Fate/Grand Order ~矛盾残留~ 作:超ローマ人
赤い影が舞い、浮遊霊はただの風と化した。
「死が───俺の前に立つな」
赤い影は浮遊した怨霊にそう吐き捨てると、短刀で「奴ら」の息の根を締め上げた。
短刀の持ち主の名は両義式──カルデアのマスターと共同しながらある魔のマンションの下の階に諸悪が潜むと睨み探索を行っていた。
「俺の勘が正しければ──「ヤツ」が地獄の底から甦ったか?」
彼女は階段を利用しながら飛び込むように地下の空洞へ侵入すると依頼主・橙子から渡された蝋が反応を示した。
「こんなもん無くても俺には分かったぜ……?」
「なるほど──ここにいるのは、貴様一人だな──?」
空洞に鳴り響くように中年の男の声がした。
「カルデアとやらを狙い、何を企んでる?──まぁ、俺には関係ねぇけど一応は聞いてやる……よっ!」
式は後ろに刃をむける。彼女の後ろには眼が隠れてるように陥没した中年の男が立っていた。男の掌と短刀がぶつかり、分厚い肉を突き刺したのと同じ鈍い音がした。
「てめぇらの親玉はどこだ!?」
茶色に逆立った髪を揺らしながら青年は持ち前の剣を以て魔を断罪した。
「ギェェェェッ!!」
大勢の魔物が赤い噴水を撒き散らし、煙となり消える中、カルデアのマスターである青年=藤丸はマンションの上層を探っていた。
「そろそろ屋上が近い……」
藤丸は屋上に近づくと気配を感じた。
それはまるで底無し沼のように深くかつ赤く汚れた気配──殺気だ。
「──こんばんわ──」
「………!」
目が合うのも束の間、気配を発していた赤い和服を着た女が挨拶してきたのだ。
笑顔のまま──殺意を剥き出しにしながら──
次の瞬間、空間が曲がったのを感じた。
「!!!!」
藤丸は初めて全身の毛が恐怖で逆立った。
後ろを振り向くと、地面が円形に抉れていた。
「凶がれ──」
次に藤丸の右腕が雑巾のように歪んだ。
「ぐっ!!!」
「あらあら……。腕が凶がってしまいましたね。」
「お前は……カルデアのサーヴァント……じゃないみたいだな?」
「私は人間の浅上藤乃ですよ……?」
藤丸は彼女を知っている。王立ビブリア学園で起きた事件の際に駆けつけたサーヴァントと同じ顔をしていたのだ。彼女が言っていることには矛盾が生じる。しかし、矛盾は正しかった。
それに気付いた彼は「やはり」と呟くと、再び女の殺気を感じ取り透明の壁を張った。
壁は花のように開き、七枚に連なっている。
「熾天覆う七つの円環っ!!」
「へぇ、危険を悟ったんですね……?ですが、無意味です。」
七枚の壁はかまいたちに晒された紙のように破れた。
「強いな、だが。お前は気付いていないようだな。」
「……!」
藤丸は負傷したはずの右手を回復させており、両方の腕を横に広げた。
腕から流れるような銀色の鈍い光が発せられ、敵の眼を眩ます。
「シルバーチェーン・パィシゥーバインド!シャインスネーク!!」
鈍く輝く鎖が赤い着物に食い込む。
女は一瞬苦しそうな声を出すが、直ぐに沈黙した。
「追い討ちだ。アナコンダ!!」
さらに一本の太い鎖が女の体を食い始めた。
「サーヴァント、いや。この世界の人間・浅上藤乃──俺の質問に答えてもらうぞ?」
白い女の戦闘衣装を纏いながら闘うセイバー、真名=ネロ・クラウディウスは様々なサーヴァントを相手に闘った。独国に名声を汚された竜の息子、韋駄天に恨みを持ったアマゾネスの女王、人間に番を殺された狼の王。様々なサーヴァントの怨念が彼女の足元を照らす。
「さぁ、次はどこの誰だ!?」
「その声は……第五代ローマ皇帝……ね……?」
黒い鎧を着こみ青い瞳を持った女がネロの前に現れる。
「ブーディカ…なのかっ!?なんだ、その姿は!?」
黒い鎧の女・ブーディカはその目に黒い炎を燃やし、ネロを睨み付ける。
「フフフ……貴女は良いわね……。あの惨劇を見てないからねっ!!!」
以前まで持っていた盾を地に落とすと、それを踏み砕く。それが合図のように、女王は復讐の剣を振るう。
「ブーディカよ……その力は何処で手に入れた!?」
「それを知ったところで何も生まれないわよ、薔薇の皇帝っ!!!」
黒い影が夜空に舞い、純白を赤い雨で染めようとする。
「やりおるっ!」
「目的……か。強いて言うならば、この世界を白く塗り潰すことだな。」
「そうかよっ!そんなことさせねぇけどなっ!」
結界を駆使しながら荒屋は式の攻撃を封じながら後ろへ下がる。
何を企んでいるのか、その結界が破られているのにも関わらず余裕な表情を浮かべる。
そうこうしていると、荒屋は結界を張ることをやめ式の太刀筋をかわした。
壁に短刀が当たると、それは紙のように捲れ闇が覗き込んだ。
「これは……っ」
闇のなかには様々な人間の死体が敷き詰められていた。つまり。
「私のために集った人柱だ。根源に至るためには……あと二人の人間の死体が必要なのだよ。」
「……!」
式の太刀捌きをかわし、後ろへ回った荒屋は裏拳を式の上半身へ叩き込んだ。
「ぐっ!!」
「そして、その二人の人間とは……!普通以上の魔力を持った異能者だっ!!」
藤丸はマンションの真相を浅上から教わり、戦慄した。
放っておけば、一つの滅ぼされるべき世界が増えてしまうからだ。
目の前の女が従う一人の男のエゴによって。
「貴方には、私の復讐を果たすために死んで貰いますね。」
「鎖を凶げられたっ!?」
「──凶がれ」
藤丸は素早い動きでねじ曲げられた空間を避け、隙をついた。
「アワリティアモード!おりゃっ!!」
後頭部を捉えたように見えたが、見えない何かによって鱗状の生体鎧を剥がされた。
「ぐっ!!」
「無駄ですよ?だって今の私は──」
「強いか? 認めよう、だがこれは受け止めれるか!? 」
藤丸は赤い剣を取り出す。
そして、それを振るった。
「アワリティア・ディスメンバーっ!! 」
赤いかまいたちが発生し、女を切り刻もうとその牙を剥いた。
しかし。
「なんですか、それは?」
彼女はそのかまいたちをいとも簡単に打ち消し、藤丸の体をぶっ飛ばした。
「ぐぁっっっ!!!」
彼は紅葉のように落ちていった。
「さようなら、『強い』人」
「ローマは殺すっ!子どもたちのためにもっ!! 」
「余を殺したとて!その子らが戻ると思っているのか!? 」
「うるさいっ!!お前を殺して!!カルデアのマスターにも同じ思いにさせてやるっ!!」
復讐の女王は続けて感情を吐露する。
「あの子たちがいない世界なんてっ! 消えてなくなれぇぇっ!!! 」
「ふざけるでないっ!! 」
白い剣が黒い闇を切り拓こうとする。しかし、白い花嫁は赤い落葉を見た。
「な──」
「カルデアのマスターぁぁっ!! 」
黒い影が紅葉にせまる。
「奏者ぁぁっ!! 」
「……! 」
屋上から舞った落葉となったマスターが意識を取り戻す。
「死ねぇぇっっ!! 」
「俺は死なんっ! 俺は世界を救わなきゃならんらしいからなっ!! 」
黒い剣を白刃取りの要領で受け止め、復讐の女王の腹部を蹴りあげた。
「ぐはっ!!」
「令呪を以て命ずる!!着地を頼む!!セイバーっ!!」
受け身を取れないと判断したマスターはサーヴァントに絶対命令権を発動した。
「うむ、良い判断だ。」
マスターは、サーヴァントに支えられる形で無事に着陸したのだ。
黒い復讐の女王それと対峙するように落下した。
「やるじゃないっ、カルデアのマスター…!」
黒い鎧の腹部は凹み、女王は口から赤い糸を垂らしていた。
「思ったより浅かったか……!」
「あの状況から敵を怯ませただけマシであろう。それより、ブーディカ!余と一騎討ちせよっ!!」
セイバーは白い剣を突き付けるように言った。
「ぐああぁっ!!」
「さぁ、人柱の一部になってもらうぞ。両義式っ!」
結界で四肢を拘束された式の首が、荒屋によって潰されようとしていた。
その時であった。急に当たりから霧が立ち込めたのだ。
「なんだこれはっ!?」
戸惑った荒屋の意識は霧に傾いてしまい、式の拘束が弱まった。
それはほんの一瞬であった……が、両義式は見逃さずにジャケットにしまいこんだナイフを取り出した。
「しまった!」
荒屋は後ろに下がった。式は追撃しようとするが、女の声に静止されてしまった。
「追うな!」
「トーコか!何故介入したっ!?」
「今回の騒動の正体に確証を得たんでね。それに、援護が無かったらどうなっていたことか。」
「トーコは狡いぜ、ったく。それを言われちゃお仕舞いだ。」
悪態をつきながらも感謝を述べる式とともに、橙子はマンションを後にした。
「一騎討ちねぇ……やりたいところだけど、あのお方から撤退命令された。だが、次こそはあの子たちの復讐をっ!!!」
「待てぇっ!」
セイバーが復讐の女王に怒声を浴びせると、連絡が来た。
「藤丸くんとそのサーヴァント。今すぐそこから出てきて。この異変のことは大体わかったから」
「分かりました、橙子さん。行こう、セイバー。万全のセイバーならあのブーディカをいつでも止めることが出来る。」
「……奏者、そのことなのだが。」
「…悪いが、その話は後だ。ここから退却することが先決だ。」
第二話、完
浅上藤乃に破れた藤丸リツカぁっ!そこで橙子はある魔術礼装を藤丸に貸し出すっ!
そして、そんな藤丸が式に貸した魔道具とはぁっ!?
次回、Fate/Grand Orderっ!矛盾残留編!
第三話ぁっ!
「人理は俺が守る。」