アーマードコア・オルタネイティブ― 白い鳥 ―   作:カズヨシ0509

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 マブラヴの方も、一応続きが書けました。
考えている様で、殆ど行き当たりばったりという無計画な我が作品。
いい加減な内容ですが、読んで下さるだけでもありがたいです。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第11話―交易所防衛線2―

 

 

 

 

 

 

突撃砲

 

小型種BETAの掃討を想定した機関砲と多目的大口径砲を組み合わせた戦術機サイズの銃器。

戦術機の主兵装。

射撃時に戦術機の腕にかかる負担を抑えるため

大口径砲には無反動砲の原理を採用し初速を抑え反動を軽減するようにしている。

その一方で速力が必要なAPCBCHEやAPFSDSなどの砲弾には

発射後にロケット推進で速力を増す補助加速装置を複合したものを採用したことで

装甲貫徹力と射程を確保している。

 

多くの派生型を生み出し、幅広く運用されている。

戦場に斃れた戦士を貪る屍漁り(かばねあさり)――。

卑しき彼等の悪行も、決して無意味ではない。

多くの戦利品が市場に流れ、傭兵やゲリラに行き渡っているのだ。

そんな彼等も、確かに戦場を支えていた。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

(推奨BGM  アーマードコア3 ―― In My Heart )

 

 

 バレルより放たれる弾丸――。

 

施条加工された銃身(ライフル)から加速された、徹甲弾は目標へと命中。

 

しかし弾丸はそこで停まり、目標を僅かに傷付けただけに過ぎなかった。

 

「こちらACエスペランザ!駄目です、撃破に至らず!」

 

 紅と黄でカラーリングされたAC『エスペランザ』の射撃は、思いのほか効果が薄い。

 

それもその筈。

 

ACの放った射撃相手は、BETAではなくACノーマルだった。

 

ACノーマルは洗脳級BETAに取り付かれた汚染AIで、機種はGA社製のGA03-SOLARWIND。

 

この機体は重装甲と積載重量に長け、重武装を施す事も可能な機体だ。

 

他企業製に比べ若干機動性は劣るものの、高い防御力や生存性の高さは一部のACハイエンドノーマルをも凌ぐ。

 

そして汚染AIと化したこの機体は、盾を装備していた。

 

特に実体弾に高い耐弾性を誇り、生半可な攻撃ではビクともしない。

 

ACエスペランザの装備しているライフルは、CR-WR69Rと呼ばれる初期ライフルだ。

 

対ACというよりは対MTや軽車両向けに開発された武器で、明らかに火力が不足していた。

 

殺到するBETAの大群を迎え撃とうにも、前衛に展開している盾付きのノーマルのお陰で、戦線が思う様に押し上げる事が出来ない。

 

「――アップルボーイ!汚染AIは俺に任せ、お前はBETA突撃級の足元を狙い擱座させろ!」

『――り、了解です!』

 

 彼の傍らで戦う四脚型ACから通信が入り、エスペランザのレイヴンである『アップルボーイ』にBETA突撃級への対処を命じた。

 

盾付きのノーマルに、これ以上構っても弾薬の無駄だ。

 

アップルボーイはブースター起動で場所を変え、BETA突撃級へと標的を変更する。

 

「アイツの機体構成(アセンブル)は、まだ初期とほぼ変わらん。重装甲で盾持ちのSOLARWIND相手では荷が重い、俺が何とかせんとな」

 

 アップルボーイに指示を出した、四脚型のACは更に前へと位置取り汚染AI郡に対峙した。

 

――こういう時は、コイツが役に立つ。

 

四脚型ACは、特殊兵装のECMロケット弾をACノーマルに向けて発射。

 

盾の隙間から覗く脚部へと命中させた。

 

ECMロケットの弾頭が砕け散り、ノーマルから電流が迸る。

 

すると、そのノーマルは急激に機能不全を起こし、戦闘中にも関わらず右往左往と動き回った。

 

彼が放った特殊兵装、ECMロケット。

 

弾頭に強力な妨害電波発生装置を組み込み、炸裂と共に電子機器にダメージを及ぼす電磁波を発生させる。

 

物理的に破壊する武器ではないが、こう云った耐弾性に長け尚且つ無人の自律兵器には特に有効だった。

 

――貰った!

 

四脚型ACは、背部武装のグレネードキャノンを展開させ、先程のノーマルへと発砲。

 

高威力の榴弾は、がら空きの脇腹へと直撃し敢え無く粉砕された。

 

「――ノーマル撃破!次っ!」

 

 主砲の役割を果たす、グレネードキャノン。

 

弾数は決して多くはないものの、今回は弾薬補給用の野戦コンテナが戦場各地へと投下されていた。

 

四脚型ACは残弾数を気にする事なく、盾付きノーマルへと狙いを絞り戦闘を継続させた。

 

「そろそろ弾薬がッ――!」

 

 群れで殺到するBETA突撃級を擱座させ、進撃を阻んでいたアップルボーイ。

 

流石に数が多く、ライフルの弾薬が底を尽き始めている。

 

擱座した突撃級を乗り越え、大量の戦車級が此方に迫り来る。

 

「――ターゲットロック、ファイアッ!」

 

 戦車級の群れに、背部武装のミサイルを発射。

 

数匹を纏めて吹き飛ばすも、小型ミサイル単発発射するだけの貧弱な武装だ。

 

とても戦車級の群れに対抗できるものではなかった。

 

『こちらGAノーマル部隊、貴官は今の内に後退せよ!』

 

 焦るアップボーイに、GAグループの部隊が救援に駆け付けた。

 

どうやらGAグループも主力部隊の展開の目処が立ったらしい。

 

合計70機を超える、二個大隊規模の援軍だ。

 

「こちらAC!一旦後退し、体勢を立て直します!」

 

 アップルボーイは機体を反転させ、野戦コンテナまで後退した。

 

――この戦闘が終われば、パーツを更新してみるか。

 

流石に性能不足を痛感し、彼は新たな機体構想を画策する。

 

駆け付けたGAノーマル部隊は、SOLARWINDを主軸とし、随伴機は重武装のMTで構成されていた。

 

ノーマルは腕部にアサルトライフルとバズーカ、背部にはミサイルを搭載した火力重視で、随伴機のMTは120ミリキャノンの主砲と30ミリ機関砲2門を搭載した重装機であった。

 

『隊長、部隊の展開完了、射撃準備よし!』

『――よぅし、総員一斉射撃!撃ちまくれ!』

 

 早期に射撃準備を終えたノーマル部隊は、一斉攻撃を開始し迫り来るBETA群に濃密な弾幕を浴びせた。

 

全搭載火器を駆使した一斉射撃の前に、前面防御に優れたBETA突撃級も甲殻ごと粉砕され、唯の肉片と化してゆく。

 

「……。此処の戦域はノーマル部隊に任せても良かろう。そう言えばあのバカ娘は、無事だろうな?」

 

 ノーマル部隊の奮戦を様子見していた四脚型AC。

 

自身の弾薬も殆ど使い果たし、補給の為に野戦コンテナへと後退する。

 

その道中、自分の肉親を気に掛けていた。

 

彼には年頃の一人娘が居る。

 

その一人娘が、よもやレイヴンに成っていようとは想像だにしていなかった。

 

それを知ったのはごく最近で、何度も辞めるよう勧告したのだが、彼女は一切聞く耳を持たなかった。

 

尤も家族に職業を告げなかった彼にも、非は有るのだが。

 

――この戦いが終われば、じっくり話し合うとしよう。

 

野戦コンテナで簡易補給を済ませた後、奮闘している一人娘を救援する為に今の戦域を離脱した。

 

「こちらACエキドナ!ああもう!気持ち悪いのよ、こいつ等!噛み付くしか出来ない癖に!」

 

 黒色と赤錆色に塗装されたACエキドナを駆る女性レイヴンは、赤褐色の小型BETA、戦車級の数に辟易しつつも腕部の主兵装であるグレネードライフルで、纏めて戦車級を吹き飛ばしていた。

 

「――敵機撃破!よし、順調ね!」

 

 高威力の榴弾を放つ中口径のグレネードライフル。

 

小型BETAを纏めて粉砕するには都合が良かった。

 

しかし装弾数に難があり、アッという間に弾切れを起こす。

 

「――えっ嘘っ弾切れっ!?」

 

 主兵装である腕部武装が弾切れを起こし、彼女は焦りの声を上げる。

 

既に両背部の3連ロケット砲は全弾討ち尽くしており、コアユニットに装着されている自動攻撃端末(イクシード・オービット)も再チャージ中だ。

 

残る武装は腕部のレーザーブレードのみだが、生理的嫌悪感を催すBETA。

 

今の彼女では、積極的に格闘戦を挑む気概は無かった。

 

「――うわっわ…!ど…どうしよっ!」

 

 実質的な攻撃手段を失い、彼女は冷静さを欠く。

 

『――こちらトルーパー!待っていろレジーナ!父さんが助けてやるからな!』

「――えぇっ!?な、何でお父さんが此処にっ!?」

 

 ACエキドナを駆る女性レイヴンの名は、レジーナと言う。

 

女性と言うよりは、まだ未成年の少女といった年齢だ。

 

彼女の父である四脚型ACのレイヴン、トルーパーは最大出力のブースト機動で救援に向かっているが、未だ距離が開いている。

 

こうしている間にもレジーナのACエキドナは、戦車級に囲まれつつあった。

 

BETAは空を飛ぶ事が出来ない。

 

普通なら空中に飛び上がり包囲を脱すれば良いだけなのだが、BETAには厄介な光線級が存在している。

 

下手に飛び上がれば即座に光線級に捕捉され、高出力のレーザーで焼き払われてしまうのだ。

 

『――もう少しだ、持ち堪えろレジーナ!』

「――ム、無理ぃ!もう、どうしようもないよっ!」

 

 いよいよ戦車級が、足下にまで迫り彼女のACに取り付かんとしていた。

 

――そんな時である。

 

戦車級の顎が弾け飛び、次々と戦車級は肉塊へと変貌していった。

 

レジーナのACエキドナに殺到していた戦車級は、体液を撒き散らし体組織を破壊され瞬く間に砕け散った。

 

「……な…何?何が起こったのっ?」

 

 余りに唐突な出来事に、レジーナは理解が追い付いていなかった。

 

その後も、彼女に迫る戦車級は悉く粉砕され、偶然モニター内に曳光弾の軌跡を捉える事が出来た。

 

よく見れば、曳光弾の軌跡は上空から飛来しているものだった。

 

「――え、なに、航空支援!?」

 

 彼女は頭部カメラを上空へと向ける。

 

モニターには、ハイエンドノーマルの白いACが映り込んでいた。

 

「な…何なのアレ?レーザー避けながら援護してくれてたの…?」

 

 レジーナは驚きの声を上げた。

 

上空では白いACがレーザーを回避しながら、付近の戦車級を掃討していたのである。

 

遠方から飛来するレーザーは、間違いなくBETA光線級によるものだろう。

 

このGA陣営にも、果敢に空中戦を挑む猛者は何人も居たが、悉くレーザーの餌食となり散っていった。

 

こうして見上げている間にも、白いACは回避行動を執りつつ地上に向かって射撃を繰り返していた。

 

気が付けば、付近の戦車級は皆肉塊へと成り果てていた。

 

「す、すごい…。誰だか知らないけどサンキュー、君のお陰で助かったわ!」

 

 あと少しで戦車級に食われる所だったにも拘らず、レジーナは極めて快活な声で礼を述べた。

 

『有澤重工の援軍だな?協力感謝する。後は此方に任せて、光線級の殲滅を頼む!』

「――えっ!?ちょっ…父さん!?」

 

 程無くして四脚型ACを駆るトルーパーも現場に到着し、白いACに光線級殲滅を託す。

 

『久し振りですね!レイヴン試験依頼ですか、アスカ・ヒム君!…僕です!アップルボーイ、覚えていますか?』

「――アップルボーイ!?君まで…!」

 

 トルーパーに続き、アップボーイもこの戦域に辿り着き、白いACに語り掛けた。

彼も現場に到着した事で、レジーナは更に驚きを見せた。

 

少しして白いACから応答が入る。

 

『こちらAC白天翼。レイヴン名、火無飛鳥。ゆっくりと話をしたい処だけど、戦闘中だ。何時かまた何処かで、生きて会おう!』

 

 会話もそこそこにAC白天翼は、BETA光線級の方へと飛び去った。

 

どうやら飛鳥とアップルボーイは同じ時期にレイヴンを目指した間柄で、同時期に試験に合格した。

 

友人という程親しい訳ではなかったが、訓練生時代そこそこ会話をする位には顔見知りではあった。

 

『レジーナ、お前も早く補給を済ませて来い。後続部隊が来るまで我々で此処を抑える』

「わ、分かってるわよ!」

 

――頼んだぞ、若きレイヴンよ!

 

トルーパーは白いレイヴンの飛び去った方角に、頭部カメラを向けていた。

 

 

 

……

 

(推奨BGM  アーマードコア3 ―― Artificial Sky I )

 

 

――()()――

 

一言で言えば、そう表現すればいいのだろうか。

 

殺到する、レーザーの嵐――。

 

絶え間ない、レーザーの雪崩――。

 

無限とさえいえる、レーザーの豪雨――。

 

ブースターを吹かし、機体の位置を変え、全てを避け切る。

 

地上の要撃級を踏み台とし、踏み込んだ反動とブースターの推力との相乗効果で、回避と接近の一体化。

 

彼のACには、もはや掠りもしない。

 

間断無く照射されるレーザー攻撃を避け、只管に光線級へと目指す。

 

『目標との距離、12000…10000…8500…7000…』

 

 オペレーターである、スミカの通信が聞こえて来る。

 

徐々に狭まる光線級との距離――。

 

『――距離5000ッ!』

 

――この距離なら十分ッ!

 

そして距離5000を切ったと同時に、飛鳥は攻撃へと転じた。

 

「――今ッ!」

 

 左右の銃器が火を噴き、銃口から無数の弾丸が解き放たれた。

 

銃口から眩いマズルフラッシュがチラつき、飛翔した弾丸はBETA光線級を次々と貫き砕いてゆく。

 

防御と耐久性の低い光線級はWS-16Cの36ミリ弾に貫かれ、動きは鈍重ながら高い耐弾性を有す重光線級はCR-YWH05R3のライフル弾により撃ち抜かれた。

 

飛鳥のACは光線級を仕留めながら、距離を詰めて行く。

 

時には空中、時には地上を自在に駆け抜け、光線級に対し的を絞らせず自身は的確に射撃を加える。

 

時間を追う毎に光線級は数を減らし、反撃とばかりにレーザー照射を見舞うものの、悉くが反撃に遭い粉砕された。

 

僅かな残存体が、要塞級を盾としながらレーザーを浴びせるが、射線を確保できているという事はAC側も射線を確保しているという裏返しでもある。

 

結局運命は変わらず、光線級は殲滅された。

 

『――光線級、殲滅を確認!よくやった!』

 

 スミカから、付近一帯の光線級殲滅の報を受け取る。

 

「――よし、後は残りのBETAだけだな。要塞級が数体に、要撃級が十数体」

 

『放っておけ、お前の役割は果たした、このまま帰投すればいい』

 

 スミカから通信で、後続の部隊が此方に急行していると言う。

 

後の処理は彼等が担ってくれるだろう。

 

「了、これより帰投しまs……」

 

『――どうした?』

 

 帰投しようとする矢先、飛鳥は言葉を途切れさせた。

 

「レーダー確認…さっきの…アップルボーイの居た方角だ!」

 

 先程レジーナたちを援護した地点で、激しい戦闘が行われている様だった。

 

『此方では確認できんぞ、何が起こっているのか分かるか?』

「詳しい事は何も…しかしレーダーを見る限りではBETAの反応は殆ど見られません!寧ろACの反応が増大しているみたいです!」

 

 装備しているレーダーユニットは未だ初期で、捉えた波形からでは事の詳細は確認できなかった。

 

しかし、アイコンが激しく動き回る毎にBETAの数は瞬く間に減少し、程無く消滅してしまった。

 

――にも拘らず、尚を戦闘は継続されたままだ。

 

友軍の識別を示すアイコンも次第に数を減らしつつあり、識別不明のアイコンが縦横無尽に動き回っているのだ。

 

『気になるのは分かるが、好奇心猫を殺すともいう。お前の役割は終わったのだ、理解出来るな?』

 

「…………。様子だけ見に行きます。冷たい様ですが、危険と判断したら即撤退と言う方向性で――」

 

『…いいだろう、お前の判断が正しい事を祈ろう』

 

 現場の確認を徹底するという条件で、飛鳥は件の場所へと機体を移動させる。

 

――一応飛んでみるか。

 

広い視界を確保する為、試しに高度を上げる事にした。

 

機体をジャンプさせ、そのまま高度を上げてみたがレーザーが飛来する事は無かった。

 

考えてみれば、交戦してからかなりの時間が経過している。

 

多方面の光線級も、ほぼ駆逐されても不思議ではない状況だ。

 

飛鳥はこのまま飛行を継続――その時!

 

突如としてコックピット内から、アラームが鳴り響いた。

 

「――なっ、被弾警報っ!?」

 

 機体が僅かに揺れる。

 

――この衝撃…実体弾ッ!

 

『――おい、撃たれたぞっ!高度を下げろッ!』

 

 スミカの怒鳴り声が木霊し、言われるまでも無く飛鳥は機体を降下させた。

 

『――被害状況はッ!?』

「左肩部、損傷!弾種は対AC用ライフル弾――なれど戦闘に支障なし、装甲で止まった!」

 

 モニターには、機体のダメージ状況を示す映像が表示されている。

 

左側の肩部が赤く点滅し、損傷している事を示していた。

 

『――ちょっと君、レーザー全弾避けた癖に、何でそんなつまらない射撃に当たるのよっ!?』

 

 通信に香月夕呼が割り込んで来た。

 

声音を聞く限り、怒りや呆れが混在している様だ。

 

更に別の声――社霞までもが割り込んで来る。

 

『汚染AIとは違う完全な無人兵器……これでは()を読み取る事が出来ません!』

『――どう言う事だい、嬢ちゃん?』

 

 彼女の言葉にユウキが反応する。

 

光線級のレーザーにせよ汚染AIの攻撃にせよ、必ずBETAが関係している。

 

汚染AI自身は機械兵器だが、洗脳級BETAが取り付き支配する事で攻撃信号を送信している。

 

故に生物である彼等の思念を感じ取る事で、霞や飛鳥は攻撃を予測する事が出来ていた。

 

だが今対空射撃を行ったのは、完全な無人自律兵器であった。

 

生物が関わっていない以上、思念を感知する事が出来ず、飛鳥は被弾を許してしまったのである。

 

「レーダー確認、機種……ACと断定!アセンブルまでは分かりませんが…」

 

 地上へ着地しレーダーを確認した処、ACの反応を示していた。

 

また計測されたエネルギー反応からして、ハイエンドノーマル級だと判断出来た。

 

ついでに取得できたデーターを輸送車両にも送信しておく。

 

『――もうお前を補足しているぞ、数は3機…全て四脚タイプ。逃げるなら今の内だ、判断を迷うなよ?』

 

 先程対空射撃を行った無人AC軍が飛鳥に向かって、ホバー移動で迫っていた。

 

「弾薬推進剤共に、7割残っています。このまま奴等をやり過ごし、彼等と合流し共闘します!」

 

 このまま撤退すれば、間違いなく自分は安全を確保出来るだろう。

 

しかし、それでは有澤方面に無人ACを引き連れる結果となり、彼等を危険に晒す恐れもあった。

 

ならばアップルボーイたちと合流し共闘した方が得策と判断したのだ。

 

レーダーには50機以上の友軍機が残存している。

 

まだ味方機が残っている内に合流した方が、敵意を駆逐できる確率も高かった。

 

地上にはBETAの死骸が、そこら中に転がっている。

 

飛鳥はこれ等を遮蔽物にしながら、無人AC軍の射撃をやり過ごし切り抜けた。

 

『――クソ何だコイツら!?』

『――汚染AIとは違うのかっ!?』

『――漸くBETA倒したってのにッ!』

 

 ACノーマル部隊は、正体不明の無人AC群へと一斉射撃で迎え撃つ。

 

先程の戦いで損耗したとはいえ、火力重視のノーマルとMTの混成部隊だ。

 

濃密な火線は、無人AC群に幾らかの効果が見られた。

 

だが高機動型の無人ACが前衛に躍り出た途端、流れが一変する。

 

低空を自在に飛び回り、ブーストドライブやハイブーストを駆使した変幻自在の機動は、濃密な弾幕を見事に擦り抜けた。

 

そして反撃とばかりにパルス弾の連射を浴びせる。

 

その武器は従来のパルスライフルとは違い、一定距離で電磁爆発を引き起こし、範囲内に継続ダメージを負わせた。

 

また引き起こされた電磁爆発は、電子機器や電装系に深刻なダメージを引き起こし、友軍部隊は瞬く間に機能障害へと追い詰められる。

 

『――や、やべぇ…モニターがッ!』

『――至急、至急!応答乞う、応答乞う!』

『――クソ、動け、動きやがれっ!』

 

 混乱状態のGA部隊に、無人AC群の苛烈な追撃が襲い掛かった。

 

十数機程度の群れだが、四脚ACから放たれる対AC用ライフル弾が、ノーマルACを次々と撃ち抜き撃破された。

 

「――何なのよッコイツら!さっきまで居なかったでしょっ!?」

「――残念ですが、包囲されました。撃破して突破するしかありません!」

「――各機、火力を一点に集中させ突破口を作り出せ!」

 

 友軍機を次々と撃破しながら無人AC群は包囲網を生成し、彼等を取り囲む。

 

レジーナ、アップルボーイ、トルーパーの3人は火力を集中させ一点突破を図った。

 

だが無人ACの装甲は予想以上に強固で、一機撃破するにも時間を要した。

 

無人AC一機を撃破できたものの、レジーナとアップルボーイは損傷を受け戦闘力を著しく低下させる。

 

更に追い打ちを掛けるように、無人AC群の集中砲火がレジーナのACに深刻な損傷を負わせた。

 

「――う、嘘っ?脚部破損っ!?」

 

 彼女のACエキドナは、片脚が大破状態となり歩行は疎か直立姿勢さえ困難な状態へと追い込まれる。

 

「――レジーナっ!」

 

 彼女の父であるトルーパーは、前へと立ちはだかり盾になろうとする。

 

『――父さんッ!』

『――トルーパー隊長ッ!』

 

「――貴様だけでも逃げろ、アップルボーイ!俺が敵を引き付けている間に、無理矢理でも空中へ退避するんだ!」

 

 BETA光線級はもう居ない。

 

三人の中では、比較的損傷度の低いエスペランザを逃がそうと、トルーパーは叫んだ。

 

『し…しかし…』

「――急げっ!俺もこの部隊も長くはもたんッ!お前はまだ若い、生き延びろッ!」

 

 逡巡するアップルボーイを怒鳴りつける。

 

こうしている間にも、無人AC群は友軍機を次々と撃破し、残存している味方機は12機と数を減らしていた。

 

「……生き残れたら今度こそ、ゆっくりと話し合おうと思っていたのによ。ツイてねぇぜ…」

『とう…さん…』

 

『――申し訳ありません…ブーストッ!!』

 

 レジーナ、トルーパー親子に敵機が無慈悲にも迫って来る。

 

その間、アップルボーイはブーストを吹かし、包囲網を突破する為に空中へと無理やり上昇した。

 

刹那――!

 

機体のモニターに一瞬だが、白いナニカが映った。

 

――えっ!?

 

彼が気付いた頃には、モニターにはもう何も表示されていない。

 

しかし、レーダーには擦れ違ったナニカをしっかりと捉えていた。

 

間も無くしてオープンチャネルで通信が入る。

 

『――こちらAC白天翼、これより貴隊を援護する!』

「――その声…君ですかっ!?」

 

 アップルボーイは機体を反転させる。

 

頭部カメラが捉えたのは、白いACだった。

 

……

 

(推奨BGM  アーマードコアVD ―― Mechanized Memories )

 

 

飛鳥は低空で位置を変えながら、両腕のライフルと背部のロケット弾を地上に向けて乱射する。

 

なるべく敵部隊に満遍なくばら撒き、此方に注意を向けさせた。

 

「よし、掛かった!」

 

 思惑通り敵の殆どが彼を標的とし、高機動型は飛び上がり、四脚型はライフルで対空射撃を試みる。

 

「――占めた!…今の内だ、突破しろぉッ!」

 

 敵の注意が飛鳥に向いた事で、包囲網に穴が生まれる。

 

好機と捉えたトルーパーは、残存機には退避を呼び掛け、自身は半壊したレジーナの機体を担ぎ脱出を図った。

 

――注意を引いたまでは良かったが、敵は予想以上に強固な装甲を誇っている。……どうするッ!?

 

敵の注意を引く為の乱射ではあったが、実質全搭載火器を用いた全力射撃であった。

 

だが完全撃破できたのは僅か一機で、生き残った機体は殆どが戦闘を継続。

 

『システム・スキャンモード』

 

 飛鳥は回避行動を執りながら、スキャンモードに切り替え周囲を索敵する。

 

すると、交易所付近にはGA本隊が戦闘を続けていた。

 

――押し付ける様で悪いが…!

 

未だ10機以上を残す無人AC達。

 

流石に今の武器では、明らかな火力不足だ。

 

頼みの綱である味方機は殆どが消耗し損傷し、撤退という体を保ちつつも敗走に近い状態だ。

 

過度な期待は出来ないだろう。

 

飛鳥はブースト機動で、GA本隊へと進路を取った。

 

GA本隊に多くの味方機が居る。

 

敵を引き連れ、彼等に押し付ける形となってしまうが、この際綺麗事は言っていられない。

 

そもそも、こちらは追加の依頼で光線級を殲滅し役割を果たしたのである。

 

文句を言われる筋合いも無いというものだ。

 

だが厄介なのは彼に追い縋る、高機動型のAC達だ。

 

運動性、速度で彼のACに肉薄し、パルスマシンガンを浴びせて来る。

 

――何だ、あの武器?空中で電磁爆発を引き起こした。

 

彼も初めて見るのだろう。

 

被弾こそしなかったものの、敵の使う武器は未知の領域だった。

 

だが高機動型の包囲網は徐々に狭まり、無人ACに捕捉されてしまう。

 

――不味い、ロックされたッ!

 

コックピット内に響く、被ロックオンのアラーム音。

 

無人ACの銃口が彼に向けられた。

 

その瞬間、爆発が巻き起こる。

 

「――何だッ!?」

 

 突如として、銃口を向けていた高機動型一機が爆発を引き起こしたのである。

 

――自爆っ……?いや違う…何が起こったんだ?

 

疑念を抱きながらも飛鳥は、GA本隊へと飛行を続ける。

 

そんな彼の元へ通信が割り込まれる。

 

『そこの白いAC…こちら機体構成は狙撃特化型だ。射程内にそいつらを連れて来い。ここで死にたくなければ、此方の指示に従え』

「――今度は何だッ!?」

 

 若い女性だが、カスミ・スミカとは似て非なる低く落ち着いた音声が、彼の耳を打つ。

 

『飛鳥、お前を中継して姿を捉えた。ビーコン情報受信、交易所付近の瓦礫の上だ!』

 

 一連のやり取りを聞いていたのだろう。

 

スミカからの通信が入り、彼のモニターにはマーカーが表示される。

 

迷っている暇は無かった。

 

少しでも隙を見せれば、忽ち敵の餌食と化すのだから。

 

ブーストエネルギー残量をも無視し、多少無理をしてでも飛鳥はビーコンの方角を目指す。

 

そう時間を置く事なく、更に高機動型の一機が爆発した。

 

白い軌跡を描く火線が、無人ACを貫いたのだ。

 

その瞬間、残り3機の高機動型は回避行動を執り始め、次々と狙撃を躱してゆく。

 

「…思ったよりも対応が早い」

 

 このままでは、謎のACの狙撃も功を成さなくなるだろう。

 

『――気を付けろ!一機来るぞ、真正面!』

 

――真正面っ!?

 

またもやスミカからの通信で、進行方向から接近警告が流れて来た。

 

だが、考える間もなく黒い物体が彼と擦れ違い、追い縋っていた高機動型無人AC達と撃ち合いを繰り広げていた。

 

「――今のは黒いAC…あの時のッ!?」

 

 機体はそのままに、後部カメラを起動させ後方の戦闘を撮影。

 

戦いを繰り広げる黒いACには見覚えがあった。

 

数週間前オーメル主導で行った、大規模作戦で遭遇した記憶がある。

 

その時も黒いACが先陣を切り、多数のBETAを苦も無く駆逐していた。

 

黒いACも高機動型にアセンブルされているらしく、無人AC相手に互角以上の戦いを展開していた。

 

高機動型無人ACの後方には、無人四脚型ACが集団で此方に迫っている。

 

先程の狙撃型ACは、地上へとターゲットを切り替え、次々とスナイパーライフルで貫いた。

 

「あんなAC……見た事がない……」

 

 狙撃を行っていたACへと接近し、飛鳥は目視で姿を捉えた。

 

『あのカラーリング、そしてエンブレム……まさか……』

 

 スピーカーごしに、スミカの呟く声が漏れて来る。

 

黒を基調とし赤を血管の様に入り混ぜたカラーリング、双剣を携えた一本尻尾の獅子のエンブレム。

 

そして、見た事も無いパーツで構成された、独特の姿形をした異質のACだった。

 

今も長大なスナイパーライフルで狙撃を継続し、一機また一機と無人ACを仕留めてゆく。

 

そして流れる様に無人AC群を殲滅し終え、黒いACと狙撃特化のACは撤退を始めた。

 

「――黒いAC!貴方は何者です!?独立傭兵なのですかッ!?」

 

 飛鳥は堪らず、抱いていた疑問を口に出した。

 

すると黒いACは一旦飛行を止め、空中を制止しながら此方に振り向く。

 

『戦場在る所、我ら顕れり』

 

 淡々とした口調でそう答え、そのまま飛び去ってしまった。

 

それから幾許かの時は流れ、BETA、汚染AIとの戦闘は人類側の勝利に終わり、巨大交易所の防衛は成功した。

 

幸い交易所内に侵入したBETAは皆無で、装甲壁がレーザーで損傷しただけに留まった。

 

「……終わったな、ユウキ」

「ええ」

 

「……」

「……」

 

 一方、輸送車両内ではスミカとユウキは戦闘終了を確認していた。

 

「そろそろ行くか」

「……」

 

 スミカは席を立ち上がり、ユウキにもそれを促す。

 

「あら、行っちゃうの?」

 

 隣で夕呼が呼び止めた。

 

本来は、交易所で飛鳥とは別れる予定だった。

 

しかしBETAによる予想外の介入により、二人はなし崩し的に飛鳥のサポートへと回ったのだ。

 

戦いが終わった以上、二人に留まる理由はなかった。

 

「…………」

 

 ユウキは押し黙ったままだ。

 

一言も発さず唯々無言を貫き、拳を握り締めているのをスミカは見逃さなかった。

 

「なぁ、ユウキよ」

 

 スミカは一人言葉を紡ぐ。

 

「あの軽車両…放っておけば、ゴロツキ共に接収されてしまうなぁ?」

「…セレン…?」

 

「大きくもない車両だが、そこそこに荷物も詰め込んである。それ等を心無い連中に持って行かれるのも、どうかと思うんだ…私はな…?」

「……」

 

「お前の導き出す答えだ、私はそれで良いさ」

「……セレン・ヘイズ……」

 

 スミカの淡々とした口調に、ユウキは反応を返す。

 

飛鳥と別れ、自分達が旅立つ為に購入した軽車両。

 

BETA群の思わぬ乱入により今は駐車区域へと停車してあるが、状況が落ち着き放置しておけば、心無い無頼の輩に持ち去られてしまうのは明白だ。

 

都市機能が忠実した巨大交易所ではあるが、人と物資が流れ着く地である以上、貧富の二極化も激しく、富裕層地区以外は治安も不安定な場所でもあった。

 

ユウキは、突如として席を立ち上がった。

 

「あの車…チンピラ共にくれてやるにはチィッとばかし勿体ないですよね!俺、取ってきます!」

 

 そう言った彼は勢い良く輸送車両を飛び出し、そのまま交易所へと走り去った。

 

――全く、世話の焼ける。

 

去り行くユウキを見送ったスミカも静かに席を立ち、運転席へと移動する。

 

そんな彼女を無言で見つめる、夕呼、ピアティフ、霞の三名。

 

「……なんだ?」

 

 見つめる彼女等の視線に、スミカも気付き訝し気に問う。

 

「いえいえ、お気になさらず♪」

「私達は静観しているだけですから★」

「絆…ですね(^-^)」

 

 三者三様に、言葉を並べ薄っすらと笑みを浮かべた。

 

「……フッ……、まぁ、仕方なかったって奴だ」

 

 スミカも軽口で返す。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼

 

 

(推奨BGM  マブラヴ オルタネイティヴ ―― 小隊前進! )

 

 

 

戦場跡。

 

大地の至る所に煙が立ち込め、硝煙と火薬の臭いが充満する。

 

其処彼処に転がる、金属の破片と残骸。

 

半壊した兵器。

 

赤黒い体液を撒き散らし、原形を留めぬBETAの死骸。

 

そして千切れ散乱する、嘗て人だったものの肉片。

 

そんな大地に佇む、人型を模した鋼鉄の巨人が数体。

 

『あの黒いAC、お知り合いですか?』

 

「アップルボーイ…」

 

 アップルボーイと呼ばれた、一人のレイヴンから通信で呼び掛けられた。

 

「いや、そんな関係でもない。知っている……只それだけ。僕自身も彼の素性は分からない」

 

 白いACのレイヴンである飛鳥は、曖昧な答えで返した。

 

あの黒いACとは、以前共闘した事がある――。

 

ただそれだけの関係なのだ。

 

『じゃあさ、もう一機のACの事は?』

 

 今度は少女が呼び掛けて来る。

 

ACエキドナを駆る、レジーナを名乗る少女のレイヴンだ。

 

黒いACと共に居た、狙撃特化型のACを指しているのだろう。

 

「あれは僕も初めてだ。見た事も無いパーツで構成されてた、一体何者だろう?」

 

 無人AC群に追い縋られていた時、狙撃で飛鳥の窮地を救ったあのAC。

 

既存のACとは一線を画すパーツで組み上げられていた。

 

『俺もあんなACは見た事がない。新型なのか、若しくは国家解体以前…いや、それより更に昔の機体なのか……。撃破した無人AC群も、我々の知らんパーツで構成されていたな』

 

 レジーナの父であり、ベテランレイヴンでもあるトルーパーも会話に加わった。

 

黒いACと狙撃特化のACのみならず、彼等に撃破された無人AC群も似た様なパーツで構成されている。

 

――この無人AC…洗脳級BETAの反応は無かった。誰かが、遠隔操作でもしていたんだろうか?……一部でも回収すべきか?

 

飛鳥は無人ACの残骸をカメラに収め、記録撮影しながら回収を考えていた。

 

『――ちょっとぉ君ぃ、聞こえる~?』

「――!?」

 

 思案中の飛鳥に、香月夕呼が通信で割って入った。

 

「えぇっと確か…香月…夕呼…さん、でしたっけ?」

『そうそうご名答、これから長い付き合いになると思うからしっかり覚えておいて!――で、そんなアタシから、チョットしたお仕事を頼むわ』

「――無人ACの回収ですか?」

『あら?分かってんじゃないの』

 

 この場で、このタイミングの通信だ。

 

しかも相手が研究者とくれば、大体の要求は察する事が出来た。

 

『話が早くて助かるわ。回収お願いできるかしら?』

 

「……実はマニピュレーターが空いていないので、ウィンチで牽引するしかありません」

 

 現在飛鳥のACは両腕部に銃を保持している為、新たに物を掴む事が出来ないで状態だ。

 

戦術機の機能である、副腕(サブアーム)や背部担架ユニットの様に腕部武器をマウントする機能は備わっていない。

 

武器を投棄すれば手は空くが、軍から支給された物ではなく全て自費で賄った品だ。

 

安易に捨てる事など考えられなかった。

 

従って、補助装備のワイヤーウィンチで対象物を絡め取り引き摺るしかないのだが、無人AC丸ごと一機を牽引するのは予想以上に手間と時間を要するだろう。

 

『ああ、そんな事?ちょっと待ってて、ウチの部隊を寄越すから確保だけしておいて!』

「了、お早めに」

 

 夕呼は応援に、A01部隊を派遣してくれるらしい。

 

だがこの戦域はGAの管轄下だ。

 

一応同じ陣営とは言え余り長居できるものでもなく、このまま拘束されGAに引き込まれるのではないか、という疑心に囚われそうだった。

 

数分後、”神宮司まりも”率いる戦術機部隊が現場に到着した。

 

有澤隆文が、GAに根回ししてくれたのだろう。

 

特に現場が騒がしくなる事もなかった。

 

『――此方A01部隊、これより回収に移る。各位、作業開始!』

『『『『了解!』』』』

 

 まりもが部下に命じ、回収作業が速やかに開始される。

 

『これが有澤統地区…もとい、日本帝国の戦術機…ですか』

『F-4だっけ、それがベースになってるんだよね?』

『第一世代機だが、コストパフォーマンスに優れ世界中に配備されている筈だ』

 

 アップルボーイ、レジーナ、トルーパーの3名はA01部隊の作業を見ていた。

 

当然彼等も、ある日を境に異なる世界同士が融合し、戦術機やBETAが異世界の産物である事は知っていた。

 

だが彼等もあくまで傭兵だ。

 

世界の存亡や国家の理念などは二の次で、重要なのは今を生き抜く術こそが肝要。

 

故に、異世界同士の融合などという荒唐無稽な現実には、さして拘る事象でもなかった。

 

『こちらヴァルキリー2、回収作業完了!』

 

 ヴァルキリー2のコールサインを持つ伊隅みちるが、作業完了の旨を宣言する。

 

四脚と高機動型の無人ACを一機ずつ確保する事に成功した。

 

『A01部隊、これより帰投する。レイヴン…火無飛鳥。貴官は我々の後に続いてくれ!』

 

 まりもの指示を受け、飛鳥も彼女等に追従する事にした。

 

『借りができたな、若きレイヴン』

『ほんとに助かったわ、サンキュー!』

『また何処かで、お会いしましょう!』

 

 三人が飛び立つ飛鳥に言葉を贈る。

 

「勿論、生きて会おう!何処かで!」

 

 飛鳥も彼等に応え、そのままA01部隊と共にその場を去った。

 

 

 

……

 

(推奨BGM  アーマードコア ―― ガレージ )

 

 

『よくやってくれた、火無飛鳥君。君はそのまま、ギガベースへと直接向かってくれ。輸送車両は、既に此方で格納してある』

 

 A01部隊に追従している最中、有澤隆文から直接通信が入った。

 

「――了。……有澤さん、あの()()はどうなったんです?」

 

 戦闘が終了した時から、ユウキとスミカからの音信がプッツリと途絶えていた。

 

飛鳥は気になり、訊ねずにはいられなかったのだ。

 

『もう分かっている筈。…つまりは、()()()()()()

 

「……はい」

 

 大方の察しは付いていた。

 

元々あの二人とは交易所で別れ、それぞれの道を歩む予定だったのだ。

 

つい何時も通りに彼等のサポートを受ける事で、感覚が麻痺していた事も否定できないだろう。

 

――割り切らないといけない事は分かっている。それでも……せめて別れの挨拶ぐらい、ちゃんと言いたかったな。

 

どの様な状況であれ戦場で身を置く以上、別離は唐突にやって来るものだ。

 

それは飛鳥自身も()では理解していたが、感情を処理し切れる程、少年は大人ではなかった。

 

有澤陣営のギガベースは、既に交易所から出港しており荒野を微速で航行している。

 

此処は陸上だ。

 

ギガベースの移動方法は、無限軌道に置き換わっていた。

 

ギガベースの後部ハッチより、戦術機とAC白天翼は着艦する。

 

他の友軍機は皆撤収を完了し、彼等が最後の回収機だ。

 

『A01部隊は此方のハンガーへ、ACは此方の専用ハンガーにて移動して下さい』

 

 艦内オペレーターの誘導に従い、飛鳥はACを移動させ専用ハンガーへと機体を設置する。

 

――これがギガベースの内部か。思ったより随分広い。

 

外側からは見慣れた、AFギガベース。

 

しかし、中に入ったのは今日が初めてだった。

 

全長600メートル、全高250メートル、全幅300メートルの圧倒的巨体を誇る拠点型AFだ。

 

内部は様々な兵器が立ち並んでいた。

 

ACノーマルを始め、多様なMTに通常兵器群、そして戦術歩行戦闘機。

 

そして艦内を忙しなく走り回る、作業員達。

 

奥の方には、自分で購入した専用の輸送車両が停まっている。

 

コックピットハッチを開け、飛鳥は機体を降りた。

 

「先ずは生還おめでとう、火無飛鳥君!」

 

 降りた先には白衣を着た女性、香月夕呼が待っていた。

 

彼女だけではない。

 

「あれだけの猛攻を潜り抜け――モニター越しに見ていたけど凄かったわね!」

 

 帝国斯衛軍で五大摂家の一人、崇宰恭子を含め衛士の面々が挙って彼を出迎えていた。

 

「……」

 

 その光景に圧倒されたのか、飛鳥はたじろぐばかり。

 

「では恭子様、私はデーター解析に移ります」

「頼むわね、篁少佐」

 

――た、篁っ!?

 

巨躯の傍らに居た山吹色の軍服を纏った一人の士官――。

 

恭子が口にした、彼の姓は『篁』だと言った。

 

聞き覚えのある名に飛鳥は、またもや動揺する。

 

その場を立ち去る篁雅唯の背を、自然に目で追っていた。

 

「此度の戦闘ご苦労。見事と言わせて貰おう、火無飛鳥君」

 

 飛鳥を迎える面々に、今回の雇い主である有澤隆文が声を掛ける。

 

「…いえ、これが役割です」

 

 気の利いた社交辞令など今の飛鳥には期待出来よう筈も無く、彼は短い言葉で応えるしかなかった。

 

「今後展開されるであろう作戦、細やかな君の任務、確認したい事は山ほどあるだろうが、今はゆっくりと休み次に備えて頂きたい。君の部屋は既に用意してある。案内は彼等に任せよう……では私はこれにて!」

 

 必要事項を伝え、彼は直ぐにその場を立ち去った。

 

――彼等って誰だろう?

 

隆文に説明された人物など見当たらず、飛鳥は周りを見回す。

 

その視線の先々に、夕呼や恭子達と目が合ったが、彼女らは全員首を振るばかり。

 

「取り敢えず、あの通路を進んでみると良いですよ!」

 

 衛士の一人である三浦園子が声を掛け、とある方角に指を指す。

 

「は、はい…」

 

 ここに留まった処で埒もあかず、その通路に向かう事にした。

 

少し進むと、忘れようもない聞き覚えの有る声が掛かった。

 

「ようっ、おかえり…ってか?」

 

「――えっ……!?」

 

 その声に反応し視線を向けた先に、()()()()()《/b 》。

 

「ユ、ユウキさんっ!?スミカさんっ!?」

 

 

 

……

 

 

 

《b》()()()()()()()()

 

ユウキとスミカは、日本へと向かう事にしたのである。

 

もしも飛鳥が何事も無くあの戦闘を終えていたなら、彼等はそのまま交易所を去っていた。

 

しかし、二人は飛鳥と共に日本行きの選択肢を取った。

 

二人をそうさせた要因、それは最終局面での戦闘だ。

 

BETA光線戦級をほぼ殲滅し、突如の無人AC来襲。

 

そして結果的に飛鳥を救った、黒いACと狙撃型のAC。

 

あの二機は、無人ACよりも飛鳥を気に掛けていた様にも思えた。

 

これと云った確証がある訳ではない。

 

ただ、少なくとも二人には、そう感じ取れたのである。

 

「あの黒いAC共、どうにも気になる――」

「このまま欧州に留まるより、日本に向かった方が大きな意義が有ると判断したのでな」

 

 ユウキとスミカは、そう語った。

 

「だが、今迄の様に俺達に甘える事は出来んぜ!」

 

「――充分です!貴方達が居る…それだけでっ!」

 

 そうこうしている内に用意された部屋に辿り着いた。

 

「我々の部屋もこの近くだ。豪勢な事に個室まで用意してくれたよ、有澤隆文め――」

 

 スミカが語るには、彼女等の個室もこの階層だと言う。

 

「明日から忙しくなるぜ、色んな意味でな!お前のACの事は俺に任せておいて、お前はゆっくりと休みな!」

 

「……お言葉に甘えます!」

 

「ではな、飛鳥」

 

 二人から労いの言葉を受け、飛鳥は新たな部屋で早速ベッドへと身を投げ出した。

 

絶妙に調整されたスプリング式のベッドに、身体にフィットするマット。

 

飛鳥用に合わせ用意された代物だろうか。

 

身を投げ出した飛鳥は、ボ~と天井を何気無く見つめた。

 

 

 

……

 

(推奨BGM  マブラヴ オルタネイティヴ ―― 宿命 )

 

飛鳥を見送り廊下を歩くスミカとユウキ。

 

そんな二人の前に、赤い軍服を纏った青年将校が姿を現す。

 

「……良く決心してくれた、お二方!」

 

 青年は敬礼で彼等を迎える。

 

「――勘違いするなよ六郎!お前等の為じゃねぇ、此処に来たのは俺達の意思だ!」

「――だとしてもだ、お前達の英断に感謝を表したい!」

 

「リンクスとしてではなく、あくまで我々個人として同行する。それでいいか?真壁介六郎よ」

「――あの方には会って頂けるのですか?カスミ殿」

「…その積りだ。一度、直接会う必要があるだろうな」

 

 二人の姿と言葉を確認した真壁は、笑みを浮かべた。

 

「日本国民を代表して歓迎する、カスミ=スミカ、ギン=ユウキ!」

 

 真壁は更なる敬礼を以て二人を迎えた。

 

 

 

……

 

 

 

ベッドに身を投げ出したものの、一向に睡魔が襲って来る気配もなく、飛鳥は()()()を思い返していた。

 

未だ鮮明に覚えているあの夢。

 

顔も名前もはっきりと記憶している。

 

架空の出来事であって欲しかった。

 

それ程までに、彼女等は無残にBETAの餌食となった。

 

しかしギガベースに訪れ、覚えのある名を冠した人物に出会ってしまった。

 

如月、山城、篁。

 

その内の一人、如月佳織など当事者そのものと言っても過言ではない。

 

だがこれで確信が持てた。

 

「あれは唯の夢なんかじゃない」

 

 次々と犠牲となってゆく彼女達。

 

そして火の海に包まれる、古の都・京都。

 

「これから起こる、現実――」

 

 飛鳥は身を起こし、シャワーを浴びる事にした。

 

ギガベースは一路、東へと向かう。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

87式突撃砲

 

日本帝国及び在日国連軍所属戦術機の主兵装。

36㎜チェーンガン(36㎜突撃機関砲:RG-36)と120㎜滑腔砲(GG-120)が一体となっている。

36㎜弾倉は副腕(サブアーム)による自動交換。

背部兵装担架からの射撃も可能で、最大4つの突撃砲で弾幕を展開する事も出来る。

帝国軍戦術機の主兵装である87式突撃砲は、基部の36㎜チェーンガンシステムと

その前上部にマウントされた120㎜滑空砲ユニットによって構成されている。

120㎜砲モジュール最上部には装弾数6発の弾倉が装填されており

砲弾の選択は主腕による弾倉交換が必要である。

後上面にあるブロックモジュールは2000発の装弾数を誇る36㎜砲弾倉であり

その驚異的な装弾数は国連軍規格の特殊形状ケースレス弾によって実現されている。

なお、前上部は任務に応じたモジュールへの換装が可能となっている。

一般的な突撃砲とは36mm弾の給弾方法が大きく異なり、弾倉を銃身と水平に装着する。

銃本体と一体化するため弾倉の突起がない分、取り回しに有利となっている。

また他の国の弾倉であっても使用可能。

 

無理やりだが極論では、ACでも運用が可能。

その際、若干の手が加えられ最適化が図られるのが大半だ。

企業軍に所属しない、フリーランスの傭兵達にも愛用する者は多い。

 

 

 

 

 




 AC3とACVDのキャラを登場させてみました。
今後、彼等(特にAC3)に活躍の場があるのかは、まだ未定です。

今はメインで、ゴブスレ×ダクソ3の方を優先的にやっているので、次の更新が何時になるかも分かりません。

こんな作品ですが、お付き合い下さりありがとうございます。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。( ゚∀゚)/
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