今作に関しましては、基本的に英梨々を応援してもらいながら読んでいただきたく思います。
感想、評価等つけていただければ幸いです。
【プロローグ】
『
Xmasの夜。恵は倫也の家で今日も作業をしていた。美智留や出海は家に帰り、家にいるのは倫也と恵だけだ。恵はシャワーを浴びたあと、真新しい下着をつけ、倫也から借りたパジャマをきている。借りたといっても、恵用に用意された女性用の淡いピンクではあるが。
恵は倫也のベッドに転がっていた。部屋にはアロマオイルが温められ、ほのかな香りに満ちていた。音楽はノートPCの安っぽい音源から静かにクリスマスソングがリピートされている。
ドアが開いて、シャワーを浴びた倫也が入ってくる。
「・・・あれ、俺、布団敷かなかったっけ」
いつもは床に布団を敷いて、倫也はそこで眠る。
ベッドの窓側に布団にくるまっている恵は、片腕だけを布団から出して、ぽんぽんっと開いているベッドスペースを叩いた。とてもじゃないが顔は出せない。
「さて・・・布団敷くかぁ・・・」
「・・・倫也くん?」
「なぁ、恵。無理するなよぉ」
「別に無理なんてしてない」
布団の中から声だけ聞こえる。手でもう一度ベッドを叩く。
「今回の主人公って英梨々・・・なんだよね?」
「ああ、そうだよ」
「なんで、わたしから物語がはじまっているのかな?」
「それはお前がプロットの段階で、怒るは拗ねるは部屋の隅で体育座りのまま動かないはで・・・」
「ふーん。全部、わたしが悪いんだ?」
「いや、そうじゃなくて」
「・・・ねぇ、一緒に寝よ。寝てみようよ。これR指定ついてないよね?」
「ああ」
ベッドに腰かけていた倫也が、恵の右側に寝る。その姿勢はまっすぐぎこちなかった。
「あの・・・恵・・・寒いのだけど、掛け布団どうすんだ・・・」
「どうしたい?」
「もう一枚だすか・・・」
「あのね、倫也くん・・・もう一度きくよ。どうしたい?」
「お前なぁ・・・」
「なんてね、はい」
ばさっと掛布団を倫也の方にもかけて、一緒になる。
恵は倫也の方へ体を向けた。倫也は動けず天井を見つめたままだった。
「そんなに緊張するかな?」
「恵は緊張してないんだ?」
「心臓、破裂しそう」
「ははっ」
「そこ、笑うとかなぁ?」
その時、ノートPCがピコンッとお知らせする。
「ん、だれかログインしたかな?」
「ねぇ、倫也くん、パソコン切ってくれるかな・・・」
「音楽は・・・」
「いいの」
倫也はベットから立ち上がりノートPCの電源を切ってから閉じた。
部屋は静寂に包まれた。カーテンの隙間からもれるかすかな光だけが二人の世界を優しく照らす。
「静かだね」
恵は布団から顔を出して倫也を見ている。倫也も恵を見下ろす。お互いがそこにいるのはわかるが、顔の表情までは見えない。
「そんなに見ないでよ」
「ああ、うん・・・ごめん。って、ぜんぜんみえないけど」
それから、恵が掛布団の片側を上へあげて、再度、倫也を促した。
倫也も黙って、そこに横なる。
「こっち、向いてくれる?倫也くん」
倫也が体を恵の方へ向けた。
「あっ」
思いのほか近くて、体ふれあう。倫也の顔が恵の顔につきそうなる。
「近いよ・・・」
「ごめん」
倫也が向きを変えようとするが、恵はすでに手で倫也の体を抱えるようにしていた。
「いいの」
家の前を通った車の音がはっきり聞こえた。
「わたしたちってしゃべるとコントみたいになっちゃうから・・・」
「ああ、そうだなぁ・・・」
「それはそれで楽しいのだけど」
「わかっているなら、少しは黙ってみてはいかがでしょう?恵さん?」
「・・・もうぅ・・・」
お互いに見つめ合ったまま時間だけが静かにすぎる。時計の音が妙にうるさい。
「・・・あの・・・あっ」
倫也が恵にキスをする。またタイミングがずれる。
「・・・ごめん、わたし・・・んぐっ」
倫也はかまわず、もう一度キスをして、恵の口をふさぐ。だけど、舌をいれるような勇気はない。
「ぷはっ」
「息、止めすぎだろ・・・」
「・・・もう・・・恥ずかしいから、無理だから」
恵がずりずりと体を下げ、布団の中にもぐりこんだ。
倫也は恵の頭に顔を当てる。どうしようもないぐらいクラクラする匂いがする。石鹸の匂いなんかと違う。それは恵の匂いだ。いつも布団にかすかに残る香りそのものだった。
「あっ、そうだ倫也くん」
布団の中から声が聞こえる。
「わたし、プロローグ用にセリフがあったと思うのだけど」
「ああ、俺もあった気がする」
「・・・なんだか忘れちゃった・・・」
恵が再び顔を出す。布団の中は息苦しい。布団から出てもなんだかずっと息苦しいけれど・・・
それから、黙ってキスをする。
今度はタイミングがずれない。
「そだ、倫也くん・・・あけましておめでとう」
「クリスマスじゃなかったのぉ!?」
「一応・・・ね」
』
「って、なんじゃこりゃああああああああっ!」
「落ち着いて、澤村さん」
「霞ヶ丘詩羽っ!なんなのよこれ」
受け取った紙をびりびりと破いて捨てる。
「これは、あなたが挑もうとしている加藤さんと倫理くんじゃない?」
「・・・えっ、あたしこんなのに挑むの?」
「そうね、それがあなたの役割でしょ」
「でも、これのどこに入り込む余地があるのよ・・・」
「まぁそうよね、こんな特別な日の初めての夜なんて、人生のピークですものね」
「あんたには無縁そうね・・・」
「次点が虚栄心を満たすための結婚式ね」
「その歪んだ考えなんとかしないと、どちらもあなたには無縁になるわよ。霞ヶ丘詩羽」
「あなたにだけは言われたくないわね」
「・・・で、どうすればいいわけ?このベッドシーンに窓ガラスでも割って侵入するのかしら?」
「そういうことはあなたの同人誌で勝手にやってちょうだい」
「じゃあ、どうするのよー」
「安心して澤村さん、最初の舞台は時間をさかのぼってあげるから」
「・・・」
「やはり二年生の2月頃がいいかしらね。あなたと倫理君が仲良くて、おまけに倫理君と加藤さんが喧嘩中だし、この時に決めてしまうのが王道だと思うの」
「まぁ、確かにそうね」
「では、行ってらっしゃい澤村さん、あとはあっちの私が相談にはのってあげるから」
「勝算はあるんでしょうね?」
「・・・さぁいってらっしゃい。メインヒロイン攻略ルートへ!」
「・・・それどういう意味よ・・・」
(つづく)
こつこつ書いていきます。