手 乗 り ラ ミ エ ル 作:わーるど
俺の名前は錨練二。どこにでもいるただの一般人…と言いたいところだが、実は少しだけ違う部分がある。
一つ、俺は転生者だ。
そして二つ。俺は転生するにあたって、特典とやらを受け取っている。
正直転生者って自覚はない。何故って前世の記憶を俺はほとんど覚えていないからだ。何せスタートが母親の腹の中にいる頃で、その中で俺は殆どの記憶を失ってしまった。赤ん坊の脳みそに大人一人分の記憶など荷が重かったのだろう。いわゆる自衛本能ってやつだった。
そんなこんなで俺はこの世界に生まれてきたわけだが、これがまた苦労の連続だった。
まず、なんのミスか知らないが、この世界では誰もが持って当たり前な超常能力…『個性』って奴が俺には発現しなかった。
加えて俺の父親はヴィランっていう悪い奴で、母親はその父親の…被害者の一人だった。赤ん坊な俺を降ろす勇気がなかった母親は、俺を捨てて身を眩ませた。
その後警察に保護され、施設に入れられた俺だが、まあ、当然ヴィランが親でさらに無個性な俺はいじめに見舞われた。もちろんタダでされるがままって程俺も大人じゃないんで、それ相応の報復を行ったりしたが、大人はそんな俺を見て『やっぱりヴィランの子どもだ』と影で指を差し、子供はそれを見て俺がやっぱりいじめていい奴だと判断する…という悪循環だった。
全く持ってクソみたいな環境だ。二度目の生がこんなのになるなんて最悪すぎる。
しかも、死んだ時に会った『神様』ってやつに確かに貰った特典について、全くと言っていい程思い出せないのがもっと最悪すぎる。個性さえあればもう少しまともな環境になっていただろうに。
…そう思っていた所為なのだろうか。ある日の朝、俺は数年も遅れてやっと個性を発現させた。
『ーー…』
女みたいな声で歌うように鳴く…鳴る?半透明の正八面体。真ん中には赤いビー玉みたいなのが浮かんでいる。
大きさは多分テニスボール程度。出し入れ自由で、大体手のひらに乗りたがる。後飴が好きらしい。
そう、新世紀エヴァンゲリヲンというアニメに登場する、白兵戦エヴァ絶対殺すマンの化身、ラミエルが手乗りサイズでそこにいた。
訳が分からない。え?これ特典なの?マジで?
「…君、喋れるの…?」
『――――…』
声をかけると、なんかカシュッ、カシュッと音を立てて形を変えるソイツ。よく分からんけどなんか喜んでるっぽい?いや、それとも怒ってるのか?
…うん、分からん。第一、エヴァは俺見た事ないんだよ。なんか怖そうだし、そもそもロボットアニメに興味あんまりなかったし。ただ、知名度は高かったのでどんなキャラがいてどんな世界観なのかってことくらいはふんわりと把握している。
その中でもラミエルは、確か日本全国の電気を使ってやっと倒すことのできた強敵だ。エヴァが地上に出た次の瞬間に何の手加減もなく超高火力で焼き払い、多大なるダメージを負わせたのである。
本当にこいつがそのラミエルだとしたら、非常に危険な存在ということになる。
「あのさ…お前、試しにあそこの空き缶に攻撃してみてくれないか?」
『―――――』
セットした空き缶に向けて、手のひらに乗せたラミエル(仮)を差し出す。するとラミエル(仮)は硬質な音を出しながら体の形を変えた。
そして、次の瞬間には一瞬で空き缶の腹が溶けて穴が開いていた。目に見えない熱線。確か、光線ではなくビームに近い攻撃だ。
はい、確定。こいつ、ラミエルだわ。
「これが特典とか、マジか…」
思わずそう呟くと、ラミエルはぴたりと動きを止めて、こちらに正面?を向けてじっと見てきた(?)。目はないはずなのにすごく視線を感じるとか、不思議すぎる感覚だった。
っていうか、なんだこれ。もしかしてなんかがっかりしてるのか?
「えっと、今のは言葉の綾だ。別にお前が嫌だなんて思ってない、ぞ…?」
『…――――…』
あ、歌い始めた。どうにか機嫌を取れたらしい。取り合えず飴もやっとくか。最初興味本位でやってみて、めっちゃ身体を揺らして上機嫌になったのを見た時は思わず「ええ…」って言ってしまったものだが。こうしてみると普通に感情を持ってるっぽい。
「ふう…とりあえず先生に報告しに行くか。ラミエル、大人しくしてるんだぞ。間違っても攻撃するなよ。あ、でもなんか物投げられたり殴られかけたりしたら、ATフィールドで守ってくれ」
『――――…』
「よし、いい子だ相棒。これからよろしくな」
『―――――…』
こうして、なんだかよく分からない感じで俺とラミエルの物語は幕を開けたのだった。
思いつきで一発ネタです。続くか不明です。不定期亀更新