アーマードコア・オルタネイティブ― 白い鳥 ―   作:カズヨシ0509

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 こちらも投稿致します。
久し振りにアーマードコアをプレイしました。
元から下手だったのですが、今や見る影もなく無残なプレイ内容……。 ( ̄ω ̄;)
でも面白かったです。

ではドゾ。


第8話―人類種の天敵が見た、ヒト―

 

 

 

 

 

アームズフォート(AF)

 

企業間戦争におけるパワーバランスの調整の果て。

希少なリンクスへの個体依存性に強く影響するネクストACから大勢の凡人による総合制御に生まれた、超巨大戦略兵器。

大艦巨砲主義を地で行く無駄なほどの巨大さと、それに似つかわしい圧倒的火力と物量で戦場を蹂躙する、まさに機械仕掛けの化け物。

ネクストですら、その火力と射程に苦戦を強いられることが多く、こいつらを相手取るのに

ヴァンガード・オーバード・ブースト(VoB)と呼ばれる長距離飛行用の特殊パーツで相手の射程を掻い潜ることから始まる任務も存在する。

 

代替え可能な大多数の凡人――。

代替え、即ち部品であり消耗品なのだ。

それが企業連の導き出した 答え(for answer) なのだろう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

―― 1997年5月9日 AFギガベース ――

 

(推奨BGM マブラヴオルタ―― ブリーフィング)

 

アームズフォート『ギガベース』、有澤重工が所有する巨大要塞兵器。

 

英国圏のミミル軍港を発ち、欧州西端部より上陸を開始していた。

 

その道中の出来事である。

 

「巨大交易所?」

 

「うむ。そこへ立ち寄る予定だ」

 

 香月夕呼に対し有澤隆文は応える。

 

インテリオルユニオン所属のミミル軍港にて、多くの物資や技術獲得に成功した日本帝国と有澤重工業。

 

次なる目的地は、欧州アジア寄りに位置する大規模交易所――。

 

そこは統治企業連盟――通称『企業連』の管轄であり、多くの人々が思惑を抱き往来する交易都市でもあった。

 

近年、脅威となりつつあるBETA群に抗する為、企業連が部隊を割き、巨大交易所へと差し向けていた。

 

有澤、日本帝国の連合軍も其処へ向かい、更なる必要物資の確保と戦力となる人員の増強を図る予定だ。

 

ミミル軍港でも、日本帝国に興味を抱いた傭兵達が専属契約を結び、このギガベースへと搭乗している。

 

だが終結したのは、小型軽MT12、中量MT6、ACノーマル4、歩兵傭兵30、と少々心許ない戦力ではあった。

 

彼等の質にもよるが、総合力では連携訓練を受けた戦術機一個中隊に見合うかどうかの戦力値だった。

 

流石に、これだけでは大した戦力の増強は望めず、首脳陣との協議の結果、巨大交易所に立ち寄る追加修正案に踏み切ったのであった。

 

「集ってくれるでしょうか?我々の志に、共感してくれる人達が……」

 

「厳しいわね、正直な処」

 

 崇宰恭子に夕呼は厳しい現実を突き付けた。

 

一応、有澤重工の呼び掛けに応じ、参戦を決めてくれた傭兵達。

 

本来損得勘定で動く事を()とする彼等に、帝国特有の志があるかどうかは疑わしい。

 

ギガベースに居る帝国軍の衛士たちは、基本国防の為にこの作戦に参加していた。

 

だがそんな彼等と傭兵達との間で、余計な軋轢が生じるのは火を見るより明らかだろう。

 

そうでなくとも帝国軍人と国連軍人との間ですら、只ならぬ差別意識や摩擦が発生しているのだから。

 

何の前触れもなく次元を隔てた世界同士が融合した、価値観も思想も何もかもが違う傭兵と衛士――。

 

上層部もこの事を念頭に入れ、応急策として傭兵達の居住区間を分ける事にしていた。

 

丁度ギガベースは双胴型の船体に、艦橋部で繋げるような形をしている。

 

帝国衛士側と、傭兵側とで区別するには都合が良かった。

 

とは言え――。

 

帝国衛士側では矢張りと言うか傭兵戦力の参入を歓迎しておらず、彼等に聞こえない事を良い事に過剰な陰口を叩いていた。

(全ての衛士が、()()ではない)

 

「ただ、この巨大交易所は陸地に存在する故に、人が訪れ駐屯するのにも都合が良い。上手くいけば、更なる傭兵達が参入してくれましょう」

 

「そうですね。その中から、帝国軍に所属してくれる者達が居てくれる事を願いましょう」

 

 巨大交易所での期待を抱く、隆文と恭子。

 

少しでも共感を得られるよう、可能な限り日本人或いは日系人を優先して、呼び掛けを行っていた。

 

基本的に利益と報酬で動く彼等傭兵――。

 

しかし、彼等全てが欲のみで動く人々とは限らない。

 

可能性は低いが、そんな彼等にも帝国側の価値観を共有してくれる者達が居てくれる事を、崇宰恭子は切に願った。

 

「――そう言えば。()()()()も例の交易所に居を構えていたわね」

 

 夕呼が指し示す少年――。

 

数々の依頼をこなす内に、次々と新種のBETAと接触した若きレイヴン。

 

ACハイエンドノーマルを駆る、まだ幼さを残した独立傭兵。

 

 

 

    ―― 火無=飛鳥(ひむ あすか) ――

 

 

 

「コイツは是非とも此方側に引き込みたいわね。あらゆる報酬をチラつかせてでも」

 

 大型のモニターに投影された少年。

 

その画像を見据え、夕呼はどうやって引き込むかを画策していた。

 

金で釣る。

 

心を責め、興味を引く。

 

女を使い誑かす。

 

かくなる上は、実力行使で――。

 

「――その様な手段では却って逆効果だと思われますが?香月中佐殿?」

 

 今まで無言で成り行きを見守っていた、一人の女性衛士が発言した。

 

彼女の名は、神宮寺=まりも。

 

香月夕呼の護衛兼補佐として同行している、ベテランの衛士だ。

 

「あら、珍しいわね。アンタが意見するなんて」

 

「見た処、この飛鳥と言う少年。未だ傭兵色に染まり切っていない気がします。此処は誠実に…、正攻法で接触してみるべきかと」

 

「神宮寺大尉殿。レイヴンを少々甘く見てはいないかね?たとえ少年と言えども、こ奴は一端の傭兵。下手に出れば足下を掬われかねませんぞ?」

 

 まりもの提案に、隆文は警告を呈す。

 

確かに、まだ幼く経験も浅いレイヴンではある。

 

しかし彼は他の同年代のレイヴンに比べ、遥かに高い実績と技量を有しているのである。

 

尤も、それは彼一人だけの実力ではなく、二人の元リンクスの力添えがあってこそ、今の領域に到達できていたのだが。

 

「貴方の言にも一理あります、有澤さん。でも私には分かるんです。私なりに傭兵達を観てきましたが、この子…いえ『彼』は、何処かが…何かが違う様に思えます。伊達に教導任務に携わってきてはいません故に、多くの教え子を導いてきたという実績と自負が御座います」

 

「……」

 

 まりもの言に隆文は黙り込むが、少しの間を置き再び口を開いた。

 

「神宮寺大尉のお心は理解出来た。私としても、ハイエンドノーマルを自在に駆る戦力は欲しい処ですしな。しかし、彼の者はあくまで傭兵。ギガベースに引き込むまでは、私のやり方でやらせて頂く!それで構いませんかな?」

 

「……仕方がありませんね、本来の決定権は貴方がお持ち。貴方がそうお決めになれば、私には反論の余地はありません」

 

 結局、有澤隆文が傭兵の流儀で、飛鳥に呼び掛けるという方針に出た。

 

彼も元リンクス、傭兵としての流儀は弁えている積りであった。

 

だがここで或る問題が生じる。

 

仮に火無飛鳥を引き込めたとしよう。

 

一体誰が彼を管理するかだ。

 

ギガベースへ招いた後、どういう扱いを施すのか。

 

あくまで傭兵として、一戦力として扱うのか。

 

国連、若しくは帝国軍人として編入させるのか。

 

それとも、斯衛軍に招き入れるのか。

 

日本帝国一つをとっても、様々な派閥が存在し政治的な理由で互いを牽制し合っているのだ。

 

下手に独占欲を引き起こせば、それこそ帝国内にも拘らず、要らぬ諍いが湧き起ころう。

 

BETAの脅威に頭を悩ませている日本帝国。

 

たった一人のレイヴンを巡って、争うなど愚の骨頂だ。

 

「――愚策と言われれば身も蓋もありませんが、彼の意思を尊重しつつも各部署で協力を仰ぐというのが、この時点では無難かと」

 

 崇宰恭子が妥協案を提示する。

 

身内で骨肉の争いなど見せれば、それこそ火無飛鳥は愛想を尽かし、ギガベースを降りてしまう可能性も存在する。

 

そうなってしまっては、引き込む意味が消失してしまうのだ。

 

有澤隆文は飛鳥を(いち)レイヴンとしてしか見ていない故、さして執着はない。

 

しかし香月夕呼と崇宰恭子は、多少なりとも独占欲が芽生え始めていた。

 

少なくとも本国に帰る迄は、恭子の案を採用した方が良いだろう。

 

「ま、仕方ないわね。先ずはコイツを引き込まない事には始まらないんだし。頼むわよ、有澤社長!」

 

「……最善を尽くす」

 

 夕呼も此処は引き下がる事にし、引き入れる役目は隆文に一任する事にした。

 

巨大な砂埃を上げながら、ギガベースは巨大交易所へと向かった。

 

 

 

―― 同日 ――

 

 

 

 一台の車両が砂煙を巻き上げ、荒野を只管突き進む。

 

運転手と助手席に一人ずつ、そして備え付けの12.7ミリ機銃座に一人の計三名。

 

最近になりコジマ粒子濃度は急激に緩和され、防護服は不要となった。

 

彼等は素顔を晒し、近付きつつある目的地を目指していた。

 

「見えて来たぞ、アレが例の交易所だ」

 

 運転席の男が顎で指し示す。

 

交易所自体かなりの規模を誇り、都市機能をも有した施設だ。

 

輪郭が視認できたからと言っても、直線距離はまだまだかけ離れている。

 

「兄ちゃんも物好きだねぇ、あの施設で一旗揚げたいってか?」

 

 助手席の男も釣られ、機銃席の青年に話し掛けた。

 

「はは…、まぁそんなとこですよ」

 

 多くを語らぬこの青年。

 

元は軍人という経歴を持っていた。

 

大陸での作戦に従事し、激しい戦闘を繰り広げていたが、力及ばず大敗――。

 

その後、命からがら逃げ出したものの荒野を彷徨い続け、ゲリラ部隊や傭兵組織と関わり『ミグラント』として今日まで生きてきた。

 

近日中、あの巨大交易所に多くの部隊が集結するという情報を入手した。

 

そして有澤重工業を名乗る組織から一通のメールが送信されていた。

 

 

 

―― 志ある者達よ、いざ祖国を救済せん ――

 

 

 

余りに短く、不明瞭なメッセージ。

 

しかし、たったそれだけで彼は心動いた。

 

「まぁ俺等もBETAが恐いから、あの交易所で住む予定なんだがな」

「あそこに行きゃあ物資も環境も整っている分、仕事も生活も今よりはマシになるだろうぜ」

 

「……」

 

 二人の会話も、彼は無言で耳を傾けるだけだ。

 

――もう直ぐ…もう直ぐだ……。我が祖国…我が家族よ……!

 

ある決意を胸に、青年は眼前の施設を見つめていた。

 

 

 

―― 同日 夕暮れ 巨大交易所 ――

 

 

 

 交易所の一区間に位置する公園施設――。

 

既に時刻は夕暮れとなり、装甲壁に設置されたライトが橙の光が灯り、天井を照らす。

 

飛鳥は設置されたベンチに座り込み、植物を鑑賞しながら精神を落ち着かせていた。

 

あの時見た悪夢は消せようもないが、此処に居れば荒んだ心を癒す事が出来る。

 

飛鳥にとって、数少ない安らぎの場でもあった。

 

ただ普段なら此処へはいつも一人で赴くのだが、今日は珍しくユウキも居た。

 

「何時、此処を発たれるんです?」

 

 飛鳥は訪ねる。

 

「早くて一週間、長くても二週間以内だな。お前はこの先どういう予定を?」

 

 ユウキもスミカも元から此処で永住する気はなく、遅かれ早かれ旅立つ積りでいた。

 

本来なら、もっと早く発つ気でいたのだが、部屋と環境を提供してもらった飛鳥に恩義を感じ、今まで引き延ばしていた。

 

そして自分達の知識や技術を伝授する事で、彼に報いようとしていたのだ。

 

今度はユウキから飛鳥に質問を返す。

 

「独立傭兵を続ける――……、昨日の僕なら、そう言い切っていたでしょうね」

 

「…………()()()か?」

 

「――!?……やっぱり、分かりますか?」

 

「おいおい、それなりに組んで来たんだ。大体分かるさ。――まっ、お前は特に分かり易い奴だがな」

 

 このまま独立傭兵を続けるつもりでいた。

 

BETAなる生物が現れず、あのような夢など見なければ、彼は迷いもなくこの交易所で独立傭兵を続けていただろう。

 

これまでの作戦で、生きたまま食い殺される人々をこの目で何度も見てきた。

 

現実に何度も――。

 

しかし、実在するかも分からない少女たちが無残に死んでいったあの悪夢――。

 

追い詰められ、退路を断たれ、万策尽き、果てに食い殺されてゆく。

 

自分は傍に居ながら何一つ手を差し伸べる事も出来なかった。

 

夢から覚め数時間――。

 

後からふつふつと憤りが湧き起こった。

 

誰に対してではない――。

 

――自分に対してだ。

 

そして妙に気になるのだ。

 

自分の生まれ故郷である日本が――。

 

国家解体後世代である自分にとっては、日本ではなく有澤統治領という認識は抜け切れてはいなかったが。

 

兎にも角にも、あの夢が切っ掛けとなり日本という国が、どうにも心に引っ掛かるのであった。

 

「日本へ行きたいのか?」

 

「……迷っています」

 

 行くべきか?行かざるべきか?

 

仮に行って何が成せるのか。

 

何を目指すのか。

 

何処につき進めばいいのか。

 

全く指標すら見出せず、何をどうして良いのかも見当が付かない。

 

「…………」

「…………」

 

 暫く二人は無言のまま、橙に染まった装甲壁の天井を見上げていた。

 

「人類種の天敵もな……路頭に迷ったんだ……」

 

「……?」

 

 特に前触れもなく、ユウキは呟く。

 

相次ぐテロ、紛争、慢性的なエネルギー不足、食糧危機、格差社会の二極化、汚染されゆく自然環境。

 

次第に国家は統治能力を失い、或る日を境に巨大複合産業である企業がクーデターを実行。

 

新発見されたコジマ粒子を利用した超兵器、アーマードコア・ネクストを用いて国家軍に圧勝。

 

完敗を喫した国家に再建の活力は無く、国家という枠組みは解体され新たな秩序が形成された。

 

(推奨BGM アーマード・コア4―― Change Gears)

 

 

 

国家解体戦争である。

 

 

 

新たな新秩序の下、世界は再び回り始めるが活力を失った人類は、諦観の内に壊死しようとしていた。

 

時は進み企業間の紛争、リンクス戦争が勃発し、戦場の主役となったのはACネクストであった。

 

しかし加速度的なコジマ汚染が進み、最早地上は人類が生存不可能な程に汚染され尽くす。

 

企業は広大な空へと住処を定め、巨大航空プラットフォーム・クレイドルを建設し、地上の汚染から逃れる。

 

しかしクレイドルを支えるエネルギーは、コジマ粒子に大きく依存し、汚染から逃れる筈が汚染物質で支え続けるという矛盾で成り立っていた。

 

そして、ORCA旅団なる武装組織が台頭し、クレイドルを支えるアルテリア施設を襲撃――。

 

世界は更なる混迷の度合いを増し、既に人類も世界も滅びに向かい加速していた。

 

そんな中、一人のリンクスが混迷の時代を駆けていた。

 

彼も独立傭兵で、企業連から斡旋される依頼で生計を立てていた。

 

しかし、ORCA旅団長『マクシミリアン=テルミドール』からの勧誘を受け、ORCA旅団の一員となる。

 

彼の思想に共感し世界のシステム変えようと奮戦するが、次第に彼の精神は荒み歪み始めていた。

 

いや、()()だったのだろうか?

 

彼は世界を終わらせようと考え始めていた。

 

こうまで世界が歪み、荒れ果て、終末に向かわせたのは何か?

 

企業連?

 

いや違う。

 

技術?

 

それもあるだろう。

 

では経済?

 

そのシステム無くして人類は生存できない。

 

経済……。

 

システム……。

 

生存……。

 

人類……?

 

それを育むもの……。

 

文明。

 

文化。

 

どうすれば良い?

 

どうすればこの世界を変える事が出来る。

 

何時か何処かで、学者から聞いた事があった。

 

人間は自然サイクルの中で、何の恩恵も与えてはいない――と。

 

取るに足らない虫や微生物でさえ、自然サイクルの中で何らかの役割を果たしているのだと。

 

その学者は、最後にこう付け加えた。

 

 

 

―― 自然界の中で人類は……()()だと ――

 

 

 

その直後、学者は拳銃自殺を図りこの世を去った。

 

その死に顔は憎悪と絶望で、とうに正気など失っていた。

 

そうか……人類だ……、()()が全ての元凶だ。

 

だが単純に()()()()()()を断つ訳ではない。

 

それでは世界を変える意味を無くす。

 

あくまで人類を生かしつつ、歪みの元を断つ。

 

人類種を歪めたモノ――。

 

企業。

 

技術。

 

概念。

 

文化。

 

文明。

 

それ等を伴う()――。

 

先ずは企業の土台を成す概念(システム)、クレイドルを断つ。

 

弱者を見捨て空へと逃げ込んだ、企業の富裕層。

 

汚染された地上に取り残され、今も懸命に生きる貧困層。

 

そんな或る時――。

 

『よう、()()()()、オールドキングだ。クレイドル03を襲撃する。付き合わないか?』

 

 ORCA旅団の一人、オールドキングの誘いを受けた。

 

彼もクレイドルを標的とし、その時点で思惑は一致。

 

彼と共にクレイドルを襲撃し、その戦闘だけで延べ一億人を虐殺するという凶行に至る。

 

 

 

―― ただ殺す事だけを覚えさせたか…残念だ……。お前とは、もう一緒にやれんよ ――

 

 

 

作戦は成功。

 

大事なモノを代償に……。

 

一億人という大虐殺、当然企業連が放置する筈もない。

 

偽りの依頼で彼等を呼び寄せ、5機のネクストで襲撃するも、彼等は返り討ちに遭った。

 

その戦闘でオールドキングは戦死したものの、一人のリンクスは生き残り、ここで初めて彼は『人類種の天敵』と呼ばれるに至った。

 

その後も彼は、他のクレイドルを襲撃し企業の基盤を破壊し続けた。

 

文明を無くし、力を奪い、もう一度ゼロから人類を再出発させる。

 

歪んだシステムを根底から破壊し尽くし、人類をやり直しさせる。

 

オールドキングの思い描いていた革命とも、また違った道ではあろう。

 

だがそんな事はどうでもいい。

 

この狂い切った、灰被りの亡者の如き世界。

 

もう一度ゼロから歩み直せればそれでいい。

 

彼は後悔など微塵も無かった。

 

 

 

()()()()()()()()()

 

 

 

有力な5人のリンクスを喪失し、いよいよ焦りに焦る企業連首脳陣。

 

彼等は最後の賭けに出る。

 

 

 

―― ホワイトグリント ――

 

 

 

企業とは対立関係にある、独立自由都市『ラインアーク』所属のリンクスとネクスト。

 

度重なる襲撃で斜陽の時を迎えていたラインアークであったが、企業連は前代未聞の巨額の報酬で彼に依頼。

 

人類種の天敵の討伐を画策した。

 

敵対関係であったラインアークに資金だけでなく戦力と技術をも提供し、作戦成功に向けて徹底した。

 

ほぼ全戦力を用い、退路を断ち、支援部隊を整え、万全の態勢で作戦に望む。

 

人類種の天敵とホワイトグリントが激突。

 

激戦の末、ホワイトグリントが辛くも勝利を収め、人類種の天敵は消え去った。

 

「だが実際は、少々異なる部分があってな…」

 

 ユウキの言に飛鳥は黙って耳を傾ける。

 

確かに激しい戦闘で、双方共に傷付き決着は時間の問題かと思われた。

 

だが此処で、ホワイトグリントは予想外の行動に出る。

 

苛烈さと精密さを併せ持った変幻自在の攻撃が急に鳴りを潜め、――かと思えば、攻撃が止んだのである。

 

そしてあろう事か、後退を始め逃走を図ったのだ。

 

罠である事も誘いである事も承知の上で、ホワイトグリントを追撃し、やがて追い詰める。

 

そして逃げ場のない地形を背にホワイトグリントは動きを止め、全ての武装をパージした。

 

あり得ない事だ。

 

ランク9でありながら、実際はトップランカーすら凌ぐホワイトグリントが武器を捨てるなど。

 

これではまるで、降伏ではないか。

 

彼が使用していた武器――。

 

弾切れを起こすには、まだ早過ぎる。

 

人類種の天敵は、余りに不可解な行動に動きを止めた。

 

それが勝敗を決定付けたのだ。

 

突如サイドからの狙撃を受け、人類種の天敵は呆気無く戦闘力を消失した。

 

それまでの激しい戦闘で、ホワイトグリントはアサルトアーマーを何度も行使し、彼のコジマ粒子を引き剥がしていた。

 

それが災いし、プライマルアーマーは機能せず直撃を受け、彼のネクストはとうとう倒された。

 

『……騙して悪いが仕事なんでな』

 

 それがホワイトグリントの残した、最後の言葉だった。

 

薄れゆく意識の中で聞こえて来る()()()の声。

 

『お前には山ほど説教がある……愉しみに待ってろヨぉ!?』

 

 途切れ行く視界の中で、ゆっくりと近付いて来る半壊した桜色のネクスト。

 

程無くして大爆発を起こす両機――。

 

………

 

……

 

 

眠っていたのだろうか?

 

揺れを感じ、人類種の天敵…彼は目を覚ます。

 

混濁する意識の中ぼやけた視界で辺りを見回し、揺れの正体が車両に乗せられている事を知る。

 

隣は運転席、自身は助手席に座らされている事を認識した。

 

運転手は自分の良く知る人物、彼女以外は誰も乗ってはいない。

 

小型で古い車両だ。

 

揺れは酷く、何時故障しても不思議ではない程に。

 

どうやら生きているらしい。

 

必要最小限の治療だけ施されているのが分かった。

 

尤も隣の彼女も同じ状況で、かなりの重傷を負っているのが分かる。

 

それもその筈。

 

戦闘不能に陥った後、彼女が自爆を敢行し、自分諸共後処理を図ったのだから。

 

彼女は曰く。

 

ホワイトグリントは直ぐに立ち去り、自爆を敢行する事で辺り一帯は吹き飛び企業連は撤収。

 

だが自分達は奇跡的に生き残り、ネクストの残骸に埋もれていた。

 

結果的に、死に損なった彼女は彼を引き摺り、運よく古びた車両を発見、現在に至った。

 

「……聞こう、お前の本心を……」

 

 運転しながら彼に尋ねる。

 

何故あのような凶行に奔ったのか。

 

彼も語った。

 

本心を――。

 

 

 

……

 

 

 

「……そうか……。馬鹿野郎だよ、お前は……」

 

 彼女はそうとだけ返し、車を停め或る場所へと彼を引き連れた。

 

何も無い荒れ地、降り注ぐ放射線を含んだ灰。

 

「お前は大事な事を見逃している。今から()()()()といい」

 

 満足に動けない彼の襟首を無理やり掴み、或るものを見せた。

 

「お前が如何に馬鹿野郎か、身を以て知れ!」

 

 荒い呼吸でボロボロの身体を押し、それを見た。

 

其処は小さな集落――。

 

殆ど寂れ、コジマ汚染対策も満足になされていない、最底辺の人々が集う貧困極まりない寄せ集めの集落だった。

 

廃材で辛うじて住居の体を成し、今日を食うにも四苦八苦する住民達。

 

しかし意外にも若い層が多く、幼い子供達も数多く住んでいた。

 

そして植物を必死で育て畑を耕し、それぞれが役割を分担し懸命に生きていたのだ。

 

汚染された灰が降るのを半壊した装甲材で凌ぎ、植物や畑を守り抜いていた。

 

そして何より彼が驚いたのは、住民の表情は皆明るく活力と生命に満ち溢れていた事だ。

 

聞けば、今育てている植物はコジマ汚染を浄化する特徴を持ち、これを育て栽培する事で世界中に広めようというのだ。

 

そんな事が知れ渡れば当然、利権まみれの企業連が黙っている筈も無い。

 

必ず圧力を掛け、忽ち搾取されてしまうだろう。

 

しかし、彼等は決して諦めていなかった。

 

既に何度も搾取され懲罰を受け、この地上に追放されたのだと言う。

 

そう――。

 

彼等の中には、元企業連やクレイドル住人も混ざっていたのである。

 

民族、人種、能力、そんな障害など此処では何の意味も成さない。

 

彼等は、力を合わせ一致団結し知恵を絞り、懸命に生きていたのだ。

 

自分達の力で。

 

人間として在り方を信じ。

 

再び世界を再生させようと。

 

そして、それは何も此処だけではない。

 

彼等は彼らなりに繋がりを持ち、似た様な試みを行っている他地域と交流を持ち、徐々に活動を広めていた。

 

元クレイドルの住人は語った。

 

全ての住人が企業連のやり方に賛同している訳ではなく、再び古き良き社会を築こうと活動している団体が、幾つも存在しているのだという。

 

そういった彼等と提携し、徐々に地上を再生させようとプロジェクトを拡大しているとの事だ。

 

人類種の天敵は愕然とした。

 

自分のやろうとしている事は何だったのか。

 

そんな事すら知らず……否、知ろうともせず安易な殺戮に奔った挙句、正しき善良な彼等まで殺そうとしていたのではないか?

 

言葉すら出なかった。

 

「俺は……俺は……」

 

 脚が震え立つ事すら困難となるが、住人の一人が作物と水を差し出してくれた。

 

「何があったかは知りませんが、これでも食って精を付けて下さいな!」

 

 

 

……

 

 

 

集落を出てやや離れた所に二人は居た。

 

「良く分かっただろう?お前の視野が如何に狭かったのが」

 

「…………」

 

 返す言葉など見当たらなかった。

 

彼は打ち(ひし)がれ、瞳を宙に泳がせるだけだった。

 

そして蹲り嗚咽を漏らす。

 

「……rして…く…さぃ……。お…れを…ころ…して…下さ…ぃ……。俺を…殺してください……!」

 

 光の伴わない瞳で彼女に懇願する。

 

終わらせて欲しいと。

 

「……いいだろう、死なせてやる――。私ではなく、寿命がな!」

 

 彼女はゆっくりと彼に近付き、絶望に駆られた彼の顔面にストレートをお見舞いした。

 

真面に受け気を失った彼を担ぎ座席へと放り込んだ後、彼女は再び車両で移動を開始する。

 

そして行く先々で、様々な集落を廻った。

 

汚染が進み、企業から見捨てられながらも、懸命に生きる人々――。

 

そして見ず知らずの素性をも知れぬ自分達に、物資を分けて与えてくれた人々――。

 

その度に思い知らされる――。

 

取り返しの付かない過ちを犯してしまった事を――。

 

「こんな……、こんな事を…もっと…もっと早く知っておけば、最初から……最初からオールドキングの誘いなどッ……!!」

 

 拳を握り締め、彼は激しく後悔した。

 

「私も同罪なんだ。お前に戦う事だけを覚えさせてしまった……この私もな」

 

「……セレン……」

 

 多くを教えた積りでいた。

 

自分の持つ知識、技術、価値観、精神――。

 

「だが私たちは、まだ()()()()()……そうだろう?」

 

「……はい」

 

「なぁ…生きてみないか?……リンクスとしてではなく、()として」

 

「……償い切れるでしょうか?余りに多くの出血を強いてしまった、……この俺に?」

 

「……もう忘れたのか?何もしなければ、何も変わらん。最初に教えた筈だったが?」

 

 諭す彼女に、彼はほんの僅かに笑みを浮かべた。

 

「そうでした」

 

「…ふ…少しだけ、調子が戻って来たな。じゃあそろそろ物資の集まる場所にでも向かうか。私もお前も本格的な治療を受けんとな、身体がもたん」

 

「……何処かアテがあるのですか?」

 

 傷は未だ癒えておらず、精々止血パッドを施したに過ぎなかった。

 

幾らリンクスと言えども物資は無論、人々との繋がり無くしては到底生きていく事は出来ない。

 

それが人間というものだ。

 

「頼むからもってくれよぉ?オンボロ!」

 

 既に燃料も心許なく、エンジンも限界間際まで酷使された古い車両。

 

ギシギシと音を立てながら、二人は巨大交易所を目指す。

 

 

 

……

 

 

 

「人類種の天敵……」

 

 飛鳥は静かにその名を口にする。

 

「お前はどう思ってる、ソイツに?」

 

 ユウキが訊ねた。

 

「……。許す事は出来ませんよ。…そう…許せる筈がない!」

 

「……そうだな、普通はそうだ。…許せる奴の方がどうかしている!」

 

 飛鳥の言にユウキも賛同し、深く目を閉じた。

 

(推奨BGM アーマード・コア―― SUNRISE)

 

「――だけど、その人は()()苦しんで償う道を!そこに至る答えを必死に探し求めている!――でなくば、あのクレイドル墜落現場で(序章にて)、住民救出に拘ったりはしない!そうでしょ?()()()さんッ!!」

                                                     

「――!!」

 

「決して私欲や悪意のみで、あのような凶行に奔った訳じゃない!人類種の天敵……彼は彼なりのやり方で…答えに行き着こうとしていたんではないでしょうか。そして今も…答えに行き着く道を――」

 

”やった事自体は許されませんがね”そう付け加える。

 

―― 何のために戦うのか ――

 

―― その答えを追い求めて ――

 

たとえ許されざる大罪を犯したとしても、過去を消す事は不可能だ。

 

終わりを迎えつつあった、この世界――。

 

人類種の天敵は、自身なりに世界を憂いた。

 

それは世界全体で観れば、取り返しの付かない前代未聞の大悪行である。

 

同時に彼自身も、ある意味で幼かった。

 

()()()()()を見ていなかったのである。

 

「人類種の天敵……、許す事は出来ませんが同時に感謝もしています。もし出会う事がなければ僕はとっくに……」

 

「火無…飛鳥……」

 

 戸惑うユウキに感謝の意を述べる飛鳥。

 

負傷し困窮していた彼等を見付け、必要最小限の環境を整えた。

 

二人は恩義を感じ、飛鳥に知識と技術を授け、作戦にまで同行してくれた。

 

紙一重な状況は幾つもあった。

 

今でこそ、こうして生きてはいるが、正直スミカとユウキの働きによる事が大きいのも確かだ。

 

本心で言えば、彼等と共にいつまでも活動を続けたい。

 

しかし、そんな願望は甘え以外の何物でもない。

 

彼等には彼等の人生がある。

 

いつまでも付き纏う訳にはいかないのだ。

 

「……残された期間、可能な限り、俺の知識と技術をたっぷりと叩き込んでやる。どうだ、受けてみるか?」

 

「――望むところです!是非もありませんッ!」

 

 別離が訪れるまで少しばかりの猶予がある。

 

共に居られる期間も残り僅かだ。

 

ユウキの提案に飛鳥は即答で快諾した。

 

「よぅしっ!そうと決まれば、今日はパァッと豪勢なモンでも食いに行くか!スミカさんも誘って三人でなっ!」

 

「いいですね!今日位贅沢しましょうっ!」

 

 先程までの暗い陰鬱とした空気感は、もう無い。

 

二人の表情は活気に満ち溢れ、公園を後にした。

 

 

 

「全く無駄使いの多いガキ共め――」

 

 スミカは小言を零すも、笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

―― 随分変わったな…アイツ(ユウキ)も… ――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ヴァンガード・オーバード・ブースト(VoB)

 

ネクストがアームズフォートに対抗するために開発された新装備。通称VOB。

機体背部に接続する巨大な追加ブースターで、これを使用することでネクストは時速2000kmにも達するスピードで飛行することが可能。

『長射程と高火力を誇るアームズフォートに対して超高速で接近、その懐に入り込むことで損害を最小限に抑え、また、火力を封じる』というコンセプトに基づき開発された。

その速度と航続距離を活かし、アームズフォート以外の目標に対して奇襲を仕掛ける場合などにも用いられる。

 

行き過ぎた技術の発展――。

それが齎したのは、崩壊に加速する世界――。

技術を生み出した者達は、()()を望んだのだろうか?

 

 

 

 

 

 




 人類虐殺エンド――。
プレイヤーでもあり、首輪付きとも呼ばれたACfaの主人公――。
彼は何を思い、あのような業に奔ったのでしょう。
理由はプレイヤーの数だけ存在するのでしょう、きっと。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)ゝ
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