「ふふん♪和装もなかなかいいわね」
鏡を見ながら英梨々がポーズを取る。
元旦。冬コミも終わり一段落したサークル活動。英梨々は上機嫌だった。
ケータイから電話をかける。
「霞ヶ丘詩羽?これから初詣にいかない?」
「あなたね、今何時だと思っているのよ」
「昼過ぎね」
「あらそう・・・」
「どうせ、デートの予定があるわけじゃないし、ちょっと出てきなさいよ」
「そうね、デートの予定がないのはあなたも同じじゃないかしら?」
「それよそれ。まだ倫也は寝ていると思うんだよね」
「その倫理君に会うまでの間、私で時間つぶそうとかひどくないかしらね?」
「でも、相談のってくれるって言ったじゃない」
「・・・私が言ったのは2月のバレンタインの頃だったと思うのだけど」
「でも、今日が正月なんだから正月イベントのほうがいいでしょ」
「そういうのって後から読んだらわからないんじゃないかしら?」
「細かいことはいいのよ」
「とにかく、私はまだ眠いし、仕事は溜まっているし、そもそも人混みが嫌いだし、正月早々外出したいとは思わないわね」
「・・・そう」
「もういいじゃない。とりあえず倫理君を誘いなさいよ」
「誘っていいものだろうか?」
「もう躊躇してても始まらないわよ」
「・・・」
そういうわけで倫也へ電話をする英梨々。だけど倫也は電話にでない。
しかたないので、歩きにくいが倫也の家までいく。せっかくの着物だから、なにがなんでも見てもらいたい。
家の呼び鈴を鳴らすが反応がない。自家用車がないから家族ででかけているのだろうか。英梨々にはわからない。
着物を着て一人。その先の予定がない。
「・・・」
お嬢様モードの学校の友達に自分から今更誘いにくい。かといって、残る友達は・・・恵ぐらいなわけで。
「あっ、英梨々?あけおめー」
「あけおめ。恵。ちょっと聞きたいことがあるのだけど」
「どうしたの?」
「倫也って今どこにいるかわかる?」
「あんな人のこと知らない」
「家に車がないからでかけているのかな?」
「さぁ、あそこの家の両親って、もうこの話の中ではでてこないんじゃないかな?」
「もう家を留守にする理由すらないのね」
「安芸くんは家にいると思うよ」
「でもでないんだけど」
「寝てるんじゃないかな。製品版のことであれからずっと忙しいみたいだし」
「知ってるじゃん」
「・・・で、英梨々はこれからどうするの?」
「恵って倫也の家の合鍵もってたわよね」
「あーうん。まだあるね」
「じゃあ、倫也の生存確認しにこない?」
「いかないよー寒いもん」
「今なにしているの?」
「わたしは普通に一家団欒でTVぼんやりみてるよー」
「あたしも家に帰ってTVでも見よかなぁー」
「英梨々、時間あるならうちに来てみる?」
「合鍵貸してくれる?」
「それはそれこそ倫理的にどうかと思うのだけど」
「そうよね」
「でも、もうわたしには必要ないしー。安芸くんに返してもらえるかな?」
「そんなに喧嘩してるの?」
「おかげさまでー」
「ごめん。恵」
行くところもないので、結局、恵の家に遊びにいくことになった。
歓待される英梨々。このルックスに着物姿。どう見ても芸能人である。しかもお嬢様モード。
そして、時間が矢のように過ぎ去り、日が沈んだ。
「恵、そろそろ帰るね」
「そうだね、安芸くんも起きるころかな」
「・・・さっき恵が倫也の家に来なかった理由って、倫也を寝かせておくため?」
「勘のいい子は嫌いだよ」
「・・・恵!?」
「なんてね、ただ顔もみたくないだけ。はい、これ鍵。返しておいてね」
「うん。いいの?ほんとに」
「何が?」
「ううんなんでもない」
「あと、英梨々これはお土産。家で食べてね」
恵が英梨々にタッパーのはいった紙袋を渡す。
「おせち作りすぎちゃったから」
「ありがとう恵。わたし、男だったらあんたと結婚するわ」
「それ、なんて敗北宣言?」
「ちがうわよ!またね、恵。ごちそうさま」
「じゃ、また。次は学校かな」
こうして恵の家をあとにして、再び倫也の家へ向かう英梨々。
もう、このわかりやすいフラグ管理が、レトロなRPGの主人公のようである。
素直に行動した英梨々は鍵GETして、物語の先に進む。
一方、倫也の行動を予測する恵は未だ動かず。英梨々の様子を見守っていた。
(つづく)