Fate/Grand Order ~矛盾残留~ 作:超ローマ人
「おや?今回は早いですね?」
「浅上藤乃……俺はアンタを止める!」
「『止める』……?フフフ……アハハハハ!私より弱い貴方がそんなこと………っ!」
カルデアのマスター・藤丸と対峙する浅上藤乃の首筋に赤い牙が向けられた。
最初はあった両者の間の距離は一気に詰められていたのだ。
彼女はしゃがんだ状態から前転に転じて回避したが、顔に汗が滴った。
「……どうした?余裕無さそうだな?」
「………っ!」
彼女は漸く気が付いた。自身が眠れる獅子を起こしてしまったことを。
しかし、後には引き下がれない。彼女は追い詰められたのだ。
女の牙はマスターに向けられた。
「やめろ……やめろやめろやめろぉぉっ!!凶がれぇぇぇっ!!!」
「力が強くなってるっ!マスター!蒼崎橙子から渡されたアレを使えっ!!」
藤丸はアークミネルバの指示に従うようにあるものを装着した。
「ほら、コレはトーコからだ。」
「コレが噂の魔眼殺しの眼鏡!?」
「トーコ曰く、至急で造ったから耐久性は高くない。」
「あぁ、分かったよ……両義式。」
藤丸は眼鏡をかけた状態で前進する。
赤と緑の螺旋が見える。それは綺麗な女の牙そのものだった。
浅上の能力を眼鏡を通して分かったのだ。
「なら、さらにあの技に回転を加える……!ブラッディムーン!赤邪龍の──」
追い詰められ、最後の報復に執着してる獣と幻獣の狩人が対峙する。
両者はそれぞれの射程圏内に入る。
「凶・が・れ~~~っ!!!」
「飛翔!!!」
女の螺旋は赤い竜巻によって閉ざされた。
「あっ……」
「柳生流・峰打ち」
女は斬られた痛みを全く感じないまま、眠りに着いた。
「よぉ、荒耶宗蓮。」
「その衣装や刀も懐かしいな、両義式。だが、貴様の刀の太刀捌きはもう割れているっ!」
自身に満ち溢れた男の顔が迫る。日本刀を構える式だが、構えた腕を封じられた。
男の手が首に迫るそのとき、四肢を封じた魔術結界が破れた。
「!!!」
日本刀が男の首を捉えるが、流石に危険を感じた身体は前進を拒んだ。
男の心に焦りが生じた。
「なんだと……!?」
「まさかアレが役に立つなんてな……。」
~~
「コレを使え、式。」
「あのな、こんな得物でアイツを斬れると思ってんのか?」
「いや、違う。コレは魔術を斬るものだ。」
カルデアのマスター・藤丸は短い刃に螺旋が浮かびあがった剣を式に渡した。
~~
「トリックは分からないが、異星の加護を授かった魔術を喰らえっ!!」
巨大な結界を造り、式を圧死させようと目論むが体と口が動かない。
白い鎖が荒耶の体を縛り上げたのだ。
「生きているのなら──神様だって殺して見せる。」
彼は世界が落ちていくのを感じながら死された。
花嫁姿のセイバーがマンションの中段にまで登ると、すすり泣き声が聞こえた。
「ごめんね…ごめんねぇ、お母さん守れなくて……今からあなたたちの無念晴らしに行くからね……?」
「……猿芝居は詰まらぬ。闘え、復讐の女王よ。仇敵はここにいるぞ?」
すすり泣く女は顔を赤い涙で染めながら、皇帝を睨み付けた。
その目は虚を描いていたが、体の動きは機敏で不気味さを白い花嫁姿のセイバーは感じた。
「ローマ……ぁっ!」
「来い!ブリテン!」
黒い剣と白い剣がぶつかり合う。
どちらも素早い剣捌きでその軌跡すら見えない。
「ローマぁぁっ!!!殺すっ!!!」
「悲しき女……いや獣よ。貴様に守りたいものはあるか?」
黒い鎧を着込んだ女王は狂った獣のように唸るだけで、返事をしない。
白い皇帝は一つの花を投げる。
「開け、黄金の劇場よっ!」
黄金劇場、それはセイバーを有利にする戦場-フィールド-。
「うわぁぁぁぁっ!!!」
「黒い剣に魔力を乗せたか。それも怨念のものを。」
黒い一閃と炎の一閃がぶつかり合う。
「星馳せる終幕の薔薇<ファクス・カエレスティス>!!!」
炎の一閃が女王を貫いたとき、彼女の脳裏には在りし日が浮かび上がった。
「やっと……あの娘たちの元に……」
淡い炎は憎しみのみを消し去り、女王の顔には慈愛の笑顔が戻った。
憎しみを消された復讐者は光となって消えた。
「残りの怨霊たちも駆除した。これでこの特異点は救われたも当然だ。」
浅上を背中に抱えた藤丸が自身の所属する魔術機関=カルデアに連絡を完了させる。
「橙子さん、式。もう終わった。浅上藤乃をそちらに預けしだい、ここを去る。」
「そうか…寂しくなるねぇ。」
タバコを吸いながら伽藍の堂の主である蒼崎橙子が言う。
「そうだ、コレはお返しします。」
「あぁ。」
そうしていると、式が藤丸に白い剣=シルバームーンを差し出した。
「これで貸し借り無くなったな。」
「役に立ったようで何よりだ。」
「うむ!では去ろうぞ、マスター。」
「少し待て。藤丸、拳を突き出せ。」
藤丸と式の両者の拳が合わさる。
「言っておくが、お前を認めたわけじゃねー。ただ、貸しを作ってやりたいだけだ。」
「分かってたさ、そんなこと。」
そう言うと、藤丸とセイバーは光となって消えた。
「気分は晴れたか?」
「お互いさまだ。まだ色々と残っているがね。」
二人の仕事人は光を見届け、その場を去った。
完