『さて、脱出できたし、ここからどうしような』
『……ねぇ』
『あ〜でも地理とか分かんねぇや。いっそスラムとかでもいいから人のいる所まで歩いてこうかなぁ』
『……ねぇってば』
『んあ? 何?』
『なんでボクまで助けてくれたの? ボクは……』
『鉱石病だろ? 知ってる知ってる、つか見りゃわかるわな』
『そんな……いや、本当になんでなの?』
『ん〜……そりゃあ──』
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光を浴び、頭痛付きで目が覚める。完全に二日酔いだろう。
見知らぬ天井をぼんやり見ながら、昨日の記憶を辿る。
龍門が見えて、彼の提案に乗ってペンギン急便に
それで、久しぶりにテキサスに会って、テンションが上がって、色々巻き込んでお酒を飲んで……そこから先は、ぼんやりとしていてあまり思い出せない。でも、随分と小さい頃の夢を見たのは、覚えている。
ゴソゴソという音のする方に目を向けると、相も変わらず妙に輝いている、白く長い髪を纏めもせず揺らすループスの姿があった。
「……お、おはようさん。今日もポカポカといい陽気だぜ」
赤い線の走る顔でポワポワとした微笑みを作るのは、かなり長い付き合いになるループス、シラヌイだった。
「…………なんで一緒のベッドで寝てるんだい?」
「昨日のこと覚えてないのか? ……いや、覚えてない方がいいか。多分舌噛み切りたくなるだろうし」
「うっそ何やらかしたのボク、ペンギン急便で酒盛りしたのは覚えてるんだけど」
「流石に目の前で死なれるのは真っ平御免なんでな。教えはしねぇよ」
「……テキサスに今度会ったとするよ? どんな目で見られると思う?」
「生暖かい目」
「嫌だなぁ……一番精神に来るやつじゃないか」
「まあそりゃ皆の目の前で俺にあんな深いキスをかましゃあな……」
……え?
「ごめんシラヌイ、今なんて言った?」
「あ、いや、気にするな。俺は別に役得というか」
「……聞き間違いとかじゃないなら……ボクは、そういう……」
「お、落ち着けラップランド、触発されたマコトとエクシアも暴走して……」
「そういう問題じゃない……もう皆に合わせる顔がないよ……」
顔が熱い。シラヌイから見たボクは、多分耳まで真っ赤になっている事だろう。あ、涙出てきた。
今更ながら、自分がシーツに裸でくるまっていた事に気がつく。シラヌイも裸だ。まあつまりは……そういう事なのだろう。何度かあった事とはいえ、発情期でも無いのに獣のようにサカったのは事実らしい。羞恥心が一周まわって冷静になってきた。
「……ここは? というか、なんでここに?」
「適当に見つけたホテル。完全に潰れたお前を運んで、あとはまあ、お察しってやつだ」
「うわぁ……お酒って怖いなぁ……」
「べろんべろんに酔ったラッピーめちゃくちゃ可愛かったけどな」
「覚えてないのがまた辛い……」
ケラケラと笑うシラヌイがムカついたので、とりあえずホテルの備品を壊さない程度に殴っておいた。
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お互いに服を着て、適当に朝食……いや、昼食をとる。昔では考えられない程に悠々とした時間だ。なんとも幸せな時間だ。向かいで麺を啜るラップランドを見ていると、ふと昔の事が頭を過ぎる。
俺はまあ、言うなれば転生者という事になるだろう。この星がテラ、つまりアークナイツの世界であるというのは、産まれてすぐわかった。
アーツ適正が全く無いことを除けば、割と普通の子供ではあった。シラクーザのやべぇ家系に産まれたとしても、アーツとは違う別のとんでもない何かを使えたとしても、普通の子供に違いなかった。間違いなく俺は普通のループスだったのだ。
しかしまあ、ある日の事だった。家同士の抗争だったか何だったかに巻き込まれ、俺は何処からか打ち込まれた源石の銃弾によって負傷した。下手人はサクッと始末して、応急処置を施しはしたが……まあ、当たり前といえば当たり前だが、鉱石病に罹ったわけだ。
一家の長男坊だった俺は死んだ事になり、その時から幽閉生活を送ることになった。この世界での鉱石病患者への対応を考えれば、殺されるよかはマシだろう。
そんなわけでニート生活を送っていたが、当時十歳頃だったか、家は没落。見つかって騒がれるのも面倒だったから、こっそり能力を使って地下牢から脱出。
WRYYYYYY!! とか叫びたいのを我慢してシラクーザから脱出しようとしていたが、道中白髪の、同い年ぐらいのループスがぼっち生活を営んでいたのを見つけ、一緒に行く(腕引っ掴んで強制的にワープだが)ことにした。
後でよくよく聞いてみれば、アークナイツでも相当にアレな少女、つまりラップランドその人だったわけだ。知らないまま安易に誘ったらコレだよ……
んで、しばらく一緒に旅をして、途中で別れて、一年ほど前に再会した訳だ。惚れ直すと言う現象を学んだ。
「……スープ冷めるよ」
「あ、やべ」
ラッピーの顔を結構な時間見ていたらしい。冷えてきたスープで、頬張ったパンを流す。
その辺で買ってきた野菜を(ラッピーが)刻んだだけのサラダをもしゃもしゃしていたら、ジト目のラッピーが話しかけてきた。
「…………人の顔ジロジロ見て、何考えてたのさ」
「ん〜、ラッピーとの軌跡?」
「よく分かんないんだけど」
「かなり長い付き合いだな、とか思ってな」
「……まあ、そうだね」
「……どうした、そんなもう少しで思い出せそうだけど妙に引っかかるー、みたいな面して」
「一字一句違わずその通りだよ。なんで顔みただけでボクの状態がわかるのさ。昔から謎なんだけど」
「ラッピーの事なんて手に取るようにわかるわ。伊達に付き合い長くねぇっての」
「ふーん」
「ふーんてお前……で、何が思い出せねぇんだ?」
「……ボクらが初めて会った時のこと覚えてる?」
「そりゃあな。あ、可愛い子見っけ、とか思って連れ立ったわけだし。ぶっちゃけ一目惚れよ」
「……そういうとこも本当に変わんないよね……///」
ア゙ッ、かわいい……どストレートに好意を伝えるとラッピーは凄く照れる。この顔が見たくて好きとか可愛いとか愛してるとか言ってる節がある俺氏。昔から言ってるのに慣れないラッピーホンマてぇてぇ……
「……思い出したからやっぱりいいや」
「うわ、クソ気になるやつじゃねぇか。教えてくれよぉ~」
「なんかヤダ。キミ絶対揶揄うだろ」
「内容によるわ」
「じゃあ無理、絶対笑う」
うわぁ、気になる……一日モヤモヤするやつだ……いやまぁいいけどさ……
「シラヌイ」
「んぇ?」
「これからもよろしくね」
……おう、こちらこそよろしくな
「ハァ〜、好き」
「言ってる事と考えてる事逆じゃないかな」
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『お前、可愛いから』
『……へ?』
『お前が、可愛いから』
『………………ハア!? ///』
『そういう事だよ。よし、水を調達するぞ』
シラヌイはそう言って、懐から棒(後で知ったが、筆と言うらしい)を取り出して、空中に二本線を引いた。
途端、雨が降り出した。
『……え?』
『しまった、貯めるものがねぇや。まあ、チャンスは幾らでもある訳だし』
『いやもう待って、キミ本当になんなの?』
『シラヌイ。お前からすりゃ、ただの人攫いだよ』
雨が降る中、白いループスはこう言って恥ずかしげもなくコロコロ笑った。
ボクと彼の関係はここから始まって、今に至るまで彼はボクに変わらず好意を伝え続けてくれている。ボクの本性を知っても、ボクの過去を知っても、変わらずに。
最初は恥ずかしいだけだったけど。いつだったか、それをボク以外に言っていないと知ってから。裏もなく、ただボクの全てを愛してくれているとわかってから。
狂気にまみれたボクの中で、一番大切な人になった。
もう、離すつもりは毛頭ない。これからは、ずっと一緒だ。
シラヌイ 転生者その3。ゲーム「大神」の主人公全盛期、白野威の力を持ってループスとして転生。シラクーザのギャングの子として産まれ、鉱石病に罹り(?)、色々あってシラクーザをラップランドと共に脱出。現在はテラ各地で殺し屋をしている。
なお、鉱石病に罹って殺されなかったのは、どうもシラヌイが幼いながら強すぎて、不可能と判断されたかららしい。
ラップランド第一主義のガチ勢で、ラップランドからもテキサス以上の感情を向けられているやべーやつ。筆しらべはアーツとして扱われないらしい。
ラップランド シラヌイに依存し、ヤンデレ化しかかっている(というか多分病んでる)のと、そのおかげか狂気が鳴りを潜めている、テキサスと友好的な関係になっている以外はだいたい原作通り。この作品のキャラ崩壊筆頭。
マコト 酒盛りの最中エクシアを持ち帰って(自主規制)。
エクシア 朝起きて全てを察した。
テキサス ラップランドを揶揄うネタができた。
バイソン たまたま居たため巻き込まれて屍となった。
クロワッサン トイレで気絶。
モスティマ、ソラ それぞれ仕事で欠席。
皇帝 シラヌイが巫山戯て焼き鳥にしかけた。今も所々日火が通っている。
??? 本編で出番がなかった転生者その4。ペンギン急便所属のトランスポーターで、今回の酒盛りを提案した全ての元凶。入れ所がわからなかったのでこの扱い。まあ、是非もないヨネ。
セフィロス 出番無し。モスティマとニアミスしてた。シラヌイ、ラップランド両名とは知り合い。
テスト前に落ち着く為に投稿。村正おじいちゃんは関係ないけど、まあ是非もなしと。