Fate/Grand Order ~矛盾残留~ 作:超ローマ人
「やっと出てきたか。」
「すみません、橙子さん。中々に敵が厄介で。」
体を赤く染めた藤丸と白い嫁姿のセイバーがマンションから出る。
「ンだよ、ボロボロじゃねーか。」
「殴打されたうえに首を締められた身で、良く言う。」
赤いジャケットを着た女=両義式に藤丸が生意気に食い付くと、
「それじゃ、戻ろうか。」
と橙子が二人の言い争いを止め、本拠地である伽藍の堂へ戻った。
「なぁ、式。浅上藤乃って知ってるか?」
「あぁ、知ってる。殺し合ったからな。」
「何!?」
伽藍の堂に着くまで式の口から浅上藤乃の過去を藤丸は知らされた。
彼女の一族が異能者の家系であること、一見大人しい性格が原因で様々な痛い目にあったこと。
そして──
「『痛覚残留』──?」
「あぁ、それがヤツの強みでもあり弱点でもある。腹を抑えてなかったか?」
「──そう言えばっ!」
藤丸は思い出した。浅上藤乃と対峙したとき、彼女が腹を抑えながら能力で空間を凶げていたことを。
そして、藤丸は屋上における戦闘を式に話した。
「なるほど、アイツは以前より手強くなってるんだな?」
「あぁ。そっちはどうよ?」
「……俺が対峙した荒屋って男も以前より手強くなっていた。」
藤丸は荒屋の計画を式の口から知った。そして、一つの結論にたどり着いた。
「………人柱の大半が一般人だとしても、それだけで世界を壊す魔力を産み出せるだろうか?」
「マンションに張られた魔術刻印……いや、魔法陣は只の物じゃないな?」
藤丸の首に下げられている魔導書=アークミネルバが、マンションの解析結果を話す。
「あそこからは、人柱を築いただけでは生まれない気配がした。しかも、魔力の質からして男のもの……なのだが。」
「だが、なんだ?アークさん。」
「異聞帯のマスターたちが使うものも混じってる。」
アークミネルバの言葉を最後に、藤丸は両義式がいる特異点を修正する決意を拳で握った。
「クリプター……やはり奴等は殺すしかないな。」
藤丸は部屋の窓を見ながら呟いた。
「奏者よ。少し良いか?」
藤丸が唯一連れているセイバーのサーヴァント・ネロが彼を呼びつける。
「……で、なんだ?」
「余は過去の贖罪をしなければならない……。そう、あれは─」
セイバーは生前に起きた事件を話した。
ブリテンにある女王がいた。女王には娘がいた。しかし、ローマに攻められたブリテンは陥落。女王の目の前で娘たちは純潔と命を奪われた。
女王の目に黒い炎が宿った。ローマの女たちを殺して回ったのだ。ローマ兵にもその炎が移ったが、当時の皇帝がこれを止めた。
「───」
「余はその女王に会ってしまった──奴はローマに恨みを抱いている。責任は余にある。」
藤丸はセイバーの言葉に口を挟む。
「確かに、ローマは悪いことをしたかもしれない──けど。セイバーのせいではない。」
「────」
セイバーは蹲る。
「あの女王の復讐心に触れたから言えるが、アイツは"ちっぽけ"だ。人間としての尊厳と才能を捨てた女だ。けどな、セイバー。君は一人の女としても戦士としても上だ。」
「うぅっ」
セイバーがすすり泣く音が聞こえるが、藤丸は茶色の髪を靡かせながら続ける。
「あとは、あの女王に心を惑わされないことだ。───俺は君を信じるよ。セイバー。」
言い切ったタイミングでセイバーはマスターに飛び付く。
「奏者ぁ~っ!」
「あぁ、やはり辛かったんだね。」
「起きろ、お前ら……。ったく、またかよ。」
「悪いな、今回は直ぐに出られる。」
「来るのを待っておったぞ!」
藤丸とセイバーは瞬時に服を空気を纏うように着込む。
「魔力を無駄遣いしていいのか?」
「あぁ、俺にはアレがあるからな。あと、式。コレを貸す。」
「あ?ンだコレ?こんな刃であの男を斬れると思ってるのか?」
藤丸は不服そうな式に剣の説明をした。
それは人を斬るための物では無い──と。
「申し訳ございません、ラスプーチン様。」
マンションの地下ホールにて、荒屋は神父に対して膝を着き頭を垂れていた。
「あのカルデアの男を撃退しただけでも誉めてやろう。それに、あの魔瞳持ちにも勝ってはいるからな。次こそは仕留めろ。全ては異星のために。」
漆黒の神父服を着こんだ男が祈りの印を結びながらその場を去る。
「えぇ──あの首を捻り切りたいです。」
「ローマぁ……ローマぁ……っ!殺すっ!!」
マンション内に黒い叫びが轟く。
マンションの上空は月も見えないほどの暗雲が立ち込め、霧が濃くなった。
「うわぁ、気持ち悪いぐらいの魔力を感じる……」
「その本が言うってことは、相当だな。肌でも嫌というほど分かるが。」
「『本』じゃない、アークミネルバだっ!」
「まぁ、焦らずに行くぞ。分担場所は前回と同じだ。」
藤丸は黒い学生服を着こなし、式は白い着物を着込んでいる。
ネロは純白の花嫁姿のままだが、表情はいつも以上に凛としていた。
「マスター、出陣はいつでも良いぞ。」
「……あぁっ、行こうか。」
三人は足並みを揃えてマンションに入り、散った。