アーマードコア・オルタネイティブ― 白い鳥 ― 作:カズヨシ0509
今回の投稿を機に、暫く投降を控えさせて頂きます。
活動報告にも記載してあります。
楽しみにして頂いている方々、誠に勝手ながら申し訳ない。<(_ _*)>
ではドゾ。
有澤重工業
日本を本拠とする、伝統ある重工業系総合企業。
形式上は独立企業だが、GAとの関係が深く、実質的に同グループの一員として扱われている。
軍用車輌と炸薬の分野に秀でている。
過去、ACネクスト製造の際、実弾防御とグレネードに特化したタンク型に拘りを見せていた。
その専門性は今も相変わらずだが、決して他の分野が遅れている訳ではない。
世界が融合した時、逸早く異変に気付き状況把握と周辺調査に乗り出した。
そして現日本帝国首脳陣と接触を図り、同盟および協力関係を築く。
また第4計画にも一定の理解を示し、提唱者である香月夕呼に多大な援助を施した。
元々、国家の復古を悲願として掲げていた。
社長は、有澤隆文。
優れたリンクスでもある。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―― 1997年5月10日 欧州東方・巨大交易所 ――
『”国家解体は成らず”先ずは、この言葉を贈ろう。薄々君も感じていると思うが、世界は次元を隔て融合した。君が信じようと信じまいと関係ない。過程の追及も意味を成さん。結果と現実が全てだ。さて…、不躾で申し訳ないのだが、力を貸して欲しい。BETAの存在は知っているだろう。その地球外起原種どもが、我々人類に牙を向いている事も。我々と共に日本へと来て頂きたい。我々の祖国『日本』が未曽有の危機に瀕している。企業連の大半は宇宙への進出を目論んでいるが、力無き人々は地球に取り残され、堪えずBETAの脅威に晒され続けるだろう。もし君にも日本人としての”血”と”魂”が宿っているのなら、我々と共に来ないか?金や利益の為ではなく、今日を懸命に生きる人々の為に!だがこの依頼を受ければ、君は純粋なレイヴンではなく衛士としての側面も併せ持つ事になる。言葉を飾る事に意味は無い、後は君の判断を待つだけだ。最後にもう一度、”国家解体は成らず”』
(推奨BGM アーマードコア5 ―― Lament Over the Howling Age)
「十分、言葉で飾り立てているじゃないか」
飛鳥は溜息を漏らし、端末の画面を見つめていた。
突如として寄せられた奇妙な依頼。
依頼人は、あの有澤重工業からだ。
添えられた音声は、何と『有澤隆文』本人のものだった。
「仲介役すら、有澤本人が演じるとはな。あの男らしいと言うか何と言うか……」
傍に居たユウキも似たような表情を浮かべ、頭をポリポリと搔いていた。
「やはり来たか」
飛鳥の自室にはユウキの他にスミカも居る。
この事を予期していたかのような口振りだ。
「……で、どうするんだ?」
「お前の答えだ。どんな選択肢を選んだとしてもな」
「……」
ユウキとスミカは飛鳥に問い掛ける。
だが飛鳥は意外にあっさりと、受諾の意を送信した。
「……随分あっさりと決めたな」
「後悔は無いな?」
飛鳥の行動にユウキは意外そうな顔をし、スミカは飛鳥のとった選択に覚悟を問う。
「……後悔しますよ…どっちを選んでも!」
飛鳥の答えは意外なものだった。
「「…………」」
彼の言葉にユウキとスミカは顔を見合わせる。
日本に向かうにせよ、此処に残るにせよ、必ず悔いる時はやって来るだろう。
―― こんな時、ああしとけば良かった ――
―― もしもこうしとけば、今頃はきっと ――
恐らくそんな想いに駆られる日が訪れる筈だ。
人間は生きている限り、常に選択を迫られる。
何気ない日常で選んだ答え――。
そして訪れる結果――。
全て自身が選び齎した道だ。
しかし自分の人生だ。
どんな選択肢でどの様な運命が降り掛かろうとも、それ等は全て己自身に降り掛かる。
誰かに強要され様とも環境に支配されようとも、選ぶ権利と義務は全て自分にある。
「どうせ後悔するんなら、自分で選んで後悔したい!」
何かに強制され選んだ答えでは、後悔しても仕切れない。
しかし自身で選んだ答えで招いた運命なら、少なくとも受け止める事が出来る。
「貴方が教えてくれたんですよ、スミカさん」
唐突に飛鳥はスミカへと振る。
「!?……そうだったか?……忘れたな、もう歳かな?」
「……30代や40代の女性には、聞かせられないお言葉ですね」
苦笑いを浮かべるユウキ。
因みに彼女は、20代半ばから後半の年齢だと言っておく。
「有澤の連中が此処にやって来る迄、後10日後と言った処か」
「……なんで分かるんです?」
かなり的確に予想するスミカに対し、飛鳥は訪ねた。
1週間ほど前、スミカはユウキを伴いインテリオルが所有するミミル軍港へと赴いていた。
そこには、有澤重工率いる部隊も駐屯していたのである。
嘗ての知人で後輩でもある『ウィン・D・ファンション』から、有澤の今後を密かに入手していた。
(人類種の天敵について多少言及されるも、彼女はあくまでシラを切る)
「今の有澤も少し変わっていてな。日本帝国斯衛軍を数多く引き連れていたよ」
「日本帝国!?
「そ、結構物騒な国名だろ?アイツ等、石頭ばっかりで参るぜ……」
――ソ連が現存している事といい、日本帝国といい、僕等の知る歴史とは差異が見られるな。矢張り世界が融合したというのは、間違いないのか。
自分の知る国名とは若干違う事に驚き、ユウキも帝国軍人に対し愚痴を零した。
こうして飛鳥も今後の指針を決め、それぞれの道を歩む事になる。
「さて、やるべき事が決まったんだ。残された時間を有効活用し、準備といこうか!その過程で、色んな事を叩き込んでやる。ちょっと厳しめにいくから覚悟しとけよ、飛鳥!」
「――はいっ!お願いします、ユウキさん!」
「――おうッ!ついて来いっ!」
彼等は旅立つ準備を始める事になり、飛鳥はユウキの後に追従した。
有澤重工、企業連、ミグラントを始めとした様々な人々が、この巨大交易所に集まり運命は交差する。
……
「オラぁっ!どうしたぁっ!早く立てぇッ!やられたいのかぁ!」
「――す、すいませんっ!」
……
「いいか、何度も教えたと思うが、!迷いは即、”死”に繋がる。決断したら即座に動け、敵は待ってはくれんぞ!」
「――はいっ!勿論ですっ!」
……
「バイパスを直結すれば確かに起動するが、直通の過電流で大抵のコンデンサはイかれちまう。あくまで緊急時に留めておけ!」
「――分かりました!なるべく追い込まない様に努めます!」
……
「あんまり消耗の激しい部品は無理して使うなよ?代用品が有るならそっちを使え!無理が祟っての機能停止じゃ、笑い話にもならん」
「……奥が深いですね」
……
「何も打撃戦に拘る必要は全くない。投げ、関節技、そこいらの環境と道具を利用する。これは生身でもAC戦でも共通だ、忘れるな!」
「――ぃいぃたたたたっ……、わかった!分かりましたから放して下さいッ!腕が折れるッ……!」
……
あれから1週間、ユウキは飛鳥に対し持てる技術と知識を徹底的に叩き込んだ。
飛鳥も愚痴一つ零さず、彼について行く。
迫り来る別れを惜しむかのように、1分1秒を噛み締めながら。
そんな二人の光景を、スミカは穏やかな表情で見つめていた。
「まさかアイツが教える側に回るとはな……人は変わっていくな」
そして瞬く間に時間が過ぎ、その間に数多くの部隊が交易所に到着する。
―― 1997年5月20日 欧州東方・巨大交易所 ――
(推奨BGM アーマードコア2 ―― Cord e)
『見ろよ、あの大部隊を』
『ここまでくると、もう軍団規模だな』
『スゲェ数だ!』
『それだけ此処も、安全じゃねぇって事だろ?』
『近くでもBETAの目撃が相次いでいるそうだぜ?』
『BETAだけじゃねぇ、汚染AIも脅威だってよ!』
『だけど、AFも来たんだ!BETA”
交易所に続々と集結する、企業連の軍。
AFを始め、大型陸戦艇、輸送車両などが大挙して押し寄せる。
その異様な光景に、住民は挙って物見遊山で集まった。
GA、オーメル、インテリオル、三大企業が部隊を割きこの交易所防衛の為に動いたのだ。
その規模は下手な国家軍すら凌ぎ、大国ですら容易に手出し出来ないであろう。
そんな中、一つの企業『有澤重工業』もAFギガベースを伴い、この交易所へ辿り着く。
野次馬の如く密集する人混み集団から少し離れた位置で、飛鳥達三人もAFを眺めていた。
既に移動の為の準備は済ませてある。
住居として間借りしていた部屋は解約し、飛鳥用とユウキ・スミカ用に車両も購入できた。
その車両に各々の荷物を詰め込み、いつでも動ける状態だ。
ユウキ達の私物はそう多くなく一般の軽車両で事足りたが、飛鳥はACを所持しているため、専用の輸送車両が必要となった。
少々値は張ったが、これまで稼いだ額は、他のレイヴンと比較しても抜きん出ている。
それ程の痛手とはならない。
AFは巨大である為、交易所に駐屯するには専用の港に着艦する必要がある。
受け入れ準備を終えるには、後1時間は掛かるだろう。
各企業の重役や、軍の上級将校たちが専用車で、交易所総督府へと移動を開始する。
無論、有澤重工もそれに倣い、上層部は専用車で移動した。
そしてAFや大型輸送車両が物資の搬入出準備を終えたかと思えば、各企業は一斉に動き始める。
食料や飲料水は言うに及ばず、防衛力強化の為の資材や兵器の数々が運び出され、交易所へと納められてゆく。
有澤重工も例外ではなく、防衛用の武器や兵器を提供する代わりに、数々の補給物資をギガベースへと搬入していた。
そして有澤重工は戦力増強の為、欧州や大陸の至る所に呼び掛けを行い志願兵を募っていた。
此処は陸路である為、人や物資も集まり易く今まで以上の戦力確保に期待が寄せられる。
資金や生活に困窮した者、名声を得ようとする者、武力を誇示したい者、共感した者――。
実に様々な人々が思惑を抱え、有澤との契約に応じていたのである。
当然傭兵だけでなく、技術者や知識層といった非戦闘員も含まれていた。
過去にBETA戦の為に大陸へと派遣され、祖国へ帰国する術を失った者も存在したのであった。
そんな彼等も有澤のギガベースへと移動を開始し、乗艦手続きの為に長い行列を形成する。
「今迄本当にお世話になりました。ユウキさん、スミカさん!」
飛鳥は二人に感謝の意を述べ、深く頭を下げる。
「それはお互い様だ。見ず知らずの私たちに施しを与えてくれたのだ。本当に感謝しているよ」
「俺達は急いで此処を発つ訳じゃないから、途中まで送るぜ」
スミカとユウキも彼に応じ、途中まで見送ってくれると言う。
「じゃ、行きましょうか」
飛鳥はそう言い、二人を伴って車両まで向かう。
大半の住民は、集結した企業軍に釘付けとなっていた為、普段の喧騒が嘘の様に静寂に満ちていた。
「それにしても本当に良かったんですか?あんなに物資を頂いて……」
「ん、気にすんな。良いんだよ、お前への餞別だ!」
「お前にとってのこれからは、過酷で険しい道となる筈だ。私達からの、せめてもの手向けだ」
今日という日を迎える迄、ユウキとスミカは様々な物資を買い漁り、飛鳥の車両へと詰め込んでいた。
それ等はAC用のパーツを主軸に、衣食住を賄う生活用品も含まれていた。
他にはOSやプログラムのといった、ソフトウェアなどもある。
「正直言うと時間が足りなくてな、実験段階の兵装やソフトが結構あるから、改良はそっちで協力者でも見付けてくれ」
あのインテリオルから購入した『多連装レーザーキャノン』を始めとした兵器の事を言っているのだろう。
あれ等は改良の余地が多分にあり、上手く事が運べば対BETA戦に於いても有用な兵装となるだろう。
そんな雑談を交わしている内に、車両格納ハンガーに到着する。
「――ん?誰か居る」
飛鳥が購入した輸送車両の傍には、装甲者らしき軍用車両が停車しており、複数名の人物がこちらに視線を向けていた。
飛鳥達は一応警戒しながら、歩を緩める。
「おやおや、まさかな」
「依頼のみならず出迎えまで、
ユウキとスミカは、複数人の人物に対し苦笑いを浮かべる。
飛鳥は兎も角、二人は警戒を解いてしまった。
「お二人は彼等を御存じなのですか?」
「ああ、よく知っている」
二人の態度に驚き、飛鳥は眼前の人物達について質問した。
複数人の人物の中心に立つ、一際大柄な偉丈夫は二人にとっても良く知る男であった。
「……」
「……」
彼等の前に立ち、お互い無言で視線を交わし合う。
「久方振り…という程でもないか。ミミル軍港で顔を合わせたからな」
「アンタ本人のご登場とはな、有澤隆文さんよ」
スミカとユウキが軽く声を掛ける。
有澤・隆文――その名前に飛鳥は些かたじろいだ。
彼が有澤重工を代表する社長でもあり、優れたリンクスである事は知っている。
しかし飛鳥が抱いていたイメージとは、大きくかけ離れていた。
もう少し知的で無口な紳士を想像していたのだが、目の前の本人は現場重視の作業服に黄色のヘルメットという出で立ちであったのだ。
「相変わらず御挨拶だな。しかし、ご両人が態々こんな所までやって来るとは、心変わりし我等に同行して頂けるのかな?」
隆文も不敵な笑みで、軽口で返した。
「残念だが、コイツを見送りに来ただけだ」
スミカも即答で返す。
「ほう……この少年が――」
「――っ!!」
大柄な体躯、そして射貫く様な眼力――。
ここで気圧されれば、相手の思う壺ではないかとさえ思える。
しかし飛鳥がどう足掻こうとも、リンクスとして数々の戦場を渡り歩いて来た彼の視線を受け切る事は出来なかった。
視線を逸らす事は無かったものの、急激に体温が上昇し汗が一気に噴き出す。
――何て迫力だ。これが歴戦の戦士と僕との差かっ……!
隆文の視線を真面に直視するだけでも、相当の覚悟を強いられる。
「おっと――。威圧した積りはなかったのだがね、失礼した。私は
「僕…いえ、
彼の視線に気圧されながらも、飛鳥と隆文は短くも簡単な自己紹介を交わした。
……
―― 有澤ギガベース ――
『志願兵及び非戦闘員は此方側に移動して下さい!隣の区間は正規軍用の区間です、立ち入らないで下さい!』
有澤重工の所有するギガベースに搭乗する為、多数の傭兵や非戦闘員たちが手続きを済ませ乗艦する。
此処の乗艦口では、特に車両やMTを持たない歩兵や一般人を担当していた。
『ん?お前で最後か?簡単な自己紹介を頼む?』
長い行列も一人の青年で最後となり、担当していた有澤専属の担当官は”漸くか”といった具合で彼を見た。
一応野戦に適した迷彩服を着用し、所持している武器は安物のナイフだけという、如何にも冴えない風貌で顎周りには無精髭を生やしている。
大方、敗残兵と成り果てた哀れな落ち武者と言った処だろう。
面倒ではあったが、これも職務だ。
担当官は、早々に仕事を片付けようと青年を急かす。
しかし行列最後の青年は、ここで意外な行動に出た。
唐突に毅然とした態度で姿勢を正し、見事な敬礼で声を大にして名乗り出た。
「――自分は
「――!?…………」
突然豹変した態度に、担当官は面食らい言葉を失った。
「……それを証明できる物は有るか?」
口だけなら何とでも言える。
偽りの身分を騙り、軍部に取り入る輩はゴロゴロと居るのだ。
つい先程も、偽造した身分の工作員が紛れ込み、捕縛したばかりだ。
この男が、帝国軍人とも限らない。
証明出来る物を所持していたとしても、油断は慎まれるべきである。
「これを」
男は首にぶら下げていた
「…………」
担当官は暫く無言で、認識票の識別ナンバーを照らし合わせていた。
「此処の待機部屋で待っていろ!おかしな真似をするなよッ!?」
担当官は近くの待機部屋へと連行し、監視員を二人付ける。
そして、大急ぎで帝国側の区間へと連絡を入れた。
……
(推奨BGM マブラヴオルタ ―― 霞)
「そろそろ私達の事も紹介してくれないかしら?社長さん」
軍服の上に白衣を羽織った女性が催促した。
服装からして研究者の類だろうか?
傍らには、複数名の女性仕官と小柄な少女を伴っている。
「おっと失礼。紹介しよう、彼女は……」
「――香月夕呼、日本帝国軍所属なの。宜しく!こっちが、神宮寺まりも、伊隅みちる、藤澤月子、竹宮千夏、三浦園子、イリーナ・ピアッティフ、そして社霞(やしろ かすみ)よ」
隆文が皆迄言い終わる前に、夕呼が自分と連れ添いの部下を紹介した。
「……ど…どうも…、火無飛鳥…です」
少々緊張感を滲ませながら、飛鳥と夕呼は握手を交わす。
――何だろう、この感じ?ザワザワした何か……、僕に向けられている?
握手をした瞬間、飛鳥は彼女に何か言い様の無い感覚を覚えた。
それは決して心地良いものではなく、出来る事なら避けたいという想いに駆られる。
「……」
だが、そんな感覚は僅か一瞬で塗り換えられ、飛鳥はとある人物に視線を移していた。
「…………」
「…………」
火無飛鳥と社霞――。
互いに目が合い、無言で見つめ合う。
――この違和感、覚えがある。……確かオーメルの大規模作戦で。
嘗てオーメルとソ連の共同作戦があった。
そこで確かに感じた、あの心地良い感覚――。
あの時に比べれば、更に透明度を増したような何とも形容し難い不思議な違和感――。
眼前の小柄な少女から流れて来る感覚だった。
「なになに?二人して見つめ合っちゃって、若しかして運命のお相手に出会ったのかしら?」
「どうした飛鳥?その少女を知っているのか?」
夕呼とスミカは互いに声を掛ける。
飛鳥は”何でもない”とはぐらかし、霞はゆっくりと首を振るだけだった。
そして残りの人物達も紹介を始める。
「崇宰恭子、階級は大尉。一緒に戦っていきましょう」
「如月佳織、恭子様の護衛を務めている。階級は中尉。宜しくお願いする!」
青と赤の軍服を纏った彼女達も軍人であるらしく、敬礼で飛鳥を迎え入れた。
「こちらこそ!独立傭兵のレイヴン、火無飛鳥です!」
飛鳥も敬礼で応えた。
「あら?海軍式なのね」
恭子は、飛鳥の敬礼を目にし意外そうな表情をする。
飛鳥の敬礼は、脇を閉め手の平を内側にした、海軍人が行う礼式だった。
過去レイヴンを目指し養成学校へ入学する際、教導官が海軍出資者だった事に起因していた為、飛鳥の敬礼は、専ら海軍式となっていたのである。
「……直した方が宜しいでしょうか?」
どうやら有澤と帝国連合軍は陸軍が主を占めているらしく飛鳥は念のため、是正の必要性を恭子に問う。
「いえ大丈夫よ、そのままでいいわ。貴方が軍に正式入隊するなら話は別だけどね」
恭子は特に気にするでもなく、強要する事は無かった。
「……さて、お見送りもここ迄だ。くれぐれもしっかりな」
「生きて、また何処かで会おうぜ。飛鳥!」
「スミカさん…ユウキさん……」
互いの自己紹介も終わり、”我々は用済みだ”と言わんばかりに、飛鳥を送り出すスミカとユウキ。
飛鳥も深い一礼で、二人に感謝を示した。
スミカとユウキが踵を返した、その時……である――。
「――色が」
「――この圧っ!」
ほぼ同時に霞と飛鳥は、あらぬ方角へと首を傾けた。
「――どうしたっ、飛鳥――ぐっ!?」
二人の様子に異常を感じたユウキは、飛鳥に問い質そうとするが、不自然な揺れが施設全体を襲った。
『緊急事態発生!緊急事態発生!敵勢力接近!これは演習ではないッ!繰り返す、敵勢力接近っ!これは演習ではないッ!非戦闘員は速やかに退避!非戦闘員は速やかに退避!』
(推奨BGM アーマードコア5 ―― Strive)
突如、区内速報が流れ、ここ車両格納区域も赤い警報ランプが点滅を始めた。
「――今の気配と揺れっ!!BETAのレーザーによるものですっ!!」
「奴等が来ました……」
「霞はまぁ分かるわ!――けど何で、アンタまで同じ反応をしてるのよ!」
飛鳥と霞はBETAの来襲を告げ、夕呼は彼の反応を不可解に思ったのか問い詰めようとするが――。
「――な、なによ、邪魔する気っ!?」
夕呼の手が飛鳥にと届く前に、ユウキとスミカが立ち塞がる。
「悪いな、お姉さん!何企んでるか知らんが、そう思い通りにはいかねぇんだわ!」
「そういう事は、少なくとも我々の目が届かん所でやって貰おうか。尤も、コイツを余りナめない方がいい」
――速いッ!これがランカー級リンクスの実力っ…!斑鳩崇継が欲しがるのも頷けるわね!
恭子は二人の元リンクスの動きに慄いた。
五摂家の一角、斑鳩崇継が部下の真壁介六郎を使い、ユウキとスミカに接触を図っている事は、恭子自身も承知している。
結局それは失敗に終わり、二人が日本に同行しない事も。
「大丈夫です、二人共。……そんな事よりも、防衛部隊は展開出来ているのですか?」
飛鳥は二人を宥め、隆文に部隊の展開状況を聞く。
隆文の情報によれば、幾つかの即応部隊が迎撃に出ているが、防衛戦の構築には幾許かの時間を要するという。
頼みの綱であるアームズフォートは、巨大兵器である故に着艦態勢にて待機状態だ。
このまま戦闘態勢に移行するには、一度野外に出て搭載機を展開させる必要がある。
直ぐに動ける戦力は、かなり限られるのだ。
「……残念だが、直ぐには動けん。しかしだ……」
隆文は意味有り気な台詞と視線で飛鳥を見る。
彼の視線を察し、他の面々も飛鳥の方を向いた。
既に状況を察しているのだろう。
飛鳥も直ぐに頷く。
「分かってます!この車両に僕のACが格納のされていますから、直ぐに動けるのはこの場で僕しか居ません!」
幸い彼の輸送車両には、ACが格納され起動すれば直ぐにでも戦力として展開できるだろう。
「済まんな、早速だが仕事に取り掛かって頂こう」
「私達も可能な限り早急に出撃します!それまで何とか持ち堪えて!」
「急ぎましょうか、社長さん?出会ったばかりのコイツを失うのも、ちょっと…ねぇ…」
「仕方が無いな。正真正銘これが最後だ、お前を目一杯サポートしてやる!」
「香月さんだっけ?折角だからアンタ達は、飛鳥の戦い振りをたっぷり見物してったらどうだい!?」
隆文を始めとする面々も、急いでギガベースへと向かうとするが、突如ユウキが夕呼を呼び止めた。
ACを格納してある輸送車両にも、指揮機能は備わっている為、其処からでも飛鳥をモニタリングする事が可能だ。
「……そうね、折角だしお言葉に甘えようかしら。……あんた達はどうする?」
一瞬戸惑ったが、彼女はユウキの提案に乗る事にし、部下に行動指針を訪ねる。
「私達は出撃致します!」
「相手がBETAともなれば、傍観する訳にはいきませんから!」
「お二方、無事の帰還を!」
神宮寺まりもと伊隅みちるは、出撃する意を示し竹宮達を率いて有澤側の車両へと向かった。
ピアッティフはそんな彼女等の無事を願う。
「――私達も急ぎましょう!」
「――ハッ!」
崇宰恭子と如月佳織も、車へと乗り込み早々とギガベースて走り去った。
「本当に最後の最後、サポートお願いします!スミカさん、ユウキさん!」
「おぅっ!最後はきっちり、格好良く決めようぜ!」
「いいだろう。一仕事してやるか」
「火無飛鳥くん…だっけ?御手並み拝見させて貰うわよ!」
「…………」
そして皆が各々の持ち場へと移動を開始した。
皆が輸送車両へと乗り込み、ユウキが運転を担当、他の面々は指揮室へと移動する。
飛鳥は当然ACへと乗り込み、既に起動準備を終えていた。
後は、ユウキが車両を野外に移動させるだけだ。
『飛鳥、まだアセンブルはそのままだったな。例の設定は熱源最優先にしておけ!どの道、光線級を優先して潰すんだ』
『こんな事なら、さっさとパーツを換装させておくんだったな。ブツはちゃんと積んであるんだが…』
コックピットに、スミカとユウキからの通信が流れ込む。
「大丈夫、やれますよ!」
センサー設定を熱源特化へ変更する事で、レーザーへの事前警報を促し、回避へと繋げてきた。
しかし、今車両に積んであるパーツには新型のセンサーが内蔵され、態々設定を弄らずともレーザー照射を事前警告してくれる仕様の新型であった。
だが今迄でも、このアセンブルで生き抜いてきた。
まだ部隊は完全に展開し切っていないが、味方と交易所の支援がある分却って軽い負担で戦える筈だ。
『よし、もう直ぐ野外へ到達するぞ。準備は良いか!』
「いつでも行けます!」
そうこうしている内に、輸送車両は野外へと到着した。
既に幾つかの直衛部隊が展開し、BETAの侵入を阻止する為に奮戦している。
しかし、大半はMT部隊でノーマルの姿は見えない。
正直、MTだけでBETAの進軍を防ぐのは厳しいだろう。
輸送車両そのものをBETA群に晒す訳にもいかず、ユウキは野外と装甲壁の境界線付近で停車させた。
「充分ですユウキさん!ACさえ展開出来れば――!」
『済まねぇ、後は頼んだぞ!』
『ギャラリーも居るんだ!存分に証明して見せろ、お前の
「――了っ!AC『白天翼』、いきますッ!」
車両のカーゴブロックが展開し、白色のACが大地へと立つ。
――さて、光線級まで一気に行くか!
そう決意したと同時に、通信が割り込んだ。
『汚染AIも居ます…気を付けて…』
『――何!?それは本当かっ!?』
か細くもしっかりした口調の主は、あの小柄な少女『
「…霞さん…だったかな?……通達、ありがとう!」
飛鳥は、霞なる少女へ礼を述べると、そのままブースターを吹かしACを前進させた。
……
「――今用意できる機体は、この試作型だけだ」
「充分ですよ、MTの操縦訓練も受けてます!篁少佐殿っ!」
―― 有澤ギガベース ――
BETAと汚染AIの混成群が、巨大交易所へと襲来。
各部隊は迎撃の為、慌ただしく動いていた。
そんな中、譜代武家でもあり技術仕官でもある斯衛軍人『篁裕唯(たかむら まさただ)』は、一人の青年に機体を託す。
その青年は、『山城上臣(やましろ かずおみ)』といい、数年前に行われた大陸戦の生き残りであった。
その大戦から数年の月日が経過している為、彼は既に戦死扱いとなっていた。
しかし乗艦口で認識票を提示し、敢えて帝国軍側の区間へと足を踏み入れたのである。
その時は、五摂家である『崇宰恭子』も有力武家である『如月』や『真壁』も席を外していた為、こうして裕唯が対応していたのである。
だがギガベースは物資の搬入の為、直ぐに部隊を展開する事が不可能な状態だ。
今即応できる部隊は率先して出撃準備に移っているが、少々の時を要するだろう。
ACノーマルにせよ戦術機にせよ、専用のハンガーからカタパルトへと移動し、機体を固定させ漸く出撃準備が整うのだ。
それに比べMTは比較的小型で、構造も起動手順もごく短時間で済む。
それに加え、彼は数年の時を得て帝国軍へと合流を果たした。
一応予備の第一世代戦術機で初期型の『激震』も有るには有った。
だが、数年の時は戦術機の操縦系統にも技術系統にも大きな隔たりを齎し、いきなり彼が戦術機に対応するのは些かに厳しいものがある。
聞けば、上臣は戦術機には数年触れてはいないと語る。
故に、操縦も構造も単純なMTを用意した次第である。
このMTは、逆関節型で跳躍力とブースター機能を備え、三次元的な動きに長ける。
固定装備として自衛用の12,7ミリ機銃2門、胴体上部に武装用アタッチメントが設置され、スナイパーライフルが装着されていた。
スナイパーライフルはACノーマル用を流用した物で、このMTはノーマル用の武装を装備する事が出来る機体である。
「試作型ゆえ対レーザー塗膜も施してはいない、くれぐれも前衛は避けろ!」
裕唯は警告する。
「ええ無論です!高台で狙撃に徹する積りですので――!」
交易所周辺の地形は平地で視界も開け、地上でも光線級に狙われる状況だ。
だがBETAの攻撃優先度は、人が搭乗した兵器や高度な演算器を搭載したものを狙う習性を持つ。
それが高性能であればある程、それ等を優先する傾向にあった。
今もBETAは、交易所装甲壁や着艦しているAFを優先して接近していた。
実際MTやノーマルを狙うのは、進軍のついでといった感が強い。
恐らく高台に陣取った処で、光線級に狙われる可能性は極めて低いだろう。
それに念には念を押して、砲身だけを覗かせる『稜線射撃』に徹すれば、万が一狙撃されても退避する時間を稼ぐ事が可能だ。
障害物に使える自然の丘や、何かしらの残骸位は存在するだろう。
「――では、出撃致します!」
「――死ぬなよ?山城上臣少尉ッ!生きて祖国の土を踏めッ!」
「――ハッ!」
裕唯は彼に奮起を促し、敬礼で見送った。
『MT、山城機……出撃しますっ!』
機体に乗り込んだ彼は、主脚移動でギガベースから出撃する。
『おい!出撃準備急げぇっ!』
『もたもたすんなぁっ!』
『物資の搬入、早くしろっ!』
『BETAは直ぐ其処まで迫っているぞっ!』
『それだけじゃねぇ、汚染AIまで居やがる!』
『対空にも気を付けろ!奴等は撃って来るぞっ!』
ギガベースだけでなく、交易所全体にも右往左往する職員が声を張り上げる。
『住民の避難急げぇッ!』
『避難所が足りないッ!?適当な建物を使え!』
『MTの配備はまだかっ!?』
内壁部の居住区は避難民で混雑し、半ばパニックに近い状態だ。
無理もない。
今迄平和を享受していた住民達は、BETAの事など対岸の火事の如くほぼ無関心であった。
しかし、今日初めてのBETA襲来で恐怖に慄いているのだから。
……
(推奨BGM アーマードコア5 ――Vulture)
「…突撃級、かなりの数だ。規模はどの位なんだ?」
戦線へと到着した飛鳥。
頭部カメラは、地面を埋め尽くさんばかりのBETAを捉えていた。
既に乾いた黄土色の土は、突撃級の甲殻で埋まっている。
ACの頭上には、無数のレーザーが交易所の装甲壁に照射されている。
交易所の装甲壁は、ACは元よりAFをも凌ぐ厚さだ。
そう簡単に焼き切れるものでもない。
しかし時間を置けば、それだけ被害が拡大するのは自明の理だ。
『飛鳥、分かっているとは思うが今回は最初から射線が開けている』
「ええ、地上は無論…少しでも飛翔すればレーザーの的になります!……それでも――」
スミカからの通信に応えると同時に、飛鳥はブースターを起動させ空中へと跳び上がる。
『――ちょっ…正気なのっ!?レーザーに飛び込む気っ!?』
『――黙って見ていろッ、女!』
飛鳥の行動に、夕呼が声を張り上げるがスミカに遮られた。
『――ぐっ…』
滅多な事で動じる事がない彼女も、カスミ・スミカの迫力には気圧された。
その瞬間、飛鳥のAC目掛けて幾多のレーザー群が殺到する。
――案の定来たなッ!
先ずハイブーストで、射線軸をズラし第一波を回避――。
続いて殺到する第二のレーザー群、サイドブースターを僅かに吹かし、慣性運動と推進力で小刻みに躱す――。
更に間断なく襲い来るレーザーの第三波――。
今回はかなりの光線級が存在しているのだろう。
機関砲の様に連続で照射されるレーザーの嵐。
一旦高度を下げながら突進するBETA突撃級の背を踏み付け、間髪入れずに再跳躍――。
そのままブーストドライブで、低高度を維持しつつ光線級に向かって跳ぶ。
『――う…うそでしょ?あれだけのレーザーを全て……』
『だから言ったろ。黙って見ていろと』
『こんな事が現実に……手動で……』
『まだまだこれからですよピアッティフさん、アイツの実力は――』
夕呼とピアッティフは、未だ信じられないと言った表情でモニターに釘付けとなり、スミカとユウキは”これは序の口だ”と言った。
――彼は先ず死なない……そんな感じがする。
唯一人、社霞だけは表情を崩す事なく、画面に投影されるACを見つめていた。
「こちらAC『白天翼』、これより光線級の陣地を目指します!」
『了解だ、常にモニタリングしておく。ギャラリー共の前でしくじるなよ?』
「――了っ!」
スミカからの熱い声援を受け、怒涛のレーザー群を悉く躱しつつ、飛鳥のAC『白天翼』はBETA光線級が居ると思わしき陣地を目指した。
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GA(グローバルアーマメンツ)
統治企業連盟の3大企業の一角。
北米大陸の軍産複合体を前身とする巨大企業で、環太平洋経済圏においては最大規模の企業である。
食料、エネルギー資源に強い企業。
単にGAと言えば、普通GAアメリカを指す。
ノーマルAC、パワードスーツ開発において主導的役割を果たしており
実戦的で安定した兵器を作り出している。
ACネクストにおいてもそれは同様で、防御力、特に実弾防御に優れたフレーム
ガトリングガン、バズーカなどの実弾重火器などを開発している。
反面精密機器やエネルギー技術は不得意で
オーメル、インテリオルと不仲である為、未だに後塵を拝している。
また、インテリオルと同様に、クレイドルの建造も行なっている。
第5計画を指示しており、宇宙進出を目論みバーナード星系移住を計画している。
漸くマブラヴ本編組と邂逅いたしました。
(オリキャラ?)もちょこっとだけ登場。
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
デハマタ。( ゚∀゚)ゝ