アーマードコア・オルタネイティブ― 白い鳥 ―   作:カズヨシ0509

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 どーもです。
マブラヴオルタ本編の方もアニメ化するそうで、これを機会に視聴してみようと思っています。
相変わらずツッコミどころ満載な文章ですが、良かったらドゾ。( ゚∀゚)ゝ
では投稿致します。


第3話―オーメル、光線級漸減作戦2(二人の少女)―

 

 

 

 

 

国家解体戦争

 

人口爆発による食料不足。

エネルギー資源の慢性的な不足。

 

国家はその統治能力を失い

頻発するテロや暴動が相次ぎ

それに対応するため軍隊は高度に機械化され

国家に兵器を供給する企業は徐々に力を付け

いくつかの企業が強力な軍産複合体を形成し

その影響力を次第に強めていった。

 

そして遂に経済システムの存亡の危機に陥る程に国家は破綻し始めていた。

 

新たなる統治体制の確立を目指し、その時実質最高権力として存在していたのが、巨大軍需産業複合体でもある

()()であった。

 

巨大企業は幾つものグループを形成し、国家政府に見切りを付け、全世界に対し宣戦布告を宣言。

 

人はその戦争を

 

―― 国 家 解 体 戦 争 ――

 

と言う。

国家解体戦争は企業側の一方的な奇襲から始まり、企業側の戦力は30機にも満たない新型ACを主力としたものだったが、その新型アーマード・コア・ネクストは国家側の全ての兵器を敵に回しても、それ等を圧倒した。

 

 

コジマ粒子と呼ばれる新物質を軍事転用し、最新技術を盛り込んだACネクストの前に、国家側の主力である従来のACは成す術もなく敗北し、開戦から一ヶ月で企業側の圧倒的勝利で国家解体戦争は終結した。

 

そして始まる――パックスエコノミカ。

 

利権、利益、収益、合理、排除、其処に聖も邪も無く、唯々肥え太るのみ。

 

心を壊し、精神を置き去りにし、活きるのではなく生かされる。

 

何時しか諦観し、壊死した魂。

 

最早人類など、何処にも存在していなかった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

(推奨BGM Armored Core4――Sound You Smash)

 

『ミサイル、命中を確認!』

『範囲内のBETA、要撃級92、突撃級807、消失!』

『しかし光線級、尚も健在!レーザーによる脅威度変わらずっ!』

 

 矢継ぎ早に送られて来る報告の数々。

 

通常砲撃に加え、多弾頭ミサイルや大型ミサイルが着弾し、範囲内のBETAは粉砕されていた。

 

だが、肝心の光線級には影響が及んでおらず、未だ多くが健在だった。

 

試しに広範囲を狙った砲撃で、しらみつぶしに光線級の破壊を試みるも、精々餌食となったのは僅か数匹と数えるほどだ。

 

既に全突入部隊は射出済みだ。

 

VLSに現在搭載されているのは、ACや戦術機ではなく通常のミサイル兵装である。

 

「もし突入部隊が失敗するようであれば、最終段階を強行するしかあるまい……」

 

 指揮官は、第一ブリッジ内で一人呟く。

 

専用のモニターには、レーダーで捕らえた敵味方のアイコンが乱立していた。

 

突入部隊は奮戦しながらも、光線級が居ると思わしき場所を目指している様だが、未だに肉薄出来ていないのか、それ等の趣旨の報告は上がっていない。

 

砲撃で再び畳み掛けても良かったが、正確な位置が掴めない以上、効果の程は定かではない。

 

光線級はレーザーを放つ際、桁外れの高熱を放出し上昇気流と重金属粒子が混ざり合い、光線属種積乱雲(レーザークラウド)と呼ばれる特殊な雲が発生する。

 

その雲を目安に砲撃を行っているのだが、決定打には今一つ欠けていた。

 

更なる精密な位置情報が必須となる。

 

光線級に接敵した機体が、何らかのアクションを起こしてくれれば、直ぐにでも傍受できるのだが。

 

弾薬とて無限ではないのだ。

 

レーザーの発射位置を特定出来ればいいのだが、その為には航空機を飛ばし、空中から観測する必要があった。

 

しかし闇雲に飛ばせば、レーザーに即撃墜されてしまうのだ。

 

もし突入部隊が壊滅しようものなら、切り札であるアームズフォート『カブラカン』で強襲を掛ける算段でいた。

 

カブラカンの外部装甲は、アームズフォート内でも屈指の装甲厚で非常に強固だ。

 

その防御性能は、ACネクストの火力を以てしても、容易に破壊出来るものではなく、重光線級の高出力レーザーにも約15分は耐え得ると言われている。

 

カブラカンを前面に展開し、その脇をMTやACで固め、全軍で突撃を敢行。

 

それはカブラカン前面に装着されている、チェーンソーとローラーユニットで”地ならし”を行いながら、MT、AC部隊による一斉射撃で駆逐すると言うのが作戦の最終段階であった。

 

『混成突入部隊の被害、30%を超えました!AC3、戦術機4、共に喪失!』

 

 突入部隊は被害を被るも、光線級に到達している機体は未だ皆無であった。

 

「……」

 

 表情には出さないものの、指揮官は次第に焦りを滲ませ始めていた。

 

 

 

跳躍ユニットから推進力を得、機体は高速移動で地表すれすれを駆け抜ける。

 

数えるのも辟易する程に夥しいBETA群が迫り来るも、突撃砲から放たれる36ミリ弾はBETAを挽肉と変えてゆく。

 

『イーダル1より各機へ、本機に続け!』

 

 ソ連軍に籍を置く戦術機で編成された小隊だ。

 

その隊長機は、軽快な動きでBETA戦車級の間を擦り抜け、同時に突撃砲で仕留める。

 

『『『――了解!』』』

 

 その隊長機に呼応し、部下達が追従しながら次々とBETAを駆逐していた。

 

――思った以上に、距離が開いているな。光線(レーザー)族種はまだか!

 

イーダル1というコールサインを名乗った戦術機の衛士、クリスカ=ビャーチェノワもまた焦りを滲ませていた。

 

同行していた別の戦術機一個小隊は、BETAにより壊滅していた。

 

残存するソ連軍所属の突入部隊は、8機。

 

加えて8機居たACも残り5機となっている。

 

可能な限り、BETA群との戦闘は最小限に留めていたが、想定以上に壁は厚かった。

 

だが彼女の焦る最大の原因は、()()ではない。

 

彼女の意識は、寧ろ更なる前方に注がれている。

 

濃密なBETA群の壁を隔て、数機の人型兵器が奮戦を繰り広げていた。

 

時折彼女の視界に映る、白い人型兵器――。

 

――必要最小限にブースターを吹かし、BETA『要撃級』の頭上に飛び乗り、数発弾丸を発射。

 

歯を喰いしばった顔部に酷似した感覚器官を粉砕し、すぐさま盾を要撃級へと突き刺す。

 

透かさず盾を引き抜きつつ、その傷口へと弾丸を2発ダブルタップ。

 

絶命したかどうかは疑わしいが、戦闘力は著しく低下した筈だ。

 

だがそれを、一々確認している時間はない。

 

その白い機体、AC『白天翼』は撃ち終わったと同時に跳躍し、次のBETAに飛び乗り再び、上方からのトップアタックを繰り返す。

 

飛び乗っては撃ち、撃ち終わっては飛び移る。

 

カエル飛びの様な動作を繰り返しながら、白いACは次々と『要撃級』を無力化させつつも、光線級へと接近して行く。

 

要撃級は高い防御力と高い旋回能力を有し、真正面からの交戦は得策ではない。

 

だが要撃級に手間取れば、その隙を突かれ突撃級や戦車級の奇襲を受ける事も多々ある故に、その脅威度は跳ね上がる。

 

先程壊滅した戦術機一個小隊も、要撃級に時間を割かれ横腹の奇襲を許した為に餌食となった。

 

要撃級のみが少数なら何の問題も無いのだが、多数且つ別の個体種をも入り交ぜた密集突撃戦術。

 

どうしても進軍速度が滞ってしまう。

 

AC達は業を煮やしたのか忍耐が欠如していたのか、堪らず空中を飛翔したが、故にレーザーの餌食となり爆散するか墜落し、そこを突撃級に押し潰され或いは戦車級に貪り食われていった。

 

既に飛翔高度150メートル以下でも、レーザーが飛来し始めている。

 

ますます空中からの攻撃は困難となっていた。

 

逆を正せば、光線級に近付きつつあるという裏返しでもあるのだが。

 

『何を手間取っているイーダル1!あの白いACに続け!』

 

「――イーダル1、了解!」

 

 コックピットに響く、上官からの叱責。

 

――我ら誇り高きソ連軍が、あんな薄汚い傭兵に劣るというのか!

 

クリスカ焦燥の原因――。

 

その真の要因が、白いACであった。

 

白いACの執った戦術により、要撃級はほぼ無力化され容易に止めを刺せた。

 

前面の防御力に長けた『突撃級』の存在があったが、それ等の大半は最前衛を担いアームズフォートへと殺到している。

 

したがって残る脅威は『戦車級』となるのだが如何せん数が多く、仕留めた死骸が障害物となり進軍速度が遅れていたのも一つの原因だろう。

 

しかし、白いACの後に続けば他のルートに比べ、遥かに進撃は楽であった。

 

現に、生き残った他の突入部隊も白いACに追従しつつある。

 

AC『白天翼』は要撃級を無力化させ、小ジャンプで跳躍――。

 

「――っ!?」

 

 刹那、彼の機体目掛けて数束のレーザーが襲い掛かった。

 

咄嗟に盾受けで凌ぎ、間髪入れずに受け角度をズラしながらハイブーストで位置を変える。

 

――この高度で撃たれた!?

 

戦術高度は60メートルを切っていた。

 

『飛鳥!その戦法はもう使えんが、目標は近いぞ!気を入れ直せっ!』

「――了っ!」

 

 オペレーターのスミカから通信が入り、モニターに移ったマーカーを確認する。

 

機体背部ユニットに装備されたレーダーユニットは、光線級の座標を補足しており漸く主目標が近い事を悟った。

 

――ここからが正念場だっ!

 

飛鳥はブースターを吹かし滑る様に地表を突進。

 

其処へまたもや新たな要撃級が立ち塞がるが、飛鳥はすぐさま射撃で器官部を優先して破壊する。

 

「歯茎みたいなのは、感覚器官だという事は知っている!」

 

 尾節部分を破壊した後、左右小刻みに蛇行しながら接近。

 

そのACに目掛けて多数の戦車級が殺到するが、必要最小限の単射で戦車級の顎部分のみを狙い撃ちにした。

 

飛鳥自身、起動しながらの単発射撃で急所を射抜くだけの技術は有している。

 

戦車級の恐ろしさは、何と言っても強力な顎で得物を捕食する事にある。

 

その咬筋力は、戦術機は無論ACの装甲さえ噛み砕いた。

 

だが、その顎さえ無力化させれば、例え生きていようと攻撃力は激減し、人型兵器の敵ではない。

 

それ故、止めは後続の部隊にでも任せておけば良いのだ。

 

そして死骸の間を擦り抜ける様に要撃級の脇を抜けようとするも、主力武器である前腕部を振り翳しACを叩き潰さんと迫る。

 

「――それを待っていた!」

 

 予測していたのか、前方にハイブーストと大地を蹴る事で更に加速――。

 

(推奨BGM Armored Core4――Speed)

 

見事、要撃級の前腕部は空振りに終わり、感覚器官を破壊された要撃級は旋回対応力が著しく低下していた。

 

飛鳥のACは振り返る事も無く、擦れ違いざまに後方へ向けて要撃級へと三点射(スリーバースト)

 

要撃級はACの動きに対応し切れず、後方部分は脆いのか敢え無く絶命する。

 

前進を続けながら、更に殺到する戦車級を避け、迎え撃ち、狙い撃ち、凌ぎつつ、遂に目標の光線級を視認する事に成功する。

 

「――見えたっ!」

 

 待ちかねた主目的との遭遇。

 

随分手こずらされたものだ。

 

思わず意識が高揚し、操縦桿を握る手に力が籠る。

 

――その時である。

 

「――!!」

 

 突如来る圧迫感――。

 

間髪入れずに襲い来る、光の洗礼――。

 

反射的に地を蹴り、ショートステップでレーザーを躱す。

 

――クソっ!簡単に撃たせてはくれないか!

 

目視できるという事は、BETA側も射線を確保できていると言う事実――。

 

ここ迄近付けば、地上であろうと空中であろうと問答無用にレーザーに晒されるという事だ。

 

そして間断なく迫り来る、多数のレーザー群。

 

レーザー攻撃は止む事なく、ACを容赦なく責め立てる。

 

今のブースター速度を止める事無く続ければ、被弾する事は無いだろう。

 

しかし、何れはエネルギー切れを起こし、その隙を突かれるのは明白であった。

 

ブーストエネルギーを節約しつつ、ステップ移動と壁蹴り(ブーストドライブ)(この場合は地面を深く蹴り込む)で何とか敵射線を避けつつ回避を続けているが、飛鳥自身は只の人間だ。

 

永続的に集中力が続く訳ではない。

 

「――なんてこったッ、どうするっ!?」

 

 このままではじり貧だ。

 

焦りが彼の感情を支配しようとした、その時である。

 

『――飛鳥!訓練を思い出せ!何の為に、回避と反撃の一体化を教えたと思ってるんだっ!』

「――ユウキさんっ…!」

 

 唐突に寄せられたユウキからの通信。

 

今日(こんにち)に至るまで何度も繰り返した、回避と反撃の一体化。

 

文字通り回避機動を取りながら反撃を見舞うという、単純な戦法だが言うほど易い技術ではない。

 

状況にもよるが、高い技術と集中力を要し、慣れと習熟した練度も要求される。

 

また自分と敵との相対速度が高まれば、その難度は際限なく上昇しようというもの。

 

回避だけでも地形把握、空間認識力が必要となり、周囲が入り組んだ地形なら尚更だ。

 

光線級の動作自体も素早く、当然敵も動き位置を変える。

 

それに伴い、狙いながら反撃を見舞うのにも、極めて高い技量を要するのだ。

 

その相乗効果は神経を凄まじい早さで摩耗させ、心身共に負担を強いるだろう。

 

だが、それに見合うだけの効果を齎してくれる。

 

回避と反撃の一体化が実現できれば、無駄な動きを省略し最小限の動作で攻撃を加える事が可能だ。

 

そして現に、飛鳥は撃たれ続けている。

 

光線級、重光線級のレーザー攻撃は照射時間に限りがあり、次の照射までには幾許かの時間(インターバル)を必要とし、その間は無防備となる。

 

しかし、それはBETA自身も自覚しているらしく、その弱点を補うかのように他の光線級が間隙を埋めるのである。

 

故に照射された側は、切れ目なくレーザーの波に晒され、直接に光線級を殲滅するには極めて高い技量を必要とするのだ。

 

更に光線級のレーザー照射の命中率は尋常ならざる精度を誇り、飛来する空中物体を正確に撃ち落とす。

 

また高出力故に射程距離も長大だ。

 

現に、衛星軌道に陣取っていた『アサルトセル』を消滅させたのも、BETA光線級の仕業である。

 

光線級の存在は戦争の概念すら覆し、航空戦術の消失を意味していた。

 

尤も光線級の殲滅は、空爆や長距離砲撃などの優位性を復活させる要因とも言え、非常に重要な戦略的意味合いを持つ。

 

だからこそ光線級殲滅は、世界のあらゆる組織が連合を組み、多大な犠牲や物資を消耗してでも達成する価値があった。

 

――ブーストエネルギーも4分の1を切った、何処か身を隠せる場所はっ…!?

 

絶え間なくレーザー攻撃を受け、節約を交えたブースト移動で回避運動に専念するも、限界が近い。

 

回避と反撃の一体化も訓練では何度も実践していたが、いざ本番となると区切りと仕切り直しが必要となる。

 

まだ飛鳥自身、瞬時にそれに切り替えられる程、習熟してはいなかった。

 

『――お前から見て9時の方角に岩場が在る、其処で一旦呼吸を整えろ!ただし10秒が限度だ、精々なっ!』

 

 スミカからの通信で、近くにやや大き目の岩場の存在を告げられ、飛鳥は間髪入れずに機体を移動させ一時身を隠す事に成功した。

 

「ふぅ…、はぁ…、助かった……」

 

 岩場は、AC全体を覆う程の高さがあり、岩盤もそれなりに分厚く多少は凌げるだろう。

 

その間、飛鳥は呼吸を整え、既に融解寸前となっていた盾を投棄する事にする。

 

AC本来の左手用のライフルは、盾内側に担架させていた。

 

先ずは右手に装備していた『WS-16C』のマガジンを交換。

 

殆ど単発射撃で並み居るBETAを仕留めてきたが、それでも残弾数は500を切っていた。

 

多少の余裕はあったが、此処で弾倉マガジンを交換するには打って付けのタイミングと言えよう。

 

その後、盾を岩場に置きマウントさせていた左手用ライフル『CRYWHー05R3』を装備する。

 

『気を付けろ!光線級の野郎、岩ごとお前を焼く気だ!あと5秒っ!』

「――5秒もあれば充分!いつでも行けますっ!」

 

 スミカからの通信で、光線級のレーザーが岩盤を溶かし、岩場諸共ACを焼かんとしていた。

 

だが、僅かな時間にブーストエネルギーのチャージは完了し、機体温度も安全圏に戻っている。

 

既に呼吸は整い、準備は完了した。

 

『残り3…2…1…行けっ!』

 

 スミカのカウントダウンを合図に、ACは瞬時に飛び出すと同時に赤熱化した岩場は溶け崩れ瓦解する。

 

「照準よし…()っ!」

 

 掛け声と共に光線級に向かって射撃。

 

今度は突撃砲を連射で弾幕を張りつつ、左手のライフルで別地点の光線級を複数貫いた。

 

「先ずは8…おっとっ!」

 

 突撃砲で5、ライフルで3体仕留めるが、別方向からのレーザーが彼を襲う。

 

しかし、例の圧迫感で事前に察知出来ていた為、機体の上半身を捻る事でレーザーを回避し同時にその射撃地点へと応射。

 

そして位置を変えつつ的を絞らせぬよう配慮しながらの移動射撃で、その地点の光線級4体を仕留める。

 

こうして次々と光線級を仕留め続け、かれこれ50体を仕留めた辺りである。

 

「味方機はどうしたんだ?……まさかっ……!?」

 

 戦闘に意識が向いていた為、此処で友軍機が到達していない事に気付く。

 

――既に全滅しているか最悪…僕は見捨てられたか……!

 

企業連のやり方は良く知っている。

 

他陣営は無論の事、必要とあらば自勢力すら見捨てる事も躊躇わない。

 

だがそんな推察を許してくれる程、BETAも甘くはない。

 

更に別方向からのレーザーが彼を襲い、その方角から多数の戦車級と突撃級の混成部隊が迫りつつあった。

 

「新手の光線級まで少し遠いが、やるしかないか!」

 

 此方の有効射程外からの狙撃で、またもや移動する必要に迫られる。

 

手間は掛かるが自ら肉薄し殲滅に動かなければ、待っているのは()あるのみだ。

 

飛鳥はフットペダルを踏み込みブースト出力上げようとした、その時である。

 

「――っ!?」

 

 突如として、後方から複数の噴射炎が通り過ぎた。

 

――ミサイルっ!?

 

小型のミサイルが6発、後方から飛来し前方のBETA群を爆散させる。

 

そして立て続けに後方から姿を見せた、黒い機体。

 

「AC……」

 

 その機体見た飛鳥は微かに声を漏らす。

 

それは黒いACハイエンドノーマルで、やや細身のパーツで組み立てられていた(アセンブル)機体であった。

 

『小僧……加勢してやる』

「――!?」

 

 間髪入れずに割り込んできた通信。

 

静寂ながらも、底に響くかの如き男の声。

 

言い様の無い迫力に満ち溢れていた。

 

何者なのか訊ねる暇もなく、黒いACは加速し、ブースター機動で残りのBETA群を瞬く間に殲滅。

 

そして一呼吸置く事なく、先に居るであろう光線級へと向かい飛び去った。

 

「……。今のAC…一体……」

 

 飛鳥は呆然とACの向かった方角へと頭部カメラを向ける。

 

『高機動型だな、あのアセンブル』

 

「ユウキさん。高機動型という事は、それだけで手練れという事ですよ」

 

 飛鳥のAC白天翼よりも遥かに高速で飛び立ち、向かい来るレーザーを息をするかの如く躱しながら、一切無駄を省いた機動で去って行った。

 

僅か数秒にも満たない動作ではあったが、AC、レイヴン共に、今の自分より遥かに優れた練度を誇っていた。

 

もし敵対するような事態に陥れば、今の自分では瞬時に殺されてしまうだろう。

 

『――こちらイーダル1!そこの白いのっ、いつまでボサっとしている!良い身分だな!?』

「――!?」

 

 そこへ耳を劈く様な声が割り込んで来た。

 

若い少女の声の様だ。

 

声の方角へ頭部カメラを向けると、ソ連軍所属の戦術歩行戦闘機が4機立ち並んでいた。

 

(推奨BGM Muv-Luv Alternative――Platoon Advance!)

 

『フンッ!多少出来るかと思ったが、こんな所で油を売るとはな。戦場を無礼()ているのか!?』

 

 尚も容赦なく侮蔑の言葉を投げ掛ける少女。

 

「…………」

 

 飛鳥は無言で、その機体を見据えるのみだった。

 

『何とか言ったらどうなんだっ!?』

 

「……」

 

『……まぁいいっ、死にたくなければ我々と共に来いっ!装備している武器は、支援突撃砲だろう』

 

 少女の言葉に、飛鳥は右手用の武器『WS-16C』に視線を向ける。

 

それはロングバレル化が施され、射程距離と命中精度を引き上げ本来は支援用として運用される。

 

『貴様は我々の後方に就き、打撃支援(ラッシュ・ガード)として動け、いいなっ!』

 

 飛鳥本人の了承を待つ事なく勝手に話が進められ、自身は急いでスミカへと通信を送る、無論秘匿回線で。

 

『こちらとしては戦術機とやらの情報も欲しいのでな、面白い。生意気なお嬢さん方に証明して見せるといい、お前の()()()をな』

「そういう事なら」

 

 スミカのお許しを得、飛鳥は『イーダル1』を名乗る少女に”了”とだけ答え、彼女等と歩調を合わせる事にした。

 

それは彼女本名ではなく、恐らくコールサインである事位は理解出来ていた。

 

飛鳥本人としては、先程の黒いACがどうしても気になるのだが、今は光線級を討つ事が先決だ。

 

此処は彼女等と共闘し、効率化を図るべきだろう。

 

些か腑に落ちない部分もあるが、飛鳥は戦術機部隊と行動を共にする。

 

「コールサインはいいの、クリスカ?」

 

 前部座席のイーニアが、飛鳥のコールサインが設定されていない事に疑念を抱く。

 

「どうせ短い付き合いだ。精々『白いの』で事足りる、さぁ行くぞ!」

 

「……」

 

――さっきまで暖かい橙色が、冷たい透明になっちゃった。

 

イーニアは後方にいる飛鳥に独特の感性で、意識を向ける。

 

即席だが、ACを加えた戦術機との共同戦線。

 

進軍を再開し、そう時間を置く事なくBETAの一群が迫り来る。

 

(推奨BGM Muv-Luv Alternative――血を欲する戦場)

 

「各自、一斉しゃげっ――おいっ!?」

 

 小隊長を務めるクリスカが指示を出す前に、最後尾からの射撃――。

 

その犯人は、言わずもがな。

 

BETAの来襲を誰よりも逸早く察知していたのは、飛鳥であった。

 

クリスカの指示を待たず、瞬時に反応。

 

『WS-16C』で多数押し寄せる戦車級の顎部分を破壊し、『CRYWHー05R3』で突撃級の脚元をを迎撃し擱座させ、仕留め切れないまでも出鼻を挫いた。

 

『――どう言うつもりだ、白いのっ!?』

 

 コックピットに、クリスカの過剰な音量が響き渡る。

 

思わず耳を塞ぎたくなる衝動を抑えながらも、飛鳥は射撃を継続し独りBETAを迎撃していた。

 

「こんな奴等に、構っている暇は無い。今の内に間を擦り抜け『光線級』を目指すべきだ!」

 

 飛鳥自身の弾薬はまだまだ余裕はあったが、彼女ら小隊の残弾数がどれ程かは正直疑わしい。

 

肝心の光線級に接敵した時、いざ弾切れでは笑い話にもならない。

 

可能な限り消耗を抑え、主目的である『光線級』を討つべきと、飛鳥は進言する。

 

「――言われる迄も無い、全機私に続け!」

 

――傭兵風情がっ!

 

苛立ちを露にしつつも、クリスカは小隊各機に指示を飛ばしBETA群の間を器用に擦り抜けながら、光線級の陣地を目指す。

 

その間も、小規模なBETA群が立ち塞がるが、連携を駆使し進軍速度を緩める事なくBETAを駆逐してゆく。

 

そして目標である、光線級集団の反応をレーダーが捕らえた。

 

「よし、捉えたぞっ!各機、攻撃かぃ「――()が来た!『()が来るぞ!!』」――」

 

 漸く主目標である光線級を補足し、攻撃に移ろうとする最中、不意にイーニアと飛鳥の怒号が飛んで来た。

 

「――っ!?ぜ、全機散開っ!」

 

 クリスカは殆ど本能で、散開指示を飛ばし回避行動を促す。

 

それとほぼ同時に陣形を組んでいた地点は、レーザーの嵐が過ぎ去ってゆく。

 

解明したい疑念は幾つも有る。

 

しかし、此処で反撃を躊躇している暇は無く、クリスカは小隊に反撃を指示し光線級の漸減に移った。

 

ソ連製戦術機『Su-27ジュラーブリク』で編成された小隊は、一斉に射撃を開始。

 

一機につき、両腕と担架ユニットの副腕(サブアーム)部分を駆使した、合計4門の36ミリ突撃砲の弾幕射撃。

 

それが4機合わさり、計16門から濃密な弾幕が繰り出された。

 

弾丸の雪崩は、並み居る光線級を片っ端から肉片へと変え、36ミリ弾は容赦なくBETA群の体組織に抉り込み破壊する。

 

無論、飛鳥のACも射撃に参加し、イーダル小隊全機は濃密な連射を形成しつつ射線を変えながら、光線級を含むBETA群を殲滅してゆく。

 

――それにしてもさっきの通信、イーニアと同時に叫んだあの白い奴。レーザー射撃を予測したとでもいうのか?

 

小隊の弾幕射撃で光線級は確実に数を減少させ、多少の余裕が生まれたのかクリスカは先程の通信を思い返していた。

 

光線級の放つレーザーは当然光速で、視認してからの回避など事実上不可能。

 

回避するには事前に予測するか、センサーやOSで回避プログラムに頼り自動回避させるのが定石であった。

 

だがクリスカの相方であるイーニアは特殊な出自を持ち、レーザー攻撃を事前に『色』というイメージで察知する事が出来る。

 

故に、回避プログラム以上の精度で、レーザー攻撃を予測し回避する事が出来た。

 

そして先程のレーザー回避も、イーニアの察知により普段通り成功した訳だが、彼女の警告と同時に飛鳥の通信も割り込んで来たのである。

 

その言葉は、イーニアとは違い『色』ではなく『圧』という、特殊な単語で。

 

――……まさか……な。

 

イーニアと同じ能力を、よもやあんな傭兵如きが?

 

あり得ない事だ。

 

改めて頭の中で湧いた疑念を否定し、クリスカは意識を戦闘に傾けた。

 

損耗しつつも、他のACや戦術機も追い付き、光線級は確実に数を減らす。

 

順調に戦線は押し上げられ、光線級の数は残り僅かとなりつつあった。

 

その時である。

 

『な、なんだ!?このデカいのはっ!?』

 

 別のACから聞こえて来た通信。

 

残存する光線級は、20前後となった処で突如立ち塞がった巨大な体躯のBETA。

 

『とうとうお出ましか、要塞級(フォート級)!』

「あれが、ブリーフィングで説明していた……」

 

 クリスカの声に、飛鳥も反応しデーターベースを回覧した。

 

全高約60メートルを超え、複数の脚付近には光線級が複数、寄り添うように隠れていた。

 

『気を付けろ!尾節先端部分には、衝角腕が内包され接触と同時に強酸を噴出させるぞ!』

 

()……か」

 

 クリスカの説明に、飛鳥は秘かな戦慄を覚える。

 

ACの装甲は対弾性耐熱性には長けているが、強酸と云った液体に対しては殆ど考慮されていない。

 

だが、脅威なのは酸だけではない。

 

鉤爪状の衝角先端部は、モース硬度15以上の高度を誇り、生半可な装甲は容易に貫通させる程の威力を有している。

 

万が一コックピットに触手が到達し、酸でも噴射されようものなら、結果は最早語る迄も無いだろう。

 

また要塞級は防御力にも優れ、弱点と言えば三胴部分を形成している継ぎ目ぐらいしか見当たらない。

 

――最初だ!()()さえ見切れば、何とか!

 

余り悠長に構っている時間はないが、先ずは最大の武器である衝角腕さえ破壊出来れば、自ずと勝機は見えてくるだろう。

 

「触手の最大射程は?」

『……50メートルだ。どうする気だ……?』

 

 触手の射程距離の情報を聞き出し、飛鳥は単機前へと踏み出した。

 

「光線級が顔を出したら、直ぐに撃破してくれ。僕は触手の集中だけで手一杯だ!」

『止せ!自殺行為だ!』

 

 飛鳥の提案など到底承諾できるものではなく、クリスカは直ちに制止を呼び掛けるが、飛鳥本人は行動を変える気はない。

 

「……案外優しいんだな。僕が死んだ処でそっちには大した痛手にはないだろうに……!」

『――なっ!?///』

 

 軽口半分、本音半分で、飛鳥はクリスカに語り掛ける。

 

改めて言われればそうだ。

 

所属も志も何もかもが違う見知らぬ傭兵が一人居なくなった処で、クリスカ率いる小隊には何の痛手にもならないのだ。

 

飛鳥に図星を突かれ、クリスカは面食らいながらも僅かに顔を朱に染める。

 

『///ちっ!勝手に死ね!///……イーダル1より各機へ、光線級が射線に入り次第即時撃破、良いな!』

『――了解!』

 

 顔を紅潮させ悪態を付きながらも、飛鳥を援護する為に部下へと指示を飛ばす。

 

飛鳥は意識を研ぎ澄ませ、歩行移動で要塞級へと距離を詰める。

 

――60メートル…55メートル…51メートル…。

 

距離を詰めるに従い、呼吸が荒くなり鼓動が速くなる。

 

――50……46…――この()っ!!

 

45メートルを切った瞬間、要塞級の尾節から瞬時に赤い衝角腕が射出された。

 

脳裏を過る押し潰す様な強い圧迫感――。

 

飛鳥は反射的に機体の上半身を傾け、鉤爪状の先端部はAC頭部を擦り抜けた。

 

「――今っ!」

 

 先端部を繋ぐ紐状の体組織は非常に柔らかくしなやかで、飛鳥のACは太い触手部分を右腕部へと巻き付ける。

 

「――即撃つっ!」

 

 要塞級のサイズは非常に巨体を誇り、素人目に見ても外観だけで相当な膂力を備えているだろう事は、容易に想像が付いた。

 

ならば振り回される前に此方が動くまでだ。

 

飛鳥は間髪入れずに、左腕のライフルを連射――。

 

――即座に触手部分を撃ち抜き切断する。

 

その隙を目掛けて光線級が飛鳥を狙うも、クリスカ率いるイーダル小隊が次々と撃破する。

 

衝角腕さえ封じてしまえば、要塞級の武器は脚部分のみとなる。

 

周囲には他のBETAの姿は無く、後はこの要塞級のみとなっていた。

 

「各機、滑空砲用意!……撃てっ!」

 

 脅威度が大幅に低下し、クリスカは好機とみたのか小隊全員に滑空砲射撃を命じた。

 

戦術機の突撃砲には、120ミリの大口径砲がマウントされている。

 

非常に威力が高く大物を仕留める際、非常に重宝する武器だ。

 

小隊が一斉に放つ大口径弾の豪雨――。

 

動き自体は緩慢な要塞級は弱点部位を悉く破壊され、碌な抵抗も出来ないまま撃破された。

 

要塞級はその場から崩れ去り、射撃が終わった頃には生命活動を完全に停止。

 

「要塞級及び追従する光線級撃破完了……。……この地点は粗方片付いたか」

 

 クリスカは周囲に残敵が居ない事を確認し、ここ一帯の光線級撃破と判断する。

 

『残りの光線級を始末しないとな』

「貴様に言われる迄も無い」

 

 飛鳥の言葉に、クリスカは素っ気なく返す。

 

『――飛鳥、ガキ共!聞こえるかっ!』

 

 突如としてオープンチャネルで通信が割り込まれた。

 

「――スミカさん!?」

 

『良くやったと言いたい処だが、間も無く本隊からの砲撃が飛んで来るぞ!早く其処から退避しろ、命令だ!』

「――何ですって!?」

 

 スミカの説明では飛鳥達の戦闘で、オーメル軍は光線級の正確な位置を割り出したとの事だ。

 

光線級の脅威が殆ど消失し、本隊は砲撃とカブラカンを駆使した地ならし戦術で、一気に制圧を図る算段らしい。

 

つまり作戦は、最終段階に入ったという事だろう。

 

「我々に命令するな、何者だ貴様!」

『――黙って従え……()()()()()()()()

 

「――っう……」

「――ひっ……」

 

 見知らぬ女にいきなり命令されクリスカは反発するも、有無を言わせぬ彼女の迫力に、イーニアまでも短く怯えの悲鳴を上げた。

 

得体の知れぬ女に心底の恐怖を植え付けられ、彼女達も仕方なく了承する事にする。

 

「これより撤退する」

「……我等も続くぞ」

 

 飛鳥とクリスカ達はその場から退避し、間も無くして過剰な程の砲撃が実施され、オーメル本隊の蹂躙が始まった。

 

アームズフォート『カブラカン』を前衛に展開させ、その両サイドをACノーマルとMT、ソ連軍の戦術機部隊が固め、射撃を継続しながらBETA残存群を掃討してゆく。

 

途中、戦車級などがカブラカンに取り付くも、搭載した自律兵器とACや戦術機部隊が引き剥がしにかかり、そこから先は一方的な勝利で幕を降ろす事になる。

 

 

 

戦いは終わった。

 

 

 

因みに今回のBETA総数は、2万5千を超えていたと言う。

 

クリスカ=ビャーチェノワ、火無=飛鳥。

 

両者は機体越しに暫し対峙する。

 

(推奨BGM Armored Core4――Rain)

 

「……」

「……」

 

 言葉も無く両者は視線を交わしていたが、飛鳥が口を開く。

 

「ソ連というのは、あの『ソビエト社会主義共和国連邦』の事を指しているのか?」

 

「そうだ。我等が誇る超大国、ソビエト連邦」

 

 飛鳥の問いに対し、誇らし気に語るクリスカ。

 

「それはあり得ない、国家は解体された筈だ!あの()()で――」

 

 クリスカの答えに飛鳥は即座に反論する。

 

飛鳥が誕生した日と同じ時間に宣言された国家解体の報。

 

世界中で発生する慢性的なエネルギー不足、食糧危機、貧富の格差、政治の腐敗、道徳(モラル)の低下、止まぬ紛争、そして相次ぐテロ。

 

それ等の負債が、清算不可能な程に降り積もり、国家は次第に統治能力に陰りを滲ませる。

 

腐りに腐り切り、繁栄の火は陰っていたのである。

 

そして唐突に勃発したクーデター。

 

営利団体である『企業』は、奇妙な人型兵器『アーマード・コア・ネクスト』を開発し、世界中の国家に戦争を挑んだ。

 

人類誰もが、国家側の勝利を信じて疑わなかった。

 

 

 

―― その時が訪れるまでは ――

 

 

 

26機――。

 

たった26機のACネクストは国家軍を打ち破り、その戦争は企業側の圧勝に終わる。

 

企業群に完全敗北した国家は、解体を迫られその統治権を譲渡する事になった。

 

とある場所で調印式が締結され、その瞬間、国家という概念は完全に過去の遺物となった。

 

後に始まる、企業が統治する時代。

 

 

 

―― パックス・エコノミカ ――

 

 

 

限りある資源の節度ある再分配。

 

人々は『コロニー』と呼ばれる居住区を兼ねた収容所へ強制移住させられ、糧食と生活用品を得る為だけの労働に従事する生活を強いられる事になる。

 

後にこの戦争は、人々の間でこう呼ばれた。

 

 

 

 

 

―― 国家解体戦争 ――

 

 

 

 

 

「……」

 

 飛鳥の言葉に無言で耳を傾けるクリスカ。

 

「……それはお前達の歴史でだ」

「――!?…どういう意味だ?」

「そのままの意味だ。国家など解体されていないし、我等が『ソ連』は不滅の超大国だ。企業如きに滅ぼせよう筈も無い!」

「……っ!」

 

 クリスカは意味あり気な言葉を発し、国家という概念は滅んでいない事を告げる。

 

「これ以上の議論は無意味……もう会う事もあるまい。ではな……」

 

 最早話す事はないと言わんばかりにクリスカの部隊は反転し、その場を去る。

 

「また会おうね、不思議なあなた!」

 

 対照的にもう一人の少女『イーニア』は、友好的な言葉を投げ掛ける。

 

「……まるで、世界が二つ在ったかのような言い草だったな」

 

 砂塗れの風が吹き荒ぶ荒野に、飛鳥のACは取り残された。

 

あの激しかった戦闘は既に影も形も無く、オーメルを主軸とした企業は、撤収作業に移っていた。

 

唐突に飛鳥の周りに黒い影が差し込み、飛鳥はハッっと我に返る。

 

彼は、ふと頭部カメラを上へと向けた。

 

「!?……あのAC……」

 

 小高い崖を見上げ其処には、()()()()()()が此方を見降ろしていた。

 

友軍機の力をも借りる事なく、単機で戦場を駆け巡り、並み居るBETAを平らげていた黒いAC。

 

礼を言うべきなのだろうか?

 

些かに惑いを見せる飛鳥だった。

 

だが黒いACは直ぐに飛び去ってしまう。

 

「まるで……黒い鳥……みたいだ」

 

 あのACに抱いたイメージ。

 

戦場を跳び縦横無尽に駆け巡り、宛らそれは『黒い鳥』を彷彿とさせた。

 

黒いACが飛び去った方角を見つめ続ける飛鳥。

 

『お~いっ!いつまでそうしてる気だ?帰るぞっ!』

 

 呆然と立ち尽くす飛鳥に、ユウキからの通信が入る。

 

「すいません!今行きます!」

 

 飛鳥は我へと返り、気持ちを切り替え輸送車へとACを格納する。

 

成功報酬は既に振り込まれ、この時点で『オーメルサイエンステクノロジー』の依頼は完遂した。

 

幾つもの疑問は残り、飛鳥自身何か釈然としないモノは残っていたが、今は無事ミッションを終えた事を喜ぼう。

 

 

 

ソ連軍に所属していた二人の少女。

 

その一人から告げられた、未だ残る国家。

 

ACとは、似て非なる戦術歩行戦闘機。

 

地球外生命体、BETAの存在。

 

薄れゆくコジマ粒子の汚染濃度。

 

レーザーで焼き尽くされたアサルトセル。

 

そして『黒い鳥』を思わせる謎のAC。

 

 

 

多くの疑念を残しながらも、飛鳥達一行は巨大交易所へと帰還する。

 

今はゆっくりと休もう。

 

戦いは、まだまだ続くのだから。

 

紅の姉妹(スカーレットツインズ)、後に関わる事になろうとは、今の飛鳥には想像すら出来なかった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

企業連

 

国家解体戦争より後に勃発した、リンクス戦争で崩壊したパックスに代わり組織された新たな企業連合体。

正式名称は統治企業連盟。

 

リンクスの共同管理機構としてカラードを設立した。

企業社会における秩序と平和の維持を目的とする組織だが、

 

――()()()()()()()()()()()()()()――

 

設立からそう時間を経ずして形骸化し、現在の役割は企業の意志を発言する場としての価値しかなく

発言力の高いオーメル・サイエンス・テクノロジーの意志を”企業の総意”として代弁しているに過ぎない

ということが多く見られるようになってきている。

 

基本的にこの組織からの依頼はラインアークやリリアナ等の反企業勢力の排除・討伐の依頼が中心となる。

また、後の反抗組織『ORCA旅団』の依頼は原則として企業連の依頼となる。

 

歪みを受け入れた世界は、突き進むのみである。

理性はなく、感情も無く、志も無い。

 

物欲だけがそびえ立ち、宛らそれはタワー如きであった。

 

 

 

 

 

 




 初の大規模作戦も無事終了しました。
ロボットアクション、文章でスピード感を表現するのは本当に難しい。( ;˙꒳˙;)
ファンタジーものとは違う、技術と発想力が要求されそうです。
如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けた幸いです。

皆様の感想、お声が何よりの励みとなります。
こんな作品ですが、もし宜しければ――。

デハマタ。( ゚∀゚)ゝ
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