シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第14章~Basket Case~⑥

「そうだったかも!高梨先輩と有間クンが、番組の内容について、駆け引きめいたことをしていて……。私の話す内容のことも色々と考えてくれているんだな、って思ったことを正田さんに話した気がする」

 

亜莉寿は、振り返りながら語る。

 

「そっか~。自分も、ショウさんに、助言というか、アドバイスをもらったのは、同じ時期やったと思う。番組の内容が認知されてきて、亜莉寿やブンちゃんに注目が集まりだした頃やったね」

 

秀明の言葉に、亜莉寿も、

 

「そうそう!」

 

と、同意する。

そんな、彼女の答えに、秀明は、

 

「ブンちゃんは、不特定多数の女子から好奇の目で見られるのを迷惑がってるところがあったけど───。亜莉寿は、あの頃、イヤな想いをすることとか無かったの?」

 

と、気になっていたことを聞いてみた。

彼の問いに、亜莉寿は、

 

「う~ん───。秋の初めの頃に、男子の視線が気になったことが少しあったけど、それもすぐに収まったかな?その月の終わりくらいの放送で、有間クンが、身を呈して《注意喚起》をしてくれたから」

 

と、最後はクスクス笑いながら、返答する。

秀明が、すぐに反応し、

 

「あ~、高梨センパイの考えたアレな!『一方的なお願い』では、反発を受けるかも知れないし、ドコかで自分たちの側にも笑えるネタにできる部分があることをアピールする必要があるのも、わかるけど───。ホンマに酷いことを考えるよな、あのヒトは……。オレのことをナンやと思ってんねん!」

 

盛大に愚痴をこぼすと、亜莉寿は、アハハとさらに可笑しそうに笑ったあと、

 

「でも、そのおかげで、私と坂野クンは、イヤな想いをすることはなくなったから、有間クンには感謝だよ!あの頃、進路について考え始めた頃だったから、他の悩みをアッサリ解決してもらえて、私としては、ホントに助かったんだ」

 

と、亜莉寿は言った。

そんな、彼女の言葉を噛み締めつつ、秀明は、

 

「それなら、少しは役に立てて良かったかな?あと、生徒集会で気が滅入る話しをされたのも、この時期だった気がするなぁ」

 

と、回想する。

亜莉寿も、「そうだね」と答え、

 

「有間クンに、大事な話しがある、と言って聞いてもらったのも、このしばらく後だったし───」

 

慎重に言葉を選びながら、そう語った。

 

「あ!亜莉寿に、『ロッキー・ホラー・ショー特別上映』に誘ってもらった時のことかな?」

 

秀明が亜莉寿の言葉の続きをたずねると、

 

「うん……。あの夜のことは、私の中で特別なことだから───」

 

彼女は、答えた。

そして、

 

「ずっと前から自分が考えていた将来の夢と、その時の自分の状況が、あまりにもかけ離れている気がしたから、どうして良いのかわからなくて、気持ちだけが焦ってしまって───。今の学校の方針に不満を持ったことも、海外の高校に編入したいと考えたことも、結局は現状から逃げてるだけじゃないのか、って自分でも思っていて───。誰かに自分の想いを聞いてほしかったけど、こんなことは、誰にもわかってもらえないと思っていたから……。だから、有間クンが、自分の感じたことや考えていたことに共感してくれたのは、ホントに嬉しかったんだ」

 

溢れだした感情を抑えられない、といった感じで、亜莉寿は、一気に自分の想いを語る。

そんな彼女の様子を黙って聞いていた秀明は、

 

「そうなんや……。そんな風に思ってもらえていたのなら、嬉しいな」

 

と、照れた様に、つぶやいた。

亜莉寿は、さらに続けて語る。

 

「それに、有間クンはアメリカで自分の夢を叶えたい、って言った私のことを『応援したい』って言ってくれたでしょう?あの言葉には、ホントに勇気づけられた。自分の味方になってくれるヒトがいるんだ、って……。その上で、有間クンは、私が海外に出て勉強したい、と思った理由とメリットを簡潔にまとめてくれて───。あの時は、ホントに有間クンが頼もしく見えたよ。あの時にしてくれたお話しを聞けていなかったら、ウチの両親と話す時も、もっと大変だったと思う───」

 

吐露する様に語られる彼女の想いに、秀明は、耳を傾けつつ、

 

「それは、亜莉寿の話しを聞いていたら、出来ないことではないから───」

 

と、言って微笑を返す。

その言葉に、亜莉寿は、フルフルと首を振って、

 

「ううん───。両親との話し合いは、ちゃんと自分でがんばらないといけないことだったのに、二ヶ月も話しを先伸ばしにしてしまった上に、また、有間クンに頼ることになってしまって……」

 

彼女が、そう言うと、秀明は、

 

「そのことなら、そんなに気にしなくてもイイよ───。それに、秋に亜莉寿の話しを聞かせてもらった時も、『ご両親に話しをする時は、チカラを貸してほしい』って言われてたからね。オレの方こそ、あの時、亜莉寿があんなに不安そうだった理由を、もう少し真剣に聞いていれば良かったな、って考えてたのよ」

 

苦笑しながら、そう答えた。

しかし、秀明の答えには納得できない、といったかんじで、再び首を横に振り、亜莉寿も自分の想いをぶつける。

 

「でも、私はあの時のことについて、まだ、きちんとお礼を言えていないし───。自分に出来ることがあれば、有間クンに恩返しをしたいな、って考えているんだ」

 

彼女が、そこまで一気に語り、続けて「だから、私は───」と言葉を発しようとした瞬間、秀明が遮るように

 

「いや、オレは、そこまでしてもらえる程、偉い人間ではないから───」

 

と、割って入ってきた。

その言葉に驚いた亜莉寿が、口を開けられないでいると、秀明は、珍しく彼女の反応を気にすることなく、一方的にたずねる。

 

「また、少し話しが長くなるかも知らんけど、聞いてもらってもイイ?」

 

その勢いに呑まれた亜莉寿が、思わずうなずくと、彼は、これまでの自分の想いを振り返るように語りだした。

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