負け犬ヒロインの育て方3   作:きりぼー

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第一章

「ふふん♪和装もなかなかいいわね」

 鏡を見ながら英梨々がポーズを取る。

 

 元旦。冬コミも終わり一段落したサークル活動。英梨々は上機嫌だった。

ケータイから電話をかける。

 

「霞ヶ丘詩羽?これから初詣にいかない?」

「あなたね、今何時だと思っているのよ」

「昼過ぎね」

「あらそう・・・」

「どうせ、デートの予定があるわけじゃないし、ちょっと出てきなさいよ」

「そうね、デートの予定がないのはあなたも同じじゃないかしら?」

「それよそれ。まだ倫也は寝ていると思うんだよね」

「その倫理君に会うまでの間、私で時間つぶそうとかひどくないかしらね?」

「でも、相談のってくれるって言ったじゃない」

「・・・私が言ったのは2月のバレンタインの頃だったと思うのだけど」

「でも、今日が正月なんだから正月イベントのほうがいいでしょ」

「そういうのって後から読んだらわからないんじゃないかしら?」

「細かいことはいいのよ」

「とにかく、私はまだ眠いし、仕事は溜まっているし、そもそも人混みが嫌いだし、正月早々外出したいとは思わないわね」

「・・・そう」

「もういいじゃない。とりあえず倫理君を誘いなさいよ」

「誘っていいものだろうか?」

「もう躊躇してても始まらないわよ」

「・・・」

 

 そういうわけで倫也へ電話をする英梨々。だけど倫也は電話にでない。

しかたないので、歩きにくいが倫也の家までいく。せっかくの着物だから、なにがなんでも見てもらいたい。

 

 家の呼び鈴を鳴らすが反応がない。自家用車がないから家族ででかけているのだろうか。英梨々にはわからない。

 着物を着て一人。その先の予定がない。

 

「・・・」

 

 お嬢様モードの学校の友達に自分から今更誘いにくい。かといって、残る友達は・・・恵ぐらいなわけで。

 

「あっ、英梨々?あけおめー」

「あけおめ。恵。ちょっと聞きたいことがあるのだけど」

「どうしたの?」

「倫也って今どこにいるかわかる?」

「あんな人のこと知らない」

「家に車がないからでかけているのかな?」

「さぁ、あそこの家の両親って、もうこの話の中ではでてこないんじゃないかな?」

「もう家を留守にする理由すらないのね」

「安芸くんは家にいると思うよ」

「でもでないんだけど」

「寝てるんじゃないかな。製品版のことであれからずっと忙しいみたいだし」

「知ってるじゃん」

「・・・で、英梨々はこれからどうするの?」

「恵って倫也の家の合鍵もってたわよね」

「あーうん。まだあるね」

「じゃあ、倫也の生存確認しにこない?」

「いかないよー寒いもん」

「今なにしているの?」

「わたしは普通に一家団欒でTVぼんやりみてるよー」

「あたしも家に帰ってTVでも見よかなぁー」

「英梨々、時間あるならうちに来てみる?」

「合鍵貸してくれる?」

「それはそれこそ倫理的にどうかと思うのだけど」

「そうよね」

「でも、もうわたしには必要ないしー。安芸くんに返してもらえるかな?」

「そんなに喧嘩してるの?」

「おかげさまでー」

「ごめん。恵」

 

 行くところもないので、結局、恵の家に遊びにいくことになった。

歓待される英梨々。このルックスに着物姿。どう見ても芸能人である。しかもお嬢様モード。

 そして、時間が矢のように過ぎ去り、日が沈んだ。

 

「恵、そろそろ帰るね」

「そうだね、安芸くんも起きるころかな」

「・・・さっき恵が倫也の家に来なかった理由って、倫也を寝かせておくため?」

「勘のいい子は嫌いだよ」

「・・・恵!?」

「なんてね、ただ顔もみたくないだけ。はい、これ鍵。返しておいてね」

「うん。いいの?ほんとに」

「何が?」

「ううんなんでもない」

「あと、英梨々これはお土産。家で食べてね」

 

 恵が英梨々にタッパーのはいった紙袋を渡す。

 

「おせち作りすぎちゃったから」

「ありがとう恵。わたし、男だったらあんたと結婚するわ」

「それ、なんて敗北宣言?」

「ちがうわよ!またね、恵。ごちそうさま」

「じゃ、また。次は学校かな」

 

 こうして恵の家をあとにして、再び倫也の家へ向かう英梨々。

もう、このわかりやすいフラグ管理が、レトロなRPGの主人公のようである。

 

 素直に行動した英梨々は鍵GETして、物語の先に進む。

 

 一方、倫也の行動を予測する恵は未だ動かず。英梨々の様子を見守っていた。

 

(つづく)

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