バーサーカー陣営の強襲によって手痛いダメージを受けた僕達は全員意識を失った。しかし次に気付いた時……僕達は
「ここは…………士郎の家? でも……僕達は……全員やられて…………」
「あぁ…………気付いたんですね修治センパイ。皆さんが住宅街で倒れているから私はとても驚いた上に大変だったんですよ?」
現れたのは〈間桐 桜〉だ。僕や士郎の後輩にして
「その口ぶりなら桜が僕達を助けてくれたって事か? だったら士郎だけ助ければ良かったじゃないか。なのになんで僕達まで?」
幾つものルートが分岐したこの世界に原作知識がどこまで役立つかはわからない。そして気の所為か桜の顔色が原作開始時よりも良く見える。何か…………何か理由が有る筈なんだから!
「あぁ…………修治センパイは私のサーヴァントが誰かわからない事……そして何故私が助けたか……その2つが知りたいんですね? 良いですよ。じゃあまずはサーヴァントの方から説明しますね? 出てきてください〈キャスター〉さん……」
「桜……今なんのクラスのサーヴァントを呼んだ?
予想外だ! まさかキャスターを引き当てたなんて! これじゃあもしかして〈間桐 臓硯〉の本体は既に引き払われたのか!?
「はぁ……。桜……もう少し情報は選びなさい。でも今回は仕方無いわね。私も貴方を抱きしめたくて仕方が無かったわ……」
そう言って現れたサーヴァントはまたも予想外の人物だった。
「なんでアンタがここにいるんだよ!
そう……桜が呼び出したのは中世のヨーロッパで活動した錬金術師のサンジェルマン伯爵
「でも……1つだけわかりましたよ。サンジェルマンさんなら桜の治療…………もとい浄化なんて〈ラフィス・フィロソフィカスの輝き〉で行えますからね……」
僕は声を絞り出して頭に浮かぶ仮説を、確信に変える為に情報を集めようとした。しかしその考えを纏める前に彼女に抱きしめられた。
「よく頑張ったわね。修治の頑張りは人の功績には収まらないわ。それは私達がとてもよく知ってるもの」
その腕の暖かさは暴力的だ。包込まれる魅力に僕の心が傾き兼ねないからだ。
「あぁ…………温かい。貴女の温もりは……僕を包み込んでしまう……」
僕は庇護されるように抱きしめられる事に弱い。だからこそこの人や〈了子さん〉として活動していた〈フィーネ〉に抱きしめられた時には抵抗ができなかった。そのせいで響達を危険に晒した事もあるので罪悪感もセットだけど。
「ふふふ……修治は私達の可愛い息子のような存在よ? 私が修治を抱きしめるのは当然でしょう?」
「まぁそう言う事ですよ修治センパイ。私達は先輩と修治センパイが欲しいのでこの戦いに臨んでいます。だからこそセンパイ達がバーサーカーとそのマスターに襲われた後私達は助けてあげたんですよ?」
僕もようやく桜達の目的に検討がついできた。つまり桜は士郎を、サンジェルマンさんは僕を狙っていた訳か。そして僕は彼女達の瞳が光を映していない事にも気づいてしまった。
「桜とサンジェルマンさんの目的はわかったよ。だけど僕達を助けた事で何を求めるつもりかな? 素人の僕には大それた事はできないよ?」
「えぇ。修治の力が本職の人間に遠く及ばない事は知っているわよ。私達の要求は1つだけよ」
「修治センパイは私と先輩の恋を成就させてください。そしてサンジェルマンさんの恋仲になってください。もちろんセンパイ達のサーヴァントさんにはサンジェルマンさんの為にも退場してもらうつもりですけどね? だって浮気されたら私達は気が狂いそうになりますから……」
予想通り過ぎる要求だ!
〈切歌ちゃん達を殺せ。そして彼女達の愛を受け止めろ〉
桜は僕にそう告げて来ていた。
「桜……それは士郎のセイバーも含まれているんだよな?」
「もちろんですよ? 先輩のセイバーさんは美しいですからね……もしかして先輩の好みの女性かもしれないですから…………」
やはり桜はFateルートの可能性すら本能的に理解しているみたいだな。そうなればこの結論は当然とも言えるな。
「なら僕の出す結論は1つだよ。士郎を交えて話し合いをする事だね。だって僕と士郎は同盟を結んでいるからさ」
これは僕達アサシン陣営の問題じゃあない。士郎にも知らせる義務が僕にはあるから。
「そうですね。先輩も交えて改めて〈お話〉をしましょう? あぁ…………でも1つだけ妥協できる要素が私にはありますよ?」
桜はそう言って
「ッ!? 桜まさか……その力は!?」
僕は動揺を隠せなかった。そしてサンジェルマンさんが僕に解説を入れて来た。
「えぇ……私の力で桜の体内に潜む
嘘だろ!? あの黒い聖杯を既に制御下に置いたのか!?
「桜……お前はどこまで……」
「私の目的は先輩です。先輩へ私の愛を届けます。その邪魔をするなら私はサーヴァントだろうが姉さんだろうが排除しましょう……」
「〈姉さん〉って……まさか桜は遠坂まで!」
「はい。姉さんは必ず殺します。知ってますか修治センパイ……遠坂凛は先輩の事を盗撮してるんですよ? それも日常的に……ですよ?」
凛が士郎を盗撮だと!? なんでそんな事を桜が知っているんだよ!?
「桜……何故遠坂が士郎を盗撮してると断言できる? そんなの桜の妄想の可能性だって「先輩の第2ボタンに少し違和感を感じませんか? 入学して半年と経たないのにほつれるのはおかしいですよ?」なんだと!?」
嘗て士郎は日課の人助けの際に凛にも手助けをした。しかしその際に不慮の事故で士郎の第2ボタンがほつれた事があった。そしてその際に凛は士郎のボタンを縫い直した事があった。
「まさか……あの時の? だけどなんでそれだけで?」
「答えは簡単ですよ? だって私も先輩の監視をしていましたから……魔術師ではなく1人の女性〈間桐 桜〉としてですけどね?」
間桐臓硯からの命令の有無にかかわらず士郎を監視していた訳か。なるほど納得できるよ。
「じゃあ桜の目的は士郎の何だ?」
「先輩と恋仲になりやがて家族となります。当然家族ですから〈営み〉は問題ありませんよね? 私は先輩の全てを感じたいんです。先輩の腕の中に抱きしめられたいです。だから修治センパイも協力してください。こんなに可愛い後輩からのお願いですよ? センパイのお子様サーヴァントよりも素敵な……ね?」
桜が正気なら良かったかもしれないが、僕に彼女を諭す手段はほぼ無い。更にサンジェルマンさんという厄介極まりない相手もいる。僕と士郎は戦闘も情報も全てが後手後手だと言える訳か。
「だけど桜……切歌ちゃん達をあまり見くびらない方が良いよ? だってこの2人の真の強さはお互いを〈想い合える〉ことだからね。油断して痛い目を見ても知らないよ?」
「えぇ……肝に銘じます。〈恋の力〉は愛を凌駕する前例を私は
「桜……今……君はなんて……」
「少し話し過ぎたので今回はこれで切り上げましょう? 色よい返事をお待ちしていますからね……………………修治センパイ?」
桜は僕にそう告げてサンジェルマンさんと共に去って行った。
「なるほどな。桜も魔術師で聖杯戦争のマスターか。そして使役するのはキャスター……か」
僕は起きて来た士郎に桜とのやり取りを全て話した。すると士郎は反応に困っていた。
「そして遠坂と桜は実は姉妹で、嘗て俺が遠坂を助けた際にボタンを細工して盗撮していた……と。一体俺を盗撮した目的は何だ?」
こんの唐変木! 僕は士郎をドつきたかったが、未来や切調コンビの前例を考える(もとい
「僕の仮説を立証するにはもう一組の陣営から話を聞かないといけない。士郎……明日の登校で…………と会って欲しい」
「? 修治が直接聞けば良くないか?」
「僕の仮説が正しくて事態が最悪の場合、僕達は敵同士になる可能性がある。それもお互いの意思にかかわらず……ね」
「良くわからないけど了解したよ。だけど最善の可能性もあるんだろう?」
「もちろんお互いにとって存在するよ。だから士郎……頼んだよ?」
「わかった。明日成果を報告しよう」
僕達は話し合いの結果士郎に彼女への接触を依頼して、最悪の場合に備えることにした。
「だけどもし最善の場合なら……」
僕達は争わずに済むだけではなく、聖杯戦争自体を無意味にすることができる筈だ……。
士郎に接触を依頼した陣営は既に登場しています。
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