オレを踏み台にしたぁ!?   作:(๑╹◡╹)ノ

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リリカル少女は見詰め合う

 抜けるような青空の下で、爽やかな潮風を全身に浴びながら。

 

「お待たせ、フェイちゃ… ううん、フェイトちゃん」

 

 私は今、海鳴市の洋上でフェイトちゃんと向き合っていた。

 時空航行艦アースラを背にしながら。

 

 リンディさんたち時空管理局のみんなは、今は、見守ってくれている。

 

「………」

 

 出撃したのは私一人。

 

 リンディさんや刀真(とうま)くん、ユーノくんたちには大分無理を言っちゃったかも知れない。

 それでも…──

 

「私は… 高町なのはは、あなたと戦いたい」

 

 フェイトちゃんは無言のままだけど、顎を軽く引いて頷いてくれた。

 それだけで私には充分! 

 

「改めて、互いのジュエルシードを賭けての決闘を。……それで?」

「うん!」

 

 久し振りに… ううん、もしかして今『初めて』彼女と目が合う。

 絡み合った互いの視線を合図にして私たちは素早く同時に魔法を発動させる。

 

 ……それが決闘開始の引き金だった。

 

「フォトンランサーッ!」

 

 開始と同時にフェイトちゃんが素早く光弾を撃ち放ってくる。

 それも2発。

 

 二射目は一射目の陰に隠れるように。それだけの早業を涼しい顔でなんて。

 

(……やっぱりフェイトちゃん相手に、速さでそう簡単に勝てるはずがないよね)

 

 私は不規則に重心をずらしてその光弾を回避する。

 多少(かす)めたって構わない。

 

「ッ!」

 

 肩先にわずかに感じる痛み。

 強度に優れたバリアジャケットを容易く切り裂く一撃に内心で舌を巻く。

 

 驚きはない。

 

 ……やっぱり貫通タイプの射撃だったみたい。

 下手に防御をしていたら、落ちないまでも手痛い目に遭っていたことは想像に難くない。

 

「──おかえしッ!」

 

 私は回避行動からそのまま砲撃に移る。

 フェイトちゃん同様に貫通機能だけでなくホーミング性能まで付与した一撃だけど…

 

 手にした斧状のデバイスの斬撃であっさり迎撃される。

 

 これも想定通り。

 

 ……私は『準備』を整えてゆく。

 

 フェイトちゃんはヒット・アンド・アウェイ戦法に切り替えたみたい。

 そして、それは私にとっての泣き所でもある。

 

 確かに私は人より魔力量はちょっと多いかも知れない。

 けれど、それだけ。

 

 機動力も、そして、戦闘経験も間違いなくフェイトちゃんの方が優れている。

 

「そこッ!」

「くッ!」

 

 私の纏っているバリアジャケットの損傷が増えていく。

 

 多少しのげたとしても文字通りのその場しのぎ。

 速さに勝るフェイトちゃんに徐々に翻弄され始める。私じゃ追いつけない。

 

 ……今は、まだ。

 

「まだ、まだァッ!」

「っ、堅い…!」

 

 私は高町家の味噌っかすだけど。

 お兄ちゃんやお姉ちゃんたちに比べたら武術の才能なんててんでないけれど。

 

 それでも! 

 

「今の、私には… 『魔法(ちから)』があるのッ!」

 

 私に力がなかったばかりに、私は家族の武術(おもい)を共有できなかった。

 

(……だからきっと、今より小さい頃、私は一人だったんだ。けれど!)

 

 けれど、今の私には魔法がある。

 何も出来ない、無力で泣いているばかりだった私が、初めて手にすること出来た力。

 

 これだけは… 魔法でだけは、誰にも負けたくない! 

 フェイトちゃんにだって! 

 

「負ける、もんかぁああああああッ!」

「しつ、こぉいぃいいいいいいいッ!」

 

 私は意地と根性でフェイトちゃんの攻撃を耐え続ける。

 私の魔力がバリアジャケットを堅牢な守りとすることでその鋭い攻撃を防いでくれる。

 

 牽制に砲撃を撃ってみてもまるで読んでいるかのように回避される。

 しっかり狙いを定められない、溜めもない一撃とは言えフェイトちゃんは本当にすごい。

 

 感嘆する間もなく浴びせられる無数の攻撃。

 それを必死にしのぎ続ける私。

 

 しかし、そんな攻防も永遠には続かない。

 

「しま…ッ!?」

 

 緩急を重ねられた一撃に思わず私の態勢が崩され、身体が泳いでしまう。

 その隙をみすみす見逃してくれるフェイトちゃんではない。

 

(とど)め…ッ!」

 

 確か、サンダーレイジって言ってたっけ。

 特大の魔力を稲妻に変換して全力で叩き込まんとする大技が紡がれる。

 

 私はそれを為すすべもなく見送りながら、そして…

 

「はぁああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

 終わりの時が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……はず、だった。

 

「──え?」

 

 しかし、不発。

 

 私に当たるかと思われたフェイトちゃんの特大魔法は…

 けれど、強風に曝された蝋燭の灯火のように忽然と掻き消えた。

 

「どう、して…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は内心で胸を撫で下ろしながら困惑の表情を浮かべるフェイトちゃんの姿を見詰めた。

 

(……間一髪、間に合ったよぉ)

 

 なんとか平然とした表情を作りながらも心臓がバクバク言っているのを自覚する。

 

 本当の本当にこんなところであっさりと負けてしまうところだった。

 もしそうなっていたら私を信じて送り出してくれたみんなに申し訳が立たない。

 

 ……なによりあれだけ見栄を切っていたのだから恥ずかしい、なんてもんじゃない。

 

 

 

 

 種明かしをすれば簡単。

 

 フェイトちゃんの魔法が着弾する直前、私は『ある魔法』を完成させ滑り込ませたのだ。

 

 もちろんあの極限下で一から魔法を構築して、なんて間に合いっこない。

 仮に間に合ったとしても(きゅう)(ごしら)えのプロテクションとかじゃ効果も相応だったはず。

 

 中途半端な気持ちを込めた魔法だったら、フェイトちゃんは軽々とそれを超えてくる。

 

 だから、私も全身全霊で挑まないといけなかった。

 

(……ほんっとーに、綱渡りだったけど。でも!)

 

 ──『決闘開始直後』から構築してきた魔法が、ようやく完成した。

 

 マルチタスクを応用した多重詠唱。

 戦闘をしながら、追い詰められながらも決して途切れさせなかった詠唱と魔法構築。

 

 選んだ魔法は、ただの『循環』。

 

 ユーノくん曰く基礎の基礎。

 魔力を循環させ、魔法を通すための道とするおよそ魔導師ならば最初に覚えるべき魔法。

 

 言ってみれば呼吸のようなそれを。

 

 お父さんとお兄ちゃんの将棋を思い出しながら、私はその詠唱をひたすらに重ねた。

 ……『完成』させないままに。

 

 イメージはお父さんが使っていた『矢倉』という戦法。

 私という将棋盤を覆うように魔力を循環させる。

 

 それが充分にできたら、循環の輪を拡げて範囲を大きくする。

 その繰り返し。地道だけど大切な作業。

 

 私の身体の中だけじゃなくて私の周囲にだってそれを繋げてゆく。

 より太く、より深く、幾重にも積み重ねながら。一つ一つ、着実に。

 

 そして、今、私を護る世界は完成を迎えた。

 

 フェイトちゃんのような熟練した魔導師からすれば見るべくもない稚拙な出来栄えだろう。

 覚悟していたつもりだけれど、戦闘中の多重詠唱は困難で色々と不格好になった自覚もある。

 

 けれど…

 

「これが私の魔法、これが私のとっておき…」

「まさか、循環させた魔力を自身の周囲に垂れ流して…ッ!?」

 

「……ここからは全力全開でいかせてもらうよッ!」

 

 そう。

 

 この循環の輪の中では、私の魔法は強化される。

 既に発動している魔法も… 『これから発動させる』魔法だって! 

 

 損傷していたバリアジャケットが修復されてゆく。

 

「そんなッ!?」

 

 私の飛行を補助してくれているフライアーフィンの翼が大きく、強くなる。

 それでも私の空戦能力は今はまだ、フェイトちゃんには遠く及ばない。

 

(それでも…ッ!)

 

 出力任せの『一瞬の速さ』でならば拮抗できるのは、これまでの遭遇戦で立証済み! 

 距離を取りながら砲撃を放つ。

 

「ディバイン・シューターッ!」

「くッ! 重、い…ッ!?」

 

 絶好の間合いから、二度、三度。

 

 循環によって威力は増しているはず。抜かりなくホーミング機能も付けた。

 フェイトちゃんに倣って、貫通性も高めてみた。

 

 ……それでも、捉えきれない。

 

 苦しそうに表情を歪めながらも、それでも、きっちり対応してこちらの隙を伺っている。

 

 それをフェイトちゃんだから、とそう言うのは簡単なことかも知れない。

 けれど、きっと、それだけじゃない。

 

(伝わってくる… フェイトちゃんの『想い』の強さ。この決闘を譲れないって気持ち)

 

 私も…

 

 私だって…

 

 ううん、私こそが! 

 

「負けないよ、フェイトちゃん。私は… あなたに勝ちたい!」

「──そんなの、私だってッ!」

 

 か細い間隙を縫って私に迫る砲撃を、けれど、私はそのまま微動だにせず受け止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 砲撃は、私の身体に届くことなく掻き消える。

 

 この『循環』の効果は私の魔法の強化だけじゃない。

 相手からの魔法を減衰し、打ち消す効果だってあるのだから。

 

 小さな小さな私の世界。

 

 この中では私の魔法は強化され相手の魔法は拒絶される。

 

「これだから、集束型の魔導師は…ッ!」

「………」

 

 フェイトちゃんも分かってはいたのだろう。

 

 若干悔しそうに、けれど、挑むような瞳の光は消えないままに今も私を見据えている。

 きっと、私を観察しながら素早く思考を続けているのだろう。

 

 ……そう、フェイトちゃんは諦めない。

 私の全力全開を前にして今も勝ち筋を探っている。

 

「──レイジングハート、『力場(ゾーン)錬成(シフト)』」

 

 私は、今にも(ほつ)れそうになる魔法を重ねて縫い留める。

 

 それは一端(いっぱし)の魔法と呼ぶにはあまりにも不安定で弱々しくて。

 霧散してしまいそうなそれを、無理やり魔力で押さえ付けただけの代物。

 

 稚拙で未熟な私の魔法が作り出したこの領域を、私は、『力場(ゾーン)』と名付けた。

 

 基礎となる『魔力循環』。

 これを呼吸レベルに昇華して、お父さんの『矢倉』に着想を得て。

 

 そして、ユーノくんの『結界魔法』のエッセンスを加えた。

 

 未熟で、稚拙で、未完成で不格好だけれども… 私だけの大切な魔法。

 フェイトちゃんに… 負けたくないって思った子に勝つための、とっておきの魔法。

 

 ……今の『高町なのは』にできる精一杯。

 

 ふと鼻の奥がツンとする。

 それに気付いて軽く拭えば、バリアジャケットの手袋に朱色が付着していた。

 

(大分負担が大きい… ううん、分かっていたこと…)

 

 この魔法の負担が計り知れないことは分かりきっていた。

 

 なんせ体内の血流を無理矢理加速させ通常以上のパフォーマンスを生み出すようなもの。

 それも、自身の周囲にまで範囲を拡げて『力場(ゾーン)』を形成するのだから。

 

 むしろ『この程度』で済んでいるのは、私をサポートしてくれるレイジングハートのおかげ。

 

「ありがとう、レイジングハート。……いつも私を支えてくれて、助けてくれて」

「I said before, "In a sense,I'm merely a vehicle."」*1

 

「……うん、覚えてる」

「That is why, as your vehicle, we fulfill our responsibility to support you」*2

 

「あはっ! ……違うよ、レイジングハート。それはね、『友達』って言うんだよ」

 

 レイジングハート。挫けぬ心。

 ……私の大切な友達。

 

 大事なこの子から預けられた言葉を糧に、私は、勇気と力を振り絞る。

 

 この『力場(ゾーン)』の持続時間は… 勿論、私の魔力が尽きるまで! 

 

「いくよ、フェイトちゃん! 今日こそあなたに勝ってみせるんだから!」

「……私は、一度として貴女に勝てたなんて思ったことはない」

 

「気が合うね」

 

 いつだって、そうだった。

 

 最初はユーノくんを助けるために魔法使い… 魔導師っていうのになって。

 私一人じゃ心細かったけれどユーノくんと刀真(とうま)くんがいてくれたからなんとか出来た。

 

 こんな私でも誰かの役に立てることがあるんだって、そう思えた。

 けれど…──

 

 いつものようにおっかなびっくりでなんとかジュエルシードを回収していたその時。

 あの子が、フェイトちゃんが現れた。

 

 刀真くんもユーノくんも軽くいなしながら、いつだって私たちを圧倒してきて。

 ひたむきで、格好良くて、キラキラと輝いていて。

 

(きっと私のことなんて歯牙にも掛けてないんだろうなって… 今までずっと、思ってた)

 

 でも、今の私たちは互いにこうやって向かい合っている。

 真っ直ぐに目を見てお話が出来ている。

 

 ともすれば、お互いの息が届くほどの距離で! 

 

 それは私が必死に彼女を追い続けた成果かも知れない。

 あるいは、単にジュエルシードを求めるフェイトちゃんの思惑に過ぎないのかも知れない。

 

(……ううん、もう、そんなことはどうだって良い。重要じゃない)

 

 大切なのは、今。

 かけがえのないこの瞬間、あなたと私で語り合いたい。

 

「楽しいね、フェイトちゃん」

「……貴女とは全く気が合いそうにない」

 

 苦い表情で吐き捨てられる。

 

 気持ちは分からないでもないけれど、こっちだって負ける寸前まで追い詰められたのに。

 手厳しいなぁと思いつつ、決して油断はしない。

 

 フェイトちゃんなら私の予想も付かないような逆転の一手を指すかも知れないから。

 

 だから…

 

「負けないよ、フェイトちゃん」

「私だってッ! 貴女には負けないッ! 勝ってみせるッ!! 絶対にッ!!!」

 

 一見冷たく見えるほどの彼女の奥底から絞り出される激情。

 それらを全身に浴びながら、私は気力を奮い立たせる。

 

 そんなフェイトちゃんだからこそ、私は、勝ちたい。

 

 限界を超えて魔力を循環させる。

 私は『力場(ゾーン)』に形成していた疑似砲塔全ての照準をフェイトちゃんに合わせ、解放した。

 

「──ディバイン・バスターッ!」

 

 一撃一撃に必殺級の威力が込められた無数の砲撃。

 それら全てが、光の弾幕となってフェイトちゃんただ一人へと迫る。

 

「ひっ!?」

 

 フェイトちゃんは思わず半泣きになって硬直するも一瞬のこと。

 即座に回避行動に移る。

 

 無数の砲撃が通過する僅かな隙間を、フェイトちゃんは(あやま)たず掴み取った。

 

 御神(みかみ)流を、恭也(きょうや)お兄ちゃんを彷彿とさせる絶妙の見切り。

 

(すっごぉい… 流石はフェイトちゃん… 私だったら絶対にこんなの回避できないのに…)

 

 無論、それで終わらせるつもりはないけれど。

 

 我ながら意地が悪すぎると思う弾幕量、それでもフェイトちゃんは軽快に回避し続ける。

 ……思ったより長丁場になるかも知れない。

 

(……それでも負けるつもりはないんだからッ!)

 

 私は、リンカーコアを励起させる。

 

 これまでの戦闘でこの場に撒き散らされた大量の魔力。

 それらを私の『力場(ゾーン)』へと取り込んで、私自身の砲撃のエネルギーへと変換する。

 

 勿論、それなりのロスは生じるし私への負担がなくなるわけじゃない。

 なにより限度はある。……けれど、持久戦は私の味方。我慢比べだったら私も負けてない。

 

 そして、なにより…

 

「この砲撃の動き… ホーミングじゃない? 私の動きを読んで…ッ!?」

 

 ここまでの交戦経験。そして、今回の決闘のこれまでも含めて。

 

 フェイトちゃんの行動を学習した私は、マニュアルでディバインバスターの射角を操作する。

 もちろん、負担は指数関数的に跳ね上がる。……けれど、言ってしまえばその程度。

 

 なによりフェイトちゃんは絶望しない。

 諦めない。

 

 ……捕まらない。

 

 一分一秒ごとにフェイトちゃんが(はや)くなっていくのが分かる。

 だったら私はその先を超えていきたい。

 

 それでこんなにすごい子と戦えるならば、この程度、安いものッ! 

 

「母さんの言ってた通り、驚異的な成長速度…ッ!」

 

 フェイトちゃんだってただ逃げ回っているだけじゃない。

 折を見て反撃してくる。

 

 貫通弾… ショットランサーで『力場(ゾーン)』の突破を試みてきた。

 それも先程のように二重に隠しながら。

 

 確かに二重に重ねられれば『力場(ゾーン)』だって突破されるだろうね。……でもッ! 

 

「……ッ!」

 

 意識さえ向けていれば、この程度はバリアジャケットで防げるレベル。

 もし今の私に魔力切れ以外で有効打を与え得るとしたら、近接からの極大攻撃か…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──ドンッ! 

 

 認識外からの攻撃のみ。

 

 衝撃を感じた私は即座に身を翻す。

 髪を(かす)めて、背後からの砲撃が私の真横を通過していった。

 

 フェイトちゃんも私同様に砲撃をマニュアル操作して私の死角から撃ち込んできたのだ。

 それも、時間差で。

 

(……うん、警戒していて正解だったね)

 

 マルチタスクを駆使した多重詠唱。

 オマケに『力場(ゾーン)』の重ね掛け。

 

 極め付きは、無数の砲塔のマニュアル操作。

 いつ処理落ちしたっておかしくないほどの情報処理量。

 

 無茶をしている自覚はある。

 

 ──『だからこそ』、フェイトちゃんはそんな私の隙を見逃すはずがないと思っていた。

 

 限界の限界まで力を振り絞って。

 限界のその先まで思考を振り絞る。

 

 そうじゃないと、フェイトちゃんに並び立つことなんて到底できっこないから。

 

「だから…ッ!」

 

 終わりの時が近い。

 

 きっと、そのことは私だけじゃなくてフェイトちゃんの側だって予感しているはず。

 だから私は最後の最後まで彼女の姿を瞳に収めようと視線を巡らせ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──いないッ!? 

 

 

 

 

 

 

 途端、背筋が泡立つような感覚。

 

 考えるよりも先に理解する。

 フェイトちゃんは『そこ』にいる。間違いなく。

 

 死角からの砲撃すらも陽動に使って、無数の弾幕の中を最短距離で突っ切ってきたのだ! 

 

「うわぁああああああああああああああああああああああッ!!!」

「──ッ!?」

 

 最初に出会ったあの日のように、砲撃に身を隠しながら彼女は私の眼の前に現れた。

 それは()(くらま)しと言うにはあまりにも無謀で、捨て鉢じみていて…

 

 だからこそ、私の意表をこの上なく突いた。

 

 今やボロボロとなったバリアジャケットを身に纏った彼女が、その手に宿すは無窮の雷光。

 未だ驚愕に支配されている私はそんな光景を前にしても動けないままで…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は、閃光に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ… 捕まえ、はぁ… た…ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 荒い息を吐きながら、私は左手を前に差し出している。

 

「ぐ、ぅ… これでも、届かない… なんて…ッ!」

 

 容易く『力場(ゾーン)』を切り裂いていったフェイトちゃんの最大最強の一撃を前に。

 我に返った私は、守りを固めるのではなく彼女の捕縛に全てを注いだ。

 

 基本魔法の『拘束(バインド)』。

 五重に重ねたそれでフェイトちゃんの動きを完全に封じ込める。

 

 けれど、その代償は決して小さくはなかった。

 考えたくもないほどの大ダメージ。

 

 言うまでもない満身創痍。

 もはや指一本動かすことだって億劫だ。

 

 けれど、『ああする』より他にあそこでフェイトちゃんに捕らえる見込みはなかった。

 

 だから…──

 

「レイジング、ハート… けほっ、『アレ』を…」

「──Starlight Breaker,set」

 

 私の、全身全霊をこの最後の一撃に込める。

 

 レイジングハートがより砲撃に特化した形状に変化していく。

 それはデバイス本来の意味である杖、というよりもまるで星を貫く槍のようにも見えて…

 

 だからこそ、私とレイジングハートはこの新たな魔法をこう名付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──『星光殲滅(スターライトブレイカー)』」

 

 フェイトちゃんは必死にもがいているけれど、『拘束(バインド)』からは抜け出せない。

 ともすれば途切れそうになる意識を奥歯を噛んで保たせて、必死に眼前の彼女を見詰める。

 

 やがて彼女は星をも貫くような光の中に呑み込まれていった。

 

「私の勝ち、だよ。……フェイトちゃん」

 

 なんとか、勝てた。

 

 けれど、フェイトちゃんはやっぱりすごく強かった。

 

 友達になれたらいいな。

 もっとお話を聞いてみたいな。

 

 そう思って光が晴れた中をフェイトちゃんへと近付こうとした私は…

 

 頭の中が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え? ……嘘」

 

 ──さっきまでフェイトちゃんが『拘束』されていたはずの場所には、何も存在しなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私が仕掛けた『拘束(バインド)』が跡形もなく消えているのは分かる。

 スターライトブレイカーの砲撃を受ければ並大抵の魔法効果はそのまま消し飛ぶから。

 

 でも、フェイトちゃんがいないのは理屈に合わない。

 

 まさかあの一瞬で脱出を!? 

 今の私の隙を狙っている… だとしたら!? 

 

 けれど、周囲には僅かな痕跡も見い出せない。

 フェイトちゃんの魔力を何処にも感じない。

 

 ……まるで突然この世界からいなくなってしまったみたいに。

 

(なんでなんでなんで? どうしてどうしてどうして? ……こんなの、絶対おかしい)

 

 だって、そう。

 

 私は自分から非殺傷設定を解除したことなんてない。

 ならここにはフェイトちゃんがいないとおかしい。

 

 そのはずなのに。

 

 先程まで抱いていた安堵と高揚感が、焦燥感に、続いて後悔と絶望へと塗り替えられていく。

 冷静さを保てない。私のマルチタスク全てが感情の波に閉ざされてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間にして、刹那程度のほんの僅かな一瞬。

 けれど完全なる無防備となったその一瞬。

 

『気を抜かないで、高町さん!』

 

 そこに突如リンディさんの念話が頭に響き渡る。

 

「……え?」

 

 私が間抜けな声を上げたのと、『あの子』の気配が復活したのはほぼ同時のことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁあああああああああああああああああああああああああッ!!!」

「ッ! そん…」

 

 鈍い音とともに、私の頬に拳が叩き付けられた。

 

 フェイトちゃんには、もはやろくに魔力も残ってなかったのだろう。

 サンダーレイジは見る陰もなく、ただのパンチに成り果てて。

 

(……でも、ちょっとビリッとはしたかな? ……あはっ)

 

 最後の最後、フェイトちゃんの意地と根性があの小さな電撃に込められていた気がした。

 きっとフェイトちゃんの魔力はもうほぼ空っぽのはず。

 

 けれど、それは私も一緒で。

 

 もはや『防護(プロテクション)』を張ることすら覚束ない私がその攻撃に耐えられるはずもなく…──

 ゆっくりと身体が傾いていって、自由落下を始める。

 

『時空跳躍魔法… まさか、あの年で習得してみせたなんて… 一体どれほどの修練を…』

 

 リンディさんの呟きを何処か遠くに聞きながら、私は落下を続ける。

 

 時空跳躍魔法。

 

 いつだったかアースラを何処か遠くから攻撃してみせた魔法、だったっけ。

 本質はあの雷ではなくて、文字通り『時空を跳躍させる魔法』の行使。

 

 なるほど、つまりあの瞬間、フェイトちゃんは確かにこの世界にいなかったことになる。

 

(だったら… 私が見失っちゃっても仕方ない、か…)

 

 あんなにもフェイトちゃんに追い付きたかったのに。

 あんなにもフェイトちゃんに並び立ちたかったのに。

 

 私の『拘束』なんて軽々とすり抜けて、キツい一撃をお見舞いされてしまうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あーあ、負けちゃったか。

 

 悔しいなぁ、悔しいなぁ。

 

 ……でも全力でぶつかった結果だもん。

 

 送り出してくれた刀真くんやユーノくん、時空管理局のみんなには申し訳ないけれど。

 

 精一杯戦い抜いた結果だから、後悔なんてあるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ── 本当に? 

 

 

 

 

 

 

 

(………………………………………………………………………………悔しい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(悔しい、悔しい悔しい悔しいッ! ……私はッ! 私は、まだ、負けてないッ!!)

 

 私の奥底で、ナニカがドクンと強く脈打つ。

 

 いつの間にこぼれ落ちていたのだろう。

 

 視界の隅で、宝石が黒く禍々しい光を放つ。

 

 ジュエルシードが、静かに佇んでいる。

 

 尽きかけていたはずの魔力が再活性化する。

 

(これが、ジュエルシードの力? ……だとしたら、きっと、これは良くないもののはず)

 

 ……なのに。

 

 

 

 

 

 

 

 なのに、どうしても。

 

 今なおそれはいけないことだって分かっているのに、どうしてもそれを跳ね除けられない。

 

 だって。

 

(負けたら… 失くしちゃう…)

 

 これまで分厚い鎧に隠してきた弱々しい本音がこぼれ落ちる。

 

 ……負けたくない。

 

 ……失くしたくない。

 

 ……私には魔法しかないのに。

 

 アリサちゃんもすずかちゃんも大切なお友達だけど。

 

 あんなすごい二人と平凡な私じゃ釣り合わなくて。

 

 いつだって『私じゃなくてもいいんだ』って疎外感は胸の奥底に溜まっていて。

 

 けれど。

 

 けれど。

 

 魔法のおかげで刀真くんやユーノくん、リンディさんたちと繋がれたのに。

 

 生まれて初めて誰かの役に立って、必要とされて。

 

 なのに、魔法(ソレ)すら失くしちゃったら…──

 

 

 

 

 

 

 

 

(……一人ぼっちに戻っちゃう)

 

 なにも出来ずに公園でただ一人泣いていたあの頃を思い出して、心が締め付けられる。

 

 誰も私を見てくれない。

 

 みんなが暗い顔で沈んでいる。

 

 そんな『あの頃』に戻ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 ……それだけは、イヤ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、私は、その力を取り込もうとして…──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………………………………………………………………………え?」

 

 手が、差し伸べられていた。

 

 何処までも暗い世界から私を誘い出してくれるかのような。

 ボロボロで、血だらけで、でも、暖かそうな小さな手。

 

「手、掴んで。……はやく」

「え… あ、はい」

 

 反射的に掴んでしまう。

 

 ただそれだけでいとも容易く暗闇から引っ張り出される。

 我ながら安いものだ。

 

 だって、その手はあまりにもキラキラとした優しい光に満ち満ちて見えたから。

 これに抗うなんて、無理だ。……少なくとも、私には。

 

 差し出されていた小さな手の主、フェイトちゃんに引っ張られ私は自由落下を止める。

 

 それでも私の頭の中は今なお混乱で一杯で。

 

 けれど、だからこそさっきまでの暗い思考が全部何処かへと吹き飛ばされていて。

 でも、お礼を言わなくちゃいけないことはなんとなく分かっていて。

 

 だから口を開こうとしたのだけれど…──

 

「……いろいろと言いたいことはあるけれど」

 

 不機嫌そうなフェイトちゃんの声に遮られちゃって。

 しょんぼりと聞き役に徹することになって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女と戦うの、本当に心底嫌で嫌でたまらなかった」

「ひどくない!?」

 

 だからこそ、投げかけられ… ううん、叩き付けられた容赦ない言葉に半泣きになった。

 

「ひどくない」

「ひどいよ」

 

「……ひどくない」

「ひどいよッ!」

 

 売り言葉に買い言葉、というわけではないだろうけれど。

 私はそんなフェイトちゃんに負けたくなくて、ついつい言い合いを始めてしまう。

 

 そんな私に呆れたようなため息を吐きながらフェイトちゃんは言葉を続ける。

 

「貴女はすごい魔力量があって、それなのにすごい速度で成長していって」

「フェイトちゃんこそ」

 

「どんなに私ががんばっても軽々と超えていって」

「フェイトちゃんこそッ!」

 

「……きっと、もう、今日この時を最後に私は貴女に勝つことはないと思う」

 

 どこか諦めたような、それでいてちょっとだけ清々しさを含んだ表情に私は絶句する。

 

 そんなこと、と声を大にして叫びたい私がいる。

 けれど、その言葉に何処か納得している私自身も確かに存在していた。

 

 私自身、付け焼き刃で未熟な状態で勝負に挑んだ側面はあった。

 最大限に対策をして努力を重ねたつもりだけれど、まだまだ伸び代はあると自負してもいる。

 

 けれど対するフェイトちゃんはどうだろうか。

 

 確かに今後もますます強くなっていくことは疑いようもない。

 けれどその魔法も、戦術も、既に美しく完成されているように私の目には映る。

 

 ……それはきっと、フェイトちゃん本人にとっても同じだったのだろう。

 だから、きっと、私たち二人は同じ結論に至ったのだ。

 

 なにも言えず俯いてしまった私を、フェイトちゃんは何も言わずに大きく引っ張り上げる。

 必然的に、私たち二人は同じ高さで視線を合わせることとなった。

 

 フェイトちゃんの瞳に映る私はボロボロで。

 フェイトちゃんから見た私の瞳にもボロボロの自身の姿が映っているのだろうか。

 

 そうやって互いに無言で見詰め合うこと暫し、続けて彼女は得意満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、高町なのは。……今日だけは、『今この瞬間』だけは、私の勝ちだから」

 

 いつしか時間帯は日が沈もうとしている夕刻に差し掛かっていて。

 

 気付けば夕陽も海面もキラキラ輝いていて。

 金色の世界に包まれていっぱいの笑顔を浮かべるフェイトちゃんは何処までも煌めいていて。

 

 だから、私は思わずこの光景に見惚れてしまって。

 

「………」

 

 コクン、とただ頷いてしまった。

 

 そして静かに理解した。

 

 あぁ、私は負けちゃったんだ… と。

 

 ポロポロと涙がこぼれてくる。

 

 けれど、さっきまでの自暴自棄な感情なんかは沸き起こらずに。

 

 ストン、とその事実を受け入れられた。

 

うぇえええええええええええん! くやしいいよぉおおおおおおおおッ!! 

 

 でも悔しさは変わらない。

 

 文字通り、泣くほど悔しかった。

 

 ただの子供みたいに泣いて、泣いて、泣いて。

 

 ……そうして、スッキリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に泣き出した私にドン引きしているフェイトちゃんに、私は笑顔で語り掛けた。

 

「ね、フェイトちゃん」

「……ん」

 

「また、私と戦ってね?」

「え、やだ…」

 

「ありがとう! よろしくね!」

 

 心底嫌そうな表情を浮かべるフェイトちゃんに、私は得意満面の笑顔をお返しする。

 

「もしもし? 聞いてる? やだって言ったよね、私?」

「……あはっ! 聞こえな~いっ♪」

 

 慌てるフェイトちゃんに私は笑顔で意趣返しを続ける。

 

 だって、これくらいは良いよね? 

 今までたくさん『いい子』でいたんだから、最後の最後くらい。

 

 ちょっとだけ誰かを困らせたくなっちゃっても。

 

 

 

 

 

 

「フェイトちゃん、もう一つだけお願い」

「……今度は何?」

 

 

 

 

 

 

 

「私から、離れて…ッ!」

 

 胸の痛みが、もう、限界。

 

 ジュエルシードは、誘惑を振り払った私に対しどうやら取り込む方向に舵を切ったみたい。

 抗うだけの力は、もう、残されていない。

 

 アースラに助けを求めても、きっと、間に合わない。

 

「……高町なのは?」

 

 けれど、石ころなんかに好きにはさせない。

 

 させてたまるもんか! 

 

 私は、高町なのはは『フェイト・テスタロッサ』に負けたんだ!! 

 

 ……この決闘の勝敗を、誰にだって(けが)させるつもりはない。

 

 

 

 

 

 

 

 私はなけなしの魔力を振り絞ってリンカーコアの暴走を試みる。

 底力の底の底を絞り出す。リンカーコアが悲鳴を上げる。

 

 勝算は限りなく低い。一か八かですらない大博打。

 だと言うのに、なんでかな? ちっとも絶望的な気持ちにならないのは。

 

(……あはっ)

 

 フェイトちゃんの姿を視界に捉えて、思わず笑みがこぼれる。

 

 だって、そう、誰よりも絶望的な戦いの中で最後まで諦めなかった人を見てきたから。

 我ながらフェイトちゃんから見ればとんでもないバケモノだったのかも知れない。

 

 けれど、だからこそ、こんなちっぽけな石ころに負けてやるつもりはない。

 私に勝ったのはフェイトちゃんなんだから。

 

 私は、意地と気合いと根性でジュエルシードを抑え込もうとして…

 

 

 

 それでもなお、一歩及ばず。

 

(ッ! ダメ…ッ!!)

 

 ジュエルシードに取り込まれそうになったその時…──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如として禍々しい気配が雲散霧消した。

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 時空を超えて紡がれる大魔法の手。

 美しく、繊細で、精緻で… そして何処か優しさも織り込まれた超抜級の魔法行使。

 

 それに絡め取られたジュエルシードはあっさりと無力化され、捕獲へと至る。

 

『ジュエルシード、確かに戴いたわ』

 

 冷たいはずのその声音が、何処か(ねぎら)いの色を含んでいたように感じたのは錯覚だろうか。

 

 

 

 

 

 こうして私が持っていたそれとフェイトちゃんが持ってきたそれ。

 二つのジェルシードはそのまま虚空に浮かぶと、何処かへと転送されていった。

 

「………」

 

 そして、その光景を眩しそうに眺めるフェイトちゃんの頬に一筋の雫が伝う。

 彼女は私を再び捕まえると、言葉を紡いだ。

 

「私フェイト・テスタロッサは、現時点を以って時空管理局に投降します」

 

『……投降を受け入れます。時空航行艦アースラへの着艦を許可します、どうぞ』

「感謝します」

 

 呆然としている私の眼の前で淡々と手続きが進行していく。

 

 なんで? 

 負けたのは私のはずなのに、なんでこんなことになっているの? 

 

 どうして? 

 勝ったはずのフェイトちゃんが、どうして全部諦めたような顔をしているの? 

 

 でも…

 

「……行こう、高町なのは」

「……うん」

 

 負けた私なんかが言えることは何もなくて。

 小さく頷いた私は、フェイトちゃんに手を引かれるままにアースラへと飛んでゆく。

 

 何処かふわふわと頼りなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …

 

 

 ……

 

 

 ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ? 

 

「フェイトちゃん? ……フェイトさん?」

 

 いつまで経っても定まらないヨタヨタした飛行に思わず隣の少女の様子をうかがう。

 

「………」

 

 フェイトちゃんは額に珠の汗を浮かべながら口をへの字に結んでいる。

 真剣な表情のまま真っ直ぐ前を見詰めながらも、何処か切羽詰まった表情。

 

 ………。

 

「限界だ、これー!?」

 

「まだまだやれる… なんて空元気も出せない。……高町なのは、後はお願いしても?」

「無理だよ!? 私だってもう限界だよ!?」

 

 フェイトちゃんと私は、互いに支え合いながらもなんとか飛行を続ける。

 そしてそのままヨロヨロとアースラへの進路を大きく逸れて…

 

「フフ… 高町なのは、何処に落ちたい?」

 

「何処って… うわぁ、ちょっと!?」

『が、がんばって高町さん! テスタロッサさん! ひっひっふーよ、ひっひっふー!』

 

「ちょっと黙っててくれません、リンディさん!?」

『時空管理局のクロノ・ハラウオンだ! 今すぐ僕が救援に向かうので二人共それまで…』

 

「フフ… 無理ぃ…」

 

 そのまま海鳴臨海公園へと向かってゆく。

 

 あ、魔力が切れた。

 

 慣性に従って急加速していく。

 クロノくんは… この様子じゃ間に合いそうもないかぁ。

 

 うぅ、嫌だなぁ… 怪我したくないなぁ…。

 

「どうか軽くで済みますように… って、きゃああああああああッ!?」

 

「悠人、はやく管理局のところに案内しなって! 約束だろう!?」

「おいおいアルフ。急がなくても別にハリウッドスターは逃げやしないって… ん?」

 

 人! 人が! ちょうど進行方向に人が!? このままじゃぶつかっちゃうよぉ!? 

 

「ちょっと、そこの人ぉ! どいてくださぁあああああああああああああいっ!!」

 

 何処か見覚えのある誰かに私は全力で注意喚起する。

 

「はて? 声はすれども姿はなし?」

 

 その人は私の声に気付いたのか立ち止まって周囲をキョロキョロし始める。

 

 ……しまった。

 これじゃますますぶつかってしまう。

 

 やがて私たちの気配に気付いたのか銀色の髪の毛のその人はこちらを見上げて。

 

 

 

 

 

「「「……あ」」」

 

 奇しくも私たち3人の声が重なってしまう。

 私と、フェイトちゃんと… そして、桜庭悠人くん。

 

 同時に私たちが『着弾』する。

 

 私たち三人は揉みくちゃになって地面を転がり回りながら… やがて、なんとか止まった。

 全員が奇跡的に大きな怪我をせずに済んだみたい、だけど。

 

「ぐえー… 死んだンゴ…」

 

 一人、甚大なダメージを被った人がいたような気がしないでもない。

 ともあれ、そんな声を聞きながら私とフェイトちゃんは二人仲良く目を回すのであった。

 

「さっすが悠人! いきなりフェイトを助けるなんてアンタやっぱり『持ってる』ねぇ!」

*1
私は以前、「ある意味で私はただの乗り物に過ぎません」と言いました。

*2
だからこそ、ただの乗り物として、貴女を支える責務を全うします。




原作ヒロインたる美少女たちにダイブされるオリ主。
これは許されざるよ…


高町なのはさんが『力場錬成』を習得。
ぶっちゃけ元気玉制限のない界王拳です。
尋常じゃない魔力消費量は天性のバカ魔力(クロノさん談)で補います。

フェイト・テスタロッサさんが『時空跳躍』を習得。
ぶっちゃけブレンパワードのバイタル・ジャンプです。
異次元を縫って攻撃してきます。

おまけ:フェイトさん視点の高町なのは(バケモノ)さん

常時二十倍界王拳で即死攻撃仕掛けてきて
とんでもない速度で学習して
鎌倉武士ばりの殺意に満ちていて
多少攻撃してもモノともしない耐久力を持ってて
時間をかければゴンさん(HUNTER×HUNTER)ばりにパワーアップして
王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)ばりの弾幕を放ってくるバケモノ
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