Fate/Grand Order ~矛盾残留~ 作:超ローマ人
「おい、トーコ。お前マジで言ってるのかよ?」
「あぁ、リツカくんのためにも部屋を用意したんだもの。それも君と同じアパートでな。」
「はぁ……」
赤いジャージの女はぶっきらぼうに「両義式」と名乗ると藤丸とネロをアパートへ案内する。
藤丸はその態度を笑いつつも式と会話する。
「あんたがその力を手に入れたのはいつからだ?」
「……事故に遭ってからだ。そっちはどーなんだ?」
「…………当ててみろよ」と藤丸は皮肉混じりに言う。
それに対して式は機嫌を損ねて拗ねる。
「ンだよ、それ。ズルいぞ、お前。」
ライバル関係を築き上げたかったが、機嫌を損ねては特異点攻略の障害に成りかねないと思った藤丸は軽く説明した。
「という冗談はやめとくぜ。俺が力を手に入れた切っ掛けは……『怒り』だよ。」
「物騒な話だな、おい」
「端から見たらそうかもな。」
会話していると、アパートのある部屋で足が止まった。
「ほら」
式が鍵を投げ渡し、藤丸が当たり前のように受け取る。
「やっと普通のアパートって感じだ。」
「そうか、さっき聞いた話だと野宿もあったらしいなお前。」
「あぁ、それじゃお休みな」
藤丸はネロと共に同じ部屋に入った。
会話中のマスターの様子を見て花嫁皇帝・ネロは不安がった。何故なら、彼の精神が限界に至っていたのを知っているからだ。
彼は四つ目のロストベルト攻略が終わったあと、倒れたのだ。全てを背負いながら闘った負荷が出始めたのだ。さらには精神的回復も遅く、硝子を割る彼を幾度か見てきた。
「奏者よ……」
「どうした、セイバー?」
藤丸は茶色の髪を揺らしながらネロのほうへ振り返った。
すると、ネロは藤丸を抱き締めた。
「…………」
「辛いのであろう?そうであれば、そう言うがよい。」
藤丸は彼女の真意を理解した。礼を述べ、自身の精神が回復したことを述べたが彼女の不安を拭うことは出来なかった。
「何を我慢しておる!確かに貴様が大聖杯の管理者に呼ばれ、その精神を回復させたのは知っておる!だが!それでもまた荒んでしまう可能性がある貴様のことが心配なのだっ!!」
「……!」
藤丸はネロの眼を見張った。暗闇の中でもその目が潤いを纏いながら光っているのが分かった。
それを見て藤丸は思わず彼女を抱き締め返した。
「ジークのお陰でもう心の傷は癒えた。」
「そこまで、意地を張るならば余がその痛みを一緒に背負おってやる!次にこのようなことあったら貴様を叩いてでもなっ!」
藤丸がネロの言葉に豆鉄砲を撃たれていると呆れながらも可愛がるように彼女は彼の顎を上に傾ける。
「自らの意思で余を裏切らない限り、何度でも貴様を救ってやると言っているのだ、馬鹿者。」
そう言うと、マスターの体に白い薔薇の蔦が巻き付けられる。
「………!はぁ、セイバーには敵わないよ。」
藤丸の髪は茶色に変わり、顔つきも月の勝利者のものとなった。
そして、カルデアのマスターでもあり月の勝利者でもある彼は、薔薇の皇帝を押し倒した。
「……奏者。……もう受け止める準備は出来ておるからな?」
その声に軽い偏頭痛……いや、頭の中で何かが切れる音がした。
茶色の獣は白い薔薇に身体を寄せその密を啜った。薔薇は柔らかい花弁で獣を包み込んだ。その心と体を癒すように。
「おい起きろ、お前ら。って、臭っ。ンだよこのイカみてぇな臭いは……?」
朝になったので式は渋々藤丸の部屋を訪れた。
そして、暫く進んだあとで裸の二人を見て荒ぶった。
「てめぇらぁぁっ!!!」
「むむっ!何事かっ!………あっ」
「何だよ、式。朝から怒鳴ること無いだろう?……あっ」
伽藍の堂に入ると一発目から橙子から笑われた。
「まさか初日からおっぱじめるとは、想像以上におアツいねぇ~」
「ま、魔力供給は大事ですからっ」
「茶番はそこまでにしとけよ?」
藤丸のすっとぼけに対して式が渇を入れると、橙子は煙草を咥えながら二人にいつもとは違った冷たい視線を送った。
「またこのマンションか」
「ったく、まさかオマエと同じ感想を抱くなんてな。」
二人の異能者がマンションに入ると、重い空気が流れた。
肉が腐った臭いと無数の白く濁った光を発する物体が飛び交っていた。
「準備は良いか?カルデアのマスター…?」
「言われなくてもとっくに殺す準備は出来てる。」
「サーヴァントの気配も感じる、気を付けよ。」
死という暗闇から強い光
彼らはその光
罪深き魂を断つ剣や短刀が振るわれ、彼らは崩壊していった。
「トーコが言ってたこと、覚えてるな!?」
「あぁっ!!」
藤丸と式は橙子が言ったことを思い出す。
「マンションにはある魔術が掛けられている。もちろん、術者はその中に潜んでいるから探しだして『再び』殺してくれ。」
そう言うと彼女は二人にチョークを渡した。
そのチョークにはルーンの文字が刻まれており、探知機の役割を担う物だ。
「入り口で落ち合うぞ!」
「分かった!」
「サーヴァントは余に任せて、進め!」
狼と首なし騎士が人を殺すべく鎌をマスターの首にかけようとする。
しかし、白い剣捌きは黒い鎌を食い止め狼の眼を斬りつけた。
「がうぅぅぅっ!!」
「セイバー!魔物たちの相手は任せろ!!」
三人は分かれながら諸悪の根源を探索しに出陣した。