目的地につき、倫也はタクシーを先に降り、英梨々が降りるのをやはり手をとって助ける。
「倫也、ずいぶん優しいわね」
「そうか?」
英梨々はちょっと恥ずかしかった、どう接していいかわからなくなる。
那須の別荘のときから、二人の関係性は良好だと思う。このまま上手く発展すればいいんだ。正直になろう。そしたらきっと・・・
「混んでるなぁ・・・」
「参拝はまだ列ができてるのね」
「並ぶか?」
「なんか、あっちに出店もでているし、回ってみようよ」
「そういうのって、参拝が終わったあとにするのでは・・・」
「細かい男は嫌われるわよ?」
「ははっ」
今度は英梨々が倫也の手をとり、ひっぱっていく。顔は見れない。緊張していることを伝えないように、できるだけいつものように、子供の頃のように・・・
「さーて、なにから食べる?」
「いや、俺は腹はいっぱいだよ・・・」
「んーあたしもかなー」
並ぶ屋台。人はそこまで混んでいない。英梨々が選んだのは射的。
「おっちゃん。一万円分の弾ちょうだい!」
「おい」
「さぁ、倫也は弾をつめてバネ引いてね」
「これ、1人1丁だろ・・・」
「かまわんよー」
射的のおっちゃんが3つ銃を置く。倫也はため息をつきながら、弾をこめていく。
それを次から次へと撃ち続ける英梨々。
「遅い!」
「バネけっこう硬いんだよ!」
豪快な遊び方に少し人だかりができる。ただでさえ、注目を浴びる容姿なのに、そのギャップがひどい。
全弾打ち尽くして、大量のお菓子をとライターを手に入れる。
「どうすんだよ、こんなに・・・」
倫也はただでさえ体調が良くなかったので余計にバテていた。それでもひさびさに気分転換ができた気がした。
「さて、次は・・・」
英梨々があたりをキョロキョロする。気分だいぶ良い、自然に笑うこともできた。
その時、英梨々に声がかかった。
「あれ、澤村さん?」
「ほんとだ、澤村さーん」
声かけたのは英梨々のクラスメート、澤村さんの取り巻きAとBである。
「あっ」
英梨々の表情が固まる。それからすぐにお嬢様仕様に帰る。
「こんばんは。あけましておめでとうございます」
「あけおめー」「あけましておめでとう」
女子3人のトークが始まる。倫也は少し距離をとる、なんならこのまま消えたほうが英梨々には迷惑をかけない。
「澤村さん一人?」
「あれ、あの人・・・えっと、ヲタクの人じゃない?」
「えっ、ほんと、私はよくわからない」
などと話し始める。英梨々が返答に困る。ちらりと倫也を見る。倫也は指で先に帰ることを伝える。英梨々が寂しそうな困った顔になった。
「ああ、なんかこいつ、さっきから迷子みたいで」
「迷子?」
「って、とも・・・じゃない、えっと・・・」
「友達がみつかったようでよかった。じゃあ俺は失礼するよ。偶然通りかかって、困ってそうだから、声かけたんだ」
「そ・・そうなのよ。親とちょっとはぐれちゃって、別に迷子じゃないけどね」
「そうなんだ、じゃあ、一緒に探そうか」
「うん」
などと話しているうちに倫也の姿が見えなくなった。
英梨々はそれからお嬢様モードのまま友達と初詣をすませた。親が先に帰ったと嘘いい、それからタクシーで帰った。別に泣きそうにはならなかった。少しドライな自分をみつめる。このままじゃダメなことだけはわかる。
※※※
英梨々は部屋で無造作に着物を脱いでいく。慣れない着物で1日を過ごし、さらに最後に気も使ってずいぶんと疲れた。裸になったままベッドに横たわる。
これはきっと罰だ。
10年以上前に倫也を裏切った罰が今も自分を責め立てる。倫也が許してくれても、10年以上演じてきたお嬢様の自分が許してくれない。
倫也からLINEがはいる。
「無事に家に帰ったか?」
「うん」
「今日はありがとう。ごちそうさま、あと楽しかった」
「うん」
「あと、あけましておめでとう。今年もよろしく」
「なによ今更」
「いってなかった気がして」
「そうかもね」
倫也といる時間は楽しい。でも、ここからどうやって恋人に発展していくのかがわからない。
(つづく)
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