アーマードコア・オルタネイティブ― 白い鳥 ―   作:カズヨシ0509

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 ど~もです。
此方も投稿致します。
アニメが楽しみです。
聞けば進撃の巨人も、これが元となっているそうな。


第6話―投石級BETA 出現―

 

 

 

 

 

ミグラント

 

交易を生業とする「運び屋」たちの総称。

各種の生活必需品を運ぶ行商人としての役割を担う一方、武器や弾薬などを扱う死の商人でもある。

主に大型の輸送ヘリや車両で移動し、各地を転々とする。

 

運び屋行商を主な生業とするが、時に武力を売り込むミグラントも存在し

ときに傭兵として振舞う者も存在する様だ。

 

“渡り鳥”や“移民”といった意味合いを持つ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『ミッションの概要を説明致します。ミッション・オブジェクティブは、ユニオン輸送部隊の支援及び護衛です。輸送部隊は欧州西方から大規模交易所まで東進します。しかし近年脅威と化している、BETA群の襲撃が予想され、護衛戦力抜きの突破は極めて困難となるでしょう。従って、貴方には先行してもらい進行ルート上のBETA群を駆逐して貰いたいのです。勿論、複数の友軍機を同行させていますので御安心を。ユニオンは、貴方を高く評価しています。よいお返事を、期待していますね』

 

 端末に送信された依頼を確認する飛鳥。

 

「インテリオルユニオンか。そう言えばユウキさん達が、インテリオル傘下の拠点に出かけたきり、連絡が来ないな。……あの二人の事だ、無事だとは思うけど、請けてみるか」

 

 報酬と作戦内容を再確認し、身の丈に合っているかをシミュレートした。

 

「輸送部隊の向かう先って、……この交易所か!一体何を運んでいるんだ?」

 

 護衛対象の積み荷が些か気にはなるが、飛鳥はこの依頼を受ける事にした。

 

レイヴン試験に合格して以来、スミカとユウキのサポート無しで依頼を遂行するのは、久し振りであった。

 

――もうあの時とは違う。そもそも本来は、一人で依頼を完遂していくのが、独立傭兵としての在り方だ。

 

過去に、ユウキから告げられた事がある。

 

 

 

―― いつまでも、お前の傍に居られんぜ ――

 

 

 

――本当に一人立ち出来るか否か良い機会じゃないか、やってやる!

 

何れは一人で生きていかなくてはならない。

 

彼等との出会いは偶然で、サポートを受けられたのは幸運が重なった結果と言えよう。

 

本来なら、他の傭兵達は一人で依頼を遂行するか、企業に斡旋されたオペレーターや整備士を雇う事で、サポートを受けていたのである。

 

カスミ・スミカの様に、非常に有用な戦術や追加報酬の交渉などを受け持ってくれる事など、先ずあり得ないのだ。

 

――正直僕は恵まれ過ぎていた。今一度、性根を叩き直すべきだな。

 

飛鳥は己を律し、ミッション承諾を送信し請け負う事にする。

 

受諾の手続きを済ませた飛鳥は、自室を出てAC出撃準備を整える事にした。

 

出発は明朝。

 

「資金には余裕があるな。たまには奮発して、先に美味いモノでも食うかぁ!」

 

 ユウキやスミカも居ない。

 

作戦前の景気付けにと食堂街へ脚を運び、少々贅沢な食事を楽しむ事にした。

 

 

 

―― 作戦当日 ――

 

 

 

交易所まで迎えに来たインテリオル所属の輸送車にACを格納させ、飛鳥は作戦現場へと向かった。

 

――大規模な作戦が増えたな。

 

現場には、MTやノーマルといった部隊が集結していた。

 

殆どは自分と同じく、雇われのフリーランスなのだろう。

 

機種に統一性が無く、フロートタイプや飛行特化型のノーマルも存在している。

 

BETAが存在してからというもの、明らかに共闘任務が増えた様な気がする。

 

レイヴン成りたての頃は、単独作戦が圧倒的割合を占め、同業者と共闘するという事など殆どなかった。

 

護衛対象は、大型の輸送装甲車で10台以上にも上る。

 

何が積んであるのかは知らないが、BETAにとっては格好の獲物となるに違いない。

 

だがインテリオル専属の護衛部隊には、あの『多連装レーザーキャノン』を搭載した機体が幾つか見受けられた。

 

以前、実験兵器の実地運用試験でお目に掛った事がある。

 

当時、()を超えるBETA群に襲撃されたが、試験兵器が真価を発揮し殆どを殲滅できた。

 

かなり小型化されている。

 

4脚型ノーマルや車両型MTに搭載されていた。

 

――BETAの群れは脅威だが、アレが有るなら少しは心強い。

 

飛鳥のAC『白天翼』は、面制圧に適した装備(アセンブル)ではない。

 

プラズマキャノンやグレネードで武装する選択肢もあったのだが、下手な重装備は重量過多を引き起こし、著しく機動性を損なう。

 

だが今後は、火力重視のアセンブルも視野に入れておいた方が良いだろう。

 

『それでは総員、配置に就いて下さい。ミッションを開始します』

 

 インテリオル専属のオペレーターが作戦開始を宣言し、各機は配置に就いた。

 

飛鳥は事前説明の通り最前衛の配置となり、進行ルート上の障害を排除する役割を担う事となる。

 

一見貧乏くじの様だが、インテリオルは彼に対し、それなりの評価を下していたのだ。

 

過去に、クレイドル墜落現場の調査~オーメル・ソ連軍の光線級漸減作戦の戦果を記録しており、彼はそこそこの注目を集めていたのである。

 

『それではレイヴン、良い働きを期待しています』

「――了!こちらAC『白天翼』、状況を開始します!」

 

 オペレーターの声を合図に、飛鳥はブースターを吹かし先行を始めた。

 

飛鳥の初動に呼応するように、各部隊も進行を開始する。

 

……

 

暫くの間は特に反応もなく、進行は順調といえた。

 

「…………」

 

 レーダーユニットには何の反応も示す事無く、時間ばかりが経過してゆく。

 

――そろそろ、BETAなり汚染AIなり出現してもいい頃なんだが。

 

別に好き好んで敵と戦いたい訳ではない。

 

何も無ければ無駄に弾薬費も損傷も負わずミッションを達成し、成功報酬を受け取る事が出来るのだ。

 

寧ろそれが理想であろう。

 

しかし飛鳥の経験上、そんな肩透かしを食らう依頼など、これまで皆無であった。

 

――……、試しに飛び上がってみるか。

 

飛鳥は、ブースト推力を上げ飛翔高度を上げる。

 

――高度100…150…200…300…350…。

 

ぐんぐん高度を上げ、周囲に頭部カメラを向ける。

 

――これだけの積み荷だ。仮にBETAでなくとも、無法者のミグラントや武装勢力が狙っていても不思議じゃない。

 

『レイヴン!「――圧が来たか!」高度を上げ過ぎです!』

 

 奇しくも圧迫感の察知とオペレーターの警告が同時であった。

 

その瞬間、或る方角から多数のレーザーが飛来する。

 

「――居たぞ!2時の方角、光線級のレーザーだ!」

 

 一斉に60を超えるレーザー群がACを墜とそうと、地上から照射された。

 

「――レーザーの数は約60!」

 

 初期照射を受けるまでもなく、飛鳥は一気に高度を下げレーザー群を回避した。

 

「BETAの総数は不明!故に、これより接敵し総数の把握と駆逐に移行する!」

『此方オペレーター…って、ええっ!?正気なの貴方!?無茶よっ!』

 

 オペレーターは新人なのだろうか?

 

飛鳥の提案に素っ頓狂な反応を見せ、制止を試みた。

 

「――規模が分かれば、それだけ対策も立て易い筈です!」

 

 当然飛鳥は、考えを改める気など毛頭ない。

 

 

 

(推奨BGM アーマードコア3 ―― Artifical Sky III )

 

 

 

一旦地上へと降り立ち小ジャンプ移動とブーストドライブを駆使しながら、光線級が居ると思わしき地点を目指した。

 

小高い岩場や崖を乗り越え、それを蹴り込み更に推力を得て突き進む。

 

「――!よし!レーダー反応有りを認む。BETA突撃級多数ッ!数の把握はそちらに一任する!」

 

 ACのレーダー波がBETA突撃級の群れを捉え、モニター上に赤点で表示され始めた。

 

唯、余りに数が多く、とてもではないが数えながらの戦闘起動は不可能だ。

 

生息数の把握をオペレーターに一任するも――。

 

『え、え…えぇっと!数は…どうするんだっけ……!』

 

――……なにやってんだ?あの女!

 

やはり経験の浅い新人なのだろう。

 

口調も感情的で、声音もかなり幼い感じがする。

 

オペレーターはアタフタしながら、困惑するばかり。

 

――……スミカさんの有能さが証明されたな。

 

飛鳥はこの時点でオペレーターをアテにするのを止め、独自の判断で動く事にする。

 

「こちらレイヴン!光線級の撃破を優先する!」

 

 飛鳥は低空飛行で、突撃級スレスレを跳び越える。

 

そして低高度を維持しながら、上空後方から戦術機用の突撃砲WS-16Cの弾丸をバラ撒き、突撃級を撃破しつつ光線級を目指した。

 

――かなり居るな、ざっと見積もっただけでも6000は確実か。

 

目測で生息範囲を計算し、6000以上と憶測を立てる。

 

この分だとBETAの総数、10000以上は存在するだろう。

 

突撃級の大群を抜け、次に要撃級の大群が此方に殺到した。

 

――こいつ等撃ってこないのが、せめてもの救いだ。

 

以前の戦術で凌ぐ事を選択し、先ずは食い縛った歯に似た部分を銃撃で破壊する。

 

飛鳥は三点射で、並み居る要撃級の顔部を次々と破壊した。

 

絶命には程遠いが、感覚器官を優先して破壊すれば著しい戦闘力減衰が期待でき、後続の部隊が容易に止めを刺す事が出来る。

 

「よし、頃合いか。後は光線級を――っ!?何だっ!?」

 

 群れを成す要撃級の戦闘力を軒並み減衰させ、光線級を目指そうとした矢先である。

 

突如として、コックピットから警報が鳴り響いた。

 

――何だと、対空警戒っ!?まさかBETAが空をっ!?

 

一旦要撃級から距離を放し、カメラを上方へと向ける。

 

映像を拡大し、空から丸まったナニカが降って来た。

 

「オペレーター、聞こえますか!?状況を把握したい!何が起こってるんです?」

『――そ、そんな事アタシにだって分かんないわよっ!』

 

 半ば逆上気味で、叫び出す新人オペレーター。

 

「……」

 

――アテには出来ないか。

 

『もぅ一体何なy…って、え!?ちょっ…『――どけっ!』なにすん…きゃぁぁっ!!』

「――?」

 

 管制室で何かあったのだろうか?

 

新人オペレーターの短い悲鳴が聞こえ、何やら争う音が此方にまで伝わる。

 

『飛鳥、気を付けろ!上空からBETA戦車級が来るぞっ!しかも大量だ!』

「――了っ!って、その声…スミカさん?何でっ!?」

 

 唐突に真面な指示が来たかと思えば、彼の良く知る声に驚きを隠せない。

 

『後で話す!先ずは対空射撃で迎撃しろっ!それと突撃級の幾つかが反転してお前に向かっている、気を付けろ!』

「――了、お任せを!」

 

 心強いスミカからの指示で、対空射撃体勢に映る。

 

何故、BETAが空から降って来るのかは定かではない。

 

上空に、飛行型BETAでも居るのだろうか?

 

だが、それを調べるのは後で良い。

 

今は赤く丸まり降り注ぐ戦車級を迎撃するのが先だ。

 

「撃ち落とすっ!」

 

 両腕に装備した火器を駆使し、上空の戦車級を次々と撃ち落とす。

 

しかし火器が足りず、幾つかの戦車級は地面へと着地し、飛鳥のAC目掛けて迫って来た。

 

後方から反転した突撃級の群れ、周囲は着地した戦車級、前方は要撃級の大群、最も手薄なのは皮肉にも…上空だった。

 

――不味いな!強行突破して、仕切り直すか?

 

このまま包囲されたまま戦闘を続けるのは、ハイエンドノーマルと言えども不利だ。

 

更に地形は凹凸に富み、岩場や窪みと云った障害物も周囲に広がり、平地は乏しい。

 

安易なブースト移動は制限され、機動性が損なわれてしまう。

 

「こうも入り組んだ地形では……ん?入り組んだ地形――!?」

 

 何かが閃いたのか、飛鳥は周囲にカメラを向ける。

 

『少しは成長した様だな。お前の技量なら僅かな障害物をも足場にして、ブーストドライブ(壁蹴り)で切り抜けられる筈だ!』

 

 周囲には壁蹴りに利用できそうな、障害物が幾つも存在していた。

 

これ等を駆使すれば、迫り来るBETAの包囲網を突破する事は可能だ。

 

尤も、それを実現するには一定水準の操縦技量と練度が必要不可欠となるのだが。

 

「――やるしかないっ!」

 

 迷っている暇は無い。

 

足元にまで戦車級が迫っている。

 

戦車級がACに取り付こうと掴み掛るが、振り上げた腕は空振りに終わった。

 

飛鳥は小ジャンプで障害物へと跳び込み、蹴り込みながらブーストを吹かしブーストドライブ。

 

岩場や大地を次々と蹴り込み連続ブーストドライブで、一路光線級へと向かった。

 

『そうだ!お前が率先して引き付ける必要ない。後続の連中に仕事をさせればいい』

 

――そうだな、友軍をアテにするとしよう。

 

そのまま障害物を伝い、光線級へと迫る。

 

そろそろ障害物が疎らとなった途端、またもや上空から反応があった。

 

『警戒しろ!空から要撃級だ!』

「――なっ!?」

 

 ほんの数体だが、今度は上空から要撃級がAC目掛けて降り注ぐ。

 

飛鳥は反射的にブースターを吹かし、回避起動しながら高度を上げてしまった。

 

高度を上げるという事は――。

 

「――ぐぁっ!しまったっ!」

 

 空中の獲物(AC)をBETAが見逃す筈も無く、光線級の放ったレーザー照射を受けてしまった。

 

白色に輝く光線が装甲を焼き溶かし、徐々に赤熱化が始まる。

 

『――落ち着け!直ぐに射線軸をズラせば良い!』

「――!!」

 

 飛鳥は直ぐにハイブーストで、機体を軸移動させレーザー照射から逃れた。

 

光線級の放つレーザーは、尚もACを捉えようと追い縋る。

 

飛鳥は一旦高度を下げ、障害物の多い地形に身を忍ばせ、近くの岩場に不時着した。

 

「あ…危なかった……」

 

 何とかレーザーの奔流から逃れ、息を乱す。

 

『良いか!光線級のレーザーは初期照射で目標を補足し、後に数秒で最大出力で仕留めに掛かる。つまり最大出力に達する前に、射線から逃れれば十分回避は間に合う。これは戦術機にも採用されている最も基本的な回避方法だ。戦術機よりも装甲に優れたACハイエンドノーマルに出来ない道理は無い、よく覚えておけ!』

 

「りょ、了…介です!」

 

 余程の軽量級ACでもない限り、装甲防御は戦術機よりも優れているのが、ACハイエンドノーマル。

 

対光学兵器に重きを置いたアセンブルなら、重光線級のレーザー最大出力でも約10秒は耐えられる。

 

飛鳥が、依然オーメルから支給されたレーザー回避プログラムがあった。

 

当の本人は、撃たれてから警報が鳴るという仕様に憤り、欠陥品扱いしていたがそれは大きな思い違いだ。

 

実際は、初期照射の時点で熱源センサーが感知し、その情報を頼りに危険警報を促す仕組みとなっていたのである。

 

――成程、オーメルのあのプログラムは欠陥品ではなく、真面に機能していた訳か。だが、初期照射でも被弾し損傷を負う事には変わらない。

 

「――ならばっ!」

 

 何を思ったか、飛鳥は再び高度を上げ空中に陣取った。

 

『――おいっ、どう言うつもりだっ!?』

 

 飛鳥の不可解な行動にスミカは訝しむ。

 

当然、光線級や重光線級のレーザーが束になって、ACに襲い掛かった。

 

「センサーの熱源感知機能を最大まで引き上げます!上手くいけば、光線級のレーザー予備動作を感知出来るかも知れません!」

 

 AC各所に備わった各種センサー類。

 

そのセンサーの熱感知機能を最大まで引き上げ、光線級の眼部の熱源を拾おうという企みであった。

 

光線級は間違い無く巨大な眼球にエネルギーを収束させ、それを光線として撃ち出す。

 

当然、眼部にはエネルギーが収束し高熱を発する筈だ。

 

その熱をセンサーで拾う事が出来れば、レーザー攻撃の予測の指標となるのではないか。

 

飛鳥はそう考えていた。

 

もし上手く事が運べば、レーザーを予測し易くなり回避機動に伴う負担も少しは軽減される筈だ。

 

自分の直感だけを頼りに今迄レーザーを回避していたが、意識をそこに割かねばならず正直負担が増大し異常な速さで疲労が蓄積するのだ。

 

過度な疲労は判断力や実行力を鈍らせ、自信の戦闘力低下に直結する。

 

――モノは試しだ!

 

並み居るレーザーを回避しながら、コンソールボックスを開きセンサー設定を熱感知特化に変更する。

 

『レーザーを手動で回避しながら設定変更とは……器用だな…お前』

 

 その様子をモニタリングしていたスミカは、感心するやら呆れるやらである。

 

これまで多くの戦士を見てきたが、回避しながら設定を弄る人物は飛鳥が初であった。

 

「設定変更完了!――さぁっ!どう来るっ!」

 

 飛鳥は空中に留まり、軸を軽くズラしながら光線級の様子を窺う。

 

未だ頭部カメラでは、光線級の姿を捉える事は出来なかったが、居ると思わしき箇所から熱源感知のマーカーが表示され同時に危険信号音も鳴り響いた。

 

そして直ぐに、レーザーがAC目掛けて殺到する。

 

「――よしっ!成功だっ!」

 

 飛鳥の目論見は的中した。

 

熱源感知の警報が鳴り、その地点からレーザーが襲い掛かる。

 

事前予測が成り、難無くレーザーを回避。

 

攻撃されるのが事前に察知出来れば、回避は非常に容易。

 

神経を擦り減らす事もなく、極論で言えば素人でも回避出来るだろう。

 

その位に難度が引き下がった。

 

「スミカさん!データー蓄積をっ――!!」

『言われる迄も無い、調子に乗ってしくじるなよ!』

 

 暫くこの設定でレーザーを開始し続け、データーを蓄積させればいい。

 

充分に蓄積したデーターを基に回避プログラムを完成させれば、今後に大きな助けとなるだろう。

 

そしてそのプログラムの完成度を更に高め、有償にせよ無償にせよ拡げれば、対BETA戦において有利に事が運ぶ筈だ。

 

ある程度データーを蓄積させれば、センサー設定を元に戻せばいい。

 

他機能を犠牲にして熱感知に特化させたのでは、汎用性に難が生じるからだ。

 

「あいつ、何時の間に此処まで成長していたんだ?」

「お前が教えたんだろ?」

「あんな変則的なやり方なんて教えてませんよ。精々”教科書通りになるな”位にしかね」

 

 指揮者の管制室で、飛鳥の行動を具に見ていたスミカとユウキ。

 

スミカの傍に居たユウキは、飛鳥の思わぬ行動に感嘆していた。

 

――こりゃ、今の内に詰めれるだけ詰め込んだ方が良いかもな。

 

ユウキは自分の持てる知識と技術を、可能な限り飛鳥に伝授させる事を画策していた。

 

暫くの間レーザー回避に専念し、頃合いを見計らい反撃に映る事にした。

 

高度を下げつつ光線級へと距離を詰める。

 

その最中――。

 

「……、何だ、アレ?」

 

 光線級を視認可能な距離まで詰めた際、今迄見た事もない奇妙な生物が複数存在していた。

 

逆関節型の2本の脚部、その上に繋がる蛇腹状の胴体部、そして頭部は平べったい板状という奇妙な外観だった。

 

更にその板状の上には、複数の戦車級が搭乗していた。

 

「こ、こちらレイヴン!見えてますか、今の映像!」

 

 そろそろBETAにも見慣れていた飛鳥ではあったが、この奇妙な生物には些か取り乱し慌てて通信を送った。

 

『ああ、よく見えている。随分デカい上に、頭に戦車級が乗っかってやがるな』

 

 奇妙な生物の大きさは要塞級にも比肩し、色は灰色であった。

 

恐らくはBETAなのだろう。

 

じっくりと観測し、生態調査と行きたい処だが、眼下には多数の光線級、重光線級が蔓延りレーザー照射の準備に移っている。

 

悠長には構っていられない。

 

『飛鳥、調査は後だ。先ずは目障りな光線級を始末しろ!』

 

 このままでは再びレーザーに晒されてしまう。

 

飛鳥はレーザーを回避と反撃を織り交ぜつつ、光線級を確実に仕留め漸減を図った。

 

WS-16CとCRYWHー05R3から吐き出された弾丸は、光線級の眼部を粉砕し重光線級の体組織を破壊し尽くす。

 

運よく弾幕から逃れ、要塞級から姿を覗かせた光線級がレーザーを照射するが、分かり切った照射など息をするかの如く回避した。

 

飛鳥は間髪入れずに応射を見舞い、光線級は身を隠す暇もなく粉砕される。

 

周囲の光線級を粗方仕留め、目視の範囲で残っているのは要塞級一体、そして見知らぬ逆節型の大型BETAのみだ。

 

――あの変なBETAは後回しでいい。先ずは厄介なコイツ(要塞級)を始末しないと。

 

飛鳥は眼前の要塞級に狙いを定めた。

 

幸い要塞級の特徴は知っている。

 

たった一度だけだが、オーメル、ソ連との共同作戦で討伐したという実績は飛鳥に大きな糧となっていた。

 

だが以前の様にワザと敵の射程内で戦う必要はない。

 

要塞級の主力武器である触手状の『衝角腕』と『強酸』さえ無力化できれば、その脅威度は大幅に激減するのだ。

 

しかし、相手の射程距離に入らねば、あの衝角腕を振るう事はなく収納状態のままだ。

 

収納状態で下手に射撃を浴びせた処で、モース硬度15以上、靭性も戦術機の装甲以上と言われている先端部を破壊する事は出来ない。

 

別の部位に大口径弾で攻撃するか、若しくは危険を冒し格闘戦で弱点部位を直接攻撃するかだ。

 

飛鳥は敵の射程外で何とか衝角腕を破壊したかった。

 

――奴の動きが鈍い事は幸いしたな。ならばっ……!

 

先ずWS-16Cの連射で収納状態の衝角腕を攻撃する。

 

無論刃物の如き先端部には効果が薄く、36ミリ弾程度で粉砕できるものではなかった。

 

だがそんな事は飛鳥本人も承知済だ。

 

御構い無しに射撃を継続し、数十発の弾丸を衝角腕に当て続けた。

 

確かに鉤爪状の先端部は非常に堅牢だが、収納部の周り或いは付け根部はどうだろう?

 

徐々にだが収納部の付け根部が削れ始め、少しずつ衝角腕の鞭部分が露出しつつあった。

 

「――時は今っ!」

 

 僅かに露出した鞭部分に狙いを定め、左手用ライフルCRYWHー05R3と背部兵装のCR-WB69ROのロケット弾を同時に叩き込んだ。

 

肉質の柔らかい鞭部分はロケット弾の爆風とライフル弾の貫通エネルギーで、無残に破壊され衝角腕は無力化された。

 

最早こうなれば、要塞級の破壊は造作もなくなる。

 

全体通して高い防御力を誇るが、三節胴体部分の付け根は弱点部位となっていた。

 

今更ながらに飛鳥のACを脅威と感じたのだろうか。

 

要塞級は無謀な突進を繰り出し、強靭な多脚部でACを串刺しにしようとする。

 

しかし比較的緩慢な要塞級の動きでは、ACを捉える事はなく飛鳥はハイブーストで難なく回避。

 

そして後方に回り込み、弱点部位を攻撃。

 

無数の弾丸が、三胴部を形成している接合部に直撃。

 

要塞級はバラバラに崩れ去り、完全に生命活動を停止した。

 

「――要塞級撃破を確認っ!」

 

 大型のBETAを破壊し、次の目標に狙いを定める。

 

それと同時にあの逆接型BETAが、板状頭部に乗せていた複数の戦車級を、空中高く投擲していたのだった。

 

逆接脚部を屈伸状態からグンっと伸ばし、蛇腹状の胴体部をバネの様にしならせ、その勢いで頭部上に搭乗していたBETAを放り投げていたのである。

 

――な…何だ…()()は……!?

 

「ス、スミカさん…今のっ!?」

『落ち着け、よく見えている。ふん……まるで、()()()だな』

 

 BETAの挙動に飛鳥は取り乱し、スミカに通信を送る。

 

彼女が比喩する様に、その様相は宛ら”投石機”そのものであった。

 

『よもやBETAをブン投げる個体種が居たとはな。飛鳥、そいつは破壊して構わん!もう一ヶ所に、別の投擲野郎が居る筈だ。そいつを上手い事捕獲してみようか』

「分かりました、では遠慮なく!」

 

 投擲した複数の戦車級は、友軍部隊が撃破するだろう。

 

飛鳥は指示通り、逆接型BETAを破壊する事にした。

 

要塞級に匹敵する程の巨躯を誇り、それ自身の戦闘力は未知数ではあるが、早急に破壊した方が良いだろう。

 

外観も比較的分かり易い構造で、先ずは脚部の破壊を試みた。

 

突撃砲とライフルの射撃で、逆関節の脚部は赤い体液と肉片を撒き散らしながら砕け散った。

 

「脚部、片方破壊!意外と脆いな」

 

 呆気無く破壊できた事に飛鳥は意外そうな表情をする。

 

『甲殻に覆われていない部位は、案外こんな物だろうな。引き続き、破壊を続行しろ!』

「――了っ!」

 

 指示通り、もう片方の脚部も射撃で破壊。

 

片方を失った時点で、既に逆接型のBETAは体幹を崩し倒れ込み、真面な移動も抵抗もままならない状態であった。

 

地面に横たわり、無様に藻掻くだけのBETA。

 

生体反応が消失する迄、飛鳥は弾丸を叩き込み止めを刺した。

 

「BETA撃破を完了!スミカさん次の目標を――」

『撃破したか。次のマーカーを表示させる、其処へ向かってくれ!さっきから、戦車級がドカドカ降って来て敵わん…』

 

 モニター上にマーカーが表示され、次の目的地が提示され飛鳥はその方角へとACを移動させた。

 

輸送部隊に群がるBETA群は数を減らしつつあるが、僅かずつではあるが友軍機にも被害が及んでいる。

 

余り悠長に構えている時間は無い様だ。

 

「――居たっ!」

 

 飛鳥は別地点のBETA群を補足し、同時にレーザーが襲い掛かる。

 

センサー設定を変更した事により、熱源を捉えた事による予測で回避は容易だ。

 

全てのレーザーを容易く躱し、そのまま射撃で反撃。

 

光線級7、重光線級1を破壊し、BETA側の光線級の殲滅を終えた。

 

残りは小規模の要撃級と戦車級に加え、2体の逆接型BETAだけである。

 

これ以上BETAを輸送部隊へ投擲されては堪ったものではない。

 

飛鳥は直ぐに攻撃を仕掛け戦車級を殲滅し、続いて要撃級も仕留め切った。

 

そこへスミカから通信が入る。

 

『2体居る内の一体は捕獲を試みてくれ。それと、そいつは”投石級”と呼称する事になったそうだ』

 

「”投石級”……。確かに、投石機さながらにBETAを放り投げてましたからね。それにしても……僕がBETAなら光線級を放り投げて多方向からのレーザー攻撃を仕掛けるのですが、不思議と光線級は投擲していませんでしたね」

 

 幾度か投石級がBETAを投擲していたが、目に付いたのは戦車級と要撃級くらいであり、光線級が降って来る事はなく、飛鳥は疑問を口にする。

 

『その事か。降って来た戦車級や要撃級の一部は着地に失敗し、そのまま間抜けにもお陀仏してやがった。恐らく光線級や重光線級の体組織じゃ、着地に耐えられんのだろう。――でなくば、最初から光線級を投擲し戦術に幅を持たせていた筈だ』

「……成程」

 

 スミカの話を聞きながら飛鳥は一体の投石級BETAを撃破し、次の投石級に狙いを絞る。

 

一応自衛力は備わっているらしく、残り一体となった投石級が此方へ突撃し板状の頭部で叩き潰そうと迫る。

 

当然、飛鳥もその様な攻撃を食らう積りはなく、宙高く跳び上がり上空からの射撃で脚部のみを破壊し、逃走手段を喪失させた。

 

既に光線級は殲滅している。

 

レーザー照射の懸念はなかった。

 

『よし、脚部を破壊したな。これで、もう逃げる事が出来ない筈だ。直ぐに回収部隊がそっちに向かう。悪いがお前は、輸送部隊の直衛に入ってくれ。数に押され始めた』

「――分かりました、直ぐに向かいます!」

 

 動けない投石級は最早何の脅威にもならない。

 

此処は後から来る回収部隊に任せ、飛鳥はブースター移動で輸送部隊へと向かった。

 

 

 

『畜生!数が多過ぎる!』

『死骸が邪魔で、輸送部隊が通れねぇ!』

『おい!あのレーザーキャノンはどうした!?』

『駄目よ!最充填まで、早くても30秒!』

 

『や、やめろ…来るなぁぁっ!』

『ぎゃあぁぁぁアアあっ!』

『あ、脚がァっ…っ、俺の脚がァっ!』

 

『おいっ!上空へ一時退避しろっ!』

『――そうかっ!光線級は、もうっ!』

『空から攻撃すれば何とかっ!』

 

――思ったよりも、被害が拡大してる!

 

程無くして飛鳥のACが現場へと到着する。

 

既に幾つかの機体はBETA群に食い尽くされ、輸送部隊はBETAの死骸が積み重なった事で足止めされていた。

 

このままでは輸送部隊にも被害が及ぶ。

 

『来たか飛鳥!お土産を渡すから、こっちまで来てくれ!』

「ユ、ユウキさん!?…了です!」

 

 現場に到着するなり、ユウキからの通信が入る。

 

何の事かは理解出来なかったが、飛鳥は指示通りスミカ達が搭乗している車両へと移動した。

 

飛鳥のACが着くなり車両の後部ハッチが開き、中から作業用MTが姿を現す。

 

『よし、手持ちの武装を全てパージしろ。コイツはかなり負荷が高いからな!』

 

 作業用MTから通信が入る。

 

どうやらユウキが搭乗している様だ。

 

MTのアームには、ボックスタイプのランチャーらしき代物が保持されていた。

 

「ユウキさん、お土産って()()の事ですか?」

『おうっ!まだ試作段階で、実用に足るかどうかも未知数だが、試験も兼ねて実地試験といこうぜ!』

 

 ユウキはそう答えるなり、飛鳥のACを所定位置にて固定させ、そのランチャーを装備させる。

 

MTのアームからACの腕部ユニットへとランチャーが手渡され、飛鳥は腕部を操作し保持体勢に映る。

 

「な!?警報が複数一気にっ!?」

 

 保持し、運用プログラムをダウンロードした瞬間、コックピットのモニターに警戒信号が鳴り響いた。

 

「腕部重量過多!脚部重量過多!出力不足警戒域!」

『無理もない、まだ試作段階で、実働データーの蓄積もこれからの段階だからな』

『よく聴け!エネルギーが枯渇する前に、出来るだけ多くのBETA群を殲滅しろ!いいなっ!』

 

 そのランチャーは余りに重く、腕部と脚部に多大な負荷を負わせ命中精度と機動力に大きな制限を掛けた。

 

また稼働にも膨大のエネルギーを必要とし、ジェネレーターの大半をその兵器に割かねばならず、今の状態では撃つだけで精一杯だ。

 

更に兵器自体もかなりの大きさで嵩張り、他の装備を無理矢理外す必要があり、正直実用に足るとは言い難い。

 

しかしユウキ達が、それを承知の上で装備させた理由。

 

その兵器は、インテリオル製の多連装レーザーキャノンをACハイエンドノーマル用に小型改良した代物であったからだ。

 

ACノーマルや専用MTが運用出来ているのは、ハイエンドノーマルに比べ稼働システムが簡略化されている事と、専用に低出力化および軽量化されている為である。

 

「分かりました!この武器、有り難く使わせて頂きます!」

『よっしゃ!不様に食われんじゃねぇぞ!』

「――了っ!」

 

 多連装レーザーキャノンを受け取り、稼働状態にさせた飛鳥は主脚による歩行移動で、迫り来るBETA群へと立ちはだかる。

 

無駄なエネルギーは一切使えない。

 

出力不足が効いているのだろう。

 

普段なら余剰エネルギーが予備コンデンサへと廻されるのだが、警報メッセージが示す通り可動エネルギーの大半は多連装レーザーキャノンへと回されていた。

 

そのお陰で、FCSも不調でロックシステムにも悪影響を及ぼしていた。

 

――これだけ密集してれば、狙いを定める必要も無いな!

 

「レーザー拡散率、横軸7、縦軸3に固定。発射態勢は既に完了!」

 

 多連装レーザーキャノンを両腕で保持し、殺到する突撃級を始めとしたBETA群へと砲口を向けた。

 

縦横5×5の25連装で構成された砲口はしっかりとBETA群を捉え、発射エネルギーが充分蓄積された状態だ。

 

 

 

「レーザー発射――今っ!!」

 

 

 

飛鳥は叫ぶと同時に、マニピュレーターを操作しトリガースイッチを始動させた。

 

25連装の砲口から無数の光が(ほとばし)り、放たれたレーザーは広範囲に拡散照射された。

 

レーザー1発1発でも、軽装甲MTなら十分穿てる程の威力を誇り、それが広範囲にマシンガンの如く乱射。

 

堅牢な突撃級の甲殻でも、そのレーザーの嵐を食い止める事は叶わず、甲殻ごとハチの巣にされ倒れ伏す。

 

「うぅぉおおおぉぁああぁぁっ!!」

 

 飛鳥は雄叫びを上げ、多連装レーザーキャノンを左右に薙ぎ払う。

 

殺到するBETA群は、次々とレーザに焼かれ貫かれ、その生命活動に終止符を打った。

 

前面防御に長けた突撃級ですらレーザーの雪崩には抗えず、戦車級や兵士級など成す術も無く穴だらけにされた。

 

その後に続く要撃級も同じ運命を辿り、大群の密集陣形で迫るも無数のレーザーに貫かれ倒れ伏す。

 

その際BETAの死骸が障壁となる筈だが、飛鳥はそれをも見越し収束範囲を集中寄りに変更しながら照射を続行。

 

無論、収束された分レーザーは威力を増し、死骸をも貫通し後続のBETA群をも纏めて仕留めた。

 

『エネルギー残り30%、残存BETA31%!』

 

――くっ、もってくれ!

 

可動エネルギーも見る見る間に減少し、飛鳥は額に汗を滲ませる。

 

『エネルギー残り10%、退避しろ、命令だ!』

「――!?り、了!」

 

 可動エネルギーを9割消費した処で、スミカからの退避命令が下った。

 

何も戦っているのは飛鳥一人ではない。

 

飛鳥が多連装レーザーキャノン照射している間、友軍部隊が体勢を立て直し残り僅かとなったBETA群に殲滅を仕掛けていたのだ。

 

『稼働エネルギーを全て使い切れば、機体が完全停止してしまうからな。もし万が一、一体でも討ち漏らせば忽ち餌食だ!それに少しは奴等にも仕事をさせんとな』

 

 残存BETAは40体を切っており、後は造作もなく友軍によって全滅させられ戦闘は終結。

 

『BETA群の殲滅を確認した。捕獲部隊も無事、投石級の確保に成功したとの事だ』

 

「ふぅ~…、終わったか……」

 

『まだ気を抜くなよ?成功報酬を受け取り、お家へ帰る迄が任務だ』

 

 近隣のBETA襲撃を全て撃破し、護衛部隊は警戒態勢のまま目的地へと進軍を再開した。

 

敵性勢力の妨害が懸念されたが、特に何事も無く輸送部隊は大規模交易所へと辿り着いた。

 

 

 

『今回の任務達成、誠に感謝いたします。新種のBETA捕獲の件を鑑み、追加報酬にて報いらせて頂きます。ミッション達成ご苦労様でした、レイヴン』

 

 インテリオルユニオンから成功報酬と追加報酬を受け取り、飛鳥達は居住区へと帰路に着く。

 

「それにしても、ユニオンは何を運んでいたんでしょうか?」

 

 結局、荷降ろしの現場まで立ち合う事は許されず、最後まで積み荷は分からず終いであり、飛鳥は気になっていた。

 

『大体の察しは着く』

 

 スミカがぶっきらぼうに答える。

 

飛鳥達の住むこの巨大交易所も、BETAおよび汚染AIの襲撃に危機感を抱き、防衛力を強化するとの方針を固めていた。

 

インテリオルユニオンの件も、それに関連しての事だろう。

 

恐らく、あの多連装レーザーキャノンも積み荷の中に含まれている筈だ。

 

そして交易所管轄の企業連も、部隊を割き此処へと向かっているらしい。

 

此処は欧州でも、屈指の規模を誇る貿易の要であり、多くの人々が行き交う施設でもあった。

 

世界中で国家が復活した今でも此処を手放す気など毛頭なく、徐々に国までもがこの交易所を意識し始めているほどだ。

 

今後も多くの人々が訪れるだろう。

 

「ACの整備が終わったら、ゆっくり休もうぜ!」

 

「そうですね。終わったと思ったら、どっと疲れが出てきましたよ」

 

 こうしてミッションは成功し、飛鳥達は生還する事が出来た。

 

 

 

 

 

―― 数日後 英国圏・ミミル軍港 ――

 

 

(推奨BGM マブラヴオルタ―― 疑念)

 

 

ギガベースに大小様々な輸送船が向かう。

 

インテリオルから購入した兵器や物資を搬入させる為だ。

 

また物資だけでなく人員の補充も行われ、ACハイエンドノーマル製造に長けた『クレスト・インダストリアル』『ミラージュ』の元職員をも積極的に採用していた。

 

こうした戦力拡大へと突き進む有澤重工・日本帝国連合軍――。

 

物資の搬入が行われるギガベースを余所に、ミミル軍港の一角に在る会議室では各企業の首脳陣や帝国の衛士達が集結していた。

 

『これが、我が社で捕獲した新種のBETA、『投石級』と呼称させて頂いております』

 

 明かりを落とし暗室となった部屋に、突如スクリーンに投影された何とも奇怪なBETA。

 

逆関節型のMTを彷彿とさせる脚部に蛇腹状の胴体部、そして頭部は板状で構成され、その上には複数のBETAが搭乗していた。

 

そして、脚部や胴体部のバネを生かし板状頭部に搭乗していたBETA群を、空高く放り投げている様子が映し出されている。

 

その映像は、先日インテリオル輸送部隊から送信された戦闘記録が元となっていた。

 

 

 

――「ス、スミカさん、見ましたか、今のっ!?」

  『落ち着け、よく見えている。ふん……まるで、投石機だな』

 

  『よもやBETAをブン投げる個体種が居たとはな。飛鳥、そいつは破壊して構わん!もう一ヶ所に、別の投擲野郎が居る筈だ。そいつを上手い事捕獲してみようか』

  「分かりました、では遠慮なく!」――

 

 

 

その時の音声も同時に流れ込んで来る。

 

そこから先は、投石級の挙動や戦闘記録までが映し出された。

 

「まさかBETAが空から降って来るとは……」

「要塞級がBETAを運搬するのは知っていますが、放り投げるとは何とも……」

「立て続けに、新種のBETAですか……頭痛の種ですな」

 

 俄かに会議室が騒めき口々に無責任で無意味なが議論が交わされる。

 

その中で一人…いや、二人の女性は投石級BETAに加え別視点に着眼していた。

 

やがて会議は終わり、それぞれは本来の居場所へと戻る。

 

有澤ギガベースも今日この軍港を発つ予定で、物資の搬入肯定も終了間際となっていた。

 

ギガベースへと向かう『崇宰恭子』率いる斯衛部隊――。

 

五摂家の護衛を務める有力武家の一人『如月佳織』が口を開く。

 

「それにしても『洗脳級BETA』と言い『投石級BETA』と言い、対BETA戦術の見直しが急がれますね」

 

 洗脳級が自律兵器に取り付く事で誕生する『汚染AI』、そしてBETAを遠方へと投擲し強制的に飛ばす『投石級BETA』の存在。

 

今迄多くの犠牲を払いながら蓄積されてきた戦術が、覆されようとしている。

 

一刻も早く本国へと帰国する必要があるだろう。

 

その言を受け、崇宰恭子も言葉を返す。

 

「確かに忌々(ゆゆ)しき問題ね。……だけど、もう一つ気になった事はない?」

 

「気になった事……?……強いて挙げるなら、あの多連装レーザーキャノンでしょうか。あれを我が戦術機レベルで運用出来れば、対BETA戦に於いて有用に作用する筈です!」

 

 先程、投影された戦闘記録映像には、インテリオルが誇る多連装レーザーキャノンが猛威を振るい、並み居るBETA群を駆逐していた。

 

幸いな事に例の多連装レーザーキャノンは、設置式の大型、起動兵器搭載式の小型含め、各種入手に成功しており既にギガベースに搬入されている。

 

「……ええ、あの兵器も有用なのは認める。……他の皆はどう?何か他に着目している部分はない?」

 

 恭子は周囲の部下にも質疑を投げ掛ける。

 

彼女の部下である、譜代武家、外様武家の面々も顔を見合わせては首を傾げるばかりで、明確な答えは帰って来なかった。

 

「そう……。洗脳級、そして今回の投石級…、戦うにせよ捕獲するにせよ、各作戦に同じ人物が関わっていたの覚えてる?」

 

 これら新種のBETA捕獲には、一人のレイヴンが関わっているのを恭子は注目していた。

 

しかし、彼女以外の面々は極めて反応が薄く、余り印象には残っていなようだ。

 

 

 

唯一人を除いて。

 

 

 

「もしや貴女も、同じ考えで?」

 

 突如後ろから声を掛けられ、恭子率いる部隊は後ろを振り向く。

 

「おや、貴女は」

 

 声の主。

 

其処には、軍服の上に白衣を羽織った女性と少女、そして数名の仕官が追従していた。

 

お互いが敬礼を交わす。

 

「香月夕呼博士……矢張り()の少年に……?」

 

「ええ、私も例の少年が気になっていてね。良ければ、ギガベース内で話しましょうか?」

 

 本来なら恭子率いる斯衛団は、香月夕呼の不敬な態度を諫めようとするのだが、恭子本人が部下を制した上に香月夕呼は軍部の中でも特殊な立場にいる人物だ。

 

敢えて声を荒げる事はせず、成り行きを見守る事にする。

 

恭子と夕呼はじっくりと話す事にし、ギガベースへと歩を速めた。

 

 

 

 

 

ギガベースへと帰還し、空きの客室を借りた香月夕呼と崇宰恭子は、ゆっくりと語り合った。

 

「あの飛鳥と言う少年…どこまで知っているの?」

 

 先ず夕呼から話し出した。

 

「調べた限りでは、独立傭兵の駆け出しレイヴンと言う位しか……」

 

 恭子は現時点で知り得る限りの情報を吐露する。

 

氏名、年齢、所属先、身体的特徴、これまでの経歴。

 

一応他の視点からデーターを調べてみたのだが、それ以上の成果は見られなかった。

 

経験の浅い駆け出しレイヴン――。

 

火無飛鳥と言う少年の世間的評価は、それ以上でもそれ以下でもなかった。

 

「もう一度これを見て頂けるかしら」

 

 夕呼は先程の会議室での映像記録を見せた。

 

彼女専用の情報端末を此処に持ち込み、その画面上にあの戦闘記録が映し出される。

 

だが場面は少々違っており、投石級との戦闘記録ではなく、それ以前の主に光線級との戦闘に関して映し出されていた。

 

「何か気付いた点はない?」

 

 夕呼は試すかのように恭子に語り掛けた。

 

もし此処に他の斯衛軍人が居れば、間違い無く激昂し斬り掛かられていただろう。

 

「レーザーを回避しているわね。……それにしては、随分高い回避率を誇るけど……、何か特殊な機能や回避プログラムを?」

 

 本来、戦術機がレーザーを躱すには、自動回避プログラムか初期照射を受けてからの回避行動で凌ぐ。

 

しかし、自動回避プログラムは改良の余地が多分に残されているのか、全てを避け切るのは極めて困難で高度を上げるのは危険行為とみなされていた。

 

「もし違うとなれば、この『アーマードコア』の性能かしら?」

 

 恭子は何度も映像を見直し、飛鳥がレーザーを悉く回避している様子を確認する。

 

「確かに、ACハイエンドノーマルはアセンブル次第で超高性能機に変貌する。それもあると思うけど、あたしは違うと思うの」

 

「……どういう事かしら?」

 

 アーマードコアはの情報は有澤重工業を通じて、日本帝国にも伝わっていた。

 

当然コジマ粒子や、それをふんだんに利用したアーマードコア・ネクストについても。

 

「この飛鳥とかいう少年、回避プログラムを切っているわ」

「――!!」

 

 夕呼の指摘に、恭子は声にならない驚きの声を上げる。

 

夕呼は映像を巻き戻し、飛鳥が自力でレーザーを回避している事を指し示した。

 

 

 

 

 

「コイツ、()()でレーザーを回避してるわ!」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

アームズフォート

 

企業間戦争におけるパワーバランスの調整の果て。

希少なリンクスへの個体依存性に強く影響するネクストACから

大勢の凡人による総合制御に生まれた、超巨大戦略兵器。

大艦巨砲主義を地で行く無駄なほどの巨大さと

それに似つかわしい圧倒的火力と物量で戦場を蹂躙する、まさに機械仕掛けの決戦兵器。

 

ネクストですら、その火力と射程に苦戦を強いられることが多く、

相手取るのにヴァンガード・オーバード・ブースト(VoB)と呼ばれる長距離飛行用の特殊パーツで

相手の射程を掻い潜ることから始まる任務も多い。

 

ジャイアントキリングとは、文字通り奇跡の親戚に過ぎなかったのである。

 

 

 

 

 

 




 それにしてもロボット物は、ファンタジーものとは違った魅力に溢れていますね。
魅惑的な要素ではありますが、描写が非常に難しい。
特にマブラヴオルタは、政治や人物描写も濃密に描かれています。

如何だったでしょうか。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

デハマタ。( ゚∀゚)ゝ
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