年始思いつきFGO~明日こそ村正が来ると信じて~ 作:村正祈願(達成)
「マシュ~あけおめ、ことよろ石頂戴」
「明けましておめでとう御座います先輩。今年も宜しくお願いします。……新年の挨拶とセットで聖晶石を要求するのはどうかと思いますよ……?」
前回、見事に村正狙いの一万課金と福袋に敗北したマスターは、真夜中に目を覚ましてから姿を現したセイバー・両儀式にお願いして、新年の夜明け前までやけ酒をしていた。
夜明けを見る前に酒が回ったマスターは爆睡。目を覚ましたのは自分の部屋のベッドの中、恐らく式が彼をわざわざベッドまで運んでくれたのだろう。
衣服が若干乱れていたが、猥褻な魔力供給とかは一切なかった。いいね?
ちなみにマスターが目を覚ましたのは
寝癖で所々跳ねている髪をボリボリ掻いて、マスターはのんきに大欠伸をする。
「それで先輩、本日のご予定は?」
「ん~……。村正の再挑戦は夕方以降にしよっか。――――貯めてた種火とフォウ君はヴリトラを優先的に☆5、☆4の育成が届いてないサーヴァントを降順に使用。ヴリトラのスキルレベルは5~6を目安に上げて、QPと素材に余裕があれば他の☆5サーヴァント達に回して。周回はとりあえず種火を優先的に、今日はセイバー・ライダーの日だったよね?ギル、イシュタル、ナポレオンを招集、宝物庫はアキレウス、アストルフォ、メドゥーサに。フレンドのサーヴァントは絆礼装持ちのキャスターを最優先で―――かなぁ……」
「了解です」
「お館様、拙者と両儀殿に出番は?」
「そうね。――――少し体を動かしたい気分ではあるのだけれど……」
マスターの前に天井から突然降ってきた千代女が、式が通路の陰から音もなく現れた。
マシュは驚いて「何時からそこに!?」と辺りを見渡しているが、マスターは慣れた様子だ。
「あぁー……2人には申し訳ないけど、周回の後衛には絆上げ優先のマイフレンド、キャストリアがいるから……。こんな事を頼むのは如何かと自分でも思うけど、本日の食堂料理当番をお願いできるかな?」
本来であれば新年も食堂の料理は当カルデアのメンバー。
エミヤ、ブーディカ、タマモキャットの3人にお願いしたいのだが―――――――
「エミヤは昨日の村正ショックで寝たきり。ブーディカは飲み過ぎてダウンしてる英霊達の看病。キャットは「本体が月でまた調子に乗ってるから、ちょっと舞台裏で殺してくるワン♪」と言って昨日から姿が見えない。―――――ってわけで……」
「はっ。―――――そういった事情でしたら引き受けるのも吝かではなく……」
「そうね。今度はバレンタインではなく、ちゃんとしたおせち料理をご馳走しようかしら」
そう言って千代女と式は食堂の調理場へと去っていく。
マスターは寝起きでまだ固まった体を解そうと、骨をゴキゴキと鳴らす。
新年のゆったりとした、カルデアの活動が始まる。
「――――――あれ?今年は年明けのイベントないんだ……」
遠くで種火周回に連れ回されているキャストリアが歓喜の叫びを上げた。
*
時間は進んで夕方のカルデア、マスターのマイルームで周回を終えた☆5アーチャー3騎がぐったりしている。マスターは昼に作ってもらった千代女特製のお雑煮を堪能して、カルデアのスタッフやダ・ヴィンチちゃん、ホームズやシオン、ネモ、ゴルドルフ所長に新年の挨拶をした帰りだった。
彼の手には金額が指定出来る林檎のカード。
マシュは固唾を飲んでそれを見つめて―――恐る恐るマスターへ金額を訪ねる。
「せ、先輩―――――今回は……」
「……1万5千……」
ただのガチャを引くという行為、傍から見て万単位の金を使うのは馬鹿らしいだろう。
しかしマスターは悔しい思いをしても課金を止めない。
だって――――――
「いつかアニメ化した英霊剣豪七番勝負でドスケベな千代女が見れるかもしれないじゃないか」
「新年早々に先輩、最低です」
FGOのカニファンで、ほんの一瞬だけ映った千代女にマスターは狂喜乱舞していた。
酔っ払い状態で隣にいた千代女の手を取り「スケベしようや……」と真顔で言い放ったマスターに対して、マシュが制裁のバスター攻撃を叩きこんだのは言うまでもない。
迫られた際の千代女は顔を赤くして、満更でもなかったのは此処だけの話。
「よし――――――準備は出来た……」
「ま、待つんだマスター……!その先は―――その先は地獄かもしれないぞ……!」
マイルームの扉を開け放って、胃を抑えたまま青ざめた顔のエミヤが入ってきた。
村正によるダメージは朝のうちに回復した彼だが、HFとか今日のご飯関連で身近なサーヴァント達に揶揄われたことで、エミヤは満身創痍のままである。
林檎のカードを読み取り、既に聖晶石と交換し終えたマスターの手が止まる。
エミヤの言いたいことはマスターや他のサーヴァント達にもわかる。
当カルデアには既に全体セイバーが何人もいる。―――――だから村正を引いて育成したところで、少し使ったら強化待ちの列で半年前から待機するシェヘラザードや清少納言のようになってしまうのではないかと恐れているのだ。
そして―――――アーツ全体宝具のセイバー。
もし村正が優秀だったら、既にLv100・絆10・フォウスキルマの式が使われなくなってしまう。
彼女との信頼関係に罅が入ってしまう事を、エミヤなりに心配してくれているのだ。
何よりも―――――その程度の石で当たる確率などたかが知れている……。
当たらなかったとき、マスターが気力をくじかれてお正月のミッションを放棄してしまう危険性も考えれば、ここは課金を止めさせて後の闇鍋ガチャに希望を託すべきだと……。
しかしマスターはフッと朗らかな笑みを浮かべながら口を開く。
奇しくもそれは、イシュタル(中の少女)に別れを告げた時の彼のように――――
「大丈夫だよエミヤ、俺もこれから(周回の編成作り直したり、足りない素材を集めるために)(エミヤの若い頃の姿だって噂のお爺ちゃんと式さんとキャストリア纏めて周回で酷使出来るよう)頑張っていくから―――――」
「こ、この悪魔があああぁぁぁぁっ――――――!!!??」
このやり取りを見て、周回で疲れていたギルガメッシュとイシュタルが笑い転げた。
ナポレオンは「悪いなマスター。俺はこれから黒髭とアタランテオルタと最近流行りの鬼を倒す日本の剣士のアニメ見る約束してるんでな」とマイルームを去っていく。
いよいよ始まる村正狙いのガチャ二回戦……!
マスターは昨日の失敗から学習して、フレポ☆3教だけでは足りないと考えて、マイルームに狙ったサーヴァントと繋がりのあるサーヴァントを呼び出して置く宗教と、サーヴァント強化画面で大成功が出たら回す宗教も取り入れた、運気重ね掛け作戦に出た。
そしてお気に入りに選ばれて強化されるのは――――エミヤに視線が集まった。
嫌な予感を察知したエミヤが脱走しようとするが、こんな時だけ全力を出そうと考えたギルガメッシュがゲート・オブ・バビロンを開放してマイルームの入口を塞ぐ。更に意地の悪い笑みを浮かべたイシュタルがエミヤを取り押さえて、マシュがそっと合掌する。
実は当カルデアのエミヤ、最終再臨からほったらかし+フォウもまだ上限に達していなかった。
マスターは爽やかな笑顔で金と銀の種火を持ち出し、エミヤの前に差し出す。
ブスリ♂ 「アッ―――――!!」
二回目の強化で大成功はあっさりと来た。
急いでガチャの画面に移動したマスターは、予めレモンゼリーことレアプリズムを消費して無くなりかけだったフレンドポイントを補充して十連を回す。
50連目で清姫がヒットしたことで、マスターは村正の画面で十連をプッシュ。
「こいやぁぁぁぁっ!!」
グルグルグル、ギュイィィィィン!
しかし十連一度目は不発、正月☆4礼装一枚確定で終わってしまった。
「……ぐ、ごはぁっ……!?」
「せ、先輩――――!」
昨日の、いや以前から重なった爆死のトラウマがフラッシュバックした。
マスターは口から血を吐き出して、その場で膝をつく。
マシュが慌てて駆け寄りガチャを止めようとする。
―――だが、それを周回のサブメンバーであるマイフレンドことマンドリカルドが止めた。
「……此処は俺に免じて、マスターのやりたいようにやらせてやって下さい……ッス」
「マンドリカルドさん……」
「ごほ、ぅ、げぇ……っ!――――大丈夫だよ、マシュ。……サンキュー、マイフレンド」
「ウッス。――――マスター……続行を!」
「よし……!――――――フレポガチャをもう一回……!」
*
……それから何度、マスターは吐血して地面をのたうち回ったのだろう。
途中で金回転が始まって、歓喜の声をあげたらバーサーカーで、既に宝具レベル5のランスロットが出てきた時に、マイルーム全体が沈黙に包まれた。
ギルガメッシュは上機嫌で宝物庫から取り出したワインを嗜んでる。
抵抗を止めたエミヤが下を向きながら「外れろ外れろ外れろ」と呟く。エミヤの横でイシュタルが呆れて「そんな事言ってたらレアプリにされるわよ……」と諫める。
残り十連二回分の石になって、マスターの目から光が消える。
オーバーなリアクションもなく、まるで出会ったばかりの長尾景虎みたいな貼り付けた笑顔で、ガチャ画面の十連ボタンを押した。
グルグルグルグル、一本線の礼装
グルグルグル、三本線の☆3サーヴァント
もうダメだと誰もが諦めかけた時――――ふいに回転が止まった。
ギュイィィィィン!!!輝く光は七色から収束していく。
「せ、先輩!!この反応は――――」
「来たッス。☆5確定の光ッスよマスター!」
「ほう?―――だが、まだすり抜けの可能性も否定出来んぞ」
「そうだそうだ!理想を抱いて溺死しろマスター!」
「あんたもう見てられないくらいキャラ崩壊起こしてるわよ!?」
「―――――――ぁ――――」
回転するカードにちらっと映ったのは、剣を握る鎧の騎士。
☆5のセイバー……まだ確定した訳ではないのに、なぜか心の中で安心感が芽生えている。
ゆっくりと光の渦に手を伸ばしたマスターの前で……現れたサーヴァントが口を開く。
「セイバー、千子村正。召喚に応じ参上した。
ただの鍛冶師なんだが、疑似サーヴァントって事で武士の真似事もできるようだ」
もう何度見たかも分からない赤っぽいオレンジカラーのツンツンヘアー。
顔立ちは童顔なのに、纏う雰囲気と口調からは老齢の男性らしさが醸し出されている。
左肩から手の先まで覆う赤い袖は、エミヤ着ているものとよく似ていた。
右手を上げて、肩の後ろではためかせる白い羽織の裏地には花の刺繍。
「ん? なんでぇその顔は。
訳知り顔のようでもあり、意外そうな顔でもあり……
もしかしてちいとばかり早い登場だったのかねぇ、
そんな事はないと、驚きで声が出ないマスターは心の中で言った。
初めて貴方と出会ったのは下総国の庵で。
目と目が合った瞬間、胸が高鳴ったのを覚えている。
びぃえる時空的な意味ではない。ただ――――――その在り方に憧れた。
遂に―――――貴方の戦う背中を見られる日々が始まる。
マスターは声を上げて泣き、マイフレンドがそっとハンカチを差し出す。
村正は何事かと半口開けて呆けた。
ギルガメッシュは興醒めしたのか霊体化していなくなる。
エミヤが乾いた笑いを零して、イシュタルは「アクセサリーでも打ってもらおうかしら」と笑う。
当カルデア、今年も忙しく……賑やかな日々を送れそうです……!