。まーちゃん最近凄い男前になったし! とにかく頑張んなよきよひー」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ついにバレンタイン当日になってしまった。

 

 不詳マスターである俺は今年もバレンタインイベントに巻き込まれ。

 そして数多のサーヴァントからバレンタインというなのプレゼントを貰いに貰って気付けば夜になってしまった。

 そんなお返しで少し狭くなったマイルームで俺はあの娘を待ち続けている

 

 ………きよひー朝から全然見ないな。

 今日は色々覚悟していたのだけれど。

 もしかしてこのままバレンタイン無しなんてこともあったり? 

 

 そんなことあったら俺は死ぬるぞ。

 

「ますたぁ、入っても宜しいですか」

「んー? いいよ、ちょい待ってて」

 

 と噂をすればきよひーが部屋に。

 あれ。鍵渡してるから開けれるはずだけど。

 

(ハッ!? 

 

 もしかしてリボン清姫だからか!? 

 ヤバい心の準備はオッケーだが魂の準備がまだ足りぬぞぉ! (意味不明)

 

 ええいままよ! 

 頼むぞ俺の心の中のシグルドとラーマと項羽様! 

 今こそ覚悟を示す時! 

 

 覚悟は道を照らす! 

 オープンザドアー!! 

 

 ウィン。

 

「あ、ますたぁ。こんばんは」

「………………………………」

 

 あれ? 普通の着物きよひーだ。

 リボンきよひーじゃないぞ? 

 

 あれ? 毎年リボンだったのに今回だけノーマル? 

 

「ますたぁ?」

「あ、いや。どうしたのきよひー。鍵なくした?」

「それがお部屋に忘れてしまったまま外に出たみたいで」

 

 それはまた。

 きよひーのお部屋=俺の部屋だから何処かにあるか? 

 

 しかし色々覚悟してたのが盛大に空振りしてしまったな、タハハ。

 

「はいますたぁ。バレンタインでございます」

「ありがとう清姫」

 

 うむ、今回はイベント的なものはなしでストレートなものか。

 これも新しいな。さて中身は。

 

「おっ! チョコがけマドレーヌと、これは抹茶チョコ?」

「抹茶の羊羮です。ホワイトチョコに抹茶を入れて、白餡と合わせました」

「美味そう! 食べても良い?」

「勿論ですわ。お茶お入れしますね」

 

 お菓子に合うお茶っ葉も貰いましたのよと台所に向かう清姫を後ろから眺めながら俺は清姫が何時もと違うことを看破していた。

 

 いつもバレンタインではテンション天元突破な清姫が異様なまでに大人しい。

 誰かからの入れ知恵か。いや、やはり。

 今年だからなのか………

 

「はいどうぞ」

「ありがとう。ではいただきます」

 

 まずチョコがけマドレーヌを、美味い!! (即落ち)

 マドレーヌはバターが効いててしっとりジューシー。少し厚めに塗られたチョココーティングは俺好みの厚さだ。贅沢過ぎる! 

 

 次は抹茶チョコ羊羮

 チョコ羊羮ってなんぞ? ってなるがおもむろにパクり。

 んっ! これはなんとも。

 上品な抹茶、ホワイトチョコ、白餡が見事にベストマッチ! まろやかで濃いけどしつこくない。

 えっ、これ高級店の味なのでは? 高級店行ったことないけど。

 

 これを1日で消化するのはもったいない。マドレーヌをあともう1個、羊羮はいま食べてるワンブロックだけにしておこう。

 

「ご馳走さま。すっっごい美味かったよ」

「それはよかった。マシュさんに負けないようにと頑張りましたので」

 

 なんでマシュがターゲットなのかはわからんが意気込みはチョコと共に伝わってきた。

 

「………………」

「………………」

 

 無言。圧倒的無言。

 

 これもおかしいぞ。俺との会話では場を持たせることなら右に出るものはいない清姫。話題レパートリーの数は安珍清姫の文字数を軽く越えるほどの引き出しを持ってるというのに。

 

 やはり様子がおかしい。

 なにかあったのか。少なくとも俺はなにもしていないと思うのだが。

 

「ますたぁ」

「どうした」

「もし、私が今あなたに迫ったら。あなたは拒否なさいますか?」

 

 勿論拒否などしない。

 緊張はすれど拒みはしない。

 そういう約束だ。そういう約束をして彼女と過ごしてきた。

 清姫もそれを守り。アプローチや素振りを見せるも一線を越えたことはしなかった。

 

「わたくしの馴れ初めは勿論ご存知でしょう。私は拒絶され、嘘をつかれ、彼を焼き殺しました。勿論ますたぁがそうとは言っていません。あなたはきっとわたくしの望みを叶えてくれる。でも、それは約束をしたからですか? 嘘を嘘にしたくないからですか? わたくしがますたぁに強いていることにはなりませんか? ますたぁが望むなら、わたくしは何年、何十年とも待って見せます。肉欲の繋がりがなくとも、わたくしはますたぁを愛しております………ますたぁは、どうなのでしょうか。こんな卑しいわたくしを、あなたは受け入れてくれますか?」

 

 清姫は滲んだ瞳でジッとこちらを見つめていた。

 ここで言葉で答えるのは簡単だ。だけど清姫はそれで納得するか。納得はしても何処かで納得しないであろう。

 

 確かなことは、清姫の紛れもない本心は俺の心に響いたということだ。

 

 俺はおもむろに立ち上がって机に向かった。

 不思議そうに見つめる清姫の視線を背に受けながら机の引き出しから紫の箱を取り出した。

 

「本当は異星の神とかその他諸々の全てに決着をつけてからと思ってたんだけど。清姫がそんなに不安を抱えてたとは。旦那失格かな俺は」

 

 いまいち状況を飲み込めない清姫の前に立った。

 清姫の瞳に写る俺は我ながら優しい目をしてるなと思ってしまった。

 

「これまで色々あった。今では考えられない出会いがあって。挫折があって。幾度も挫けそうな時があった。それでも俺がここまでこれたのは清姫のおかげだ。君が側にいるから頑張れた。だから、これからも俺の側にいて欲しい。サーヴァントとしてではなく。俺の伴侶として────俺と結婚してくれますか、清姫」

 

 紫の箱の中にあるのは指輪。関係各所に協力してもらって一緒に作ったものが入っていた。

 予想外のサプライズに清姫も言葉を失って口許を抑えている。

 

 抑えていない方の手を取り、緊張に震えながらはめた指輪はキッチリと清姫の細い指に収まった。

 自分の指にはまったリングを清姫はキラキラと目を輝かせながら。

 

「ふ、ふわぁ………」

「初めて俺の名前を呼んだあの日から、清姫が醜いと思ってる部分も好ましいと思ってるところも受け入れるって決めたから。嘘のない世界を作るってのは流石に無理だけど」

 

 そこは全部受け止めろよと言いたいところだが。清姫には万に一つの嘘もつきたくなかった。

 

「だからその。そういうのも清姫が完全に準備出来るまで待つからさ。無理しないでね………えっと、これで良いだろうか?」

「は、はい! その、不束者ですが。宜しくお願いいたします」

「ん、宜しくね」

 

 もう何もかもがいっぱいいっぱいな清姫をそっと抱き締めてやると彼女も安心したように俺の胸元に頬擦りをした。

 俺も実を言うと不安MAXだったからおあいこだ。

 

 ──名残惜しいように離れた清姫は指輪が収まった指をギュッと胸元に寄せた。

 そして何かを決心したかのように目に強い光を宿した。

 

「ますたぁ、お願いがあります。少しだけ部屋の外にいて下さいますか?」

「いいけど。どうして」

「あ、後で言いますので」

 

 清姫に押される形で部屋の外に待機することになった俺は短くも長い時間待った。

 なにをしてるのかな、まさかここから部屋の模様替え? 

 途中通りかかったおっきーが凄い意味深な笑みを浮かべながら通りすぎたのはなんだったんだろうか本当に。

 

「ま、ますたぁ。入って、いいですよ」

 

 促されて部屋に入ってみるとそこは真っ暗だった。

 否、ベッド脇のライトだけが光っており。そこに清姫が布団にくるまっていた。

 なんかあの日を思い出す。

 

 なにも言わない清姫の側にそっと座った。

 いったいどうしたのだろうか? 

 

「ますたぁには大恩があります。一度化け物に落ちかけたわたくしを救ってくださり、こんな素敵な物も頂きました。なので、わたくしも逃げずに、覚悟を示そうと思います」

 

 シュルっと布団を下ろした清姫の姿に俺は思わず言葉を失い目を見開いた。

 

 清姫の身体には毎年恒例の赤いリボンが巻かれていた。だが問題なのはそこではない。いやそれどころじゃない。

 リボンの下にある着物(・・)がないのだ。

 

 いつものプレゼント包装とは違う乱雑な巻き方をした赤いリボンの下には清姫の素肌しかなく。幼いながらも出るとこは出ているボディラインにそっていて、隠すべきところにはちゃんとリボンは巻かれているが、所々緩くなっており見えそうで気が気じゃなかった。

 所謂これは裸リボンというものだった。

 

「その、えっと。おっきーに進められて。やるなら思いっきりやった方がいいと言われて撒いてみたのですが、その………想像以上に恥ずかしいですね、これは………エヘヘ………ますたぁ、六度目の正直ですが、わたくしを召し上がって下さいますか?」

 

 今にも羞恥で逃げ出したいと真っ赤になる清姫を前に生唾を飲んだ。

 いつものリボン付き清姫でも理性を保つのが大変だったのにこんな姿を見せられて我慢できる男はいるだろうか? 。

 いやいない、断言する。これで興奮しなかったらそいつはもう安珍クソ坊主以外ありえない。

 よくもまぁ、あのクソ坊主はこんな可愛いくてエロい子を前にして断れたものだと思う。

 

 ………思わず黙りこくってしまった俺に清姫は不安を隠せずにいた。

 はしたなかったか、失望されてしまったか、またあの時と同じになってしまうのかと。

 

 そんなことはさせない。清姫が覚悟を示したなら。

 俺も全力で覚悟を示すべきだ。

 

「令呪三画を持って命ず。俺は君を生涯愛することを誓います。あと、出来るだけ痛みがないように」

 

 三画のなけなしの魔力が清姫に注がれた。

 これで俺はマスターではない。あの時と同じだ。

 

 そっと震える肩に手を置いた自分の手も震えている。俺も数多の誘惑はあれど経験なんてあるわけがない。

 

「嘘はつきたくないから先に言う。優しく出来るかわからないから。それでも全部食べるからそのつもりで」

「っ! はいっ………」

 

 潤む目をした清姫の唇に自身の唇を重ね合わせ。そっとベッドに押し倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからして清姫にプロポーズしたことは翌日広まった。

 そしてみな気づいた。清姫の魔力がこれまで以上に増大していることに。

 

 これから起こることはあえて書かないでおく。それどころじゃなかったので。

 

 だがこれだけは断言する。

 

 二人で歩む未来は明るいということを。

 

 これは、愛と希望の物語である

 

 

 

 






 たった2日で9000文字も書いてしまった自分に震えているキヨヒスト。どうも作者です
 これが愛か。

 清姫のバレンタインはボイス追加こそあれどどちらかというと非よりなことに納得がいかねえ。
 ということで書きました、ないなら書けばいいのよ精神。
 もし新規清姫が来たら頼むぞ運営。
 全国のキヨヒストに救済を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。