「さぁ……始めようか〈衛宮 士郎〉。お前が抱いた胸の内より溢れたその〈想い〉……この〈俺〉に示してみせろ! 」
「もちろんだ! 嘗ての俺が憧れた姿……その終着点たるお前に見せてやるよ! 俺の〈想い〉をぉ!! 」
俺達はアーチャーが展開した剣の荒野で向かいあった。しかし……不思議と嫌悪感は感じなかった。アイツが……未来の自分だからなのだろうか?
「とはいえ……俺のやるべき事は変わらないさ! セイバーを守る為に俺は強くなる! その為にもお前を超えるぞ! 〈衛宮 士郎〉! 」
俺は始めて自分の名前をハッキリと言った気がする。嘗て爺さん……〈衛宮 切嗣〉に救われる前の名前は……とうに忘れてしまった。
「そして十年前に謎の大火災が発生して……街には絶望が降り注いだな……」
「アーチャー……やはり貴方はあの時の真実を……」
セイバーはアーチャーの言葉に呟くものの、やがて未来の俺はあの時の真実を知る事になる事には驚かなかった。
「だから俺は憧れたんだ! 爺さんの……正義の味方が人々を救ったその姿に!」
俺は奴の投影した二振りの夫婦剣である〈干将〉・〈莫耶〉を投影した。しかし一合撃ち合っただけで俺の剣は欠け……ひび割れ……崩れ去った。
「脆いな。外見や材質だけの模倣だな。……対象の構造への理解が足りていない。だが…………何よりもイメージが足りていないな!」
「確かに俺はお前に対して実力が……知識が……経験が足りていない。だが……それがどうしたぁ! 」
俺は未熟者だ。その上……半端者で……臆病だ。でも……だとしてもぉ!
「俺の胸の想いが……いつお前の実力に及ばないと決めつけたぁ! 」
「ほぅ……今の一合で、俺の経験を垣間見たな?」
奴と撃ち合った瞬間……俺の中に奴の経験が流れ込んだ。そして……この光景が頭をよぎる。
「俺は負けられない!
再び俺は夫婦剣の投影を行いアーチャーと斬り結んだ。しかし……アーチャー自身もまた……一段と剣に力を込めた。
「先程よりも投影の精度が上がった……か。なるほど…………よほど俺を超えたいようだな衛宮……士郎ぅ! !」
アーチャーは未だにその姿が影のような〈ナニカ〉に覆われて表情を読み取る事はできない。しかし……その声色から俺の変化に気付いている素振りは見せていた。
「しかし酷い話だよ! 相手が自分自身だというのに……その姿がよくわからいなんてな!」
「同感だ。表情を読み取る事ができないというのは面白く無いな。おかげで俺の表情を貴様は見る事ができないのだからな!」
しかし姿の詳細がわからない事と、戦闘技術に因果関係は存在しない。
「だが獲物から射程距離や間合いを読み取る事は可能だ! だから……俺はできる事をさせて貰う!」
「良いだろう。ならば全力を注ぎ込め衛宮士郎よ。俺はその上でお前を正面より打ち破ろう」
「「
お互いに再度夫婦剣の投影をした。しかし今回の投影では奴の剣の間合いが長い。
「……投影の精度が落ちたか? ……その体たらくで良くも吠えたものだよ……」
アーチャーは俺を挑発してきた。だけど今はコレで良い。
「俺の投影が無策だと思うなよ!」
「何を企むつもりかは知らないが……俺に通じると思うなよ?」
奴は投影した剣を弓に番えて射出してきた。
「チィッ! ……遠距離攻撃かよ!」
完全に開けた間合いでは俺が不利だ。ならばどうするのか。答えは単純明確だ。
「そうだろうな……。俺でもきっと同じ行動をするだろうさ……」
そう告げたアーチャーは小さな剣を4振り投影してそれぞれを異なる軌道で投げ始めた。それに加えて通常の射撃も怠らない。
「ここで飛び道具はやり難いぜ!」
俺は奴の放った剣に前進できずにいた。ならばどうするのか?
「だけど忘れてないかアーチャー! お前の経験を
俺が投影された剣をいなす毎に奴の軌跡が流れ込む。近づけないなら奪えばいい。未熟なままなら成長すれば良い。俺のやれる事が1つだけで終わると思うなよ!
「……なるほどな。確かにその行動こそが今のお前の最適解だろうな。ならばこちらも手段を変えるとしよう……」
アーチャーは投影した剣を消した。遠距離で俺に技術を奪われる事を嫌ったみたいだな。
「どうしたアーチャー! 怖気づいたか? 俺がそんなにも恐ろしいか? 」
ここで俺は挑発する事にした。奴が〈衛宮 士郎〉で
「面白いな。自分自身の事を理解し始めたと見えるぞ? そうだ…………〈衛宮 士郎〉は敵から
〈正義の味方〉ならば敵に背を向けるのは致命的だ。何故ならば……背を向けてしまえば守りたい者達を守れ無いからだ。故にアーチャーは俺の挑発に乗らざるを得ない。
「ハッ! こんな安い挑発に乗るんだな〈正義の味方〉! 冷静さを失うのは致命的だぜ! 」
しかし奴自身も〈衛宮 士郎〉だ。故にただ黙って聞いているだけの男では無かった。
「随分と言いたい放題だが……こういう諺もあるぞ?
〈弱い犬ほどよく吠える〉
とな? まさか……貴様が実力差も知らない阿呆とはなぁ!」
当然言い返すだろう。確かに
「だが……それがどうした! 俺の理想は俺が決める! 確かに最初は借り物だった! 救われたから救いたいと思った! 」
始まりは偉大なる
「シロウ……私は貴方の選択を信じています……」
彼女は今も俺の戦いを見守っている。本来ならば助太刀をしてアーチャーを倒す事が合理的だ。だけど……彼女自身も俺の選択を尊重してくれている。
「セイバー……名前を教えてくれないか? 俺が……守ると決めた……君の本当の名前を……」
俺はセイバーの本当の名前を知らない。守りたいと思える相手の名前すら知らないのだ。
「貴様にはその真実を知るには荷が重いぞ? なにせ……彼女は偉大な英霊なのだからな!」
アーチャーは俺との距離を詰めて斬りかかった。その膂力は射出された剣の一撃をあっさりと凌駕する。
「おいおい! 人の恋路に邪魔をするなんて……酷すぎないか?」
せっかくのセイバーへの告白を邪魔された。それが意図的な行動だと知る事も今の俺には容易にできる。
「すまないが生前から手癖が悪くてね。相手の無力化は戦術において定石だろう?」
あくまでも表情は
「だろうな。だが……こんな言葉も知ってるか?
〈人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に堕ちろ! 〉
ってな?」
「そうですね。シロウの……素敵な告白を邪魔されたのは……とても……悲しい…………です……」
セイバーの悲しげな表情を見た俺は怒りに震えた。
「アーチャー……お前は言ったよな……セイバーは偉大な英雄だと! 」
「言ったとも。セイバー程素晴らしいサーヴァントを俺は知らない。故に……お前では釣り合う筈が無かろう?」
アーチャーはあくまでも冷静に言い切った。ならば……
俺はより怒りが込み上げた。そして剣を投影してアーチャーへと斬りかかった!
「
俺は常に自分の投影できる最高の剣を構えて斬りかかったが、アーチャーはその度に俺をあしらう。やはり太刀筋が読まれているんだ……。だけど……だと……してもぉ
「ならばどうする衛宮士郎! そんな剣で彼女に並び立てるなどと思い上がるのも大概にしろぉ!」
「俺は諦め無い! 俺がこれから歩むのは……
俺は勝機を掴む為に
「ようやく観念したようだな衛宮士郎! そうだ……お前の覚悟は……抱く理想には遠く及ばない! 」
アーチャーはやがてくる未来を突きつけて俺の心を揺さぶる。だけど……俺は繰り返す訳にはいかなかった。
「俺がやらないといけない事はなんだ?」
自分自身に問いかける。最善の未来を掴む為に……
「俺が倒すべきモノはなんだ? 」
目の前に立ちはだかる〈敵〉か? 人々をいたずらに傷つける〈悪〉か?
「いや……そうじゃ無いだろう?」
そうだ……。俺がやらないといけない事はセイバーの隣に立つ事だ。その為に今のははアーチャーと……未来の俺と戦っているんだ。
「セイバー……もう1度だけ教えて欲しい。いや……セイバー自身の口から教えてくれないか? セイバーの……本当の名前をね?」
するとセイバーは今度こそ俺に向き合い……その口を開けた。
「そうですね。私の真名は……
〈アルトリア・ペンドラゴン〉
です。シロウ達の認識では……しかしこの世界の文献ではこう呼ばれています。その名は……
〈アーサー・ペンドラゴン〉
…………と」
セイバーは俺の質問に答えてくれた。ならば俺は……彼女に伝えるべき言葉がある。
「ありがとうアルトリア。君の名前を知れて良かったよ。だから……ここで見ていて欲しい。俺が……自分自身を超えるその瞬間を! 」
俺は愛するアルトリアの為に勝利を掴む。その覚悟を決めたんだ!
隣に並び立ちたい人物の本当の名前を知った士郎は……嘗ての夢と今の想いを見据えた。その覚悟を示すのは……他ならない彼女の為に……
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主人公達の関係性…………最終的にどうしましょう?
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知り合い同士での同盟!
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主人公達は同盟を組む!
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もちろん2人とも厄ネタ降り注ぐ!
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ハイライトは仕事しない!