シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第2章~Get along~③

緩急を織りまぜた放送部からの勧誘活動によって、秀明が精神的疲労を負っていると感じたのか、高梨翼は、

 

「あきクン、帰る方向が同じやったら、有間クンのケアをしてあげて~。あと片付けは、こっちでやっとくから~」

 

と気遣いを見せた。

 

思ってもみない提案をされた上に、自分から協力を申し出ることになった顛末を振り返り、

 

(これは、放送部の二人の思惑にハメられたのか?)

 

などと考えながら、秀明は昭聞と帰路に着く。

 

 

 

約一ヶ月ぶりとなる二人での下校途中、猪名寺駅で電車を待つ間に、「あんまり他人には話してないことやけどな……」と昭聞が語り始めた。

 

「オレ、将来はメディア関係の仕事に就きたいと思ってんねん。テレビとかラジオとか雑誌とか……。媒体は何でも良いけど、情報の受け手側じゃなくて、発信する人間になりたいなって」

 

「うん。それは、ブンちゃんらしいと思うわ。それに、入学式の日も思ったけど、高校での活動にしても、将来の夢にしても、明確に目標があるのって、正直うらやましいと思うで」

 

「なんやねん。そんな誉めんなや」

 

と照れる昭聞に、

 

「オレなんか、この高校選んだの、目の前の《つかしん》の映画館で、『帰りに映画観るの便利やな』って思ったからやし」

 

と、ショッピングモールから徒歩一分という稲野高校の好立地ぶりを理由に挙げた。

 

「それはそれで、おまえらしいけどな」

 

と笑う昭聞。

 

入学式の日から、最も気の合うクラスメートだとは感じていたが、昭聞がこれまで見せなかった一面を垣間見た思いがして、秀明は、坂野昭聞という人間との距離が近付いた気がした。

 

「ところで、ブンちゃん!放送室で話しを聞かせてもらった時に気になったことがあるやけど、いくつか質問させてもらってイイ?」

 

「ん?時間とって話しも聞いてもらったし、気になることがあったら、何でも聞いてくれてイイで」

 

秀明は、頭の中を整理して、気になったことを順番に聞き出す。

 

「最初は、ブンちゃんと高梨先輩のことなんやけど。何か仲が良さそうに見えたけど、二人は、前から知り合いやったん?」

 

「あぁ、さっきは話せてなかったっけ?翼センパイとは、中学校が同じで放送部でも一緒に活動してた。ウチの高校選んだのも、翼センパイが『今の放送部で活動にチカラを入れたい』って言うてたのもあるな」

 

「そうなんや、なるほど。二つ目は、高梨先輩が放送室に入って来た時のこと。答えにくかったら別にイイけど、先輩は最初から放送室に来る予定じゃなかった?」

 

「い、いや、それは……」

 

「ブンちゃんは、『他に誰も来ないから安心して』って言ってくれてたけど、高梨先輩が放送室に来たタイミングが、あまりにも良すぎたし(笑)正直オレは、ちょっとビビったけど、ブンちゃんは、驚いてる様子がなかったからな」

 

「そ、そうやったっか?」

 

放送室で熱い口調の勧誘を行った時とは違う意味で、普段の冷静さが見られなくなった昭聞に、秀明は質問を続ける。

 

「あの時、スピーカーから雑音が鳴った様な気がするんやけど、放送部にしか出来ない方法で、合図を送ったとか、そんなこともあるんかなって、邪推したり」

 

昭聞は、取り繕うことを諦めたのか、

 

「おまえ、学校の成績はボロボロやのに、変なところで鋭いな」

 

と素直に口にした。

 

「まあ、正直、『二人にハメられたんちゃうか?』と思わないこともないけど、最後の質問に答えてくれたら、水に流すわ」

 

「そうか、助かる」

 

と安堵する昭聞。

 

しかし、秀明は、そんな気の緩んだディフェンス陣を切り裂くかの様に、豪快なミドルシュートを撃ち込む。

 

「ブンちゃんが、そこまで放送部の企画にイレ込むのって、高梨先輩の存在と関係あるの?」

 

「は、はぁ~?」

 

今度は、昭聞が声を挙げる番だった。

 

「か、かんけいし!」

 

焦る昭聞に、秀明はたたみ掛ける。

 

「ん?関係詞?who?which?that?」

 

「いや、翼センパイのことは、関係ないし!あと、おまえが、いま言ったのは、全部関係代名詞や!!」

 

「そうやったっけ?まあ、細かいことはイイやん!今の問題は、ブンちゃんの熱意の源が、高梨先輩にあるのか否か、ということやから(笑)」

 

「だから、関係ないって!翼センパイのことは!!センパイは、去年から一人で今の企画を実現するために、がんばってたらしいから、自分も協力したいと思ってるだけで……」

 

「そっか、そっか(笑)いや、もうブンちゃんの反応を見てるだけで、大体のことは、わかったから、これ以上は追及せんとくわ。でも、ちょっと気持ちはわかるかな。おっとりした可愛いらしい先輩が、がんばってる姿を見たら、応援したくなるもんな。健全な男子としては」

 

口ではフォローしながらも、秀明はクククと笑いを噛み殺す。

 

「女子のことで、おまえにだけは、とやかく言われたくないわ!」

 

「ゴメン、ゴメン!もう触れへんから」

 

笑いながら謝る秀明に、

 

「おまえの方こそ、吉野さんのことは、どうするねん?何も進展してないんやろ?」

 

と昭聞が反撃する。

 

「おっと、さすがブンちゃん。セリエA強豪クラスのカウンターアタックを仕掛けてくるやん」

 

「冗談じゃなくて、放置したままで大丈夫なんか?吉野さんのこと」

 

「そう言われてもなぁ。思い当たるフシが無い以上、何もわかってないまま、話し掛けるのも失礼やろうし……」

 

「おまえが、そう思うなら、こっちから何も言うことはないけど……。まあ、有間秀明に女子関係の話しを聞くのは時間の無駄か」

 

あきれた口調で、語る昭聞に、

 

「いやいや、オレだって女のヒトと会話が盛り上がることくらいあるよ!」

 

秀明は反論を試みる。

 

「ほぉ~。ぜひ、その話しを聞かせてもらいたいもんやな」

 

昭聞が、挑発する様に言うと

 

「そうやな。今日はブンちゃんが色々と自分の話しを聞かせてくれたし、せっかくやから、オレの話しも聞いてもらおうか」

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