悪役令嬢「わたくしを断罪ですって!?受けて立ちますわ、闇のゲームで!」 作:sesamer
お願い作者!あんたがここでエタれば、頭の中の設定はどうなっちゃうの?
前書いていた小説でも同じ過ちをしてるなら、解決策を用意してるはず!
今回、「キングクリムゾン」 学園編突入っ!
ホルアクティ神聖決闘学園とは、貴族や王族に必要な知識や文化、魔法、そしてデュエルを学ぶ学校である。そして今、その学園の入学生として新たな生徒が集まっていた。
「うわぁ、ここが決闘学園かぁ。お城みたいに大きい...」
大抵の生徒が使用人と思わしき人を連れていたり同年代と話をしていたりする中、黒髪の少女は学園の大きさに圧倒されていた。
「(うう、緊張するな...お城にいた人達は見送ってくれなかったし、ひとりぼっちなのは私だけかぁ。まあ仕方ないか、勇者として召喚されたのに全く能力が無いんだから)」
少女はこの世界に召喚されてからの数日間を思い出す。それは普通の少女にとってはあまりにも非現実的な現象の連続であり、少女から笑顔を奪っていた。
「(学校に行く途中にトラックに撥ねられたと思ったら、突然神様に勇者として転生しなさいって言われて、しかもその世界はカードゲームの世界で、前任の勇者の人達からカードを貰って転生したと思ったら...)」
そこで黒髪の少女である優華は、貰ったカードを取り出して眺めながらその光景を思い出していた。
「(王様らしき人から決闘?を申し込まれて、ルールを知らないって言ったら凄い驚かれて、カードを見せたら露骨に残念がったんだよね...)」
こんなに可愛いのに、と呟きながらトボトボと歩いていた優華は前方にいた人の肩とぶつかる。大切なカードを落とすことはなかったが、その代わりに思い切り尻餅をついた彼女はぶつかった人の方を見る。
「あら、お怪我はありませんこと?」
その少女は雪を思わせる白い髪を背中に流し、髪色と同じような白い肌に青い瞳を持った美しい少女だった。
どう見ても高貴な女性にぶつかった優華は、慌てて立ち上がりながら頭を繰り返し下げる。
「す、すいません!前を見てませんでした!」
「こちらは怪我してませんし謝る必要はありませんわ。そちらも大丈夫ですか?」
「あっ、はい!全然平気です!」
優華は目の前の少女が親切だったことに大層安堵していると、その隣から彼女の使用人らしき女の子が現れる。
「お嬢様、お願いですから1人で出歩かないでください。ボディガードも解雇した今、お嬢様に万が一のことがあったら...」
「まあまあ、ここは神聖なる学園よ。アマネが必要な場面なんてないって、あの時言ったじゃない」
「それはそうですが...その方は?」
現実では会ったことのなかった本場のメイドに対し、優華は背筋を伸ばして興奮気味に自己紹介する。
「私の名前は城西優華です!えーと...」
「貴方が勇者様なのでしょう?噂になっていますわ、今年の入学生には勇者様がいらっしゃると」
「この人があの勇者様なのですか?」
主人の方の言う噂とメイドの、あのという言葉から、優華は自身の痴態が多くの人に知れ渡ってることに気づいた。思わず恥ずかしくなって背が縮こまる。
「わたくしの名前はエリザベス・ローゼス。こちらはメイドのルチアですわ」
「どうぞお見知り置きを」
「は、はいぃぃ」
メイドの上品なお辞儀に対して優華はペコペコと頭を下げながら2人から離れた。2人の放つ雰囲気に完全に呑まれていた。
優華が去った後、ルチアはエリザベスに問いかける。それは以前からエリザベスが優華のことを高く評価していたからであった。
「お嬢様、やはり優華様は勇者としては相応しくないのでは?とても強そうに見えませんし、持ってるカードも弱いカードばかりって聞きましたよ」
「まあ今は分かりませんわね。彼女自身も召喚されたばかりで混乱してるんでしょう」
エリザベスは優華の方を見ながら答える。しかしその青い瞳は相変わらず何の感情も映していなかった。
「(ゲームスタート時点での優華の持つカードは確かに強くない。ですが転生の段取りで神様からある程度のカードは貰えるはず...優華が初心者なら強いカードを渡してると思ったのだけれど...)」
そう考えている内に新入生を歓迎する式典の準備は整い、生徒達は校舎の大きさに負けず劣らずなホールへと足を運んでいく。
ーーー
入学式では校長先生や生徒会長らしき上級生が壇上で話すのをエリザベスの隣で聞く中、ルチアは見知った顔がこちらを見ていることに気づいた。
「(あれ、リューキ様ではないですか?)」
そこには先生用の制服を着た青白い髪の男がいた。髪は短くなっているものの顔立ちからルチアは彼が以前、レベッカ達が誘拐された時エリザベスと決闘をしたリューキであると分かった。
「(リューキ様にはこの学園の先生をなることを薦めたの。彼のデュエルタクティクスは凄いし、魔法も知ってたからここの卒業生だと思ってね)」
「(...お嬢様。もしやまたなんか圧力かけたりしたのですか?)」
ルチアが鋭い視線でエリザベスに問い正す。それに対して彼女は視線を壇上から明後日の方角へ向けて弁明する。
「(いや、まあアレイシス様にちょっと、ね)」
「(ね、じゃないですよ!通りでアレイシス様からの視線を感じると思ったら!)」
「(結局アレイシス様は自身の派閥を増やせたからいいのいいの)」
「(...ただでさえお嬢様はアマギさんの代わりに沢山の貴族からカードを取り返して、各方面から恨みを買ってるんですよ。そんなことばっかりしてたら、いつか破滅しますからね!)」
ルチアの破滅という言葉がエリザベスに刺さる。いよいよ原作が始まったと思っていたエリザベスにとってはクリティカルヒットだった。
「(確かにアマギに義賊を辞めさせて使用人にした見返りはかなり大変だったわ...その分平民からは支持されるようになったから、悪役令嬢みたいに断罪される可能性は低くなったけどね)」
この数年間の間エリザベスは義賊エゴに代わって、貴族や商人が平民から不当に買い取ったカード達を取り戻していた。勿論盗みなどではなく、交渉や公正な取り引きによるものだったが、彼女との取り引きという存在自体が彼らの名誉を毀損していたことは否定できなかった。
「(まあ学園内で考えれば、既に2人も仲間を作ったわけだからへーきへーき)」
エリザベスの楽観的な性格は、この数年間での改善はあまり見られなかった。
ーーー
式典も各人の挨拶も終わり、立食パーティーが始まる。因みにここは社交界と違い決闘は禁止である。
エリザベスとルチアはルークをはじめとした各方面に挨拶に行く。それぞれの立場もあって挨拶は短いものとなったが、それがひと段落した段階で男性に呼びかけられる。
「エリザベス様、歓迎式は如何でしたか?」
「貴方は生徒会長の...ブルーム様でしたわね。こんな格式高い学園に入学出来て大変感激ですわ」
「それは此方も同じ気持ちです。ルーク様の許嫁である貴方のご活躍は耳にしております。平民出身の私としては、貴方のような方が学園の生徒であることに誇りを持ちますよ」
「いえいえ、わたくしはそんな大それた人間ではありませんわ。ブルーム様は人をその気にさせるのがお上手ですわね」
「ふふ、その気になったのなら、我が生徒会に入ってみる気はありませんか?貴方の様な人なら反対する生徒もいないでしょう」
「生徒会ですか...」
エリザベスは頬に手を当てながら暫く考え、その誘いを丁重に断る。
「本当に残念ですが、学園にも不慣れな状況で生徒会という職務に就いても、わたくしは皆さんに迷惑をかけるだけですわ。学園生活に慣れてからその誘いは下さいませ」
「確かにそうです、貴方からすれば迷惑でしたね」
「...生徒会ならば、今年は勇者様はどうでしょうか?」
おずおずとエリザベスが提案した内容に、ブルームは表情を変える。それはあまり優華に対して良い感情を抱いてないことは明白だった。
「勇者様ですか...確かに箔はありますが、彼女にはその技能があるかは分かりませんからね」
ブルームは視線を優華の方へと向ける。そこには周囲から孤立して、1人で食事を進める少女の姿があった。
「(確かに序盤の優華様には味方はいない...けど確か攻略対象であるブルームは最初から彼女を生徒会に勧誘しようとはしていたはずだった。一体何が起こってるんだ...)」
結局エリザベスは優華に話しかけることが出来ず、パーティーは終わってしまった。
ーーー
そして次の日から授業が始まった。エリザベスにとっては既に学習済みなことも多かったが、隣のルチアにとってはそうでなかったため教えることがあったし、リューキが普通に教えるのが上手いなど面白いこともあったため、授業は退屈しなさそうだった。
授業の最後は実践的決闘の授業だった。ヘイロウという名前の先生が決闘のルールを簡易的に説明する。そして試しに生徒にやってみる様に命じた。
「そうですね...ではやりたい方はいらっしゃいますか?」
「...それなら、勇者様がいいんじゃない?」
「えっ?」
挙手する人はいなかったが、周りから優華を推薦する声が上がる。同調する声を聞きながらエリザベスは頷く。
「(確かこれがチュートリアルなのよね。ここで優華様が選んだキャラとデュエルするのだわ!ワクワクしちゃう!)」
「えっと、私カードは持ってますけど、デッキが無くて...」
「おや、それならレンタルデッキがあるので大丈夫ですよ。勇者様は決闘は初めてのようですし、簡単なデッキにしましょうか」
「あ、ありがとうございます...」
「それで、誰と対戦したいですか?」
優華は周囲を見ながら対戦相手を選ぼうとする。自分を見る殆どの生徒が興味や軽視の目をしている中、やけにニコニコしている人と目が合う。
「あっ、じゃあエリザベスさんで」
「わたくし?」
「はい、お願いします」
「(チュートリアルの相手にわたくしって選べたっけ?まあいいか!)いいですわよ!」
「...よりによってエリザベス様に勝負を挑むなんて...」
「ルーク様と同じ実力だっていうのに...」
「勝てるわけないわね...」
周囲がざわめく中、2人は壇上へと上がる。優華はエリザベスと話しながら決闘の準備をする。
「えーっと、宜しくお願いします!」
「こちらこそ、宜しくお願いしますわ(折角だしあのデッキを使おうかしら)」
「あの、レンタルデッキに自分のカード入れていいんですかね?」
「スリーブは無いわけだから、後で回収するなら大丈夫じゃない?」
「(スリーブ...?)ありがとうございます」
「そんなにそのカード達に思い入れがあるのかしら?」
「...それもあるんですが、貰う時にラッキーカードだって言われて、普段から使ってた方がいいのかなって...」
「(ラッキーカード...まさか...)」
「準備は出来たか?」
「「はい」」
2人の準備完了を確認すると、ヘイロウは決闘空間を展開する。そしてランダムによって先攻がエリザベスに決まると、決闘が始まる。
「「決闘!!」」
エリザベス LP 4000
優華 LP 4000
<ターン1>
「わたくしのターンですわ!」
エリザベスは手札を確認する。そしてその動きは止まった。
手札
カゲトカゲ(通常召喚できない)
スクラップ・ゴーレム(レベル5)
スクラップ・オルトロス(通常召喚できない)
スクラップ・オイルゾーン
エンペラーオーダー
「・・・」
「(事故ったぁぁああ!ピン挿しのゴーレムが来やがったあああ!)」
エリザベスは外から見れば優雅に手札を見て微笑んでいたが、その内心では頭を抱えて叫んでいた。
「(そうだった!今まで事故なんて無縁だったから忘れてたけど、優華様とのデュエルは加護が働かないじゃん!)」
「(やべぇよやべぇよ...絶対引かないから1枚でいいやって入れてたゴーレム引いたわ...ファクトリーで出せねぇ...)」
エリザベスはそれはもうゆっくりと動き出した。周囲が固唾を飲んで見守る中、彼女は手札を1枚場に持っていき、
「わたくしはカードを1枚伏せてターンエンドですわ」
ルチアがずっこけた。皆の顔にはそれだけ?という言葉がありありと浮かんでいた。
「(くっ、こんな時新規カードのスクラップ・ラプターがあったら...!カゲトカゲと合わせて増えた召喚権でゴーレムをアドバンス召喚出来るのに!更にサーチしたファクトリーをオルトロスで起動することでぶん回せるのに!!)」
クソ強新規カードのスクラップ・ラプターは1月16日発売のパック「LIGHTNING OVERDRIVE」に収録されているぞ!スクラップ使いの皆!買おうね!(宣伝フェイズ)
<ターン2>
「私のターンですね、ドローします!」
優華は自分の手札を確認すると、ゆっくりと動き出す。
「1ターンに1回しか召喚はできないから...えーと、メインフェイズまで入ります。そして聖杯に選ばれし者を通常召喚します!」
出てきたのは機械の残骸を鎧として武装化した、剣と盾を持つ少年だった。少年は剣を構えるとその剣からは仄かに光が走った。
ーーー
星杯に選ばれし者
攻撃力1600のバニラモンスターですわ!「星杯」のリンクモンスター、星杯剣士アウラムと同一人物なのだわ!
この後酷い目に遭うんだよね...強く生きて...(なお)
ーーー
「更に手札から装備魔法、ガーディアンの力を発動します!」
少年の周囲に様々な武器が浮かぶ。破壊に特化した大剣や、双剣、斧、ロッド等が少年を囲み、その力によって彼の剣の光が明るくなる。
ーーー
ガーディアンの力
デュエルリンクスをしてる方はご存知ですわね!
装備モンスターが攻撃するたびに魔力カウンターを置き、その数×500ポイントの攻撃力上昇と、カウンターの数だけ破壊を置換しますわ!
単純に打点以外にも戦闘と効果への耐性付与、魔力カウンターデッキとのシナジーを目的としても採用できますわね!
なんで「ガーディアン」なんですか...?
ーーー
「バトルフェイズです!選ばれし者でプレイヤーにダイレクトアタックします!」
少年が光る剣を掲げると、周囲の武器が光りはじめる。その光に呼応するように剣の光も強くなっていき、少年が振り下ろすとその光はエリザベスを襲う。
「ガーディアンの力の効果により、選ばれし者の攻撃力は500アップします!」
「くっ!」
エリザベス LP 4000 → LP 1900
「カードを2枚伏せてターンエンドです!」
<ターン3>
「...わたくしのターン、ドロー!!!」
エリザベスは気迫を込めてドローする。ここ最近の中でもかなり気合の入ったドローは、なんとかエリザベスに希望を繋いだ。
「(よしっ!最善でなくとも最悪ではない!)」
「メインフェイズに入ってスクラップ・シャークを通常召喚!そして召喚時に手札のカゲトカゲの効果を発動し、それにチェーンしてエンペラーオーダーの効果発動!」
エリザベスはエンペラーオーダーによってカゲトカゲの効果を無効にし、1枚ドローした。
ーーー
カゲトカゲ
レベル4モンスターの通常召喚に反応して特殊召喚できるレベル4のモンスターよ!
シンクロ召喚に使えないからスクラップではその力を活かし切ることは出来ないけど、エクシーズやエンペラーオーダーとのコンボでドロー加速が出来るわ!
エンペラーオーダー
お互いのモンスターの召喚時に効果が発動した時、その効果を無効にして、無効にしたモンスターのコントローラーは1枚ドローできる永続罠ね!
単純に妨害としての役割よりも、コンボによってドロー加速を狙うのが一般的な使い方よ!
スクラップには強烈な召喚時効果を持ったモンスターがいるから、そのゴリラ用のカードね!
ーーー
「この効果の処理後、スクラップ・シャークは自壊する!そして破壊時の効果によりスクラップ・サーチャーを墓地に送る!」
「あれ?折角出てきたモンスターが死んじゃった...?」
ーーー
スクラップ・シャーク
カードの発動を条件に自壊してしまう。攻撃力2100のデメリットアタッカーよ!
スクラップによって破壊された時にはスクラップを墓地に送れるから、召喚権を使うおろかな埋葬とも言えるわね!
ーーー
「手札から永続魔法、スクラップ・オイルゾーンを発動!墓地のシャークを無効にして蘇生する!」
破壊されたシャークがフィールドに戻る。効果が無効にされたことで自壊しなくなったのは明らかに強化なのにシャークは何故か悲しんでいた。
「手札のスクラップ・オルトロスを特殊召喚し、効果発動!シャークを破壊する!そしてシャークの効果でスクラップ・ゴブリンを墓地に送り、それにチェーンして墓地のサーチャーの効果を発動、サーチャーを蘇生する!」
オルトロスがシャークの隣に立つと、オルトロスはそれを破壊する。破壊されていくそれは何故か嬉しそうにしていた。
「何が起こってるの?」
優華はエリザベスの手札、フィールド、墓地を行ったり来たりするモンスターを見て困惑する。自分の場のモンスターと同じ攻撃力のシャークが消えて、それより攻撃力の低いモンスターしか残らなかったのも不思議だった。
「オルトロスはチューナーモンスター、チューナーモンスターとそれ以外のモンスターを素材にすることで、その合計のレベルのシンクロモンスターをエクストラデッキから召喚出来ます。これをシンクロ召喚といいますの」
「シンクロ召喚...」
優華は自身のエクストラデッキを見る。そこには1枚だけ貰ったカードがあった。恐らくこれにも召喚条件があるのだろうと推測する。
「レベル4のオルトロスにレベル1のサーチャーをチューニング!壁になれ、転生竜サンサーラさん!」
(スクラップの皆さんと一緒だとワイの強さも引き立つで!)
「(今回はその守備2600がマジで絶妙でしたわね)」
「(...モンスターが喋った!?)」
ーーー
転生竜サンサーラ
相手によって墓地に送られた時に自身以外の墓地のモンスターを蘇生するシンクロモンスターよ!
相手依存だけど、死者蘇生と同じ効果を持ってるから弱くはないわ!
輪廻竜との関係は不明よ!
ーーー
「わたくしはこれでターンエンドよ、選ばれし者がガーディアンの力によって攻撃力を上げても2600!サンサーラは越えられないわ!」
<ターン4>
「私のターン、ドローします!」
優華はドローしたカードを見ると、表情を明るくしてそのまま発動する。
「やったっ!魔法カード、地砕きを発動します!」
「その前にメインフェイズに入ってね」
「あっそうでした。メインフェイズに入って地砕きを発動します。相手のモンスターを破壊!」
サンサーラの真下の地面が割れ始め、その地割れは竜を飲み込む巨大な大穴と化す。
(ワイっていつもこんなんやんけ!)
「(まあサンサーラさんのお仕事は死んだ後だし...)」
「(やっぱりあのモンスターとエリザベス様喋ってるよね...)」
サンサーラは破壊されると、その遺体が光る。その光は死者蘇生を象徴するアンクのマークを放つと、そこには機械屑によってできた小さな小鬼が現れた。
「サンサーラの効果発動!墓地のスクラップ・ゴブリンを蘇生!」
「ですがゴブリンの守備力は500!私は星杯に誘われし者を通常召喚します!」
全身を覆うマントを羽織った青年が現れる。その手には大きな槍が握られていた。
ーーー
星杯に誘われし者
攻撃力1800のバニラモンスターね!星杯戦士ニンギルスとは同一人物よ!
ニンギルスのカード群はそれぞれのカードパワーが滅茶苦茶高いだけでなく、設定的にも滅茶苦茶(無駄に)強いわ!
無強化の段階で星の侵略者を普通に追い払うし、敵の軍団を全員引き受けて「ここは俺に任せて先に行け!」した後普通に生還するわ。強いシスコンは遊戯王の伝統ね!
ーーー
「バトルフェイズ!誘われし者でゴブリンを攻撃!」
「無駄よ!ゴブリンは戦闘では破壊されない!」
「くっ!ならば選ばれし者も攻撃してカウンターを貯めます!」
アウラムとニンギルスが攻撃するも、ゴブリンには傷一つつかなかった。いや、そもそも傷だらけなその身体には2人の攻撃によって出来た傷かも分からなかった。
「バトルフェイズ終了時、ゴブリンは自壊します!そして破壊時のゴブリンの効果でシャークを手札に加え、それにチェーンしてサーチャーの効果により自己蘇生!」
相手の場に残ったモンスターを見て優華は悔しがるものの、現状突破する手段は無い。
「このまま私はターンエンドです...!」
<ターン5>
「わたくしのターン、ドローですわ!」
「サーチャーをリリースしてスクラップ・ゴーレムをアドバンス召喚!そしてゴーレムの効果発動!墓地のオルトロスを蘇生!」
「チューナーモンスター...!」
「レベル4のオルトロスに、レベル5のゴーレムをチューニング!集いし機械の屑達が双頭の龍へと再生する!シンクロ召喚!スクラップ・ツイン・ドラゴン!」
バラバラになった機械屑達が組み合わさって積み上がっていく。その形は龍となり、二頭を持つ巨大な龍となった。
ーーー
スクラップ・ツイン・ドラゴン
自身の場のカードを破壊して相手の場のカードを2枚手札に戻す、スクラップドラゴンの進化系よ!
単純に1:2交換なだけでなく、破壊耐性を無効化でき、更に攻撃力3000はファクトリーの上昇も合わせて3200にもなるわ!
ここで進化を止めていればあんなカードは生まれなかった...
ーーー
「ツインドラゴンの効果発動!場のエンペラーオーダーを破壊し、選ばれし者と左の伏せカードを手札に戻す!」
「ガーディアンの力を無視出来るんですか!ならばチェーンして突撃司令を発動!誘われし者をリリースしてツインドラゴンを破壊します!」
破壊の力を放たれたアウラムの前にニンギルスが立つと、彼は双龍に向かって立ち向かう。その槍で一閃すると、機械によって出来た龍はバラバラになる。しかしその龍の破片は集まり、一つのモンスターの形をとる。
「ツインドラゴンの破壊時効果発動!墓地のゴーレムを蘇生させる!更にサーチャーも自己蘇生!」
「そんなっ!」
優華がモンスターを破壊したはずなのに、逆にエリザベスのモンスターは増えていく。
「ゴーレムの効果でオルトロスを蘇生し、バトルフェイズ!」
「(ゴーレムの攻撃力は2300、1700のオルトロスで丁度4000だ!)」
「まずはオルトロスでプレイヤーにダイレクトアタック!」
「きゃあああ!」
優華 LP 4000 → LP 2300
「(伏せは攻撃反応でもない?)ならばゴーレムでダイレクトアタック!」
「ッ!」
ゴーレムの攻撃が優華に命中し、辺りに爆風を起こす。周囲が勝負が着いたと思っている中、エリザベスの隣にサンサーラが現れる。
(いやー、今回はワイの大活躍回ですなあ!優秀な効果を持つレベル5シンクロモンスターということで、価格高騰待った無しですわ!)
「(ライバルにはカタストルとチャンバライダー、アクセルシンクロンだから貴方の高騰は多分無いわね...)」
(そんなあー)
「(それに優華様の言っていたラッキーカード...あのカードなら...!)」
爆風が晴れるとそこには1人しか予想していなかった光景があった。
「わたしは手札からクリボーの効果を発動していました!その効果でゴーレムの攻撃のダメージを0に!」
「(クリクリー!)」
「なんだ?勇者様生きてるぞ」
「それにしてもクリボーって言ったら、超がつくほどの弱小モンスターじゃない!」
「エリザベス様の攻撃を凌いだのは凄いですが、あんなカードを持っていてはお里が知れるというものね!」
口々に他の生徒が優華のカードを悪く言う。その光景を見ながら、エリザベスは漸く今までの優華の扱いに納得がいった。
「(ラッキーカードにクリボー、優華様にカードをくれた人物はあの方だ!そして、受け取ったカードがクリボーだったから皆に侮られているんだ!)」
「優華様、そのカードはもしや先代の勇者様から貰ったのでは?」
「え、はい。その通りです」
エリザベスの発言に周囲は疑問符を浮かべる。彼等のイメージする伝説の勇者の持つカードとして相応しくなかったからだった。
「あんな雑魚カードがですか?」
「流石にエリザベス様の言うことでも、それは信じられないわね...」
エリザベスは納得のいかない皆と状況のよく分かっていない優華に対して、説得力を持たせる為に説明する。
「初代伝説の勇者様は奇抜な髪を持ち、魔術師のカードを使って魔を払ったと言われていますわ!しかしわたくしは何処かの文献で、クリボーを使っていたという記述を見たことがありますわ!(今考えた設定)」
「確かに、あの人は星みたいな形の髪型だった!」
「勇者様には奇特な髪型を持つ人が多いけど...」
「星型と言ったら、初代様しかいませんわ」
「じゃあエリザベス様の言ってることは本当ってこと?」
周囲が納得していく中、エリザベスは優華からの疑問にも答える。
「じゃあ、初代勇者様の隣に5人いたのは?」
「恐らく代々の勇者様の方々ね!召喚という劇的な状況の変化に微塵も戸惑わなかった二代目様、絆の力を重んじたと言われる三代目様、変な言葉を残した四代目様、決闘で皆を笑顔に変えた五代目様、不思議な子分を連れた六代目様ね!」
「ということは勇者様は歴代の勇者様にお会いしたということか!?」
「それってとんでもないことですわ!」
「うん...それに全員から1枚ずつカードも貰った...」
全員の優華を見る目が勇者として懐疑的だったものが羨望や尊敬の眼差しに変わっていくのを見て、エリザベスは自身の説得が上手くいったことを確信する。
「ですが折角勇者様からカードを頂いても、それを活かせなければ宝の持ち腐れですわ!ダメージを回避したのは認めますが、それだけじゃあわたくしに勝てません!メイン2でシンクロ召喚、再臨せよ!ツインドラゴン!」
「ツインドラゴンの効果は身にしみて覚えていますわね!破壊するだけじゃあわたくしに勝つことは出来ませんわ!ターンエンド!」
再びツインドラゴンが現れる。自身を苦しめたモンスターがもう一度出てきたのに優華の顔は明るかった。
「(毎ターン2枚除去しつつ破壊されても復活するモンスター...確かに状況は悪いかもしれない)」
「(けど、召喚されてから今が1番嬉しい気持ちになってる!それは決闘が楽しいのもあるし、皆が褒めてくれたのもあるかもしれない!)」
「(だけど1番は...初めて私のことを勇者様以外の名前で呼んでくれた!)」
<ターン6>
「私のターン、ドロー!」
優華はドローしたカードを見て、エリザベスの言ったことを思い出す。
「(破壊以外の方法...これなら!)」
「メインフェイズに入って魔法カード、悪魔への貢物を発動!ツインドラゴンを墓地に送り、手札から選ばれし者を特殊召喚!」
「墓地送りならツインドラゴンの効果は使えない...!」
「更に星杯を戴く巫女を通常召喚!そして選ばれし者に団結の力を装備します!」
アウラムの隣にイヴが降臨する。彼女が祈りを込めるとアウラムの剣が輝きを放つ。
ーーー
星杯を戴く巫女
守備力2100のバニラモンスターね!星杯神楽イヴと同一人物よ!
アウラムの幼馴染で、ニンギルスの妹だわ!兄の遺伝子かちょいちょい環境を破壊したわね!
団結の力
装備モンスターの攻守が自分の場×800アップする装備魔法よ!上昇率が高くて頼りになるわね!
ーーー
「攻撃力3200!」
「まだです!罠カード、同姓同名同盟を発動!戴く巫女をデッキから2体特殊召喚する!」
アウラムの周囲をイヴとその幻影が囲む。彼女達の祈りを受けて剣の輝きは更に増していく。
ーーー
同姓同名同盟
自身の場のレベル2以下のモンスターと同名モンスターをデッキから可能な限り特殊召喚する罠カードよ!
増殖する妹に墓地のニーサンもよう喜んどる。
ーーー
「攻撃力...4800!!!しかし、こちらには守備表示のサーチャーがいますわ!わたくしは倒せません!」
「まだ終わりではありません!魔法カード、思い出のブランコを発動!墓地の誘われし者を特殊召喚!」
そしてギルスがフィールドに現れると、アウラムの剣の輝きは最高潮にまで高まる。そして祈るイヴを庇うようにギルスとアウラムは構えた。
「攻撃力5600ですって!?」
「バトルです!誘われし者でサーチャーを攻撃!」
アウラムの露払いをするかのように飛び出したギルスが機械の軍勢を破壊する。エリザベスのフィールドには何も残っていなかった。
「選ばれし者でプレイヤーにダイレクトアタック!」
少年は掲げし剣に光を束ね、それを振り下ろす。それは何にも阻まれることなく、エリザベスに命中した。
「素晴らしいですわぁぁあああ!!!」
エリザベス LP 1900 → 0
負けると思っていた優華がエリザベスに勝ったことで、周囲はざわめく。それをまとめるかのようにエリザベスは優華を大声で讃える。
「いやぁ、素晴らしいですわ!ピンチをチャンスに変える勝負強さ!流石勇者様ですわ!」
「うぅ、その勇者様って呼ばれるのは恥ずかしくて好きじゃないんです。どうか名前で呼んでくれませんか?」
「分かりましたわ、優華様!わたくしのこともエリザベスと呼んでくださいまし!」
「はいっ!エリザベスさん!」
その光景を見た生徒の殆どが優華を称賛し始める。その授業はとても良い雰囲気で終わり、優華を侮っていた者も多くは見直しただろう。
エリザベスは気になったことを聞きたくて、授業が終わった後に優華に尋ねる。
「優華様!歴代の勇者様から頂いたカードを見せてくれませんか?」
「あ、いいですよ。これです」
エリザベスはワクワクしながら優華が取り出したカードを受け取る。それは歴代の主人公達が何を優華にあげたのか、とても気になっていたからであった。
「(遊戯様がラッキーカードとしてクリボーをあげたなら、十代様はガチだからオネストとかかな?遊星様ならエフェクトヴェーラーがあるし、遊馬様は...)」
そう思いつつカードを見たエリザベスは思わず絶句する。
「なぁにこれぇ」
クリボー
ハネクリボー
ジャンクリボー
虹クリボー
EMクリボーダー
リンクリボー
今回はあっさりなデュエルでした。
だけどお嬢様の解説がある分ネタは多かったかも。
因みにですがウォーダーのコンセプトの多くはスクラップをイメージしてます。メインが優秀なスクラップはスクラップじゃないと思われる方もいると思いますが...